◎40番【井上睦子君】
 それでは、請願第21号、仮称「メモリアル高幡霊園」の墓地造成に関する請願について、社民・生活者ネットを代表して、賛成討論を行います。

 墓地造成予定地の堀之内地区は市内でも里山の原風景が残る数少ない地域です。東京都の自然公園区域に指定されている予定地は、オオタカの高利用区域であり、ことしに入ってからも飛来が確認をされています。

 また、都の危急種に指定をされているトウキョウサンショウウオも発見をされています。里山には水田に住む小さな昆虫を食べる動物が集まり、それらをつかまえるワシやタカが飛ぶ、ピラミッド状の豊かな生態系が保たれています。また、クヌギやコナラの多く見られる雑木林は、電気やガスが普及するまではこうした木をまきや炭にして使い、刈り取った下草や落ち葉から堆肥をつくり、肥料にするという生活でした。このように、農業や生活にとっても里山は欠かせないものでありました。

 請願者はこうした里山の自然と暮らしを守り、都市住民と農家との交流を図りながら、都市と農業が共存をするまちづくりを目指して活動している市民団体です。由木の農業と自然を育てる会であります。

 また、谷戸の休耕田を復活させるため、農家の皆さんと共同して稲づくりをしている市民グループや、日本野鳥の会、国際自然アカデミーなども署名団体となっています。貴重な自然の残る地域に計画されている墓地造成計画は、面積 9,937平方メートル、 683区画で、事業者は上恩方町にある宗教法人龍泉寺です。

 墓地開発についての第1の問題は、自然環境の破壊です。造成予定地の隣接地では一昨年から無許可の残土搬入が行われ、みどりの部分がはぎ取られ裸地となりました。昨年の豪雨のときは下方の水田や隣接地への大きな被害を出しています。約1ヘクタールにも及ぶ開発は、多摩丘陵のみどりをはぎ取ることになり、動植物、とりわけトウキョウサンショウウオやオオタカの生息にも大きな影響を与えることが危倶をされます。審議の中でも、公園緑政課は、この地域は貴重な自然が残っているとの認識を表明いたしました。墓地造成は、本市の多摩丘陵を守るという緑の基本計画の趣旨にも反するものであります。

 第2の問題は、隣接地域でのシイタケ栽培への影響です。シイタケ栽培には豊富な地下水が必要です。コンクリート擁壁による地下水のアルカリ化、汚水の地下浸透による地下水の汚染は、シイタケ栽培にとって致命的な影響を与えます。生計を立てている農業者にとっては死活問題でもあります。良質な地下水の確保については、今日の時点でも最悪の事態を回避できるという保障は得られておりません。  第3の問題は、八王子市の墓地基準に適しているかという疑問であります。基準では、八王子市民の使用に供する墓地となっていますが、本院は上恩方にあり、日野市との境に位置する予定地で、果たして墓地の80%を八王子市民に供するという基準を守ることができるのか、その担保は制約者のみで実行されるかの保障はありません。

 第4の問題は、事業者であり墓地の経営主体となる宗教法人龍泉寺の倫理性と適格性の問題です。墓地ビジネスに類するものではないかという疑問が解決されていないことであります。当初、地権者からの面会申し入れにも誠実な対応がされませんでした。また、市が事業者と請願者の両者との協議の場を持ち、話し合いのルールを確立した以降も、法人役員は代理人任せの態度であり、10日に1回という割合の話し合いは守られず、月に1回程度の話し合いさえも困難でありました。こうした態度からは決して誠意を感じることはできません。

 旧厚生省は昨年ll月、墓地経営管理指針等作成検討会報告を取りまとめています。その中で、実際の墓地経営において不適切な事例が生じているとして、墓地経営の許可に関する指針を示しています。その基本事項では、墓地経営が利益追求の手段となってはならず、墓地経営者には公共的サービスの提供者として高い倫理性が求められるとしています。請願者の1人に対して、副住職は石屋業者間の競争が激しい、うかうかすると殺されるので命がけでやっている。一発当たればぼろもうけだ、宗教といえどもやくざと同じという発言や、自分がやめたと言えばとまるが、業者が変わり、寺が変わり、結局、目をつけられた場所は、業者や寺が変わっても墓はできるというような発言をされたということであります。

 さらに、昨年の9月23日の読売新聞では、同事業者の寺の者が、石材店も石を売らないと生活できないのだから、理解してほしいと話しているという報道がされています。

 こうした一連の発言や報道からうかがえるのは、墓地造成が営利目的で行われているのではないかとの疑念がますます大きくなることであります。もし、営利目的で行われているとすれば、法の趣旨を逸脱していると言わざるを得ません。また、指針ではいわゆる名義貸しが行われないよう、留意を促しています。その指針の一部を紹介いたしますと、名義貸しの問題となる事例としては、例えば次のような場合が考えられる。まず寺院、宗教法人に対して石材店等の営利企業、仮にA社とするが、墓地経営の話を持ちかけ、この寺院はA社より資金その他について全面的なバックアップを得て、墓地経営の許可を受ける。ところが、当の寺院は墓地販売権を初めとした墓地経営については実質的に関与しない取り決めがA社との間で交わされている。そして、A社は墓地使用権とともに墓石を販売して、多大な収益を得るが、これは一部を除いて寺院の収入とはならない。しかしながら、使用者とのトラブルについては最終的な責任者は寺院にあるとして、A社は責任を回避する。そして運営の安定性を欠いたままで、後には資金力のない寺院と墓地だけが残るといったような事例である。

 こうした事例で最も被害が及ぶのは、墓地利用者である。このような事態を防ぐことが行政の役割であり、このため宗教法人と連絡をとりながら、きちんとした墓地経営を行うよう精査する必要があるというふうに厚生省の指針は留意を促しています。  さらに、この墓地経営には安定的な経営を行うに足りる十分な基本財産を有していることが必要だというふうにも述べております。龍泉寺の墓地経営の資金計画では、永代使用料と借入金によって賄われます。こうした安定的な経営を行うに足りる十分な基本財産を有しているのかどうかということの条件を果たして宗教法人は満たしているのでしょうか。さきの発言と、そして委員会審議の中で明らかになった中では、名義貸しではないという確信を持てませんでした。  最近の墓地経営を取り巻く破綻事例として、大きく分けて以下の3つの背景があるというふうに厚生省も指摘をしています。  第1に、墓地使用権の販売等により、一時的に多額の金銭が集まることによる危うさの存在。これを墓地経営ではなく、他の事業に回した結果、多額の損失をこうむり、回収不能に陥ってしまうケースや、一時的な収入目当てに他社が経営に介入し、利益を奪い取るようなケースが考えられる。

 第2に、最近では特に金利が低いため、財産の運用が大変難しいことが挙げられる。いわゆるバブルの時期と比較すれば経営がより難しいのは当然である。

 第3に、墓地経営の見通しが難しいことである。もともと長期的な需要を予測することは簡単ではないが、最近では特に少子化、核家族化が進むと同時に、家意識も希薄化しており、何代まで墓参に来るか、すわなち無縁化しないかについても予想が立てにくくなっている。

 こうしたことからすると、現在、地方公共団体以外の者が墓地を安定的に経営することは大変厳しい状況にあると言えるだろうというふうに指摘をしています。

 八王子市議会は1983年に市街化調整区域の開発規制に関する意見書を国や東京都に提出をしています。そこには市街化調整区域の墓地造成への規制も求められています。本請願はその意見書とも合い、多摩丘陵の残された谷戸と里山の原風景を保全すること等を求めるものであります。

 先ほど述べた理由によって墓地造成に反対をし、請願に賛成をするものです。  以上で討論を終わります。