◎【萩生田富司議長】
第40番、井上睦子議員。  

〔40番議員登壇〕  
 生活者ネットワーク・社会民主党を代表して、2003年度八王子市一般会計決算及び各特別会計決算に反対の立場から討論を行います。

 全会計での総決算額は、歳入では3,063億9,424万円、歳出は3,047億2,797万円で、歳入では前年比マイナス2.0%、歳出ではマイナス1.5%となり、長引く不況や雇用情勢の厳しさを反映したものとなりました。その傾向は市税収入に顕著にあらわれています。一般会計の歳入は、前年比マイナス4.1%の820億円で35億円の減収となりました。そのうち個人市民税は、給与所得の減少によって、前年比マイナス5.4%、17億円の301億円となっています。個人市民税の納税義務者は増加をしておりますけれども、納税額が減少する原因は、正規労働者よりパートや派遣などの非正規労働者がふえていることであり、また、年金生活者への移行が増加をしていることにあります。今後もこうした傾向は続くことが考えられ、自治体の民間委託や指定管理者制度の導入は、非正規労働者の増加に拍車をかけることになります。景気回復が言われていますが、企業は徹底的なリストラをしており、景気回復が市税の増収につながるというのは楽観的な見方で、三位一体改革もさらに自治体の財政を圧迫することが予想されます。市民生活は、個人市民税所得割の段階別で見ると、課税標準額の段階200万円以下と2,000万円を超える段階が増加をし、200万円以上の段階が減少しています。全体的に所得が減少していますが、一部の富裕層は増加をしているという所得の二極分化、階層社会の傾向が八王子市でもあらわれています。これは、医療費の3割負担など痛みを伴った小泉構造改革の結果にほかなりませんが、市民生活の厳しさは増しており、市民生活を応援する施策の充実が求められた2003年度であったと言えます。

 毎年、財政白書などの発行によって財政状況を公開し、臨時財政対策債を発行しないなど堅実な財政運営への努力は評価をいたしますが、公債費比率は三多摩26市の中で最も高い15.8%です。これは、国の減税政策の失敗や、あるいは財政白書も指摘をするように、過去の市税収入に見合わない過大な市債発行などの財政運営の失敗を引きずっているものですが、今後においてはその轍を踏まない財政運営が求められます。

 八王子ゆめおりプラン策定に当たってつくられた財政の見通しより、市税収入は既に大きく下回る結果になっております。プラン実施の前提となる財政基盤は大きく揺らいでいます。第2工区以降の見通しの立たない北西部幹線などの大規模開発計画は、莫大な用地取得費を要して環境負荷につながるものであります。費用対効果などの事前評価もできていません。不要の財政支出と、こうした事業は言わざるを得ず、計画の見直しをすべきであります。JR八王子駅南口再開発事業についても、保留床の取得や総事業費、維持管理費など事業計画が明確には示されておりません。総務企画分科会では、ゆめおりプランの財政見通しは策定時のものであり、個々の計画の積み上げによる財政見通しでないことが明らかになりました。実施計画によって実質的なゆめおりプランの見直しをすることになりますが、大規模で投資的な事業や事前評価などを行っていない事業、市民の同意を得られない事業は即刻見直しが必要です。

 教育費については、毎年削減が行われており、2003年度は勤労者世帯の所得が低下をし、義務教育に関する保護者負担の経費は、その負担感が増加をしているにもかかわらず、小中学校の移動教室参加者補助金が廃止をされました。学校配分予算は過去5年間で4割の削減がされ、学校現場からは「もう限界だ」との声が上がっています。教育環境整備や学習に必要な教材の確保に影響が出ていることは大変大きな問題です。中越地震ではとうとい人命が失われ大きな被害を出しましたが、学校校舎や体育館は災害時の避難場所であり、子どもたちや市民の安全を確保するということが優先課題であることを再認識させました。耐震性の確保の改築計画が大幅に繰り上げられたことは評価をいたしますが、さらなる取り組みと教育予算の増額を求めます。教育行政においては、思想良心の自由が保障されなかったということは大きな問題です。卒業式では日の丸を正面壇上に掲げ、君が代を斉唱するということが教職員に対して強制をされました。そして処分者を出しております。子どもたちの門出を祝う卒業式が結果的には子どもへの日の丸・君が代の強制を生む結果になったことに強く抗議をいたします。さらに、学力テストの実施なども、子ども間同士の競争をより激しくするものとして、今後の教育行政の展開に大変な危惧を持っております。

 住基ネットは第2次稼働が始まりましたが、住基カードの発行枚数は1,177枚で、人口比の約0.2%、住民票の写しの広域交付は発行枚数で220枚でしかありません。住基ネット導入時には市民の利便性が理由として挙げられましたが、こうした数値からは、このシステムに対する市民の支持はないと言えます。住基ネットの2003年度費用は5,600万円、費用対効果から言っても、また個人情報の自己コントロール権、情報漏えいの危険性からも住基ネットの稼働は大きな問題であります。住基ネットの中止を求めて市民は、情報公開・個人情報保護審査会に不服申立を2002年11月にしておりますけれども、いまだ答申が出ておりません。市民の権利の救済機関である審査会の迅速な対応を求めたいと思います。

 夢美術館の喫茶室の運営は市民団体が行っています。選考過程及び選考結果の資料が十分に決算委員会の分科会の中では公開をされませんでした。これでは公正で公平な選考が行われたのかという疑念が生じかねません。今後、指定管理者制度の導入などによってプロポーザル方式が採用されますが、徹底した情報公開が必要です。また、障害者の雇用を創出するという点からも、公共施設に併設する喫茶室などの運営に障害者の参加を政策化することを提案いたします。

 男女共同参画センターが開設をし、狭いスペースしかないという物理的な問題を抱えながらも、女性のための相談や各種講座などが開催をされたことは評価をいたします。しかし、委託業者の女性から、市職員がセクシャルハラスメントで訴えられ、調査中に職員が辞職をするということが発生したことはとても残念なことでありました。セクシャルハラスメントの防止の研修、そして被害者の救済などの強化を求めたいと思います。

 これからの行政運営は、市民との協働が不可欠であり、市民活動支援センターの開設はその第一歩として評価をいたします。協働のあり方について市民と市の共有する仕組みがありません。ぜひ市民自治基本条例の制定が必要でありますし、同時に市行政の肩がわりに市民の協働ということが使われないよう配慮をしなければならないと考えております。

 支援費制度については、障害者が就労すること、そして自立して地域で暮らすことができるように、ぜひ居宅生活支援の充実が不可欠であります。こうした受け皿づくりをぜひ国に対しても働きかけ、市としても取り組んでいただきたいというふうに思います。

 本決算は、黒須市長4年間の市政運営を締めくくるものでありましたが、もはや決算を見ても明らかなように財政再建の見通しは厳しく、右肩上がりの経済は望めません。過大な投資計画を見直し、今後は市民のひとりひとりの生活を応援をする福祉、子どもたちが生き生きと学べる教育、そして持続可能な社会をつくるための大前提となる環境優先とした社会をつくる、つまり定常型社会の構築を目指してかじ取りをしていくことが重要であると考えます。定常型社会は、総括質疑でも紹介をいたしましたように、保育所整備にかかわって雇用が生まれる、所得が生まれる、そして地域が税収を得て活発になるということを紹介いたしました。市長はこのことに、そういった視点は必要だと理解をされましたけれども、残念ながら2003年度は、環境や福祉、教育優先の予算配分になっていないということを申し上げて、反対の討論といたします。