◎40番【井上睦子君】
 それではまず、財政危機は回避できるのかというテーマで財政問題についてお伺いしたいと思います。

 今議会で多くの議員が財政白書や財政問題を取り上げておりまして、同時に、市民の間でもこれが大きな話題となっています。10月に発表された財政白書は、市民からさまざまな意見を聞きます。地方財政を一般家庭の家計に例えるのは余りにも短絡的ではないかという意見や、どうしてここまで悪くなってしまったのか、その原因は何なのか、あるいは新税として高速道路に課税をしたらいいのではないかというような提案を出したという声が、さまざまに私にも届いております。市財政の分析を行い、市民に公表し、そして議論を巻き起こしたことは評価できることであります。しかし、こうした分析と、示唆されている処方せんは、本当に財政危機を回避できるのか、財政再建は可能であるのか、疑問のあるところであります。

 まず最初に、財政悪化の主たる要因についてお伺いをいたします。

 財政白書では、公共施設や都市基盤整備、そして職員費や扶助費、国の減税政策や、国や都の補助金の削減など、9項目の悪化の要因を示しています。そして、こうした問題がさまざまに絡み合って本市の財政悪化を招いたというふうに分析しているわけであります。しかし、経済不況や国の減税政策、補助金の削減などによって、地方財政の悪化は全国の自治体の抱える問題でもありますけれども、特に悪化している本市の財政の主要な原因はどこにあるのかということを明確には指摘されておりません。

 隣の町田市では、昨年度の公債費比率 7.1%でありまして、八王子の15.8%に比べてかなり良好な指標を示しています。経済不況や国の減税政策、あるいは国や都の補助金といったところに問題転嫁をすれば、本当の八王子の悪化の要因が見えてまいりません。悪化の要因を明らかにすることによって、適切な対応がとられると考えます。財政当局は財政白書の分析を行うことによって、本市の財政悪化の主たる要因は何であるのかという検証をどのようにされたのか、まずお伺いをしたいと思います。

 先ほど、以前の財政運営が政策的な判断の誤りではなかったのかということを、さきの議員からも指摘がありましたけれども、私も同様にそのように思います。しかし、そのことについては認められませんでした。27市の中でも特に悪化をしている要因について、厳しくみずからを見詰めて、何が原因かをお答えいただきたいと思います。

 次に、財政白書では、市税収入と歳出総額の差が拡大したことに触れています。例えば89年度、市税収入が 678億円であったのに、歳出総額は 1,122億円、その差は 444億円。99年度では、市税収入が 880億円であったのに、歳出総額では 1,637億円で、その差は 757億円というふうに、年々、市税収入と歳出総額との差が拡大していったということが指摘されております。この差の拡大は、能力以上の投資的な事業を行ったということであり、財政の悪化は自明のことであったはずであります。この拡大を抑制できなかった財政運営上の問題を、財務当局は白書を作成するに当たってどのような総括をしたのか、具体的にお答えいただきたいと思います。

 また白書では、義務的経費である職員費や扶助費、公債費の削減を示唆しています。扶助費については、類似団体と比べて1人当たりの扶助費が極めて高額である。そして歳出総額に占める割合が高いということから、市の財政力に比べて過重かどうかを判断するという指摘をしておりますけれども、これは類似団体との比でありまして、27市の平均からすれば平均的な数値であります。

 類似団体は東京都以外の都市でありまして、東京都は特に扶助費については都の補助金が他県に比べて手厚いということから、27市は同様の傾向を持っておりまして、一般的に類似団体と比べて扶助費が高い。だから扶助費の削減や、あるいは市単独事業の給付要件や事業の見直しなどをしなければならないということは、余りも短絡的な比較ではないでしょうか。

 逆に、扶助費を削減していくという誘導の意図を感じないわけにはいかないわけですけれども、扶助費の比率の高さということは、27市の平均から見れば少しよいという程度でしかないと思うわけです。八王子市の福祉の水準は、高齢者、障害者、児童の分野において、他市より手厚いという実感は市民は持っていませんし、むしろ水準としてはまだまだというのが実感でもあります。市は扶助費の削減ということを財政再建プランの中で示そうとしているのかどうかということを、明確にお示しいただきたいと思います。

 私は政策の選択の問題にも後で触れたいと思いますけれども、市政世論調査でも、福祉や医療の問題については極めて高い市民要望がある政策でありますし、決して手厚い状況ではない。ましてや石原都政の福祉切り捨て政策によって、高齢者や障害者、児童の部分については前年よりも厳しい状況が出てきているということをしっかりと把握しなければなりませんし、扶助費は削減をするべきではなく、市民生活を直撃するという意味において慎重に行うべきだというふうに考えますが、基本的にこの扶助費の問題についてはどのようにお考えか、お伺いいたします。

 次に、地方債についてであります。都市基盤整備を進めていくために、地方債の持つ機能については積極的に活用するとしつつも、公債費比率の負担を減らすためには、新たな地方債の抑制が必要という表現でも出されております。地方債の活用については、極めてあいまいな表現になっています。これまでの財政悪化の要因を考えるならば、市債の抑制を明確に打ち出すべきであります。地方債の活用の方向について、行革大綱では、事業を厳選するというふうにしておりますけれども、どのような事業について厳選するのか、お聞きいたします。

 次に処方せん、すなわち財政再建推進プランの問題であります。3ヵ年で各財政指標をどの程度まで改善する計画であるのか。厳しい危機だというだけでは、どこまで市民は努力するという提案を出し、行政内部でもどのような再建方策があるのかということが不明になってしまいます。目指すべき財政指標をお示しいただきたいと思います。実施計画も示されておりますけれども、この部分については明確でないように思います。

 次に、実施計画の内容についてお伺いいたします。財政白書が発表された後、2001年から3ヵ年の実施計画が発表されました。10月の決算委員会では、新21プランの財政規模を下回るというような答弁がありました。新21プランと実施計画における財政計画の差は、各年度、どの程度となっているのかお答えください。

 さらに、実施計画では、使用料、手数料の見直し、値上げによって、使用料、手数料の部分では来年度4億円の増収を見込み、推進プランを反映したものになっていますけれども、予算規模が縮小した中で、新21プランの見直しによって厳選した事業及び新規事業の内容と、その考え方についてお示しいただきたいと思います。具体的に、事業内容の中では、下水道や北西部幹線はどのような考え方のもとに実施計画が立てられているのか、お伺いいたします。

 また、市債の総額は抑制をしたというふうになっておりますけれども、どの程度の抑制になっているのか。あるいは、市税収入と歳出総額との差の拡大が財政悪化を招いたというふうに財政分析の中では出されていますけれども、今後、実施計画3ヵ年の市税収入と歳出の差は妥当なものであるのかどうか、その辺も勘案して実施計画が出されているのかどうか、お答えいただきたいと思います。  次に、緑の基本計画の問題についてお伺いいたします。

 緑の基本計画は昨年3月に策定され、約1年半が経過しました。基本計画は都市緑地保全法に基づく計画であり、みどりの保全、創出のあり方の指針として、他の計画や事業に働きかけ、先導していく基本となる重要な役割を持っています。八王子市の基本構想は、みどり豊かな自立都市というのがスローガンであり、テーマでありますけれども、このみどり豊かという言葉が、言葉だけで終わる危惧を持たざるを得ません。

 例えば、今後も計画されている産業誘致によって、周辺部の開発計画は進められようとしておりますし、産業廃棄物や残土入れ、墓地開発によって山間丘陵部のみどりを減少させています。緑の計画に初めて位置づけられたみどりの概念として、自然の動植物、生き物などの生息が困難になるか少なくなっています。緑の基本計画は、都市部に残る貴重な山林や丘陵地、里山や谷戸を守ること、そしてまた新たに市街地にみどりを創出していく計画として、大いに期待し、有効に機能することを私は心から願っております。しかし、策定されて1年半以上経過するのに、具体的な取り組みとしてはあらわれておりません。来年から3ヵ年の実施計画の中でも、公園整備と生け垣助成しか掲載されておりません。

 この計画の目標年次は2010年、中間年次を2005年としていますが、この1年半、どのような取り組みをしてきたのか、その進行状況をお伺いいたします。そして、今後、計画はどのように具体化されているのか、お答えいただきたいと思います。

 次に、計画の重点施策として挙げられているグリーンマフラー計画について質問をいたします。

 グリーンマフラー計画とは、市街地を取り囲むマフラーのように残されている丘陵地の里山を保全する計画です。丘陵地の1つである多摩丘陵は、ここ1年、不法な残土入れなどによって谷戸が埋まり、貴重な動植物も減少しています。グリーンマフラー計画は、みどりのデータベースをつくり、里山保全のための総合的な計画をつくり、具体的に里山の保全活動をするという3段階が示されています。この計画が具体化されることによって、里山保全は可能となり、民間業者の開発行為は一定抑制が可能だと考えます。このまま数年間も、このグリーンマフラー計画が具体化されなければ、守るべき里山はなくなってしまうのではないかという危機感を持っています。

 しかし、重点施策の展開の詳細について、社会情勢や財政などを考慮して実施計画などの実行プログラムを策定していく、その中で検討するというふうに、この計画の中にはただし書きがつけられており、早期に着手できないことも示されています。私は社会情勢としては1日も早い取り組みを求めており、東京都も里山保全に向けて自然保護条例などを改正しながら取り組みを強化している時期であります。財政も多大な負担となる額ではありません。早期に計画を実行に移すこと、さらに、今後の年次計画はどのようになるのかについて、グリーンマフラー計画の進行状況をお示しいただきたいというふうに思います。

 以上で1回目の質問を終わります。


◎財務部長【下田豊君】
 財政白書の関係でお答えいたします。

 まず、財政悪化の要因なんですが、主たる要因は、一義的にはバブル経済の崩壊による税収の伸び悩みと、景気対策による減税措置ということと考えております。

 それから、27市の中で本市が特に財政悪化がひどいという点でございますが、その点につきましては、本市の場合、例えば武蔵野とか三鷹と違いまして、都市基盤整備が不十分でございます。そういう都市基盤整備を進めていくという中では、地方債等を活用せざるを得ません。地方債を活用せざるを得ない背景といたしましては、市民1人当たりの経常的収入というか税の負担額、それらの関係もあるのではないかというふうに現在は考えているところでございます。

 2番目の、今回、白書を作成するに当たって、税収と歳出総額との差の拡大についてどのような総括をしたかというお尋ねでございますが、今回、白書をお示ししているのは、元年度から11年度の決算の数値を中心にお示ししておりまして、まだ十分な検証は行っていないところでございます。ただ、実施計画との絡みの中でいきますと、毎年度の予算編成におきましては、当然に税収の動向等を勘案する中で、実施計画計上事業でも見送るなり、事業費を縮小するような形で予算編成を行ってきているところでございます。

 3番目に扶助費の関係についてのお尋ねでございますが、扶助費は1人当たり、類似団体や27市に比較いたしまして、本市の場合は多額となっております。その要因については、現在検証をしているところでございます。

 先ほど申し上げましたけれども、白書はあくまでも決算の数値を中心にお示ししているものでありますので、悪化している財政状況を改善するためにどうしたらいいかという部分が、行財政改革大綱の施策の中に扶助費の問題がありますので、それを書いているものでございます。

 また、扶助費の問題についてどのように考えているかということでございますが、確かに東京都の場合は他の府県に比べまして扶助費の割合が高い事実がございます。東京都自身は今、その辺の見直しをやっておりまして、そのまま八王子市が引き続き都に成りかわって実施していくということになれば、さらに財政悪化は進むというふうな認識でおります。

 それから、地方債の関係でございますが、地方債の活用に当たりましては、都市基盤整備を進める際に、世代間の負担の均衡を図るという地方債の機能がございますので、それを活用したもの。あと、国の減税施策によりまして、減税補てんというか財源補てんとして活用したものがございます。白書の中で、都市基盤整備の財源として世代間の負担の均衡を図るという観点から、地方債の活用の必要性について述べているところでございますので、御理解をいただきたいと思います。ただ、地方債の活用に当たりましては、適債事業の厳選、それから後年度負担を当然念頭に入れて行っているところでございますし、これからは、これまで以上にその辺には十分意を注いでまいりたいと考えております。

 財政再建プランの中で目指す各財政指数ということでございますが、財政指数につきましては、例えば、経常収支比率なり公債費比率などを算出するのは、分母である市税の動向にかかわってまいります。市税の見込みというものが大変見込みにくいものでございますので、プランの中に財政指数を盛り込むかどうか、その辺については、今後プランを作成する中で検討していきたい、このように考えております。


◎企画政策室長【田中正美君】
 私からは実施計画に関連する御質問に対してお答え申し上げます。

 まず実施計画と財政白書の関係でございますけれども、作業が並行したということもございまして、詳細な数値までのすり合わせは特にはしてございません。実施計画の策定に当たりましては、厳しい財政状況を踏まえ、財政再建というものを視野に入れながら実施事業を厳選したところでございます。したがいまして、財政白書及び今後策定する財政再建推進プランの趣旨を踏まえた計画であるというふうに認識しております。

 次に、事業の厳選と新21プランの見直しということでございますけれども、事業の厳選については、その結果は実施計画にお示ししたとおりでございまして、南口の地下駐車場、総合保健センターの建設凍結など、一部を見直したところでございます。今後も事業の重要度、優先度を見きわめながら、適正な事務執行に努めてまいりたいと思っております。

 次に、基本計画との事業費比較でございますけれども、13年度から15年度の3ヵ年比較で申し上げますと、88%となったところでございます。

 次に、それの新しい施策でございますけれども、余裕教室を活用した心身障害教育の充実、戸吹最終処分場跡地を活用した総合スポーツ施設の整備、全関東夢街道駅伝と銘打ちました中心市街地を舞台にした開催、また、秋川街道と横川町住宅間を結ぶ3・4・61号線の事業着手、それから東放射線への新たな歩行空間の整備などが主なものでございます。

 それから、大規模事業の見直しということで、北西部幹線等に触れられたわけでございますけれども、北西部幹線につきましては、圏央道八王子インターからの取りつけ道路として、平成13年度から第1工区の事業に着手する予定で、本計画に事業費等を計上いたしております。また、下水道事業につきましては他の事業と同様、基本計画に比べまして事業費については若干縮小したものとなっておりますけれども、これは整備地域の状況、あるいは整備手法の範囲の中での調整でございまして、現時点におきましては、平成20年度に 100%の達成という方針は変えてはございません。


◎都市整備部長【茂木和憲君】
 私からは、緑地の保全、緑化の推進を図ることを目的としております緑の基本計画についてお答えいたします。

 まず、進行状況でございますが、現在、重点地区の対策としまして、例えば駅前北口のシンボルロード、それからマルベリーブリッジの緑化のボランティアの委託等、細かい点でございますが、逐次進めてございます。

 また、今後についてでございますが、計画策定当時と比較いたしまして財政状況が大変悪化している状況でございます。このことから、実施可能な実施計画を策定していきたいと考えております。さらに、重点施策といたしまして、緑化重点地区整備計画と八王子グリーンマフラー保全計画を中心とした施策を検討していきたいと考えてございます。

 次に、グリーンマフラー計画についてでございますが、八王子グリーンマフラー保全計画の策定には、基礎データが必要となります。これにつきまして、市と市民のパートナーシップに基づきます現況調査が必要と考えております。この中で保全の方策についての意見交換を行い、市民の意見が反映できればよりより計画ができると考えてございます。また、年次計画につきましては、今後、実施計画の中で決定してまいりたいと考えております。


◎企画政策室長【田中正美君】
 大変申しわけありません。答弁漏れがございました。市債の抑制額でございますが、11から15年度においては約 249億 4,000万円ほど抑制する考えでございます。


◎40番【井上睦子君】
 それでは2回目の質問を行います。

 まず財政問題についてでありますけれども、財政白書が発表されたとき、各紙が一斉に取り上げています。11月1日の毎日新聞では、財政悪化の要因を白書で指摘されていた点に触れて、ない金は借金で賄えばいいという背伸びをした開発整備が原因だとの指摘もあるが、これまでの施策の反省、検証は盛り込まれなかったというふうに財政白書の指摘をしているわけです。私も財政白書を読んでみますと、財政の数値を一般的な財政分析をする手法でもって行われているだけであって、八王子的な問題というものをきちんと検証するということにはなっていません。そして、これまでの施策の反省も示されていないというふうに毎日新聞では指摘されていますけれども、先ほどの部長の答弁においても、やはり都市基盤整備が未整備であったというのが八王子的な特質としての問題であるということで、財政運営上の反省というものは全く示されていないわけであります。

 全国が同じような状況を抱え、そして八王子的な特質を持つ自治体もあるわけであります。町田市などは、やはり人口急増をした都市として同様の経過をたどっていますけれども、公債費比率としては、先ほどお示ししたように大変低い数値になっているわけです。そのことを考えると、やはり八王子の過去10年間における財政運営上の問題というものを真摯に見詰めなければならないと思います。

 ここで黒須市長にかわられて、市長は予算委員会の中だったと思いますが、前任市長といえども社会の経済状況の変化には速やかな対応ができなかったということが結果としては挙げられるのではないかということが指摘されたというふうに思います。財政状況が厳しくなる、それは経済不況や減税政策など不可避的なものもありますけれども、その中で良好な財政運営をやっていくことが、逆に地方財政の手腕として求められてきたことだったと思います。そのことが一切、財政分析を行った中でも反省点として出てこないということが、本当に財政再建と財政危機を脱し切れるのかという危惧を私は持つわけであります。主たる財政悪化の要因というのは、市税収入と乖離した多額の歳出、そして市債を大量に発行したということにあると思います。借金体質に陥ってしまったという反省をしっかりと行わなければならないと思います。

 98年度の決算の中では、監査委員から、財政は望ましい指標から乖離しているというふうに指摘されていたにもかかわらず、昨年12月議会で私が財務部長に、八王子市の財政状況はレッドカードなのかというふうに問いただしたところ、それは留意を要する程度という答弁に終始いたしました。多分、財政が深刻な状況に陥っているという共通認識は、1年前に既に幹部職員の中にはあったと思いますが、前任市長がみずからの財政運営の誤りを認めることになるという理由から、部長は留意をするという程度でしか答弁ができなかったのではないかというふうに想像をいたします。こうした昨年の現実を考えるならば、市長という職が絶対的な権力者であること、そして他方、市長の暴走なりを制する職員、特に幹部職員の役割が大であるというふうにも私は思うわけであります。

 したがって、過去10年間の財政運営について真摯に、何が問題であったかということを明らかにすることが財政再建への一歩だと思うわけでありますけれども、そのことについて、幹部職員として過去10年間の波多野市政にもかかわっていらっしゃった畑中助役はどのように総括をしていらっしゃるのか、幹部職員を代表して御見解をお伺いしたいと思います。

 財政白書が出され、そして財政状況が赤裸々に明らかに情報公開されたことは、市政の転換を示すものとして評価をするわけですけれども、こうした同じ轍を踏まないためには、市長と職員、そしてまた幹部職員がきちんとした討論をしながら、誤りのない財政運営をしていかなければならないという教訓ではないかと思っております。畑中助役の教訓をお伺いしたいと思います。

 さて、実施計画の策定の問題であります。市税収入と歳出総額の大幅な差の拡大というのは、実施計画の策定においても、客観的で正確な数値が必要だということを示しています。今回の計画では、投資的事業と非投資的事業をあらわし、そして文章も加えられ、一定の工夫が見られますし、前回より、より詳細な財政計画が示されています。しかし、大分県の竹田市の中期財政計画などを見ますと、例えば公共施設の整備計画などでは、財源の内訳が、国や県、地方債、一般財源など詳細に出されておりますし、公債費比率など各財政の指標も明らかにされております。これはかなり念入りな調査の中で出てきたことだと思いますし、今回の実施計画も、下水道など特別会計の財政計画は示されていないわけです。普通会計しか示されていないわけでありますけれども、下水道もまた 1,000億円の借金を抱えているという状況からすれば、実施計画の中でもこうした特別会計の財政計画も示されるべきではないかというふうに私は思うわけです。より誤りのない財政運営を行っていくために、実施計画の策定の仕方についてはより工夫と改善が求められると思いますが、その点についてはどのようにお考えでしょうか。

 次に、扶助費の問題についてであります。扶助費は検証をしていないということでありました。今、大きな問題となっているのは、都の補助金がなくなった場合、その部分を市がどのように負担をするのか、あるいはしないのかということが扶助費についてはテーマのようでありますけれども、白書を読む限りにおいては、扶助費市単独事業部分のカットであり、あるいは保育料など受益者負担の増加という点が見られるわけであります。

 私は財政運営の悪化は市民が原因ではないとするならば、極力、市民に負担を転嫁しないという方法で乗り切らなければならないと思います。使用料、手数料の値上げによって、実施計画の中では来年度増収分になるのは4億円程度でしかありません。これでは基本的な財政再建にはならないわけであります。扶助費については徹底的な検証と、そして市民が政策的な問題として何を望んでいるのかということもあわせて見なければ、安易に扶助費を削減するということはできないのではないかと思いますけれども、その点について、今後、扶助費をどのように検証し、考えていくのかということをお示しいただきたいと思います。

 私は財政再建の要となるのは、投資的な経費、特に大規模事業の削減や凍結によってしか生じないと考えております。地方債の厳選とは、政策の選択でもあります。どのような政策に重点を置き、置かないのかをあわせて明らかにすべきであります。

 白書は、財政が厳しいこと。財政再建団体への転落もあり得る。だから、市民よ、利用料の値上げも、扶助費のカットも我慢してほしいというようなメッセージを流しているにしかすぎないと思います。厳しい中でも、市民要望に沿ったどのような政策を行っていくのか、そしてどのような政策を選択しないのかということを市民に明示すべきではないでしょうか。

 特に下水道事業については、先ほどお答えがありました。実施計画が3ヵ年通じて88%ですから、その部分の削減はしているけれども、新21プランのように平成20年度 100%完成を目指すというような答弁でありました。しかし、白書でも触れているように、市債は現在の 1,000億円、そして平成20年度では 1,170億円になるというふうに、減少するどころか市債は増大するのであります。

 また、市税収入が新21プランより減少傾向にある中で、総額が減少している状況から考えれば、平成20年度 100%実施ということは、数字上からも明らかに困難であります。市民要望だからと下水道だけに予算を振り分けるということであるならば、予算を振り分け、地方債を発行し続けるとすれば、財政の健全化は望めません。

 都市計画マスタープランでは、下水道事業について市民からさまざまな要望が寄せられています。例えば、普及率 100%を目指した下水道は問題。合併浄化槽とのバランスある施設配置が経済的に妥当である。下水道の普及による河川浄化。できるところから、着工しやすいところからでよいが、道路や鉄道との立体交差化事業に取り組まれてよい。あるいは、下水道整備により住民の負担がふえるのは、高齢者が多い地域では望ましくない。また、下水道の 100%整備をすると、河川の水量の減少が問題になるというような指摘もあって、下水道整備が 100%市民の声ではないということも明らかであります。

 また、下水道の整備をめぐっては、税金のむだだという裁判が起こされています。例えば神奈川県の葉山町、これは住民が差しとめ訴訟を起こしておりますし、軽井沢でも、町財政への悪影響などを理由に事業の差しとめを求めました。裁判は97年に町に、健全な財政運営に配慮するという努力目標を課して和解をしているわけですけれども、こうした住民からの差しとめ訴訟というのは、岐阜や三重でも起こっているようであります。

 財政が厳しい、どのように健全化を図るのかといったときに、下水道の抱える市債というものもしっかりと検証しなければ、住民の信頼というのは得られない時代になっているのではないでしょうか。そういった意味で、下水道などの見直しも必要だと思いますけれども、行政内部での徹底的な討論、そして水循環の視点からも合併浄化槽の導入等も考えられてよいと思いますが、そのことについて再度お伺いをしたいと思います。

 北西部幹線の問題でありますけれども、これは以前からも指摘をされております。 440億円の事業費というのは、実際的にはもっと過大になるのではないかというようなことも指摘されており、事業の精査も必要だというような市長の答弁もあったかと思います。今後、本当に北西部幹線が市財政への多大な負担となっていかないのかどうか、その辺をどのように判断しているのか、再度お伺いをしたいと思います。

 最後に、緑の基本計画についてお伺いをいたします。

 緑の基本計画は、1年半の間にほとんど進んでいません。今後は早急に、できるところからの取り組みをしてほしいと考えています。緑の基本計画の特徴は、市民参加でつくられ、計画の推進も市民との協働での展開が必要という点であります。市内では多くの市民や市民団体が、八王子ニュータウンや多摩ニュータウン、あるいは丘陵部での里山活動、公園の管理活動、自然観察会など、さまざまな活動をしています。こうした市民の人たちと協力できることは多くあります。ことしから始まったマルベリーブリッジの花づくりもその1つの例でありますけれども、グリーンマフラー計画のデータベースづくりや、公園、里山活動への協力関係の組識づくりから始めるべきであります。そのような答弁がありましたけれども、ぜひ来年度には実施をしてほしいというふうに思います。

 財政状況が厳しい中で、実施可能な実施計画をつくっていくという答弁でありました。それでは、来年度中に実施計画の着手に入れるのかどうか、その時期について明確にお答えをいただきたいと思いますし、財政状況が悪いという中で、市民へ実情を話しながら、専門的な知識を持つ市民の方々も多いと思いますが、その人たちとの協力関係の確立から始めていくべきであります。

 さて、調整区域の開発の抑制の問題についてです。実施計画でも山間部や丘陵地の市街化調整区域の開発は厳しく抑制をするというふうに明記されておりますけれども、実際のところ、これはなかなか抑制できないという状況であります。1番有効な方法は、公有地化の問題です。しかし、緑地保全地域として指定をして、都への買い上げを求めても、都も財政が厳しい状況にある中で、実現不可能という事態にもなっています。その意味で、市の緑化基金は過去一定の役割を果たしてまいりました。しかし、ことしの3月31日現在、緑化基金は8億 5,900万円でしかなく、数年にわたる返済をすれば、底をつくという実情であります。

 緑の基本計画でも緑化基金の充実を挙げていますけれども、市みずからの努力と、市民や企業の協力を得て充実を図るとしています。実効あるみどりの保全策としての基金は存続をさせるべきであり、基金への繰り入れや、市民や企業の寄附を積極的に求めていくべきだと思いますが、市は今後の緑化基金の役割及び充実についてどのように考えているのか、お聞きをして2回目の質問を終わります。


◎財務部長【下田豊君】
 受益者負担、また扶助費の問題につきましては、現在、決算数値を中心に検証を行っているところでございますので、具体的なことは財政再建推進プランをお示しする中で出していきたいと、このように考えております。


◎企画政策室長【田中正美君】
 4点ほどお答えを申し上げます。

 実施計画の策定は平成8年度以来でございましたが、私どもの方では市民の視点に立って作成に心がけたつもりでございます。大分県の竹田市の例も示されましたので、今後策定する際の参考とさせていただきたいと思っております。

 次に、政策選択についてでございますが、限られた財源のもとですから、必要かつ当然のこととして行っておりますし、新規の起債につきましても、後年度負担を考慮して極力抑制に努めております。また、投資的経費についても、費用対効果、こうしたことを十分見きわめながら措置をしてまいる考えでおります。

 それから、下水道整備につきましては、決算委員会でも質疑をさせていただいたところでございます。現在の普及率の現状からいたしまして、最優先で取り組む事業というふうに認識をしております。今後は使用料あるいは受益者負担の確保に努めながら、市街化区域の早期の整備を目指してまいりたいというふうに思っております。

 最後に、北西部幹線についてですが、確かに多額な事業費が必要となってまいります。現在の計画では第2工区までを計画づけしておりますが、今後は整備手法も含めて庁内議論をより活発にして取り組んでまいりたいと思っております。


◎都市整備部長【茂木和憲君】
 緑の基本計画の策定後、市街地におけます緑化の推進等については、既にできるところから実施をしております。

 グリーンマフラー保全計画における里山保全等については、従前の行政の公有化に頼らずとも、実現できる方法を、市民団体、専門家と協力し、考えていきたいと考えております。これら実施に向けてのプランづくりにつきましては、来年度から相談に入っていきたいと考えてございます。

 緑化基金についてでありますが、市が行います緑地の公有化に大きな役割を担ってきましたが、財政状況の悪化によりまして、平成5年度から積み立てが行えない状況でございます。緑化基金の減少から緑地の公有化は平成8年度が最終となっております。今後は、新たな手法を含め、基金の確保を行えるよう、検討してまいりたいと考えております。


◎助役【畑中俊和君】
 今日の財政危機が過去の財政運営に問題があったのではないかという質問を私にいただきましたので、お答えいたします。

 悪化の原因につきましては、先ほどから部長がお答えいたしておりますように、景気の長期低迷によります税収の伸び悩み、あるいは国の景気対策によります減収、そして減収補てん債の発行、また本市特有の問題でありますけれども、都市基盤整備の必要性、こういうことが原因であるというふうに私も考えておるところでございます。

 今日まで市に寄せられました多くの市民の要望にこたえるべく、努力をし、そのときどきの状況判断をしまして財政運営を行ってきたわけでございますけれども、その結果、都市施設あるいはインフラが整備され、そして多くの市民の方から喜ばれている、こういうふうに考えておるところでございます。したがいまして、必ずしも、御質問者おっしゃったように過去の財政運営に問題があったというふうには私は考えておりません。しかしながら、財政実態を見たときには、危機的な財政悪化を招いておりますので、その認識に立ちまして、今後は財政の健全化に十分意を用いまして、行革を断行し、財政再建に職員ともども全力で取り組んでまいります。


◎40番【井上睦子君】
 では、最後の質問になります。財政の危機回避に向けてということで、過去の財政運営について畑中助役から、先ほどの財務部長と同様の答弁をいただきました。しかしながら、ことしの市長選の争点や、その後の市長の答弁の中では、前任市長の社会情勢を的確に把握するということに欠けたのではなかったか、問題があったのではなかったかというような答弁もありまして、今、財政運営に当たっていらっしゃる幹部職員の皆さんは、そういった認識のもとに財政再建に取り組んでいるんだろうと思いましたけれども、残念ながら、みずからの非を認めるということにはならないようであります。経済状況や、そして的確な財政運営をするということは、極めて困難なことだと思いますけれども、二度と誤りを繰り返さないという意味で、自分たちが行った行財政運営については真摯な反省が求められるのではないかと思います。

 今後の財政再建に向けて、扶助費や受益者負担の問題については、推進プランの中では明らかにしていくということで、明確な答弁はありませんでした。逆に、しない、回避をするという答弁ではなかったわけでありますけれども、私は今回の財政運営の厳しさというのは、市の財政運営上の失敗であると。その失敗をもたらしたのは、市民の責任ではなくて、行政の責任である以上、安易な受益者負担の増加や扶助費の切り捨てによって財政危機を回避すべきではないし、また、その程度のもので回避できるような内容でもないというふうに思います。

 したがって、大規模な事業の見直しや凍結によって財政再建を行うべきであり、どのような政策的な選択をするのかということを市長は市民に明確に提示するべきだと思いますが、この点についてお伺いをいたします。

 そして、緑の基本計画に対して、来年度から実施計画に移るということになっておりますが、緑の基本計画の重要性の認識について、市長の御見解と、そして財政的な手当ても、厳しさの中でも政策の重要性を考えるならば、一定の手当てをすべきだと思いますが、その点について御見解をお伺いして質問を終わります。


◎市長【黒須隆一君】
 40番、井上睦子議員の私に対する質問にお答えをいたします。

 まず、財政運営でございますけれども、責任云々という話がありましたけど、これはどなたであっても、これだけの大きな経済環境の激変、あるいは長期にわたる不況というのを予測するのはなかなか難しかったんじゃないかと思います。ですから、それに適切に対応した財政運営というのは、私は率直に言って難しかったんじゃないかなという感じはいたします。しかし、当事者として責任というのは、指摘をされれば、それは甘んじて受けなきゃいけないんじゃないか、私はそういう姿勢であります。

 それから、政策的な選択をこれから明確にして、財政危機の中でも市民の要望に沿った市政運営をすべきじゃないか、確かにそのとおりだと思っております。ただ、ここで考えております受益者負担の見直し等に当たっては、これは決して安易な考え方に基づくものではございません。受益の量と正確に見合った適正な負担額を設定するということは、必要なことではないかと思っておりますし、また、政策的な選択というのも、これは立場が変わりますと、どれが最優先する政策かというのが、これまた変わってくるわけですね。ですから、そういう面で、広く市民の声というものをお聞きしながら、そういう中で、厳しい中でありますけれども、知恵を出し合って対応していかなきゃいけないんじゃないかと思っております。

 大規模事業につきましても、先ほどからも出ておりますけれども、例えば南口の地下駐車場の凍結など、不要不急なものや見直しが必要なものについては、その意向を示させていただいて、検討を指示しているところでもございます。しかし、急激な人口増加というものから、都市基盤整備がおくれ、そしてそれらに対する充実が求められていることも事実でございまして、これを放置しておくわけにはいかないと思います。そういう面で、都市計画道路や、あるいは下水道も、福祉施策同様に重要なものだというふうに私は認識をいたしております。

 また、財政白書で今回示させていただきましたけれども、現状を市民にも知っていただく。可能な限り情報公開というのは時代の流れだろうと思っておりますし、今の財政状況というものを市民に知っていただき、そして、時には御理解や御協力をお願いする。そしてまた知恵もお借りさせていただきたい。こういう姿勢でこれからも対応していきたいと思っておりますので、御理解いただきたいと思います。

 緑の基本計画の大切さを市長はどう考えるか、こういうことでございますが、これは市のみどりに関する行政全般の考え方の指針でありますから、この計画に沿って全庁的に取り組むことはもちろんのこと、市民や民間団体、企業の皆さんにもみどりの大切さというものを十分に認識していただいて、ともに力を合わせてこの計画を推進していく体制づくりが重要だと考えております。ですから、財政的にも厳しいですけれども、財政面でも当然のことながら配慮していかなきゃいけないと思います。