◎【40番井上睦子議員】
それでは、発言通告に基づきまして一般質問を行います。

 まず、有事法制は自治体に何をもたらすかというテーマで質問を行います。

 先ほども質疑が交わされましたが、現在、国会で審議をされている有事法制とは、戦争を行うためのさまざまな法律の体系であり、戦時法制であります。法制全体を武力攻撃事態法が大枠を決め、そして、今後、2年間かけてこの法律を整備しようと国は考えています。今国会では、武力攻撃事態法、自衛隊改正法案、安全保障会議設置法案の3法案が提出されていますが、この法案は武力によって問題を解決しないとしている平和憲法の理念に正面から対立する法律であります。有事法制に対しては、本日も朝日新聞には医療、輸送界広がる反対として、反対運動が広がっていることを報じています。16日には代々木公園で5万人集会が持たれる。また、八王子市内でも連日のようにさまざまな集会やデモなどが行われています。そして、自治体からも反対論や、先ほど御紹介のありました全国知事会、全国市長会などの慎重論が続出しています。

 武力攻撃事態法案では、第4条で国の責務、第5条で地方公共団体の責務、第6条で指定公共機関の責務、第7条で国と地方公共団体との役割分担、第8条で国民の協力が規定をされています。真に、この法律は市民の安全確保を目的としたものであるのか、本当に疑問であります。自治体や市民生活にこの有事法制は何をもたらすのか、地方自治と基本的人権の視点から質問をしていきたいと思います。  まず、有事法制について、法案提出まで、また、今日まで、国からの情報提供や意見聴取などはどの程度あったのかをお聞きしたいと思います。先ほどの答弁では、条文と説明書が送付されているが、具体的な内容についての説明はないということでありました。こうした国からの地方自治にかかわる問題についてこうした情報提供や、また意見を述べる機会などもないというような状況が、十分であるというふうに自治体としては判断をしているのかどうか、お答えをいただきたいと思います。先ほどは注目をして情報収集しているということでありましたが、どのような点に注目して情報収集しているのか、あわせてお答えいただきたいと思います。

 武力攻撃事態法第5条は、地方公共団体の責務として、地方公共団体は、当該地方公共団体の地域並びに当該地方公共団体の住民の生命、身体及び財産を保護する使命を有することにかんがみ、国及び他の地方公共団体その他の機関と相互に協力し、武力攻撃事態への対処に関し必要な措置を実施する責務を有する。また、第7条は、武力攻撃事態への対処の性格にかんがみ、国においては、武力攻撃事態への対処に関する主要な役割を担い、地方公共団体においては武力攻撃事態における当該地方公共団体の住民の生命、身体及び財産の保護に関して国の方針に基づく措置の実施、その他適切な役割を担うことを基本とするものであると規定をしています。ここでの地方公共団体の責務及び役割については具体的にはどのようなことであるのか、また、東京都と八王子市の役割や責務については、具体的にはどのように承知をしているのか、伺いたいと思います。

 また、武力攻撃事態法案の中では、第22条で国民保護の法制を今後2年間かけてするとしています。その中での市町村の措置の具体的な内容についても資料なりで承知しているのか、この辺については十分な内容を理解しているのかどうか、その点について伺いたいと思います。

 武力攻撃事態法案では、国が最大の責務を行っています。総合調整の権限───これは武力攻撃事態法案の第14条になりますけれども、地方公共団体はそれに対して意見を申し出ることができるとされ、さらに、総合調整権に基づく所要の対処措置が実施されないときは、地方公共団体に指示し、そして、代執行も可能となる。いわゆる国と地方が対等、平等な関係ではなく、地方が国に従属する法体系となっています。国民の生命、身体、財産を守るために、また、武力攻撃の排除に支障があると内閣総理大臣が考えたとしても、地方自治体の長がそうは考えなかったとき、自治体の長の判断が優先されるのが現状の地方自治の考え方です。その判断に従うことが憲法に保証された地方自治の本旨だと考えます。地方が国に指示をされ、代執行されるという、国に従属した関係は、対等、平等を基本とする地方自治に反するというふうに私は疑問を持つわけでありますけれども、この辺について市長は先ほど慎重かつ十分な説明を国に全国市長会とともに求めるということでありましたが、国と地方との関係についてどのような疑問をお持ちか、お伺いしたいと思います。

 次に、周辺事態法では、第9条で、地方公共団体の長に対して必要な協力を求めることができるというふうにされていました。この規定では、自治体が協力を拒否することも可能でありました。しかし、武力攻撃事態法案では、国からの指示、代執行となり、これは国に自治体が従わなければならなくなります。例えば、今、神戸市では、非核神戸方式という形で、核兵器を搭載した艦船の神戸港入港を拒否しています。非核証明書を提出させるという手続をとっておりまして、アメリカの軍艦は、1そうも戦後入港していません。これは、港湾の管理権を地方自治体の長が持っているからであります。しかし、こうした現状は、武力攻撃事態法案の中では、国がその自治体に対する指示や代執行によって、こうした軍艦の入港も可能となるというような事態になります。こうした事態自身、自治体の長としては今までの平和原則なり、非核ということを考えたときに、拒否するということも考えられますが、一般的にこの規定は自治体の長が協力を拒否するということは可能なのでしょうか。あるいは、その業務を命じられた自治体職員が協力を拒否するということが可能なのでしょうか。この法体系において、市長はこの点についてはどのような情報提供なりを受けていらっしゃいますか、お伺いをしたいと思います。

 また、後で触れます自衛隊法改正案の中では、自衛隊の行為に対して協力しなかった場合、罰則があるわけですが、こうした協力を拒否した場合、罰則など、今後つくられていくのではないかというような懸念を持っておりますけれども、こうしたことについても情報は十分に市長の方に届いているのか、承知をしているのか、お伺いしたいと思います。

 次に、八王子市は、非核平和都市宣言をして、毎年平和行政を行い、平和への努力を積み重ねてきています。有事法制が国会審議をされている中で、安倍副官房長官や福田官房長官の非核3原則の見直しともとれる発言は、核を保有し、戦争への準備をするためのものとして、国内外に大きなショックを与えました。昨日の国会の集中審議で、非核3原則の堅持という政策目標は明らかになりましたけれども、唯一の被爆国の政府首脳としての発言に、私は大きな憤りを感じております。市長は、非核平和都市宣言をしている市の長として、こうした一連の発言をどのように受けとめておられますでしょうか。そして、政府に対して、こうした誤解を招く、あるいは将来の核武装を考えているともとられかねない、こうした発言については厳重に抗議をすべきではないかというふうに思いますが、御見解をお伺いいたします。

 次に、住民基本台帳ネットワークについてお伺いいたします。

 8月5日、住民基本台帳ネットが第1次稼働をいたします。6月1日の広報は、特集を組み、市民に11けたの番号を通知すること、そして、そのメリットやプライバシー保護などの問題についても報じています。私は、法改正前より住基ネットの費用対効果、あるいはプライバシー保護の観点から、このネットワークには反対の立場で何度も質問をしてまいりました。

 住基ネットの稼働を前に、3月、全国で結合テストが実施されました。新聞報道によれば、各地から問題点が指摘されております。福岡県のある町のテストでは、組んだ相手自治体から、住民票データを受信したけれども、印字されなかったという問題。そして、他の自治体では、郡名がなくて受信できなかったという問題。ICカードが壊れていて、テストに参加できなかった自治体など、さまざまで、8月の第1次稼働を前に、結合テストは必ずしも十分な成果をおさめたとは言えないというふうに思います。

 そこで、本市の住基ネットの第1次稼働を前にした準備状況についてお伺いしたいと思います。また、8月5日、全国が足並みをそろえて第1次稼働ができる状態なのでしょうか。お伺いいたします。

 さらに、全国で構築の経費は約 400億円、その後の経常経費が約 200億円と言われていました。本市の場合、これまで財政負担、どの程度かかっているのか。また、今後の費用とその内容についてお答えをいただきたいと思います。

 また、最大の心配はセキュリティーと危機管理体制の問題についてであります。八王子市から提供される住民基本台帳の本人確認情報が都道府県のネットワークに渡され、全国センターで結合され、政府機関にも、現在93情報ですが、提供をされてまいります。こうした場合、回線への不法侵入があったときの対応はどうなるのか。また、不法侵入の可能性や危険性は大きくないのか。それについてお答えをいただきたいというふうに思います。

 また、全国センターのセキュリティーの対策及び行政機関や個人情報保護法案の中で、全国センターが対象機関となっているのかどうか、極めてここが不明確なわけでありますが、八王子市の理解としては、現在、国会で審議をされている行政機関の個人情報保護法案の中で、全国センターが対象機関となっているのかどうか、その点についての認識をお示しいただきたいと思います。

 さらに、万が一個人情報の漏洩や不正使用が発覚したとき、市はどのような対応をするのか、お示しいただきたいと思います。

 また、八王子市個人情報保護条例は、第1条の目的で、この条例は、個人情報の適正な取り扱いについて必要な事項を定めるとともに、市の実施機関が保有する個人情報の開示、訂正、削除及び利用等の中止を請求する権利を保障することにより、個人の権利利益を保護し、もって基本的人権の擁護及び公正で民主的な市政の推進を図ることを目的とするというふうに明記されています。しかし、住民基本台帳で、例えば、私は全国ネットワークにつながることは、私自身の情報の漏洩の危険があり、そして、だれかによって不正使用されるかもしれないという危険を大変に感じておりますので、情報提供してほしくないというような住基ネットに対する自分の情報コントロール権を住基ネットにおいては持っているのかどうか、その点についてお答えをいただきたいというふうに思います。

 以上で1回目の質問を終わります。


◎【村山博夫総務部長】
 まず、国からの情報提供等でございますが、先ほども御答弁いたしましたとおり、現在のところ、事務的には具体的な内容についての説明は受けていないところでございます。また、そういうことで、意見聴取も受けてございません。今の状況を見ますと、この法案が審議されて、まだ1ヵ月足らずでございます。それと、骨組みといいますか、今回の法案以外に対処法制につきましては今後2年間をかけて提出されるということで、そういう中で、いろいろ内容がわからないということが全国知事会の方でも要望が出ております。その辺の国会の審議をこれからも注意をしていきたいというふうに思っております。

 それから、地方公共団体の責務等、あるいは役割の分担でございますけれども、現在のところ、うちの方で情報を得ている中には、避難の指示、誘導、被害者の救助等の一定の役割を担うことが想定されるというふうに思っておりますけれども、地方公共団体の責務、都と市の役割分担については、今後の法制の中で具体的に定められるというふうに聞いております。そういう中では、先ほど言いましたように、具体的な役割、都道府県の役割、市町村の役割を明確にするように、全国知事会でも緊急に要請をしているところでございます。

 それから、国民の保護の関係でございますが、これも現在のところ、余り詳しい情報を得ておりません。住民に影響を及ぼすという内容が含まれるわけでございますが、具体的には避難に関する措置、先ほど言いましたけれども、警報の発令、避難の指示等、あるいは被害を最小限にするための措置といたしまして、輸送及び通信、具体的には交通手段の確保とか重要通信の確保、あるいは社会秩序の維持といたしましては、交通の整理、あるいは生活関連重要施設の安全確保、あるいは消火、人命救助等、あるいは保健衛生の関係ですと、医療、衛生状況の保持、それから、国民の生活の安定につきましては、物価の安定、生活必需物資の確保等がこれから措置として定められるというふうに聞いております。それと、復旧に関する措置といたしまして、学校、あるいは病院等の生活関連施設の復旧、道路、橋梁等の復旧、それに伴います財政上の措置、これらが今後の法制の中で具体的に示されるというふうに考えております。

 それから、先ほどお話がありました自衛隊法改正案で、民間家屋や土地の徴用または罰則などが憲法に違反するのではないかということでございますが、これにつきましては、現在、その内容につきまして検討されているところですが、これ以外に新しい罰則ができるというふうな情報は得ておりません。


◎【池田丈三市民部長】
 住民基本台帳ネットワークの関係につきましてお答え申し上げます。

 まず、本市の準備状況でございますけども、この7月をめどに初期データのセットアップが順調に進んでおります。また、全国的な状況については把握してございませんが、東京都の段階で申し上げますと、都は、初期データセットアップを7月中旬までに行うように求めておりますけども、この期限までに東京都全区市町村が対応可能であると聞いております。

 次に、財政負担の関係でございますが、まず、今までにかかった費用ということですが、13年度執行額は 6,200万円でございます。主なものは、既存住基システム修正関係委託経費、全国ネット連携用サーバーなどのリース経費でございます。それから、今後かかる費用でございますが、平成14年度は住民票コード通知費用、ネットワークシステム設定委託料など、既存住基システムの端末更新も含めまして、総額約1億 4,000万円を予算計上しております。平成15年度につきましては、ICカードの関係経費を除きまして、約 600万円と見積もっております。

 次に、回線への不法侵入されたときの対応はどうなっているかということでございますけども、回線は専用回線でネットワークを構築しているほか、ファイアウオールの設置や通信相手となりますコンピュータとの相互認証を行うなど、最新の技術を採用しており、不法侵入がなされない手だてを講じているところでございます。

 また、全国センターのセキュリティー対策でございますが、ただいま申し上げたもの以外に、本人確認情報保護委員会の設置義務や、本人確認情報管理規定の制定義務、総務大臣や知事への報告義務や立ち入り検査を受けることが法的に定められているところでございます。

 個人情報の漏洩が発覚したときの市の対応でございますが、住基ネットシステムにつきましては、個人情報について必要な保護措置が講じられていることを前提として情報公開・個人情報保護運営審議会の承認を得たところであります。しかし、万一漏洩というような事態が生じ、市民の基本的人権が侵害されると判断したときは、個人情報の措置に関し、必要な措置を講じてまいります。

 それから、個人情報保護法案の関係で、全国センターがその対象になっているかという御質問だと思いましたが、これについても、私、正確には把握してございませんが、法の建前から言いまして、独立行政法人等についてもそういうことが及ぶというふうに考えておりますので、全国センターについても同じなのかなと思っておりますが、勉強させていただきたいと思います。

 それから、自分自身の個人情報の提供を本人がコントロールできないかという御趣旨の質問でございますが、住基法では、不当な目的であることが明らかな場合を除き、請求者への開示を拒むことはできないこととなっており、個人が自己の住基情報の提供をコントロールできないと考えています。しかし、住基法では、住基情報の取り扱いにつきまして、個人の基本的人権を尊重するよう努めなければならないと定めていますので、具体例につきましては、その精神にのっとり、慎重で的確な対応を図ってまいりたいと考えております。


◎【黒須隆一市長】
 40番、井上睦子議員の私に対する3点の質問にお答えいたします。

 有事法制の件でございますけれども、まず第1点は、武力攻撃事態法第14条ですか、総合調整権、国と地方との関係についての御質問でございますけれども、これはまだ示されたものが骨格のみでありまして、地方自治体関係は具体化するのが2年先というふうに聞いております。そういう状況でございますので、今後の個別法制の整備の中で具体的に定められることになるわけでありますから、現時点ではお答えのしようがないと思っております。

 それから、自治体や自治体の職員の戦争協力拒否は可能かどうか、また、協力拒否をした場合、どのようなことが起きるかということでございますけれども、自治体が協力を拒否した場合は、首相は、指示をするか、みずから実施する権限を持つというふうに条文にあるのは、私も承知いたしております。ただ、これは、私も、国土が侵略された場合ということを考えますと、拒否する、拒否しないというような問題じゃないんじゃなかろうか、そういう感じもいたします。いずれにしても、法が明らかになっていない状況でございますので、明確な回答はできません。具体的な情報提供もございません。

 3点目の、政府首脳、福田官房長官ということでありますけれども、非核3原則政策転換発言についての見解ということでございますが、これは、非核3原則についての堅持の旨の発言がきのうありました。ただ、私も、我が国は唯一の被爆国でありますし、そういう点では、極めて神経を使わなければならないたぐいの発言だろうというふうに思っておりまして、政府首脳とはいえ、慎重な発言をすべきだというふうに私は思っております。抗議をということでありますけれども、現状、首相みずから非核3原則について表明しておりますので、抗議をするつもりはございません。


◎【40番井上睦子議員】
 それぞれ有事法制の問題について答弁をいただきました。まだまだ具体的な情報提供がないという中で、明確な答弁ができないというようなお答えでした。ただ、しかし、武力攻撃事態法案の中では、国と地方との関係が、先ほども市長からお答えがあったように、自治体が協力を拒否した場合、総理大臣がその権限を発揮し、代執行なり、指示をしていくというようなことでありますので、従来の対等、平等な関係である地方自治ということは、状態としては保たれないという事態になることは明らかだというふうに思います。そのように有事法制自体は通常の憲法で規定された地方自治体の平等性の確保というものを否定する中身を持っているのだろうというふうに私は思っております。

 こうした国土が侵略された事態に至ったときに拒否するということはないのではないかというようなお話でしたが、それでは、戦争がどのように起こるのかということも十分にこの法制度の中で研究していただきたいというふうに思います。例えば、国から情報提供として出されている資料の中に、周辺事態法は、自治体が協力を拒否することが可能である。武力攻撃事態法では、国の権限が強まって、それに従わなければならない。こうしたことがミックスして、併存して起きることがあるではないかと。そのときにはどのようにするのかというようなことがQアンドAで市にも示されていると思います。その答弁は、併存して起こることはあると。しかし、それぞれの法律で対応するのだから問題はないという答弁書がありまして、これは、私は、どのように読んでも理解ができない。例えば、家屋を撤収しなさいといったときに、これは周辺事態法で行うのか、あるいは武力攻撃事態法で行うのかといったときに、戦時の状態は使い分けなんかできないというふうに思うんですね。だけれども、そのことはそれぞれ対応すればいいというような、あいまいな答弁書が出ているわけです。したがって、本当に戦争が、国土が侵略された状況で起こるのかどうかということは、十分な調査をしていただきたい。

 周辺事態法というのは、米軍がどこかの国と戦争をして、それに協力するという内容ですね。それからミックスされて武力攻撃事態法が発動するとなれば、これは国土が侵略されるという事態ではなくて、違った事態になるということも可能でありますので、国会での審議の成り行きや、地方自治体は、そうした状況が起こったときに、どういうふうな判断をするかということは、とても重要な問題になってくると思いますので、ぜひここは慎重に考えていきたいというふうに強く要望しておきたいというふうに思います。

 それでは、市民生活に何が起こるのかということを伺っていきたいというふうに思います。

 3法案からは市民の生命や財産がどのように守られるかということは見えてきません。わかるのは、国民の協力ばかりです。武力攻撃事態法の第8条は、国民の協力として、必要な協力をするよう努めるというふうにされておりまして、国民の協力とは、今回の法案では、自衛隊法改正案の第 103条で、自衛隊による土地や家屋、物資の使用、物質の保管命令と罰則規定をしています。この罰則規定は、自衛隊改正法の第 124条、第 125条、第 126条に示されているわけです。これは、いわゆる物も戦争のために使うことになる。国民の持っている財産を戦争のために使うことになるという規定であります。都道府県知事は、防衛庁長官などの要請に基づいて病院や診療所その他の施設を管理して、土地や家屋、物資を使用し、物資の生産や集荷、販売、廃棄、保管、輸送を業とするものに対して物資の保管を命じ、また、これらの物資を収用することができる。緊急のときは、防衛庁長官みずからこのことができるというふうな規定になっております。  また、第 103条の業務従事命令は、人を戦争に参加させていく、協力をさせていくという内容です。都道府県知事は、防衛庁長官などが要請した場合には、自衛隊の任務遂行上、特に必要があると認めるとき、首相が定めた地域内の医療、土木建設工事、輸送従事者に対して従事することを命じることができるというふうになっております。今回の法案では、この従事命令に違反した場合に罰則の規定を設けることが論議されましたけれども、この罰則は見送られました。

 というふうに、さまざまに国民の持っている財産を戦争のために使うことができるという規定、あるいは業務従事命令によって、それぞれの仕事につかせることができるという命令は、憲法の第29条が定めた財産権に違反するのではないかというような疑問を持ちますし、同時に、戦争への従事命令は、建設労働者や医療従事者、あるいは輸送業者、さまざまにあると思いますが、この人たちが従わなかった場合の罰則はありませんけれども、しかし、これは職業選択の自由を定めた憲法第22条、あるいは奴隷的な拘束、苦役からの自由を定めた憲法第18条というものに違反しないのかどうかというような疑問があります。第二次世界大戦は、国民が総動員されながら、さまざまに人の権利、人権が抑圧され、さまざまな民主主義の活動も制限されてきました。そのことによって、戦争に協力させられていったという苦い経験を、私は前の世代の人たち、戦争体験の世代の人たちから聞いています。今回の自衛隊法改正案の中で、その危機感を持つわけでありますが、憲法の人権規定との関係で、市民生活の権利制限をすることになるのではないかというような疑問を持つわけですが、その点についてはどのような情報収集と政府からの説明を受けているのかということをお伺いしたいというふうに思いますし、このことについて、自治体の長は、市民である人々の財産や生命、そして、その自由を守るということが責務であるとするならば、このことに対しては慎重に対応しなければならないというふうに思っておりますが、どのように考えておられますでしょうか。お伺いをいたします。

 戦争協力を拒否した場合ということ、そういうことはあり得ないだろうというふうなお話でありましたけれども、まだまだそこは明確になっていないという答弁でもありました。戦争協力を拒否するというのは、思想信条の自由から、これは保障されなければいけないことだというふうに思います。どんな事態であっても。例えば、ドイツの基本法、これは憲法に当たりますけれども、良心的兵役拒否を、憲法制定当初からされていて、ナチスの反省から、戦時においても、また、軍隊においても民主主義が必要であるということの反省から出てきたわけです。したがって、起こった戦争に対して、どのような考え方を持つか、そのことについて協力するのか、協力しないのかということの自由、これは思想信条の自由、良心の自由に値すると思いますが、これは常に確保されていなければならないのではないかというふうに思いますが、第二次世界大戦、とても悲しい出来事であったというふうに市長からお話がありました。大きな戦争を悲惨な状況に導かないためにも、人々の基本的な人権、特に、思想信条の自由というものは、どんな時代においても確保しなければいけないことだというふうに思いますけれども、そのことについてはどのようにお考えでしょうか。お伺いしたいと思います。

 さて、1回目の質問では、地方自治の関係、国と地方公共団体との関係において、また、今回は市民の権利がこの武力攻撃事態法の中ではどのように扱われているかについて質問をいたしました。その後、答弁いただけるというふうに思いますけれども、こうした有事法制下の中では、自治体の権限というのが、平常とは違い、制限され、そして、総理大臣の指示のもとに、市民のさまざまな財産や、あるいは労働といったものを市民に強制するということを自治体が余儀なくされるという事態が起こるのではないかということを心配いたしますけれども、法案の骨格が、全体像が明らかにならないという中で、明確な答弁がないわけでありますが、そのような疑問というものはお持ちではないでしょうか。お伺いいたします。

 さて、日本は、唯一の被爆国として、非核3原則を持っています。そして、八王子市も非核平和都市宣言をして、平和行政を進めてまいりました。また、市長も、今、政府首脳の非核3原則見直し発言については、やはり慎重でなければならないというような明快な答弁をいただいたというふうに思います。先ほども国立市長の意見書が話題になりましたけれども、その意見書の中で国立市長は、ジュネーブ条約の第1追加議定書の第59条の無防備地域宣言について政府に質問をしています。この無防備地域宣言とは、1977年のジュネーブ条約追加議定書の中に触れられていますけれども、ベトナム戦争では、戦闘員が亡くなったのが5%、一般市民が亡くなったのが95%、近代の戦争は一般市民を大変巻き込んでいくという反省から、無防備地域宣言をした地域に対しては、相手国は攻撃を加えないという国際法上の約束事であります。日本はこれを批准していないわけですが、もし有事の事態に不幸にしてなったとするならば、自治体自体が無防備地域宣言をして、相手国からの攻撃を免れるというような形で、やはり非暴力の姿勢を、戦争への非協力の姿勢の中で平和を求める努力をしていかなければならないのではないかというふうに思います。このことについて、非核平和自治体としてさまざまな努力がされていますが、万が一有事が起こった場合、自治体全体が無防備地域宣言をすれば、これは全国に広がっていって、相手国から攻撃されないという地域になるわけですから、一番有効な平和への手だてではないかというふうに思いますが、こうしたことについて、市長はどのようにお考えでしょうか。そして、このジュネーブ条約の第1追加議定書についてはどのような評価をされていますか。お伺いをしたいというふうに思います。

 次に、住民基本台帳の問題です。

 セキュリティーは万全であるというような答弁がされました。しかし、万が一の場合、個人情報保護条例にのっとって措置をするということでありますが、杉並区は、住民基本台帳にかかわる個人情報の保護に関する条例を昨年9月に定めて、不正利用、あるいは情報が漏洩した場合の措置を特別に定めています。市からは現条例でその対応が可能であるということでありましたけれども、ネット社会に対応して、やはり紙ベースでつくられた情報よりも、ネットを流れる情報というのは、瞬時に大量に、そして、その不正利用というのも大量な形で流れていきます。個人情報保護の観点から、独自条例をつくる、あるいは、より住基ネットに対応した現個人情報保護条例の改正を行うべきではないかというふうに考えますけれども、どのように今後の対応をお考えか、お伺いをいたします。

 さて、全国センターが行政機関の個人情報保護の対象機関になっているかどうかという問題でありますが、日弁連は、これは極めて怪しいというような見解を出しています。行政機関の保有する個人情報保護法等は適用されない疑いがあるというふうに声明を出しています。その理由というのは、行政機関の保有する個人情報保護法の定義する固有個人情報とは、行政機関の職員が職務上作成し、または取得した個人情報と限定され、また、行政文書に記録されているものとの限定がついているために、全国センターに集められた電子化された情報というのは該当しないのではないかということが議論されておりまして、これが明確になっていません。とするならば、全国センターのセキュリティーなり保護対策というのが十分でないということになってまいります。その点、行政としても、全国センターがどのような個人情報保護の対象となっているのかということをきちんと調査していただきたいというふうに、これは要望しておきます。

 最後になりますが、現在、国会で審議されている個人情報保護法案は、民間を対象とした、一方ではメディア規制法であるとも言われています。当初の目的からかけ離れた個人情報保護法案となってしまいました。そもそもこの個人情報保護法案は、住民基本台帳ネットワーク稼働の前提としてその成立が不可欠であるとされていたものです。しかし、その法案の内容が不適切であること、また、成立していないことから、8月5日のネットワークの稼働は延期をすべきだという声が起こっています。杉並区長は、個人情報保護法が成立しない場合には、杉並区の条例に照らして、結合しない、参加しないということもあり得るというふうに発言しておりますし、日弁連もそのような方向の声明を出しています。また、野党4党は延期を求める法案を提出するということも伝えられています。そうしますと、住基ネットが全国で稼働する以前の前提としてあった、個人情報保護法が成立してこそ、すべてのセキュリティーなり何なりが万全になってくるということを考えますと、8月5日に結合するのは無理ではないかというふうに思いますが、自治体としては、個人情報保護法が成立する以前の住基ネットの結合についての不安はないのかどうか、お伺いをして2回目の質問を終わります。


◎【村山博夫総務部長】
 有事の関係で、市民生活の権利宣言のことでいろいろ御質問ございました。例えば、自衛隊法の民間家屋や土地の徴用、あるいは業務命令、あるいは戦争を拒否した場合の個人の尊重、あるいは公共の福祉、思想及び良心の自由に違反しないかということでございますが、具体的な内容につきましては、先ほどから答弁しておりますように、まだ明確に答えることができません。そのできない理由につきましては、この法制が具体的な内容については何らまだ示されておらず、国会等でも審議をされていない。その辺が、今、皆さんも一番いらいらしているといいますか、不安を持つという状況じゃないかと思います。そういう意味では、もう少し具体的に国民は何をすべきか、あるいは国、地方自治体は何をすべきか、この辺の明確な国の開示といいますか、議論が今後必要であろうというふうに思っております。


◎【池田丈三市民部長】
 住基ネットの関係で、現在の個人情報保護条例の改正等が必要ではないかということでございますが、これは関係所管の総務部とも相談していきたいと思っておりますけれども、この個人情報保護条例の制定後の社会情勢の変化や、現在国会で審議されています個人情報保護関連法案の内容、審議の動向を踏まえまして、御指摘の部分を含めまして、必要な条例改正も検討していく考え方を持っております。

 それから、住基ネットの本年8月5日からの1次稼働は見合わせるべきではないかという御趣旨の御質問ですが、私ども、8月5日に向けまして準備を進めております。法案等の国会での審議経過の中で国等が対応を決めることになっておりますので、その結果を踏まえて、また各市の動向も慎重に見きわめながら、態度を決定していきたいというふうに思っているところでございます。


◎【黒須隆一市長】
 私の有事法制に対する見解というお尋ねでございますけれども、私は、率直に申し上げて、日本国民というのは第二次世界大戦で多くの犠牲者を出したわけで、そのいわば贖罪意識から、国民を守るための最低限必要な備えについても議論を避けてきた、私はそんなふうに感じております。

 今、平時でありますから、この平和なときにこそ、有事のことを考えるのは、極めて適切だというふに思っております。冷静に考えられるわけですから。そういう意味で、有事の際の法整備というのは、私は必要であると考えております。

 現在、国会において審議されておるわけで、その審議内容を注目してまいりたいと思います。国会において、国民が納得できるように、十分に審議されることを心から望んでおります。

 もう一点のジュネーブ条約の第1追加議定書59条の無防備地域宣言をすべきじゃないかということでございますけれども、これはあくまで新聞報道によるわけでございますけれども、2つの追加議定書については締結の方向で進めていくというふうに私も承知しております。また、有事につきましては国民全体で考えるべき問題で、八王子市という一自治体だけでの論議にはならないというふうに考えております。


◎【40番井上睦子議員】
 それでは、3回目の質問をいたします。

 まず、有事法制の問題についてですが、今回、提案、国会で審議されている有事法制について、私は地方自治の観点から、また、市民生活の権利侵害が戦争時には起こってくる。侵害、あるいは権利の制限というものが起こってくる。このことが逆に第二次世界大戦の被害を拡大していったということにもなったというふうに思っております。第二次世界大戦への贖罪からこういった問題を議論してこなかったというような答弁がございましたけれども、私は、平和憲法を持つ日本として、平和への努力をすれば平和がやってき、戦争への準備をすれば戦争がやってくるという言葉を重くかみしめなければならないというふうに思います。ジュネーブの追加議定書2つについては国が批准する方向であるとするならば、そのことによって相手国から攻撃されないという国際法の理念にお互いの国が到達するよう努力すべきであるというふうに私は思っております。先ほど来、細かなことについては、部長答弁ではいらいらするほどよくわからない、明確に答えられないというような答弁がございました。市民の財産や生命を守っていく自治体として本当に市民を守れるのかどうかということは極めて重要な問題だろうというふうに思いますので、ぜひ国に対してはそういった気持ちを率直に上げていって、自治体として地方自治の本旨と市民の基本的人権を侵害しないということを求めていただきたいというふうに強く思います。

 そして、住民基本台帳ネットワークの問題ですが、他の自治体や国の対応を見きわめていくということでありましたが、個人情報保護法制もきちんと確定していない中で、これが稼働するのはとても無理だというふうに思いますし、みずほ銀行が統合後、ネットワークに支障を来して大混乱いたしました。そういった危険性もあるのではないかというふうに思いますので、ぜひ自治体から慎重な声を上げていただきたいというふうに思いますし、同時に、個人情報保護条例が住民基本台帳についても自己コントロール権を獲得できるような条例の改正を求めて質問を終わりたいと思いますが、さきの2点については最終的な答弁を理事者側に求めたいと思います。


◎【黒須隆一市長】
 住基ネットの1次稼働は見合わせるべきではないかということでありますけれども、私ども、今、8月5日の第1次稼働に向けまして準備を進めておるわけでございまして、法案等の国会での審議経過の中で、国等が対応を決めることになっておりますけれども、その結果を踏まえ、また、各市の動向も見きわめまして、本市の対応をみずから決定していく考えでございます。