◎【萩生田富司議長】第40番、井上睦子議員。                            
 請願第6号、八王子市大谷町から大字7丁目にある山林の緑地保全地域への指定に関する請願について、生活者ネットワーク・社会民主党を代表して賛成討論を行います。

 富士見町の皆さんを中心に、895名もの署名を添えて提出された請願は、市街地に残る貴重な緑地の保全を求めるものです。緑地保全地域の指定を求めている大谷町から大字7丁目にある山林は、八王子大谷緑地に隣接する一続きのもので、約2.2ヘクタールの面積を有しています。北西部には都立小宮公園があり、この一体の雑木林は、市街地にある緑地として、町並みに四季の変化や人々の暮らしに良好な環境をもたらしています。また、雑木林は、周辺地域の地形の保守や湧水の保全にも大きな役割を果たしています。

 富士見町北斜面の八王子大谷緑地は、宅地造成計画が持ち上がったのを契機として、富士見町自治会から1991年に提出をされた緑地保存を求める請願によって実現をしたものです。大谷緑地は、1994年に緑地保全地域の指定を受け、その後1998年に拡張され、現在約3ヘクタールの面積を有しています。大谷緑地では、環境保全管理のボランティア活動が活発に行われています。八大緑遊会など市民グループが、毎月下草刈りや枯れ木の伐採、植樹などを行っており、緑地はよく手入れをされ、自然体験学習や環境講座の支援の場にもなっています。富士見町の皆さんも、こうした活動に参加をしておられます。緑地保全地域制度は、緑地を維持し、守るばかりではなく、そこで市民の多様な活動の展開を促しているとも言えます。開発と緑地保全は相反するものです。開発への厳しい規制や緑地の公有化など、行政の積極的な政策展開によって緑地の保全をしなければなりません。

 緑地保全の指定を求めていた一部の地域、これは、大字7丁目の旧アーチェリー場の場所ですが、現在、雑木林が伐採、抜根され、無残な山肌をあらわにしています。この宅地造成開発は、住宅30戸の建設で許可を受けていたものを、許可を受けていない26戸の宅地造成工事、すなわち違法な工事をしており、付近の人家に防災上の危険を及ぼすとして東京都から指導が入り、一定の防災工事の後、造成工事の中止を言い渡されています。このような事態に至ったことは非常に残念です。この開発は、約7,000立米から8,000立米もの土砂を入れ宅地造成をするもので、貴重な緑地の損失と引きかえに残土の受け入れ地としての意味を持っています。こうした問題を発生させないよう、開発の前に緑地保全の手立てをとることを請願は求めています。1度破壊された緑の回復は非常に困難です。開発手続が始まってしまえば、開発の中で、植栽等によって緑被率を守らせる程度の指導しかできません。こうした開発に対して東京都の指定する緑地保全地域制度は、市街地の緑地や良好な自然の生態系を保護する有効な政策として大きな役割を果たしてまいりました。八王子市内では、大谷緑地を初め11カ所、約60.6ヘクタールもの指定がなされています。委員会では、東京都が緑地保全地域の指定を市街地から市街地近郊、すなわち市街化調整区域の緑地保全へと政策変更したと報告がありましたが、開発が規制されている市街化調整区域より市街地の緑地を守る制度として今後も機能していくべきだと考えます。

 また、八王子市でも緑化基金を設け、90年代は黒木開戸緑地や横川緑地などの公有化をし、緑を積極的に保護してまいりました。現在、市の積極的な緑地保護策はありませんが、緑地保全の取り組みを方針として定めています。ゆめおりプランでは、基本理念に「人とひと、人と自然が共生し、だれもが活き活き生きるまち」として、自然との共生がうたわれています。具体的な施策では、多くの人々に安らぎを与え、潤いをもたらし、防災機能や多面的な環境保全機能を持つ緑地の保全を図るとして、10年間で100ヘクタールの緑地を確保・保全することを目標としています。また、緑の東京計画でも、多摩地区は、緑の率の低下を抑えて現状の緑率80%を維持することを計画の目標としています。こうした目標を達成するには、現存する緑地を守り、失わせないことが大切です。

 委員会の審議の中では、市は当該地について、大谷緑地と連担した緑として緑地保護地区として雑木林を残したいとの見解でした。斉藤助役は、高度成長が終わって人口が横ばいになってきたので、今後は保全の時代である、緑地、住宅周辺の崖線の緑は、開発の事前の手を考えて確保を考えたいとの答弁でした。市民の思いと市の見解やゆめおりプランの理念、施策は一致をしています。緑地保全のために、地権者の方々の同意と協力を得て、大谷緑地と一体の緑地保全に向けて取り組むこと、そして、厳しい財政状況ですが、地権者の意向なども踏まえて、可能であれば八王子市や東京都が土地を買い上げ公有地化してほしいというのが請願の趣旨です。既に開発が始まっている場所については困難さもありますが、違法な工事が行われています。ここには、適切で厳しい指導が必要ですし、残る1.5ヘクタールについては、開発が行われる前に緑地保護や保全のための手立てを市の見解や斉藤助役の答弁に従って講じるべきです。

 また、公有地化のための財政上の措置も、トラスト制度や緑化のファンドの創設、あるいは緑化基金の維持存続策など、市としても早急に対応すべき課題だと考えます。八王子市内の緑は、宅地開発や土地開発、残土の埋め立てなどによって年々減少し、現在は、9,634ヘクタールでしかありません。これ以上の緑の減少に歯どめをかけ、良好な自然と環境を守るための積極的な取り組みを求める本請願に賛成し、討論を終わります。