◎【萩生田富司議長】 第40番、井上睦子議員。
〔40番議員登壇〕
〔40番議員登壇〕
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それでは、教育基本法の改正を求める意見書案について質問をいたします。
たくさんの議員から質問がございました。その中で、まだ幾つか不明な点がございますので、お伺いしたいと思います。
意見書の提案内容と改正の具体案については、詳細に自信を持って提案者は語られてないような気がいたします。いつも教育問題に関しては、私とは根本的に教育方針や目的が異なりますけれども、熱心に質問される立場の議員と異なっているように私は思えてなりません。そういった意味からも、教育基本法の改正の具体的な方向について提案者はどのように考えていらっしゃるのかということを詳細にお示しをいただきたいというふうに思います。
教育基本法の改正の内容については、中教審の答申をベースとした改正案を適正だと思っているという答弁があったり、あるいはこの内容については委員に聞いてくれという答弁があったり、あるいはちょこっと変えるだけだという答弁があったり、教育基本法の改正の内容について何を具体的に変えようとしているのか、提案説明でも、この間の質疑を通してもさっぱり明らかになりません。
教育基本法の改正の内容について、詳細に具体的に自信を持ってお示しされないのであれば、ぜひとも今回の意見書は撤回をしていただきたいというふうに思いますけれども、まず提案者に意見書の撤回の意思があるかどうかをお伺いしたいというふうに思います。
次に、教育基本法の改正の内容で、中教審答申についてさまざまな異なった御答弁が同一の提案者からございました。提案会派の方では、中教審の答申を詳細に勉強なさったということでありますけれども、基本的に改正の内容としては中教審答申をベースとして支持し、考えているのか、明確にお聞かせいただきたいというふうに思います。
さらに、6月には与党協議会が改正案の中間まとめをされております。このことについても詳細に承知をしていらっしゃるのかどうか、お示しください。
次に、私は、意見書の案文の中で、青少年の凶悪犯罪や学校崩壊、いじめ、不登校、家庭、地域社会での教育力の低下、学力の低下が教育基本法の改正の理由であるというふうに読み取れます。教育基本法は理念法であります。具体的な教育の内容については、学校教育法や社会教育法、それにかかわる具体的な法制度の中で整備をされております。この理念法のどこに問題があって改正をされなければならないのか。詳細にしていただきたいというふうに思います。具体的には、青少年の凶悪犯罪は、現行の教育基本法の第何条に当たるのか。学校崩壊、あるいはいじめの問題は、教育基本法第何条に問題があって、このような子どもたちが困難さを抱えているのか。不登校は、そして、家庭や地域社会での教育力が低下しているというのは、教育基本法の第何条に由来して、原因を考えているのか。また、学力の低下についても、第何条に原因があるのか。どのように考えているのかを詳細に明らかにしていただきたいと思います。
次に、改正の観点として、伝統・文化の尊重、郷土を愛する心の育成、家庭の意義と家庭教育の重視、道徳的情操の涵養、教育行政の責任の明確化、5点の観点を各条文について改正されるというような内容であります。それでは、伝統・文化の尊重というのは、教育基本法の第何条をどのように変えることなのか。郷土を愛する心の育成とは、教育基本法の第何条をどのように変えるのか。家庭の意義と家庭教育の重視を入れるとすれば、第何条をどのように改正するのか。道徳的情操の涵養というのであれば、第何条をどのように改正するのか。教育行政の責任の明確化をいうのであれば、第何条をどのように改正するのか。条文ごとに詳細にお示しをいただきたいと思います。
次に、第4点目として、提案者の教育観と子ども観についてお伺いいたします。
戦前の教育の反省の上に現在の教育基本法が誕生したことは論をまつまでもありませんし、多くの質問者からも提案をされました。提案者もまた、戦前の教育勅語を中心とした誤った軍国主義教育を反省した教育基本法であると答弁があったように記憶しております。この教育基本法は、戦前の教育が国家のための教育から、戦後の教育基本法は子どもを主体とした教育へ大きく転換をいたしました。私たちは、教育の目的や目標が子どもの人格の形成にあり、そして、ひとりひとりの子どもが成長して、ひとりひとりの人間の価値として個人が尊重されるという社会を教育基本法によって獲得する1947年以降の戦後の社会がありました。こうした戦後教育基本法の誕生を提案者はどのように評価するのか。そして、これは国家のための教育から、子どものための教育として大きく転換をしたこととしてとらえているのかどうかをお伺いいたします。
そして、先ほどから子どもの権利条約の問題が出されました。戦前は、国のために死ぬことは美徳とされてまいりました。そして、その教育が軍国主義を招き、大きな戦争を起こしていったという反省は共通のものだろうというふうに思います。そうした中で、子どもを主体としてこなかったという深い反省があります。こどもの権利条約では、子どもが保護される対象ではなく、基本的な人権を持つ、人間の存在として高らかに宣言したことがあります。私は、教育基本法の誕生とこどもの権利条約の精神が一緒になっている、同一であるというふうに考えておりますが、提案者自身は教育基本法が持つ子ども観、そして、こどもの権利条約がうたっている子どもの権利についてどのようなお考えを持っていらっしゃるのか、お伺いしたいと思います。
次に、愛国心の問題についてであります。
愛国心と憲法の問題については、詳細な答弁がございませんでした。今回の意見書の提案の中には、郷土を愛する心というふうに提案されておりまして、愛国心という言葉は確かにございません。しかし、教育基本法の改正の中で、中教審の答申の中には、日本の伝統・文化の尊重、郷土や国を愛する心と国際社会の一員としての意識の涵養というところで、はっきりと国を愛する心、これは和文でありますけれども、愛国心という言葉と置きかえても、同一の内容が盛り込まれております。愛国心というと戦前の軍国主義のにおいがする。だから、それとは違うものだということを理解してもらうために、国を愛する心という別の言い方をするという考えもありますけれども、しかし、これでは本当に意味が変わるとは思いません。戦前の愛国心と中教審答申のいう国を愛する心とは同一のものであります。愛国心の強制がなぜ問題だったかと言えば、子どもを戦場で死なせていく結果につながったからばかりではありません。ひとりひとりの子どもが自分なりの判断基準をつくることを許されなかったことも同じように問題でありました。
今、提案の文章の中には愛国心という言葉はないので、それについては言及を避ける、あるいは答弁を避けるというのは、日常の提案者の教育に対する考え方からすれば、余りにも消極的ではないかというふうに思います。ぜひ日ごろ提案者がお考えの愛国心について御答弁をいただきたいというふうに思います。これは思想、信条の自由を侵害するということを日弁連も警告しております。中教審の内容については専門家の見解をまつというような答弁もございましたけれども、中教審答申を提案文章の中に出され、そして、このことが1つの改正の大きな議論となっているときに、提案者はこの問題を避けて通れないのではないかというふうに思います。このことに明確にお答えいただけないならば、意見書案は撤回していただきたいということを再度私は申し上げたいと思います。
次に、憲法改正の問題と絡んで、さきの御質問がございました。
教育基本法と憲法は、深く結びついています。そのことは提案者も御承知のことだろうと思います。前文では、「われらは、さきに、日本国憲法を確定し、民主的で文化的な国家を建設して、世界の平和と人類の福祉に貢献しようと決意を示した」とあるように、日本国憲法を確定して、そして、日本国憲法の精神にのっとって、教育の目的を明示しているのが、教育基本法の前文であります。これは教育基本法と憲法が不可分な形であり、教育基本法は準憲法的だと言われるゆえんであります。したがって、憲法改正と教育基本法の改正は、先ほどの質問者からの御質問でもありましたように、自民党の歴代の首相がリンクした改正を唱えてきたのは事実であります。したがって、憲法については勉強していないから答弁を避けるというようなやり方ではなく、正々堂々と、教育基本法と憲法の問題について提案者はどのようにお考えか、明らかにしていただきたいと思います。
以上で1回目の質問を終わります。
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