◎【萩生田富司議長】第40番、井上睦子議員。                            
  それでは、障害を持つ子どもも持たない子どももともに学び、育つ教育について質問をいたします。

 まず、7月11日付で東京都教職員研修センターから依頼のあった通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童、生徒に関する実態調査についてお伺いいたします。

 この実態調査は、依頼文書によれば、通常の学級に在籍するLD、ADHD、高機能自閉症等、特別な教育的支援を必要とする児童、生徒の実態把握を目的としています。対象は、普通学級のすべての小中学生で、学習面や行動面での不注意、多動性、衝動性、対人関係について75項目にわたって学級担任がチェックをし、点数化するものであります。一定のポイント以上の子どもが特別な教育支援を必要とするとみなされます。調査項目には、大人びている、ませている、独特な表情をしていることがあるなど、主観的にしか判断できないような項目や、学習面では、学年によっては評価し得ない項目も含まれ、調査としての信憑性に欠ける内容となっています。そして、教師の主観で評価が変わり得るという内容にもなっており、大変危険な調査である。そうした内容となっていると私は思います。

 8月12日の毎日新聞は、東京都教育委員会の学習障害調査、人権侵害と保留複数校、主観評価の項目多く、調査を保留しているという見出しが出ていました。この実態調査について、複数の学校が人権侵害のおそれがあるなどとして実施を保留し、多摩地区のある校長は、質問項目が微妙で、全生徒をこれで判断するのは問題だ。また、都内の小学校教諭は、家庭の事情で情緒が安定しない子どももおり、中枢神経に問題があるとされるADHDなどの子どもとどう区別していいのかと疑問を投げかけているとの現場の戸惑いの声を報道しています。私はこのLDやADHDなどの実態調査は、子どもの人権、またプライバシーの観点から大きな問題があると考えます。まず、この調査に至る経過及び今後どのような形で集約、提出されていくのか、スケジュールについてお伺いしたいと思います。

 7月11日付の文書を受け、市教委としては調査の妥当性の検討をいつしたのでしょうか。そして、各学校への説明はどのように行い、調査資料の配付、そして集約や提出等の日時についてはどのような予定で今進んでいるのか、あるいは進んでいないのかお答えいただきたいと思います。

 次に、調査は東京都の研修センターから依頼として文書が出ています。これは最後に市教委に対しては、小中学校に同封の依頼文書等の配付方よろしくお願いいたしますという文章になっています。この調査の実施は強制ではなく、市教委または学校教師の自主的判断にゆだねられるというふうに考えてよいのかどうか、その点について御見解をお示しください。

 次に、調査目的と活用について、この実態調査を市教委はどのようにとらえているのか。また、この調査を市教委として独自に活用する考えがあるのかお伺いいたします。  さらに調査の集計に用いる学校用集計用紙、担任には作業シートが配付されています。集計し、市教委や東京都研修センターへの提出はその学習の障害があると言われた子どもたちの数だけなのか、それとも個人名もあわせて提出していくのかお答えいただきたいと思います。

 これは極めて個人情報の保護、プライバシーの漏えいという大きな問題があると思います。この個人情報の保護や管理についてはどのような対策を講じているのかお答えください。

 あらゆる調査は調査対象の合意を得て行うものです。この調査はすべての子どもの学習面、行動面にわたる詳細な調査です。調査内容は障害のある、なしであり、社会的な差別につながるものです。保護者、本人への説明と、合意を得るという手続を踏んではいません。保護者や本人の知らないところで秘密裏にこの調査が行われることは問題です。なぜ説明と合意を得るという経過を経なかったのでしょうか、お伺いいたします。

 次に、特別支援教育のあり方について伺います。

 ことし3月、文部科学省の調査研究協力者会議の調査報告書、これは今後の特別支援教育のあり方についてという報告書ですが、出されています。また、5月には都教委から、東京都における心身障害教育の今後の基本的な方向の中間まとめが出されました。これは両者とも心身障害教育をこれまで特殊教育と言ってきたものを、特別支援教育と言いかえ、障害児を支援するという考え方で、今後の特別支援教育のシステムを変えようというものです。文部科学省の最終報告の特徴は、1点目として、子どもの個別のニーズに応じた支援計画を重要視する。2点目に、小中学校全校にコーディネーターを置く。3点目に、地域で特別支援教育の連携体制を整え、システム化する。4点目に、現在の盲・聾・養護学校を障害種別をなくした特別支援学校として、地域センターとしての役割を持たせるよう法改正も含めて検討していく。5点目に、小中学校にある特殊学級をなくして、在籍者はすべて通常学級籍とし、そのかわりに特別支援教室を置いて、通常学級にいるLD、ADHD、高機能自閉症児などを含めて通級するような形にしていくことを検討する。6点目として、特別支援教育体制の専門性の強化が挙げられています。東京都も同様の方向であります。この心身障害教育の転換については、さきの第2回定例議会でも議論、質疑がかわされました。都教委の中間まとめについての見解として、教育長は、全体としてノーマライゼーションの推進という点で意義があると考えていると答弁をされ、学校教育部長は、障害を持つ子の身障学級から通常学級への在籍について、従来の適正就学についても一部の保護者からいろいろと批判があった。そういう観点からも今回の見直しに至ったんじゃないかと思っているという答弁をされております。今回の特殊教育から特別支援教育への移行は、社会のノーマライゼーションの進展を踏まえたものとして市教委は認識していると受け取ることができます。

 ノーマライゼーションとは、障害者など社会的支援の必要なすべての人たちに普通の市民と同じような通常の生活状態を提供すべきであるという考え方です。障害児教育とのかかわりでは、障害児と健常児とを分けて教育をする特殊教育、すなわち分離教育ではなく、両者が同じ場所で、すなわち普通学級で学ぶ統合教育を指向する考え方として広がっています。国連のこどもの権利条約、あるいは1994年のインクルーシブな教育の原則を採択したサマランカ宣言など、世界的な動きとあわせて文部科学省、あるいは東京都の特別支援教育への移行について、ノーマライゼーションの観点からどのように市教委は評価をしているのかお答えをいただきたいと思います。

 あわせて、統合教育やこれまでの心身障害児学級での特殊教育の評価などについてお答えいただきたいと思います。

 特別支援教育では、ひとりひとりのニーズに応じた教育ということが言われています。だれのニーズに応じることになるのでしょうか。もちろん子どもひとりひとりであるべきですが、子ども自身や保護者の意向が無視され、専門家や教師によってニーズが決定されるということはないのでしょうか、お伺いいたします。

 今まで適正就学で養護学校などへの通学を勧められても、普通学校へ行きたい、普通学級へ行きたいという希望はなかなか受け入れてもらえませんでした。今日では保護者の粘り強い教育委員会や学校との話し合い、そして周りの人々に支えられて多くの子どもたちが普通学級に在籍し、ともに子どもたちと学んでいます。そういう子どもたちがたくさん八王子の中にもいます。子どもの望む教育的支援を受けられない状況がこれまで続いてまいりました。この特別支援教育への転換によってこのような状況は改善されるのでしょうか、お伺いいたします。

 次に、高額医療費の償還払い制度についてお伺いいたします。

 高齢者の償還払い制度については、昨日も他の議員から質問があり、老健では各個人への通知、領収書を不要としていること、1回の申請のみなど、100%の償還に向けて努力をされているとの答弁がありました。また、国保でも国に対してよりよい改善策を市長会を通じて意見を提出していくというような答弁がございました。私が市の担当者よりいただいた資料でも、高齢者の老健の償還払いの部分では、昨年10月からことしの3月までの診療分の申請率は92.2%。国保では、これは4月分の診療分までですけれども、83%。69歳以下の高額医療費の償還では、92%の申請率となっています。全国平均よりもより高い申請率になっておりますので、市の努力の跡が認められるわけであります。昨年10月、老人保健法の改悪によって定額制度が廃止され、定率1割、高額所得者については2割が導入され、自己負担限度額も引き上げられました。そして、老健対象者にも高額医療費の償還払い制度が医療費抑制の目的もあって導入されました。償還払いの制度は、払い戻しの手続の煩雑さに加え、払い戻しは3ヵ月先で、支払い額の増加と、高齢者にとってはお金と手間の負担を大きくしています。手間の負担、手続の負担を軽減し、償還率を100%にするために、未申請者への個別対策が今後も問われてくるというふうに思います。特に高齢者については再度の通知や、電話、訪問などによって申請率を高めることなどの努力が必要なのではないかというふうに思いますが、100%の償還率に向けてどのように今後の対策をとられていくのかお伺いいたします。

 また、他の自治体では事前に対象者全員から申請書の提出を受け、未申請の発生を防ぐというような手だてもとっておりますし、申請ではなく、自動払いの制度にすれば、これはもう完全に高齢者の手間をかけずに済むということになります。今後償還率を上げていくため、すべての人々にきちんと払い戻しをするためにどのような対策をとられるのかお伺いして、1回目の質問を終わります。


◎【萩生田富司議長】 教育指導担当参事。                   
 東京都の行いました調査につきましての御質問でございます。

 まず、妥当性があるのかということでございますが、この調査の目的につきましては、今後の特別支援教育の推進に向けた基礎的な資料として活用を図ることでございます。そのために東京都が全区市町村で行った調査でございまして、これは自主的にやるものではなく、全校で行うことに意味がある調査というふうにとらえております。

 また、経過でございますけれども、今月19日に市教委で八王子の各学校の分は取りまとめまして、教職員研修センター研修課で集計いたします。分析もそこで行われます。集められるデータにつきましては、数値のみでありまして、個人情報が学校から流出することはございません。

 プライバシーも、作業シートも使うというふうなことがございましたが、作業シートにつきましても必ず使うというものではなくて、集計の際に必要とあらば使うということでございまして、これは外へ出るものではなく、同じ意味でプライバシーの保護対策はできているというふうにとらえております。

 保護者等の了承を得た調査なのかということでございますが、この調査自身が児童、生徒ひとりひとりの障害の有無、これを調査しているものではございません。全体としての通常学級における特別な教育的ニーズのある児童、生徒を把握するためのものでございます。東京都教育委員会は今後の特別支援教育のあり方を探ることが目的だと言っておりますので、各学校に事前に保護者に説明するべき調査ではないというふうに回答しております。市教委としても同様にとらえて調査に協力しているところでございます。



◎【萩生田富司議長】 学校教育部長。
 私の方からは特殊教育から特別支援教育への転換についての本市の考え方についてまずお答えしたいと思います。

 文部科学省の今回の最終報告によりますと、固定性の学級、また通級の制度を見直しまして、通常の学級に在籍した上で必要な時間のみ特別支援教室で指導を受ける。障害の種類ごとの学級による指導から、LD等新たな障害を含めた各学校に設置する特別支援教室で教育を行うという方向に転換することなどが提言されております。全体としましてはノーマライゼーションを推進させようという考え方でございまして、本市も同じ考え方の上に現在検討会の中で検討を図っているところでございます。

 また、従前の本市の身障教育の評価でございますが、従来の身障教育につきましては、障害の種類や程度に応じた教育の場として、障害のある児童、生徒の教育の機会確保のために重要な役割を果たしてきたというふうに認識しているところでございます。

 次に、ニーズに応じた教育と言われるけれども、だれのニーズなのかという御質問でございますが、障害のある児童、生徒ひとりひとりの教育的ニーズに応じて適切な教育支援を行うものでありまして、児童、生徒の教育ニーズについて、保護者の要望等を踏まえながら、学校において把握し、個別指導計画に反映させていくものでございます。

 最後に、いわゆる統合教育の促進についてでございますが、特殊教育から特別支援教育への転換によりまして、従前の身障教育がなくなり、一般の児童、生徒とともに授業を受け、必要な場合のみ特別支援教育で授業を受けることになります。したがいまして、いわゆる統合教育は促進されるものというふうに考えております。


◎【萩生田富司議長】高齢者・障害者担当部長。                  
  高額医療費の100%償還ということでございますけれども、未申請の方々への償還につきましては、広報等を通じまして償還制度の周知を図っていきたいということが1点ございます。

 それから早期に再勧奨通知を送付いたしまして、そういった意味では未申請者がなくなるような形に努めてまいりたいというふうに考えております。



◎【萩生田富司議長】 市民部長。                   
  国民健康保険の高額療養費の未申請者に対する対応でございますけれども、申請100%に向けて老人保健と同様の対応をしてまいりたいと、このように考えております。

 また、受領委任についての考え方でございますけれども、あくまでも償還払いが原則と考えております。これは昨年の4定でも答えておりますけれども、市としては受領委任払い制度についてはできないと、このように考えております。医療機関への支払いが高額のため負担が大きい方につきましては、貸付制度の利用をお勧めするなど、その都度御相談に応じております。



◎【萩生田富司議長】第40番、井上睦子議員。                   
  まず、教育の問題でお伺いいたします。

 実態調査については答弁が幾つかありました。調査に至る経過について、どのように説明会を学校現場に対して行ったのか等、詳しく御説明をいただきたいというふうに思います。

 そして、これは文書としては依頼であって、先ほど答弁の中でも調査に協力をしているということでございました。したがって、協力ということであるので、これは任意の調査として受け取ってよいというふうに考えてよろしいでしょうか。強制ではないと。したがって、学校側あるいは教師が実態調査に協力をするかどうかというのは自主的な判断だというふうに受け取ってよいのかどうか。その点についてお答えいただきたいというふうに思います。

 調査目的等については、先ほど依頼文書の中にあった項目でお話がありましたけれども、市教委としてはこの数値を今後活用していくというようなことになるのかどうか、その点についても明確にお答えいただきたいというふうに思います。

 提出はその数のみということでありまして、個人名は出さないということでした。個人情報の保護の対策はとられているということでありましたけれども、どのようにとられているのですか。その辺も明確にお答えいただきたいと思います。

 実態調査は目的が不明確であります。内容は文部科学省が実施した全国調査と全く同じです。文部科学省の抽出調査の留意事項では、本調査は担任教師による回答に基づくもので、LDの専門家チームによる判断ではなく、また、医師の診断によるものでもない。したがって、本調査の結果はLD、ADHD、高機能自閉症の割合を示すものではないことに注意する必要があると書かれており、LDなどの出現率について、数字上意味を持たないことを明示しています。今回の調査は実態を把握するということにしても、その数字上意味がない、意味を持たないとなれば、今回の調査の目的はなくなってしまうわけでありますし、その目的がなくなるだけではなくて、この調査自体が全校の子どもたちを対象にする必要も全くないというふうに言えるのではないでしょうか。全国の調査でもすべての子どもたちを調査しているわけではありませんし、全く私は文部科学省の留意事項、そして後に申し上げますけれども、調査内容項目の問題点からも、目的はないのではないかというふうに思いますけれども、再度その目的をどのように市教委はとらえて協力をしているのか伺いたいと思います。

 調査内容の問題でありますけれども、調査項目は主観でしか答えようのない抽象的な質問項目が多過ぎます。先ほども紹介をいたしましたけれども、行動面での様子、これは学校の中での対人関係などの様子について答えるわけですが、大人びている、ませている、これが「いいえ、多少、はい」の3段階で回答するようになっています。また、他の子どもは興味を持たないようなことに興味があり、自分だけの知識世界を持っている、独特な声で話すことがある、独特な目つきをすることがある、他の子どもたちからいじめられることがある、独特な表情をしていることがある、独特な姿勢をしていることがある、これが「いいえ、多少、はい」の3段階に分かれて、これが点数化され、ある一定のポイント数になれば障害を持った子どもの数に数えられるという実態調査であります。独特な表情や独特な姿勢、独特な声で話すというのは極めて主観的なことでありまして、個々人の担任教師が本当に客観的にこのことを評価できるかどうか大変疑わしいと思いますし、各担任に評価訓練も全く行われていません。逆に教師の子どもを見る視点がゆがめられてしまいます。他の子どもたちからいじめられることがあるという子どもは障害を持つ子どものカテゴリーに入れられてしまいます。いじめられる子は障害を持つというふうに調査の過程で調査項目が障害をあらわすものという偏見が生み出されるおそれがあります。

 LD、ADHD、高機能自閉症の診断は医師でもとても難しいとされ、同じ病名でも個々人の差がとても大きいとされています。医師でもない担任が十分な障害についての認識や専門的知識がないまま判断を下す可能性が大きくなります。これは誤解や偏見の拡大に通じ、教育現場にはふさわしくないものであります。先ほど調査内容については妥当性があるというふうに市教委は見解を示していますが、先ほど申し上げた調査項目を主観的に教師が評価していくということについて、本当に妥当性があるのでしょうか。問題こそあれ、妥当性はないように私は考えますけれども、その点について明快にお考えをお示しいただきたいと思います。

 そして、内容が不適切なことに加え、調査自体が子どもの人権侵害になるのではないでしょうか。先ほど数のみの調査なので、本人や保護者の同意を得なくてもいいというふうに言われました。しかし、75項目にわたって調査をされる子どもは特定の子どもであるわけです。そして、学級担任用の作業シートに配られたのは全生徒の氏名を書ける欄があるという内容にもなっています。この調査を指示どおりまじめにやる教師たちは、それぞれの例えば40人の学級であれば40人の子どもを想定して評価をしていくのではないでしょうか。都教委や市教委に報告されるのは数だけであっても、実際の行為としてはひとりひとりの子どもを75項目にわたって評価をしているわけであります。この調査が一般社会で行われたら大きな社会問題となります。あるグループで、またある職場で心身への体制を確立するという目的を持って、同意なくこのような調査をすれば、人権侵害となります。学校ではどうして許されるのでしょうか。

 八王子市の個人情報保護条例は、個人情報の収集の制限を定めています。社会的差別の原因となる、またはなり得る事実に関するものの収集をしてはならないというふうにしています。障害のあるなしは、社会的差別の原因となります。都の研修センターは調査実施要綱の中で、質問項目を児童、生徒に直接質問することは絶対にしないでくださいというふうに記し、7月25日付の事務連絡の文書では、調査用紙等が校外に流出することがないこと、作業シートは適切に管理をし、個人情報などが流出することなどの事故が発生しないよう万全を期するよう求めています。このことからも明らかなように、差別の原因となる個人情報だと、調査自体が人権侵害だと、それだけの問題を都の研修センターも認識しているということのあかしではないでしょうか。以上のように個人情報保護条例の精神からもこの実態調査はやってはいけない調査です。したがって、調査の中止や、個人情報である調査結果、作業シートの完全廃棄をすべきだと考えますけれども、市の見解をお伺いいたします。

 次に、特別支援教育について伺います。

 ノーマライゼーションの観点から今回の特別支援教育はそれを推進させるという考えが出されました。そして、統合教育をも促進させるものだという学校教育部長の御答弁でありました。だれのニーズに応じることかということについては、子どもの教育ニーズについて、保護者の要望を受け、学校側が把握し、個別計画を立てるということでありまして、子どものニーズに応じるということが明らかになりました。1994年、スペシャルニーズ教育に関するユネスコの世界会議で宣言されたサマランカ宣言では、インクルーシブ志向、包み込むという意味を持つわけですけれども、それを持つ通常の学校こそ差別的態度と戦い、すべての人を喜んで受け入れる地域社会をつくり上げ、インクルーシブ社会を築き上げ、万人のための教育を達成する最も効果的な手段であり、さらにそれらは大多数の子どもたちに効果的な教育を提供する。そして全教育システムの効率を高め、ついには費用対効果の高いものとするというふうに統合教育への流れをつくってまいりました。そしてそれを今も推進しています。その宣言は、高度な政治的な予算的優先権を与えることをすべての政府に要求、勧告しています。

 今定例議会でも他の議員から介助員の導入、指導員の増員を求める質問に対し、学校教育部長は、就学基準の変更がないと、介助員の導入には否定的な答弁でありました。まだ適正就学の考え方で財源を考えていないという問題があります。2003年度から特別な事情がある場合は市町村の判断で普通学級に入学可能となった就学認定の考えを受け、埼玉県は2004年度から全障害児に普通学級への在籍を認めるというふうになります。また、宮城県ではやはり知的障害を持った児童の通常学級への就学支援のため、非常勤講師の雇用支援を実施するなど、自治体独自の統合教育、インクルージョンへの教育に向かって動いています。国や都の基準に準ずることなく、こうした特別支援教育がノーマライゼーションあるいは統合教育への促進となるならば、自治体も独自の財源を設けて主体的な取り組みが求められます。人的配置や施設面でのバリアフリー化がこれからは特別支援教育によっても促進されなければならないというふうに考えています。特別支援教育が口先だけのノーマライゼーションあるいは統合教育ではなく、きちんとすべての子どもたちが望む支援をするためにどのような財源的保障をするかが大変大切なことであります。この財源的な保障についてどのように考えておられるのかお伺いいたします。

 先ほど答弁がありましたように、市でも特別支援教育対策委員会が設置され、特別支援教育の具体化に向けて検討が始まりました。ことしの10月には当面の対応策等中間のまとめ、来年3月には最終のまとめというふうに言われております。大きな転換であるにもかかわらず短期間での検討であり、委員には当事者、保護者などは入ってはいません。ニーズをとらえるのであれば、委員会への当事者や保護者の参加、幅広い意見聴取、そして中間のまとめや最終のまとめに対してもパブリックコメントをすべきではないかというふうに思います。特別支援教育については、現在の心身障害児学級がなくなってしまうというふうに、現在心身障害児学級に通っている子どもたちや保護者からの不安、また、普通学級に在籍する障害を持つ子どもにとっても、特別支援教育へ強制をされるのではないか、望まない特別支援教育へ行かされるのではないかというような不安が出てきています。それぞれが望む教育的支援ができるよう、慎重で十分な検討が必要と考えます。検討会への保護者の参加、そしてまた幅広いパブリックコメント、あるいは本人や保護者の希望を第一に尊重するという特別支援教育のあり方についてお答えいただきたいと思います。

 以上で2回目の質問を終わります。


◎【萩生田富司議長】教育指導担当参事。                   
  調査のことにつきましてお答えいたします。

 もう一度申し上げますけれども、この目的は、東京都の公立小中学校の通常の学級に在籍するLD等特別な教育的支援を必要とする児童、生徒の実態を把握することでございます。これは障害の調査ではないということで、そのことが根幹にあるというふうに考えております。

 また、説明会でございますけれども、この要綱を学校に配付する前に全校を集めまして、指導主事から詳しく説明したところでございます。その中ではプライバシー保護につきましての方法も、先ほど御質問者がおっしゃられたような形で説明をいたしたところでございます。これにつきましては今後とも徹底してまいりたいと思っておりますけれども、提出するもの自体が、個人のプライバシーに関係があると思われるような作業用シートはつくってもつくらなくてもいいし、つくったとしても学校でもって廃棄するように指導しておりますので、個人名が漏れることはまずない。ただ、この調査はこれからノーマライゼーションの方へ向かっていく中で、実際に普通よりも手のかかる子どもがどのくらいいるのかというふうなことを把握しておくことというのは必要なことなんです。その趣旨を市教委も理解いたしまして、これは都の調査といえどもきちっとした対応をするようにというふうな指導をいたしました。各学校でやってもいい、やらなくてもいいということを担任が判断するというものではないと思います。もしどうしてもというふうな場合でしたら、学校として校長の方からそのような申し出があろうかと思いますけれども、今のところそのようなことはございません。御理解をいただいているものというふうに考えております。

 あと、教師の主観に頼ることになるのではないかというようなことがございました。特に医学的な知識も専門家ではないので、そんなことが見れるのかというふうなことがございましたけれども、医学的な知識というものが十分にないにしても、教師は教育の専門家でございます。その教師、担任がいつも見ている子どもを見て、この子はちょっとこういうところがあるなというふうなものをつくって、それをまた主幹が見たり、学年主任が見たり、あるいは教頭が見たり、多くの目で見るように指導しております。そういう意味では現段階で十分な客観性があるというふうに考えております。そういった意味から、誤解にもつながらないように配慮しながらやることはもちろんでございますが、中止をするというつもりはございません。


◎【萩生田富司議長】学校教育部長。                   
 私の方からは特別支援教育についてお答えしたいと思います。

 まず、特別支援教育移行に際しての財源問題でございますけれども、まだ国の方の協力者会議の方針が出たところでございまして、それを受けて東京都が今議論をして、この10月には一定の報告が出るという段階でございます。実際に国の方が考えている特別支援教育への移行は19年度というような先のことでございます。私の方もそういった国の報告書、また東京都の中間報告を受けまして、7月から八王子市の検討会を、先ほどもお答えしましたとおり立ち上げて議論に入ったところでございますが、国の方針、都の方針が財源問題を含めてまだきちっと決まっておりません。したがいまして、財源問題、これにつきましては、国の方針、都の方針が出た後に市独自の方策も考えながら対策を講じていきたいというふうに思っております。

 それから、本市のただいまお話ししました対策委員会へ保護者が入っていないという問題でございますが、保護者につきましては、対策委員会要綱に団体関係者という規定がございまして、当初保護者の団体を入れるべく奔走したわけでございますが、統一的な団体がなかったということから選出に至らなかったものでございます。今後は保護者個々人の意識調査を含めて意見集約を図り、検討会の中に生かしていきたいというふうに思っております。

 それから、パブリックコメントでございますが、委員会から提言をいただきます。これを施策に移すときにはホームページ、また広報等を利用し、パブリックコメントを求めていきたいというふうに思っております。


◎【萩生田富司議長】第40番、井上睦子議員。                   
  実態調査の問題について、必要な調査だ。実態を把握する。障害の把握ではないということなんですけれども、文部科学省の調査では、数値が6.3%、そして学習面や行動面でどのような傾向を示す子どもが何%存在するかというふうに統計が出ているわけです。同じ実態調査ですから、その内容というのはやはり行動面、学習面でどのような障害を持っているかという、その障害自体を調査していることではないでしょうか。だから実態の調査だから必要だということではなくて、個々人の子どもの障害の有無についての調査をして、その数値だけが報告はされるけれども、調査はその子ども自身をしているということになると思います。したがって、それは八王子市の個人情報保護条例の精神にもあるように、収集してはいけない個人情報に当たるのではないかというふうに思うわけです。先ほども申し上げましたけれども、考え方を切り替えて、学校教育の場でこの実態調査をやって、まだ保護者も正確に知らない、子ども自身も自分がどのように評価をされたのか知らないから、大きな問題になっていないかもしれませんけれども、実際には8月12日の新聞報道でもあったように、不信の声を上げているという当事者団体などもあるわけです。これが一般社会の中で行われたときには大変大きな社会問題になるというふうに私は考えますけれども、参事はこれを学校教育ではなく一般の社会に置きかえたときには大きな人権侵害の調査項目だというふうに認識はないのでしょうか。その点についてお考えを示していただきたいと思います。あるとすれば、やはり学校の中でもそのような調査をやってはいけないというふうに私は思うわけです。その点について再度明確にしていただきたいというふうに思います。

 最後に、ともに学び、ともに育つ、そしてともに生きるというユネスコのサマランカ宣言の精神について、障害の有無に関係なくすべての子どもが一緒に学ぶ教育を目指すことについて、今後財源的な問題は国や都の方針が出てから市独自の政策も含めて考えるということでありましたけれども、こうしたインクルージョン、あるいは統合教育、ノーマライゼーション、ともにお互いに学び合いながら育っていくという子どもたちの教育について、学校現場をよく知る教育長としてはどのような方向で今後取り組んでいくのか、その意義について、また財源保障について御見解をお伺いして、質問を終わります。



◎【萩生田富司議長】教育指導担当参事。                   
 この調査が学校ではなくて一般の社会だったらどうかというふうな御質問、大変私の立場で答えていいのか、難しいことなんですけれども、私見ではございますけれども、やはり学校と一般社会というものを同じに考えること自体もこの場合は少し違うのかなというふうに考えます。また、例えばこれを一般社会でもって置きかえるとしたら、あなたの周りでもって日ごろ大きな声を出して迷惑をかける人が何人かいますかみたいなことで、だれだれさんですかと聞いているわけでは決してないわけなんです。この学校の調査につきましても、こういう子はだれですかと聞いていることじゃないわけです。これからさまざまな配置をしていこう、新しい施策でもってノーマライゼーションを進めていこうとする中で、どんな施策をしたらいいのかということを考えるための基礎データだというふうに思います。これは一般社会にそのまま置きかえれば、やや矛盾している部分もあろうかと思いますけれども、これは学校教育という中でまだまだこれから未完成で、発達を促していく子どもたちを対象とした調査ですから、十分許される範囲のものではないかなというふうに考えております。そういう意味で御質問には正対していないかもしれませんけれども、この調査の有用性につきましては今まで述べたとおりでございます。


◎【萩生田富司議長】成田教育長。                   
  ともに生きる教育に向かって、特別支援教育、これへの転換等々が今されるというこの時点についての教育長の考え方というような御質問をちょうだいいたしました。

 まさに今いくつかの御質問をいただいたわけでございます。この調査につきましても、児童、生徒の生活や学習上の困難を改善または克服して、適切な教育や指導が受けられるようにするための研究や施策の改善に活用するものである。これが調査の目的であります。私たちは今特別支援教育への転換に向けていろいろな資料、あるいはどのように本市においてそれを施策として展開していくかというようなことが強く、そしてスピーディーに求められているところでございます。そのために検討委員会も立ち上げました。かなりの回数をして今やっているところでございます。その点でもまだ見えない部分がございます。ですから、財政的な部分を問われてもまだはっきり答えられるものではございません。ただ、私たちがスケジュールとして持っている部分については、それぞれの部署で答えさせましたけれども、私どもこの特別支援教育への転換、これを本市でやはり十分に検討して、そしてきめ細かく丁寧にひとりひとりの子どもに合って、そして展開していきたい、そんなふうに思っています。ノーマライゼーションが少しでも進むように、そのように考えております。