第40番、井上睦子議員の質疑を許可します。
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社民・生活者ネットを代表して、八王子市基本構想の改定について質疑をいたします。
基本構想は10年を単位として改定されてきました。現行の新八王子21プランは、1998年に改定されたものですが、現プランについて私たちは業務核都市構想に象徴される物流センターや川口リサーチパークの開発計画、自動車優先の大きな道路開発などの計画を基本とした構想には反対の立場をとってまいりました。さらに、現状から大きく乖離した財政計画や人口推計についても問題点を指摘してまいりました。今回、現行のプランに掲げられた理念や目標などは、当時の市政の置かれた状況を踏まえた適切な内容としながらも、現行プランで行政運営を進めることが極めて困難な状況として、基本構想の改定が行われたこと、また、策定に当たって、従来の各界代表の参加による審議会方式ではなく、大量の市民が参加する市民会議方式によって素案が提案され、市民参加が大きく前進したことを率直に評価いたします。
また、1年間にわたって熱心な議論を積み重ね、素案を提出された市民会議の委員の方々に敬意を表したいと思います。
基本構想は、かつてない約 130名の市民の皆さんからなるゆめおり市民会議での素案を受けて原案が作成されました。素案には構想及び基本計画について詳細な提案がされています。市長は、市民会議から素案をできる限り尊重したと説明されていますが、どのように取り入れられたのか、また、尊重できなかった内容についてはきちんとした説明責任が果たされなければならないと考えますが、この点についてお答えをいただきたいと思います。
市民会議からの中間報告に対しては、 600項目を超える市民からの意見がありました。市民の意見は多様です。基本構想の原案の段階でもゆめおり市民会議の皆さんや、そして、市民の皆さんに原案を公開し、最終意見を求めるべきだったと私たちは考えております。ゆめおり市民会議の中でも、時間不足のため、分科会ごとの素案づくりに追われ、分科会を離れて相互の議論を検討する時間が持てなかったのは残念だったとの声があります。 130人の市民から、52万市民の納得できる基本構想とするために、また、徹底した市民参加を保障するためにも、原案段階でのパブリックコメントが必要だったと考えますが、市長はこれが最善の市民参加だとお考えなのでしょうか。お答えをいただきたいと思います。
八王子市には約 7,000人の外国籍の住民の方々が住んでいます。参政権はありませんが、住民として、納税している人々も多数います。こうした外国籍の人々の声も自治体の内なる国際化を進めていく上で、しっかり反映させることが大切でありました。昨年6月議会で、私はそのことを求めております。外国籍住民の基本構想への積極的な声の反映はどのように保障されたのでしょうか。お答えをいただきたいと思います。
新八王子21プランの評価について、市長は、さきにも述べましたように、理念や目標は適切な内容と評価をしています。しかし、計画を実行していくことは困難で、理念や目標が適切なのであれば、基本計画の後期見直し程度でよかったのではないかと私は考えます。しかし、構想部分を含めて全面改定としたのは、明らかに継承ではなく、新八王子21プランの否定であります。かつてのような経済成長が望めない情勢下では、財政規模の拡大を前提とした開発型の構想とは決別をすべきであります。市長は、現行プランの何を否定し、何と決別したのか、その内容を具体的にお答えいただきたいと思います。
新八王子21プランには、人口、土地利用及び都市基盤の方向が明示されていました。しかし、今回提案されている新構想には掲載されておりません。これは、人口、土地利用、都市整備の方向性は確定的ではなく、状況によって流動的であるという理由からかと考えますが、基本構想で明示されなかった理由をお示しいただきたいと思います。
人口推計と財政見通しについてお伺いをいたします。
人口推計は、新八王子21プランが2015年を63万人としたのに対して、59万 3,100人と、約3万 7,000人の減少推計と新構想ではなっています。しかし、私は、まだこの人口推計が過大ではないかと考えます。国立社会保障人口問題研究所が2000年の国勢調査をもとにした人口推計では、中位推計で日本の人口は2006年の1億 2,774万人をピークに、以後、人口減少過程に入り、2013年に現在の人口となる。2050年には1億60万人になるとしています。本市の人口推計は、日本の減少傾向とは異なり、2018年まで増加の一途をたどる推計になっています。なぜ八王子市は今後も人口が増加を続けるとの推計になるのでしょうか。地価の下落によって、今、都心回帰の現象が起き、郊外の住宅が売れなくなっているとも言われています。過去の人口推計も大きく誤っていました。人口推計の誤算は、生産人口の推計に誤りを生じ、財政見通しに影響を与えてまいります。過去の人口推計も過大でしたが、人口が増加を続けることの根拠をお示しいただきたいと思います。
私たちは、21プランの過大な計画が財政破綻を招いたことを指摘し、中期的な財政計画をつくり、事業を厳選すべきだと主張してきました。経済成長が望めず、税財源の配分、社会保障制度等の展望が不確定な中で、財政計画ではなく、財政見通しとし、中期的な財政展望を立てた中で計画事業を進めていくということは過去の反省からも妥当だと考えます。財政見通しによれば、投資的経費は現行21プランより金額で 1,512億 5,400万円減、構成比ではマイナス 6.1%減となっています。これは都市基盤整備の圧縮を意味すると考えますが、その具体的な内容についてお答えをしていただきたいと思います。
次に、まちづくりの基本理念における自立都市、あるいは協働、市民自治の概念についてお伺いをいたします。
まちづくりの基本理念は、「人とひと、人と自然が共生し、だれもが活き活き生きるまち」を基本理念と定め、まちづくりに責任を持ち、みずから参加、参画する市民と開かれた行政との協働によって、地域の特性を尊重した自立都市の実現を目指すとしています。ゆめおり市民会議の素案は、後半の部分、協働によって、快適で活力のある環境に配慮した八王子を目指しますという素案でありました。市が改めて素案よりも離れて自立都市という概念を使った意味をお答えいただきたいと思います。
自立都市とは、現行の新21プランでは、経済産業政策の中で位置づけられた業務核都市構想の中で、八王子で生まれ、育ち、学び、働く自己完結の都市であるということでした。私は、グローバル経済の中で自己完結型の自立都市はあり得ないと考えています。改定された基本構想での自立都市とは何を意味しているのか。
そしてまた、あわせてゆめおり市民会議の素案にあった環境に配慮したという文言は、削除されています。これは環境重視の視点が軽視されたのではないかとの懸念を抱きますが、この基本理念に環境に配慮したという言葉が入らなかった理由をお示しいただきたいと思います。
基本構想提案説明の中で、市長は、協働について、21世紀の行政運営のキーワードの1つであり、市民自治は第三の分権とも言われるとして、この2点を希求するために構想の改定に着手したと説明をしています。経済の発展と労働力の移動によって、地域コミュニティは、新たな公のサービスを求め、そこに行政という形で委任をしてまいりました。社会保障制度を整え、公共サービスを行政機関にゆだねてまいりました。公共の領域の拡大は、行政機構をまたより拡大させ、そして、住民の代表機関として議会制度を確立してまいりました。市民は議会を通じて行政への参加をしてきたのが従来の形です。しかし、今日、市民の行政への直接参加、あるいは協働ということが重要視されています。これは選出された議会と市民とのさまざまな問題について意見の相違が起こること、あるいは多様な市民の意見を反映させる新たなシステムが必要となっていることを示しています。協働と市民自治への転換を迫られている背景及びその内容について、市長はどのようにとらえているのか、お示しください。
また、ゆめおり市民会議からは、協働と市民自治を具体化するシステムとして、市民自治基本条例の策定が提案されています。条例の内容としては、オンブズマン制度、パブリックコメント制度、住民投票制度、議会運営の民主化等も盛り込むとされています。私は、市民自治を確立するものとして不可欠なシステムで、これを支持するものですが、どのような条例の内容を市長は考えているのか、お示しをいただきたいと思います。
次に、6つの都市像についてお伺いいたします。
一人ひとりが大切にされ共助で築くふれあいのまちにおいて、一人ひとりの状況に応じた健康、医療、福祉施策の充実と高齢者や障害者が社会参加できる環境づくりに努めるとしています。福祉の基礎構造改革は、介護保険や支援費制度に見られるように、地域でその人らしく人権を尊重される暮らしの保障という高い理念を示しました。しかし、その反面、現実は、サービスの供給は市場に任せ、利用者に自己決定、自己責任を負わせるシステムになっています。また、グローバル経済の進展は過酷な競争社会を生み、勝者と敗者を生み出しています。極めて厳しい雇用状況などの中で、行政は、高齢者や障害者のみならず、生活に困難を来しているすべての市民の安心のよりどころでなくてはなりません。そうした意味において、市民のニーズに合わせた福祉施策がますます重要かつ必要となっています。
黒須市長誕生以来、福祉施策は2000年、2001年の予算でも、在宅福祉への転換という名目のもと、扶助費の削減がされ続けています。ニーズに合わなくなった施策の見直しは必要ですが、扶助費削減の理由を在宅福祉への転換とするのは納得できないところです。今日の情勢の中で、福祉政策の重要性と行政の役割をどのように認識されているのか、お伺いいたします。
次に、男女平等行政についてお伺いいたします。
男女平等行政は、意識的に行政課題として取り上げられてきたのはこの10数年間です。初めて1989年策定の基本構想に女性のあらゆる領域での社会参加を促し、男女共同参画社会の実現を目指すと明記されて以来、国内外の取り組みと相まって、八王子市でも進展してまいりました。女性の管理職はふえ、女性のあらゆる場での参加というものが徐々に広がりつつあります。しかし、新基本構想には、男女平等、男女共同参画という文言はなくなり、すべての人が平等で、あらゆることに参加できる社会となっています。
今、男女平等行政は全国的にバッシングを受けています。男らしさ、女らしさという性別役割分業にもう一度戻そうという流れがあり、女性のあらゆる場への参加は、今まで男性が占めていたポストを奪うことになるということへの恐怖からかもしれませんけれども、正しく理解されていない意見が台頭しています。こうした考えに左右されることなく、男女平等はまだまだ実現していないことを踏まえ、しっかり基本構想に位置づけられるべきであると考えます。位置づけられなかった理由についてお伺いいたします。同時に、市長の男女共同参画社会の実現に向けての取り組みの決意をお示しいただきたい思います。
次に、教育の問題についてお伺いいたします。
構想の説明の中では、生涯学習や学校教育での豊かな学びを保障するということが挙げられていますし、その説明文の中でも、多様な価値観に基づいた学びを保障するということがうたわれています。市はどのような基盤を整備していくのか、お伺いいたします。
そして、子どもの健全育成ということは福祉施策の分野で言われています。子どもの健全育成ということが、健全ではない子どもたちの育ちを阻害するイメージを受けます。人間には多様性があり、多様な育ち方をしていきます。その子どもらしく育っていくための援助を、市はどうするかということが大切だというふうに思いますが、その子らしく育っていくための子育て支援について、市はどのような基本的な考え方を持っているのかということについてお答えをいただきたいと思います。
次に、中核市への移行についてお伺いいたします。
午前中の質疑の中でも、すべての会派から、この中核市への移行の問題については質疑がありました。財政問題で中核市への移行は断念したわけでありますが、この問題が解決されれば、権限の拡大につながり、中核市移行を私も是とするところでありますが、それでは、どのようにこの財政問題の解決の見通しを持っているのか、お伺いをしたいと思います。
次に、産業の振興と地域経済の活性化及び大規模な公共工事について、あわせてお伺いいたします。
地域経済の活性化は重要でありますけれども、従来の業務核都市構想で示されていた、例えば川口リサーチパーク計画の撤回に見られるように、この計画は行き詰まっています。経済の低迷と2007年から始まる人口減少では経済の成長は望めません。過大な投資を必要とする業務核都市構想は、財政計画に見合わないばかりか、また、人口減少によって縮小する経済活動と適合しません。人口減少によって、車の台数も人の移動も消費活動も縮小しています。そうして考えれば、構想にある物流系産業の集積など、促すことも困難さを伴ってくるのではないでしょうか。
産業の振興と地域経済の活性化とは、こうした計画とは決別し、地域の中で資金とお金が回ることでなければなりません。産業政策は、新21プランの何を否定し、何を継承しているのか、お伺いしたいと思います。
また、大規模な公共事業、特に、以前の計画では 440億円もの財政負担が発生すると言われている北西部幹線、これは 1,000億円以上の負担があるとも言われています。こうした財政負担の大きい公共事業は行うべきではないと私どもは考えています。財政計画との関係で、こうした計画も選択型になると考えてよいのか。すなわち、こうした計画は基本構想の改定の趣旨から考えても確定的ではない、流動的であると理解してよいのか、お答えいただきたいと思います。
次に、平和に対する考え方についてお伺いをいたします。
新21プランでは、基本理念に明確に平和の問題がうたわれていました。今回は都市像の中に触れられています。アメリカでの同時多発テロ、アフガニスタンへの報復戦争、また、今日では中東イラク戦争の危機が広まっています。日本もこのことに無関係ではなく、集団的自衛権の疑いが濃厚であるイージス艦が派遣されようとしています。自治体としての平和の意思をどのように持ち、平和への取り組みをどのように進めていくのか、市長の決意を明らかにしていただきたいと思います。
最後に、環境についてお伺いをいたします。
6つの都市像の1つとして、水とみどりを慈しむ地球環境にやさしいまちとして、環境政策が明示されていることを評価いたします。環境問題に取り組む市長の基本姿勢をお伺いいたします。
また、旧21プランでは、開発と環境が常に対立していました。開発に対して環境は従の役割しか担っていませんでした。環境と共生するためには、開発に対する抑止策を環境政策が持たなければなりません。その担保はどのようなシステムとして確保されているのか、お答えをいただきたいと思います。
以上で質疑を終わります。
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