◎【萩生田富司議長】第40番、井上睦子議員。
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2004年度八王子市一般会計予算案並びに各特別会計予算案及び関連する諸議案に対して、生活者ネットワーク・社会民主党を代表して、反対の立場から討論を行います。
2004年度予算は、三位一体改革の初年度でした。三位一体改革は、地方分権を保障するために、地方への税源移譲を目的としたものでしたが、三位ばらばら改革ともやゆされるように、国庫補助負担金の1兆円もの大幅削減と、あいまいで不十分な税源移譲、さらに地方交付税の激減によって予算編成作業が困難をきわめる自治体が全国で発生したと言います。
本市では、その影響額は当初予算には反映されておりませんが、減税補てん債125億円の一括償還や市税収入が3年連続して減額をし、対前年比約1億円の減収という厳しい状況での予算編成でありました。市税収入の減額は、法人税の増収が見込まれる反面、個人市民税は回復せず、市民の給与所得の減少やリストラなど、依然として市民の生活の厳しさを明らかにしています。こうした中で、予算編成には、多額の市債発行による大規模な公共事業等の実施については抑制をし、厳しい市民生活を支える温かな政策の視点が求められますが、この視点が充分ではなく、欠落していると言わざるを得ません。
2004年度予算の中で、4年間凍結されていた市職員採用の再開や、精神障害者へのヘルパー派遣、少ない予算額ですが、ドメスティック・バイオレンス対策として緊急避難のための宿泊費の助成や、公共交通の利用を促進するパーク・アンド・バスライドの試行、また、東浅川保健福祉センターで導入されている新エネルギーの活用としてのコージェネレーション・システムの導入などは評価をいたします。
しかし、行革と職員採用の凍結によって、不安定な身分と賃金水準の低い嘱託職員やパート、アルバイト職員が増加をし、さらに障害者の雇用は法定雇用率2.1%にも達していません。障害者の雇用、非正規職員の労働条件等、早急に改善するよう求めます。
また、指定管理者制度の導入によって、市は、今後、保育園を初めとする公の施設の管理委託、すなわち公共サービスをNPOや社会福祉法人に加え民間事業者にも開放をしていく方向です。指定管理者制度の導入は、コスト削減だけがひとり歩きをし、サービスの質やそこで働く人々の労働条件の低下があってはなりませんし、営利を目的とする企業の参入は歓迎できないところであります。
市民の生活安全対策として、八王子駅周辺の防犯カメラの維持管理費補助金が計上されました。防犯カメラは、その活用によっては市民を監視するカメラにもなり、市民のプライバシー権、肖像権を侵害しかねません。防犯カメラ、監視カメラ設置のルールが未確立の中で、公共の空間へのカメラが設置されることは、また、条例や補助金で市がそれを誘導することは、監視社会への危険性があり、大変大きな問題だと言えます。
清掃事業費については、ごみ減量施策としてごみ有料化と戸別収集、資源化システムを導入します。戸別収集の経費や指定袋の製造、販売経費、資源収集経費など、計9億7,000万円が増大をし、この経費は、今後毎年発生する経費となりますが、これは有料化による手数料に相当します。有料化は、ごみ問題をひとりひとりの問題として考えるきっかけにはなります。有効性は否定をいたしませんけれども、戸別収集については、集合住宅が約半数を占める本市で、対象となる世帯は半数にとどまり、費用対効果の問題や住む場所によって受けるサービスの内容が異なるという不平等を生じます。ごみ問題を根本的に解決するには、啓発活動や環境教育への取り組み、生ごみの堆肥化やバイオマスエネルギーの利用といった新たな資源化システムや発生抑制策の構築が不可欠であります。戸別収集費用にかかる費用は年間約3億5,000万円になりますけれども、これだけの予算は、ただ集めることに費やすべきではなく、ごみ減量のための啓発活動や新たな資源化システムに使うべきであります。厳しい市民生活の中で市民が負担をする手数料は、その有効性を熟慮して使うべきだと考えています。ごみ処理と資源化にかかわるコストを踏まえた上で、ごみの長期計画を策定せず有料化を導入することは、市民への説明責任を果たすものではありません。
次に、八王子駅南口再開発についてでありますけれども、市民の経済状況の厳しさや市税収入の現状を考えると、市民会館建設を含めた事業計画に着手をしていくことは、その採算性や投入する費用の膨大さから、事業の妥当性を充分検証する必要があります。そのためには、再開発事業にかかる費用及び進捗状況など、積極的な市民への情報公開が求められています。
産業振興として、中央道八王子インター北地区の商業流通施設の基盤整備や物流拠点の整備計画が上げられています。この計画は、圏央道のフルインター化や、北西部幹線道路の整備が大前提となる計画でありますけれども、現在の経済状況や道路整備の進捗状況からいって、トラック輸送から鉄道輸送へのモーダルシフトの流れがあるように、その実現性には大きな問題があります。また、住環境の悪化や、豊かな自然環境の破壊を招くことになり、この物流構想は撤回をすべきであります。
農林業は、循環型社会を形成し、自然と人間との共生・共存をしている産業分野です。食の安全を求める市民の声は高まっていますが、地域農業活性化事業や酪農支援事業が本年度予算ではなくなり、農業振興費は前年度比14%の減額となりました。農業活性化事業を引き続き行うとともに、農業が続けられるよう援農の仕組みづくりや、学校給食への地場産業の活用拡大などの取り組みが必要です。森林整備事業や林業の振興は、産業としても水源の涵養や自然環境の保全の点でも重要であります。しかし、現在の市の政策は、国や都からの支援に頼っており、市独自でNPOや市民との協働でバイオマスエネルギーの利用など、地元の木材を利用した製品の利用を含め雇用の場としての活用をするなど、市独自の政策の展開が求められます。
次に、教育費ですが、特別支援教育については移行計画が示されていますが、現実的な予算の裏づけが全くありません。こうした中で、この計画を進めることは、ノーマライゼーションを実現するどころか、かえって現場に不安と混乱を招くことになり、予算の配分や専門職の配置は不可欠であります。
次に、学校予算ですが、小中学校の備品購入にかかわる予算は、2000年度から減り続け、2000年度比60%にも達していません。これは、大幅減額であり、学校現場からは悲鳴さえ上がっています。
また、市がまとめた教育改革アクションプランでは、学校選択制の導入や学力調査の結果の公開、習熟度別学習、やる気のある学校には予算を他の学校と差別化して重点配分をするという傾斜予算の配当、また、子どもたちの教育環境にかかわる人員の削減など、数多くの問題があります。今後、市はこのプランをもとに教育改革を進めるとしていますけれども、このアクションプランは学校間格差をさらに広げ、管理と競争を頼りに教育改革を進めるもので、決して子どもたちは幸せにはなりません。少人数学級でひとりひとりを大切にした教育を行うべきであります。
市教委は、都教委と同様、卒業式、入学式における日の丸・君が代の扱いを事細かく決め、不起立など、職務命令に違反する教師は処分をするという強権的な対応をしています。これは、子ども、教師への日の丸・君が代の強制にほかならず、憲法の定める思想信条の自由を侵害する許しがたいことです。この強制は、日の丸・君が代を通じて愛国心という考えを子どもに押しつけようとするもので、卒業式での異常な緊張状態が生まれているという状態は、明らかに戦前型の教育への回帰を志向するものだと思います。
また、教員の人事異動では、校長の人事構想によって、3年未満でも異動の対象になり、校長への権限が集中いたしました。新年度の異動では、昨日の教育委員会での資料によりますと、3年未満の転出は小中あわせて56人、8年以上規定を超えて残留できる教員は67人となっていました。これは、教職員間の対等で平等、そして民主的な職場の関係を阻むものとなっています。また、校長のワンマンさを助長する事態になりかねないと考えます。
今、私たちの社会は大きな転機に差しかかり、3つの危険な流れがあります。1つは、自衛隊のイラク派遣、これは、憲法9条に違反をして日本を軍事化していく方向です。また、有事関連3法が昨年成立をし、国民保護法制も公表され、基本的人権を含む国民総動員体制が構築されようとしています。
2つは、監視社会への傾斜です。監視社会とは、市民の行動を日常的、組織的に監視し、管理する国家社会の体制です。この象徴は、住基ネットの成立、稼働であり、監視カメラの増設や生活安全条例の制定などによって明らかになっています。
3つは、教育における日の丸・君が代の強制、そして、愛国心の押しつけや学力テストなどの実施による競争の激化です。
市長は、イラクへの自衛隊派遣や、国民保護法制に賛意を示しています。本市の予算は、こうした危険な流れを反映したものとして、不安と危機感を感じています。こうした点からも問題があると考えます。私たちは、軍事化ではなく平和主義に、監視社会ではなく人間の自由と尊厳に、そして、教育では、教育基本法を前提として子どもたちの人権が尊重される社会を目指しています。平和や自由、人権などの価値にこだわり、それを擁護する憲法を尊重する市政を強く望み、そのために私たちは力を尽くすことを表明して討論を終わります。
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