◎【萩生田富司議長】第40番、井上睦子議員。

〔40番議員登壇〕  
 議員提出議案第8号、中央防災会議に浜岡原発震災専門調査会の設置を求める意見書に対する賛成討論を生活者ネットワーク・社会民主党を代表して行います。

 東海地震は、いつ起きても不思議ではないと言われています。地震は、プレートとプレートの衝突などで起きますが、特に東海地方は日本列島の下に沈み込み、絶えず陸地を圧迫するフィリピン海プレートがその上に乗る陸地プレートの境界面を震源断層として地震が起こると考えられており、かなり内陸で起きやすいと言われています。東海地震は、既に予測間隔の120年がたっており、地震の危険性は時間とともに確実に増しています。

 東海地震で非常に心配なのは、想定震源域の中心にある中部電力の浜岡原子力発電所が大事故を起こし、通常の大震災と大規模な放射能災害とがふくそうして原発震災という極限の巨大災害が起こってしまうことです。政府は、東海地震の予知に力を入れてまいりましたが、十分に予測できないということがわかり、昨年5月、中央防災会議は予知を前提としない防災対策を出し、政府は、東海地震対策大綱を決定をし、災害発生時における広域的防災体制の確立をうたっています。この中で、中央防災会議は、17万棟の建物が全壊をし、約6,700人の死者が出るという被害想定を公表していますが、原子炉が引き起こす原発震災の被害は含まれておりません。

 もし、浜岡で原発震災が起きた場合、研究者からは次のようなシミュレーションや警告が発せられています。京都大学の原子炉実験所の故・瀬尾健氏の原発事故災害予測プログラムを使った同研究所の小出裕章氏のシミュレーションの数値では、最悪の場合、日本の人口のおよそ5.1%が死亡するという警告が出ています。これは、仮に浜岡原発4基のうち3基が事故を起こし、事故発生から7日後に避難した場合、最大で22万人以上が急性障害で死亡、630万人以上ががんで死亡するという恐ろしい被害が予測をされています。

 東海地震の第一人者である神戸大学都市安全研究センターの石橋克彦教授も、原発が突然の激しい地震の揺れに襲われると、最悪の場合、核分裂連鎖反応の暴走や炉心の核燃料の溶融という重大事故が生じる。それらは、水蒸気爆発や水素爆発、さらには核爆発にもつながり、死の灰を閉じ込めるはずの多重構造が破壊をされ、炉心の甚大な放射能が外部に放出されることになると、その被害状況は想像を絶するほど悲惨なものになると警告をしています。

 また、地震や津波被害で、道路や電車などの交通網や通信、ライフラインが遮断されると、避難することも、負傷者を救済することも不可能になり、多数の命が見殺しにされることもあり得ると言われています。さらに、放射能汚染で住むところを失ってしまった原発難民が首都圏に2,000万人から3,000万人も出ると言われています。

 東海地震で原発震災が起きると、地震発生から二、三時間後に原発から放出された死の灰が周辺に降ってくる。また、風向きにもよるけれども、もしも、南西の風が吹いていた場合、その風は間違いなく大都市東京に向かい、多くの死者や発がん患者が出ると予測されるというものです。

 このような大事故は、地震が原因でないものの、旧ソ連のチェルノブイリ原発で実際に起きています。もし、チェルノブイリ級の放射能放出があれば、周辺7都県だけではなく、東北南部、近畿地方まで放射能に汚染をされることになるのです。私たちの住む八王子市も放射能に汚染をされることになります。

 また、原子力情報室の想定では、専門家が予測するような東海地震が浜岡原発を襲った場合の被害をこのように想定をしています。建設中の5号機を除く4つの発電所が運転中に地震に襲われ、施設の安全システムが破壊をされ、さらに原子炉の冷却装置が動かなくなり、核燃料を閉じ込めている容器が壊れて大量の放射能が環境中に放出された場合を想定をしたとき、発電所から風下70キロ範囲内の全員が全身被爆によって死亡し、110キロメートル範囲内の人の半分が放射能や放射線によって死亡するという結果が出されています。

 一方、浜岡原発を運転管理する中部電力は、耐久性は十分確保されているので原発震災は起きないと説明をしています。政府も、発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針により、原発は絶対に安全だと主張しています。しかし、絶対安全の裏づけとされている耐震設計審査指針に大変問題があると多くの地震学者が指摘をしています。指針は、1978年に制定をされています。指針では、浜岡など周辺に大きな地震断層がなければ、マグニチュード7級の直下地震は起こらないという考え方に立っており、最高でマグニチュード6.5を想定すればいいことになっています。

 1982年に着工した浜岡原発3号機と1989年に着工した4号機は、マグニチュード8.5の地震の揺れも想定し、耐震設計を施したとされていますけれども、しかし、問題は、その指針が制定をされる前に着工された1号機と2号機です。その耐震性はとてもマグニチュード8のクラスの地震に耐えられるものではないと言われています。

 また、東海地震は、南海、東南海地震との同時発生を危惧する予測も強まっており、政府は、3つの地震が同時発生した場合の被害を想定をし、想定マグニチュードは8.7と発表をしています。これでは、浜岡原発のすべての原子炉が耐えられなくなります。絶対の安心はどこにもありません。

 浜岡原発の4号機はシュラウドにひびが入っているにもかかわらず運転を再開をしており、耐震性基準が無意味となっています。また、3号機は、シュラウドの全周に324ヵ所ものひび割れがあります。地震が起きたらどうなるのか、これは不安が広がるばかりです。もし、最悪の原発震災が起これば、地震と津波の被害のため、放射能からの避難や原発の事故処理は困難を極めることになります。

 放射能のために地震被災者の救助、救援も広範囲で不可能になると考えられます。南西の風が吹いていれば、風下の首都圏の膨大な人々も長期間避難をしなければなりません。政府の役割は、こうしたあらゆる危険性を想定し、原発事故についても検討し、危険から市民を守るためのあらゆる対策を立てることです。絶対安全であるとして原発に対してほおかむりをすることは許されません。

 そもそも人間のつくったものには予想外の欠陥があり、それによる災害によって欠陥に気がつき、改善していく。こうして科学技術が進歩してまいりました。欠陥を完全にゼロにすることはできませんが、できるだけ減らすよう努力をしてきました。特に災害が大きくなる場合は、あらゆる場合を想定して、万が一にも事故が起こらないよう努めるべきであります。原子炉の安全は絶対であるとして、こうしたことに目をつぶることはできません。研究者からの指摘や、また市民からの不安にこたえるためにも、中央防災会議に浜岡原発震災専門調査会の設置は必要であります。

 そして、被災者の救援や避難の誘導、原発損傷後の補修や原発施設の封鎖などのあらゆるシミュレーションを行い、市民を危険から守る対策を立てることが必要であり、専門調査会の設置を求める本意見書に賛成をして、討論を終わります。