◎【40番井上睦子議員】                   
 第24号議案、八王子市暴走族追放条例設定について、社民・生活者ネットを代表して反対討論を行います。

 今日社会問題となっている暴走族の追放は、迷惑を直接こうむっている市民の強い要求であり、安全で平穏な市民生活を取り戻すための努力をすること、そしてその施策を実行することは、警察や一般行政に課せられた役割として私どもも重大な問題として受とめています。私たちは暴走族追放それ自体を否定するものではありません。しかし、条例の内容について、憲法に定められた法定の手続の保障及び国民の自由と権利の保障という観点から、特に第10条、暴走行為のあおりの禁止について問題があると考えています。憲法第31条は、法定手続の保障として、何人も法律の定める手続によらなければ、その生命もしくは自由を奪われ、またはその他の刑罰を課せられないとしています。この条文は刑罰法定主義と言われ、刑罰の構成要件が明確でなければ法律は無効というものです。条例も法律です。この定めに従わなければなりません。

 第10条は何人も道路、公園、広場、その他公共の場所に集合し、暴走行為をしている者に対し、刺しゅう等をした衣服等の着用、声援、拍手、身ぶり、手ぶり、または旗その他これに類するものを振ることにより暴走行為をあおってはならないと規定をしています。あおる行為とは扇動です。違法行為を実行させる目的で文書や図画、言動により人に対してその行為を実行させる決意を生じさせることを言います。または既に生じている決意を助長させるような刺激を与えることを言います。あおりは精神的幇助とも言われています。10条では刺しゅう等をした衣服の着用や、声援、拍手、手ぶり、身ぶりが暴走行為を助長させる、容易にする、勢いをつけるという因果関係が明確に規定をされておりません。極めて不明確であり、衣服の着用や声援、拍手、手ぶり、身ぶり、旗その他これに類するものを振るという行動、表現について禁止規定を設けています。どうして刺しゅうの衣服の着用が暴走行為を容易にするのでしょうか。第10条の規定は集合している集団を検挙し、10万円以下の罰則にするには因果関係が余りにも不明確であり、因果関係がないのに処罰をするという危険性をはらんでいます。これは犯罪の構成要件がないのに近いという条文の内容になっています。

 代表質疑では、刑法第61条、第62条の教唆、幇助ではやじ馬、付和雷同型の参加者において、これは立証できない。したがって刑法62条は適用できないと答弁をされています。委員会審議においても、幇助、教唆ではあおり行為は成立をしないので、条例で規定をしたと答弁をされています。これは幇助や教唆が厳密に因果関係を求め、その構成要件を明確にしなければ犯罪を立証できないというふうに憲法31条が求め、その求めに従って刑法が動くわけでありますけれども、このことが適用できないからといって、新たに条例であおり行為を提起をすることは極めて問題だというふうに私どもは考えております。因果関係を立証できない暴走行為を助長させるという衣服の着用や、拍手、声援という行為を取り締まるというのは、対象が余りにも広範囲で不明確、あいまいさが生じてまいります。これは不当に国民の権利を侵害することにつながりかねない危険性があると考えています。また、本当に必要のある者以外を検挙、逮捕するということにもつながりかねません。

 委員会審議では、都市整備部長は検挙というのは非常に難しいと答弁をされています。一定の状況証拠、特定する状況など、ビデオで特定して検挙をするというふうに言われておりますけれども、現実には実行不可能な条例ではないかというふうに思います。それは構成要件が存在しないからであります。広島市の条例は、無許可の集会に対し、中止命令、退去命令に違反した場合、6ヵ月の懲役、10万円以下の罰金を課しています。これに対して広島弁護士会は、条例で禁止する集会の範囲が不明確で、暴走族と関係ないものまで規制し、適用が及ぶおそれがある。また、広範囲で不明確な禁止条項の違反行為に罰則を設けるのは問題だとして、基準が不明確で、集会や表現の自由を保障する憲法に違反するおそれが強いと指摘をしています。また、鹿児島県の条例では、2人以上の者が暴走族または暴走行為を見物する目的で集合した場合において、重点区域内で暴走行為をあおった者に対し10万円以下の罰金を課しています。しかし、この条例の適用に当たっては日本国憲法の保障する国民の自由と権利を不当に制限しないよう留意しなければならないというただし書きが条例の中に入っております。

 私どもは市民の権利を抑制する条例内容は極めて慎重でかつ厳格であるべきだというふうに思います。不当に警察権力を助長、拡大していく傾向もこの第10条の中にはあります。検挙後の運用については警察に委任をしていくわけです。不当に検挙された者については23日の拘留まで許されますので、その身体や自由や拘束することにもつながりかねません。委員会質疑でも明らかになりましたように、道路交通法68条、暴走行為の違反の検挙率はたったの2%であります。本来的な警察の暴走行為の取り締まり強化を私どもは強く求めるものでありますし、同時に本条例において暴走行為を追放するということではなくて、そのあおりを禁止する第10条の条例規定はあいまいかつ不明確で、余りにも広範囲であるという理由から反対をするものであります。  以上で討論を終わります。