補正予算(学力テスト・住基ネットカード発行)・組織条例の改正に反対する討論
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第54号議案2003年度八王子市一般会計補正予算(第1号)及び関連する議案、第56号議案八王子市組織条例の一部を改正する条例設定について、第61号議案八王子市手数料条例の一部を改正する条例について、ネット・社民を代表して反対討論を行います。
まず、13年ぶりの大幅な組織改正についてですが、総合政策部設置は、目的とした政策主導型市政の展開が図られ、職員の能力が発揮できる体性の確立や事業部門からの政策提起ができるよう期待します。
しかし、行政経営部の設置によって、臨時的な組織であった行財政改革推進室が恒常化した行革推進課になり、企画政策室が政策と一体の機能として所掌していた組織・定数・外部監査の事務を経営管理課が担うことになり、より一層、行財政改革が強化されることになります。財政再建プランや行財政改革大綱によって、福祉施策は、現金給付型サービスなどが削減・廃止され民間委託化も進み、教育施策も同様でした。職員数も大幅に削減されています。
行革大綱では、財政マネジメントの確立や福祉施設の民間委託化や民営化など計画されています。
都市経営の視点をもった行政経営とは、行革大綱に見られる内容からも、「できる限り行政直営ではなく、民間企業・NPOに業務委託し、競争原理を導入するとともに、民間企業型の経営手法を取り入れて、行政を企画立案部門と事業部門とに分離し、トップによる経営戦略の策定→業績(成果)測定→評価に基づく予算の重点配分というマネジメント・サイクルを設定して、事業部門は独立採算制としてコスト削減に努めさせる」というものです。
これは90年代、アメリカ・イギリスを席巻した行政改革である新しい行政経営(NPM)と言われ、80年代の行革が「小さな政府」をめざしていたのに比べ、NPMは「企業家的な政府」をめざすものだといわれています。
行政経営部は「都市経営の視点から成果を評価する専門組織」と行革大綱にも位置づけられているように、行政運営において強力な力を持つようになります。事業部門に段階的に委譲されるとする予算・人事・組織・定数などの権限機能も事業部門の分権が推進されるというより、コスト削減への努力を求められる傾向が強くなる組織体制になっています。
イギリスの研究では、NPM型の改革は幹部官僚の権限や統制の強化の弊害が指摘されています。
市長は、「株式会社・八王子市」とよく言われますが、地方自治体の行政運営は企業的な経営とは異なります。全ての市民ニーズに応え、種々のサービスを不採算・非効率であっても、行わなければなりません。効率化の名のもとに市民サービスが切り捨てられてはいけません。行政経営部の設置は、福祉予算や市民サービスの切捨てに拍車をかけることになり問題です。
生活安全部は、つきまとい、ストーカー、暴走族対策など暮らしの安全対策の事務を所掌します。
つきまといを禁止する生活の安心安全条例については、警察行政が現行法の中で行うべきことであり、取り締まる行為や対象があいまいで市民活動や労働・政治活動など表現の自由・市民の権利などを抑制、侵害する危険性が強いこと、監視カメラの設置などは市民のプライバシーを侵害するとして反対してきました。
また、暴走族追放条例に対しても、憲法の定める「法定手続きの保障」にのっとっていないこと、暴走行為をあおり助長したという刑罰を構成する要件が明確でなく、証明が困難であること、服装規定や拍手、声援という行為などは対象があまりにも広範囲かつ不明確で、表現の自由、集会の自由への権利侵害になりかねないなどの問題点を指摘してきました。
八王子市は、市民の不安に応え、安全に安心して暮らすという理由で、先の2つの条例や迷惑駐車防止条例も制定してきました。これらの問題は、現行法で、警察行政が解決できる問題です。にもかかわらず、あらたに条例を設定して、市民を取り締まりの対象にし、警察行政の補完又は、警察行政との一体化を図ろうとしています。
委員会質疑の中で、本市はすでに、2名の警察からの出向を受け入れており、新しい「暮らしの安全課」に今後、配置されることが明らかになりました。
市民の安全を確保することは、本来、警察行政の役割です。そのための捜査能力や監視する権力をもっています。市行政の役割は、雇用の安定や社会保障など公共サービスの提供にあります。
安心安全条例や暴走族追放条例は、市民の権利と自由への侵害の危険性があると指摘しました。安全・安心を理由に私たちは市民が監視される社会を望みません。
生活安全部の内容は、監視社会へつながり、プライバシーや権利・人権の侵害の危険性が強いという意味で賛成できません。
こども家庭部は、名称について審議に参加した3名の女性委員からふさわしくないと指摘がありました。内容として家庭への支援策はほとんどなく、ただ「こどもには暖かいしっかりした家庭が必要と」いうメッセージを込めた部の名称は、色々な事情にあるこどもたちにとって重荷であり不快です。保護者にとっても、子育ては家庭の責任と重くのしかかってくる印象があり、子育てを社会で応援するという時代に逆行しています。
どのようなこどもでも平等に子育ち、子育てを応援する部としては、「こども部」「こども応援部」などの名称がふさわしいと考えます。
男女共同参画課の設置は、主幹の配置から課の設置になったのは一歩前進ですが、十分ではありません。本来なら、男女平等を着実に実行するためには市民活動推進部ではなく、権力の中枢である総合政策部に位置づけることが必要です。事務分掌も従来のように、明確にその目標がわかるように「男女平等に関すること」とすべきです。
以上、行政経営部、生活安全部、こども家庭部、男女共同参画課の問題を指摘し、組織条例の改正に反対します。
次に、住基ネットの第2次稼動に伴うカード発行経費についてです。
住基ネットについては、導入の当初から、市民にとって利便性がなく、莫大な経費がかかり、ネットワークシステムの安全性お保障がなく、プライバシー漏洩の危険性が強いことから反対してきました。
第2次稼動に伴うカード発行は、八王子市の人口の1%未満、5000枚しか予算計上されていません。また、総務省が熱心に導入をすすめた、多目的利用も多摩地域では1市も導入していません。この事実は、カードを持っても転出の届けが不要、他市で住民票が取れるという利便性は、市民にとってたいしたメリットにならず、住基ネットを支持していないことを裏付けるものです。
第2次稼動によって、市民のプライバシーは危険性が増大します。全国の自治体とネットワークするため、いくら本市が安全策を万全にしていても本市以外のセキュリティに不備があれば、情報の漏洩は必須です。現実に庁内LANと接続して、常時、住基情報を閲覧できる状態の自治体が、国の調査では1割を超えています。物理的には、他の自治体職員や委託会社の職員がのぞきみすることも可能です。DV被害者などはこのことによって大きな被害を被ることになります。
自分の情報は自分でコントロールする権利があります。これは憲法13条に定められた個人の尊厳の確保です。札幌市・杉並区では選択制の導入を決定しました。
個人情報を守るためにも、離脱や選択制の導入すべきです。したがって、第2次稼動は危険性が増大し、カード発行は市民の利益にならないことから反対します。
学力定着度調査についてです。
市教委のめざす学力テストは、知識・技能のみでなく、学ぶ意欲・思考力・判断力・表現力などまで含めて捉えるとしています。
このような、こども達の学力は、日常の教育の中で、担任の教師が個々のこども達の状況についてよく把握しており、あらためて、調査をすべきではありません。学力テストでは点数によって評価され、学校は八王子市全体の中での位置を、こども達は市全体、学校全体の中での自分の位置・順位を評価されることです。
今後、学力テストは小4から中2まで拡大されることも明らかになりました。
学習指導要領の内容の減少は、学力低下の大宣伝と不安を巻き起こし、全国的な学力テスト実施の流れになっています。
都の学力テスト、市の学力テストはより一層こどもたちのストレスを生じさせ、学校間・こども間の競争を再燃し、激化していく危険性が大きいといえます。教師にとって、市教委は指導力の向上、自己評価に役立つとしていますが、教師もまた、その競争にくみこまれていきます。
こどもひとりひとりの学力を保障するのは、学力テストではなく、30人以下学級のように条件整備を行うことです。
以上の理由から、学力テストの実施に反対します。
反対討論を終わります。
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