◎40番【井上睦子君】
 2000年度東京都八王子市一般会計及び各特別会計並びに関連する諸議案に対して、社民・生活者ネットを代表して、反対討論を行います。

 日本経済は依然として景気回復への道筋は見えず、昨年10月から12月の実質経済成長率は年率マイナス 5.5%と、7月から9月期に続きマイナス成長となりました。雇用面では、失業率が戦後最も高い4%台後半にもなっています。小渕内閣の経済対策が、不況対策としても構造対策としても全く効果がないことを物語っています。

 このように、長引く不況の中、国の新年度予算は、国債発行額約32兆 6,000億円、歳入の4割近くが借金頼みとなっており、2000年度末には国と地方を合わせた長期債務残高は 645兆円になろうとしています。子や孫の世代を当て込んだ借金づけの財政は、限界に来ています。

 八王子市の財政も例外ではなく、新年度予算ベースでは、公債費比率は三多摩で最も高くなる最悪の状況となっています。新21プランの財政計画によれば、2004年度には 389億円をピークとして、2000年から2003年まで約 300億円の公債費の償還を毎年しなければなりません。極めて厳しい財政運営を求められていると思います。

 黒須新市長は、自民党として、また、都議会議員として長年側面から支えてきた波多野前市長の負の遺産を引き継ぐという厳しい財政運営をみずからに課したことになりますけれども、このことは逆に、側面からであっても支えてきた市長の責任ということも問われなければならないというふうに思います。

 新年度予算は骨格予算として編成されました。一般会計でマイナス 5.9%の 1,607億円、特別会計でプラス 6.7%の 1,461億円、計 3,068億円の予算規模であります。これは本予算に近く、また所信表明や予算質疑の中で市長から明言されたように、基本構想である新21プランを継承した予算であります。財政再建のために、八王子駅南口地下駐車場、あるいは総合保健センター建設の凍結など、将来への負担の大きい事業について、一定の判断をされたことは評価したいと思います。しかし、まちづくりの根幹をなす基本構想、新21プランを継承し、それを反映する予算であるということが私たちの反対の第1の理由であります。

 業務核都市構想を基本とするまちづくりは、前基本構想時代、バブル時代の遺物であります。圏央道を中心とした道路網の建設及び周辺の開発によって都市の自立を図るという産業政策は、もはや破綻を来しています。実際には、川口リサーチパーク、左入地区の開発についても、市長は疑問を表明されました。現下の経済情勢及び産業構造の変化の中で、見通しの立たない開発計画には終止符を打つべきであります。

 さらに、こうした公共事業は、財政破綻と環境破壊を起こすものです。ことし1月の尼崎公害裁判の判決は、道路の公共性は認めるが、周辺住民の健康保持が1番優先するとして、自動車排ガスによる健康被害を認め、国と道路公団の責任を明らかにしました。また、有害であることが明らかな大気汚染による浮遊微粒子状物質、SPMが、気管支ぜんそくの原因になっていると指摘をし、1日平均0.15ミリグラムを超えてはならないとしていますが、八王子では環境基準をすべての観測地点で上回る数値が測定されています。このまま圏央道や北西部幹線が建設されれば、市民の健康被害は拡大していくばかりです。また、財政上の検討も北西部幹線などはきちんとシビアに行うべきであります。こうした大規模な道路工事などは、確実に財政に破綻を来すことは明白であります。公共事業にかける費用と受ける利益、不利益を客観的に吟味し、勇気ある転換をしなければなりません。

 第2の理由は、行財政改革、とりわけ安直過ぎる民間委託についてということであります。

 小学校給食の調理部門の民間委託が1月から4校、新年度予算では3校が実施されることになっています。長年八王子の小学校給食は、手づくりで安全、おいしいと高い評価を得てきました。保護者への十分な説明と同意もないまま委託が強行されたことは、1月の段階でありますけれども、極めて遺憾なことでありました。委託費は年々増嵩する傾向があります。委託の方が安いというのはまだ証明がされておりません。給食問題は、小中学校、そして老人給食も含めて、縦割りを廃し、少子・高齢化時代の中で調理室や人材をどのように活用し、市民へのサービスを充実していくかの観点に立つ必要があります。また、委託先によって、委託先の労働者の賃金、労働条件についても大変悪化する傾向があります。こうした委託によって賃金や労働条件の悪い労働者を生み出してよいのかという問題もあります。  また、行革によって職員定数が毎年70名以上減少していますが、他方で嘱託職員は増加しています。必要な部署には必要な人員が配置され、市民サービスが滞ることがあってはなりません。安易な行革は働く人たちへの身分の差として広がります。みずから30時間労働を希望する人たちがあるとすれば、それは多様な働き方の保障として、同等な労働条件、すなわち均等待遇を確立すべきであります。市内最大の雇用機関であり、雇用創出の役割を担う市役所の役割をきちんと認識すべきであります。

 また、夕やけ小やけ文化農園の観光協会への委託は妥当性に欠けるものです。昨年の1億円横領事件、高尾山麓駐車場にかかわる不祥事について、観光協会としてはまだその責任と対応が明らかになっておりません。事件の際明白になったのは、横領を未然に防ぐ、あるいは早期に発見する能力を観光協会が持ち得ていないことでありました。さらに、観光協会の実態は、市の補助金、市の職員のOBで担われていることであります。こうした観光協会が夕やけ小やけ文化農園の委託を担えるのか、大いに疑問であります。市職員の出向によって観光協会を支えるため、補助金の支出 9,000万円が予定されています。観光協会の名をかりて、実態は、市の委託先の受け皿として観光協会を運営するとすれば、独立した社団法人の形骸化につながってまいります。また、隠れた第三セクター、外郭団体になる危険性が大であります。委託をするとしても、より適切な団体を選択すべきであります。

 第3の理由は、不況や雇用不安の中で市民が将来への安心感を持てる施策が不十分という点であります。すなわち、介護、子育て、医療への不安に十分こたえるものとなってはおりません。

 2000年は地方分権のスタートの年と言われます。真の地方分権とは、自治体を構成する市民の参加のもとでまちづくりが進められなければなりません。同時にスタートする介護保険制度は、まさに地方分権の試金石として自治体の力量が問われています。

 介護保険制度はさまざまな問題があってもスタートをさせて、みんなで育て、介護の社会化を目指すというのが私たちの立場であります。昨年11月、市民からの直接請求をされた高齢者介護基本条例は、高齢者の尊厳ある暮らしを保障するという高い理念に基づいて権利擁護システムの確立を求めています。具体的にはオンブズパーソン制度、サービス評価制度でありますけれども、今回市長から提出された介護保険条例にはそのことは明文化されず、これらの制度については先送りをされてしまいました。

 三多摩各市を見ても、厚生省の準則によらず、国分寺市などでは、理念や市長の責務、事業者の責務、あるいは市民の権利など明記をしてあります。また、多摩市ではオンブズパーソン制度を発足させ、小金井市では福祉サービス調整員の配置など、自治体の特色があらわれています。あるいは、介護保険料の軽減という意味では、武蔵野市などでは老人措置費の再編成によって生じた予算を回すという自治体独自の取り組みが三多摩各市でも見られるところであります。これは介護保険法の不十分性を補い、市民の立場に立つ自治体としての努力の跡がうかがわれます。市長は、他市に負けない制度とすると答弁をされていますが、決意だけで、実際の制度としてはまだあらわれていません。

 また、子育て支援についても、待機児解消のためには、公立保育園でのゼロ歳児保育など、早急な対応が求められているにもかかわらず、十分にこたえるものとなってはおりません。

 私たちは、バブル期に計画された業務核都市に基づく新21プランというものにしがみつくのではなく、少子・高齢化社会に十分に対応した福祉部門への産業の起業などを通してまちづくりをしていくということに重点を置くべきだというふうに思っております。

 以上の理由から新年度予算に反対の表明をし、討論を終わります。