◎40番【井上睦子君】
 第 137号議案、八王子市情報公開条例設定について及び第 139号議案、八王子市情報公開・個人情報保護審査会条例の一部を改正する条例設定について、社民・生活者ネットを代表して反対討論を行います。

 1982年に山形県金山町が全国初の情報公開条例を制定以来、今日では47の都道府県すべてにおいて、また、市区町村を含めると約27%の自治体で情報公開条例を制定しています。

 国では、金山町の制定から17年後の1999年5月に情報公開法が成立し、2001年4月から施行されます。このように情報公開制度は自治体が切り開いた制度であり、国を主導してきたと言えます。国の情報公開法は、幾つかの問題点はありますが、自治体の情報公開条例の基本を維持しながら、条例の利用を通して明らかになった問題や、新たに生じた問題への対応も盛り込み、より発展したものとなっています。

 東京都は、情報公開法の制定にあわせて99年3月に全面改正されました。本市の条例も、国の法律制定や東京都の条例の全面改正を受け、また、93年の制定以来の運用の経験から、より公正で開かれた市政のために先進的な条例制定が求められています。

 本市の情報公開は、条例制定以来、前進したと考えています。例えば、都市計画審議会の会議録はかつて非公開であったものが、現在は全面公開をされておりますし、各市政情報は、情報公開の手続を行わなくても、情報提供という形で積極的に公開をされるようになりました。しかし、不服申し立てから答申までの期間の長さや非公開情報の範囲の限定など、まだまだ課題があります。

 今回提出された全面改正案は、国の法律や東京都の条例を参考としていますけれども、情報公開・個人情報保護運営審議会の答申を受けて、わずか2ヵ月余りの条例案づくりでは、十分な今までの運用の検証や検討の時間が持てなかったという印象で、多くの不十分さがあります。

 まず第1の問題点は、目的に知る権利の保障が明記されていないことです。法概念は、判例、学説とも確立していないということが理由として挙げられましたが、情報公開法では、国民主権の理念にのっとり、行政文書の開示を請求する権利とし、実質的には知る権利を保障しています。憲法が掲げる原則の1つである国民主権は、市民が直接、間接に政治に参加することを前提としていますが、その前提として、知る権利が保障されていなければなりません。また、表現の自由は、表現する側だけに保障されたものではなく、その受け手の権利も保障する、すなわち、知る権利も保障していると考えられています。情報公開法では、要綱案の考え方に示されているように、知る権利という概念について、その権利内容が多義的であるために明記を避けたにすぎません。知る権利という言葉は、情報公開制度に対する市民の関心を高め、制度化を推進する役割を果たしてきたことは、行政も認めています。そして、このことからも、知る権利の存在自体は自明のことだと言えます。

 ニセコ町の条例には、目的の中で知る権利が明確に述べられていますけれども、このように解説をされています。知る権利は、憲法第21条の言論、出版の自由がその根拠という説など、さまざまな説が述べられているが、もともと民主主義社会に内在する基本的人権の1つとして導き出された権利である。この条例において明文化することにより、一層明確に本町における個人の権利として保障されたことになるというふうに、先進的な各自治体では知る権利を条例上明文化しています。

 第2の条例の問題は、実施機関に 100%の財政支出をしている出資等法人を加えていないということです。出資等法人は別人格であるとの理由で、条例案では努力義務となっています。しかし、市民の税金で賄われている団体の事務事業の内容を明らかにしたいという市民の要求は当然であります。

 ことし5月、自治省は自治体の出資団体、地方三公社について情報公開条例の実施機関に加えることを妨げないという新たな見解を出しました。この地方三公社とは、土地開発公社、地方道路公社、住宅供給公社を指しています。少なくとも、本市では土地開発公社は実施機関に加えることができるようになっています。また、納税者の視点からは、 100%出資の法人、例えば、コミュニティ振興会などは実施機関にすべきであります。

 市の答弁では、50%以上の出資法人について情報公開の努力義務を課して、要綱で対応するという答弁でありました。しかし、この要綱で対応するときに、権利救済機関が定かではありません。答弁の中では、苦情窓口でありますとか、第三者機関などという答弁でありましたけれども、条例の実施機関に土地開発公社やコミュニティ振興会を加えれば、権利救済制度も保障することになります。 100%市の出資で担われている団体が、市民の知る権利を保障するという立場で実施機関の対象外とされたのは極めて残念であり、問題だと考えます。

 第3の問題は、請求者を条例案では八王子市民から範囲を段階的に拡大していく規定をとっています。結果的、実質的には、何人とも変わらない運用となることが答弁の中で明らかになりました。したがって、何人とも規定しても支障は生じません。また、国の情報公開法が何人もとし、外国人からの請求権も認めているように、情報社会の進展は、国を超えて情報の交流が求められています。そして、私たちの生活権が拡大をしているために、市の行政に利害関係を有するものの範囲は、市民に限らなくなっておりますし、今日の自治体の情報は、その自治体と市民に限られることなく、他の自治体及びその市民との間においても有機的なつながりを持つものとして活用をされており、今後も一層このような方向をたどることが想定をされてまいります。このことは、情報公開条例、残念ながら本市の条例の中には盛り込まれておりませんが、知る権利の保障であり、その保障は何人にも及ぶというふうに考えなくてはならないと思います。  以上の理由により、請求権者は何人もとすべきでありまして、八王子市民から段階的に範囲を拡大をしていくという規定では、知る権利の保障という理念を生かすことにはなりません。

 第4点目の問題としては、非公開情報を厳密に規定し、条例の運用解釈の中で非公開情報を拡大しないようにすべきであります。改正案は現行条例と比べて公開義務の明示をした点では評価できますが、拡大解釈をしないために、より限定した表現とすることが必要であります。

 例えば、個人情報では、個人が識別される個人識別型をとっていますけれども、個人情報の中でも、プライバシーに当たる場合を非公開とする規定が妥当であります。また、法人情報のうち、環境の保護に影響を及ぼす違法または不当な行為に関する情報などは公開とするなど、近年の環境保護意識の高まりや、問題の深刻さにも対応できる規定でなければなりません。また、審議検討情報については、事実に関する情報は公開とするというように、今までの各地での裁判の判決などの経験を生かしていかなければなりません。また、法令秘情報などでは、国等の行政機関の指示等により公にすることができないと認められる情報というように、国等の指示等というふうに拡大解釈をされる余地を残しています。このことは、主務大臣の文書による指示と明確に規定をしなければなりませんし、限定をした表現にすべきであります。

 第5点目には、手数料の問題です。説明責任から無料としたことは評価できます。しかし、写しの交付や送付の費用についても経済的な困窮者に配慮して、減免規定を設けるべきであります。これが知る権利を保障する行政の姿勢だというふうに考えます。

 第6の問題は、情報公開・個人情報保護審査会の迅速な審議と答申を導くための体制の不十分さを指摘できます。審議会は、これまで画期的な答申をし、情報公開の前進に寄与してきました。しかし、問題となっているのは、不服申し立てから答申までの期間が長期にわたり、本市では平均1年2ヵ月も要しています。迅速な審議をするためには、審査員数をふやし、また部会制を設けるなどの工夫が必要であります。また、諮問から答申までの期間を定めて、その期間内に答申をするという努力をすることも求められています。迅速な答申を導くという意味において、改正案では解決策になっていません。

 以上のことから、知る権利の保障という精神が目的の条項の中で欠落したように、各条文において知る権利の保障という精神が徹底をしていません。7年間の運用の経験が十分に検証され、そして国や都の条例と比較をしても本改正案は大変な不十分性があります。したがって、第 137号議案及び第 139号議案については、反対をいたします。

 以上で討論を終わります。