請願第14号、明星大学理工学部A棟(仮称)新築工事に関する請願について、生活者ネットワーク・社会民主党を代表して、賛成討論を行います。

 請願者の居住する多摩陽光台は、1994年から入居が始まった第一種低層住居専用地域の清閑な住宅地で、太陽の光とみどりの自然に囲まれ、すばらしい眺望に恵まれた環境にあります。

 陽光台に隣接する明星大学は、1964年に開学され、40周年を迎えました。この40周年記念事業として建設される理工学部A棟は、地上17階、高さ78.68メートルもの高層建築物で、周辺では最も高い建物となります。

 請願の趣旨は、明星大学の校舎新築は、現在、住民が享受している良好な居住環境を著しく侵害し、ホタルやオオタカなどの生息する自然環境への影響も懸念されることから、住民の生活環境や自然環境を守るために、建築計画を全面的に見直すことを求めるものです。具体的には、建物の高さを高層ではなく、低層とし、日照や景観、環境に及ぼす影響を回避することであります。市に対しては、まず、住民側の意見を十分に聞き、尊重するよう明星大学への指導を行うこと、明星大学と住民との話し合いの環境をつくることを求めております。

 住民の皆さんが、計画の全面的な見直しを求める第1の理由は、日照権の侵害であります。住民側のシミュレーションによれば、団地の南側部分の一部を除いては、冬季には1時間以上、春、夏、秋にかけては1時間半以上、広範囲に日影の影響を受けます。また、通年で積算すると、最も影響の大きい隣接地点付近では、年間187時間もの日照への影響となります。他の地点でも、138時間から126時間にもなり、日照権の侵害はとても深刻で、受忍限度を超えるものです。

 請願代表者は、都市建設委員会の皆さんにこのように述べられました。長距離通勤もいとわず、陽光と高台に位置する眺望を求め、この地に移り住み、このことに満足して暮らしてきました。建築基準法上合法かもしれませんが、校舎から50メートル足らずの東側に住宅があるのです。心情的にはどうしても納得感がないのですと訴えておられました。

 住民にとって日照は極めて重要な生活の要素となっています。住民は、日照権の侵害を軽減する対案を作成し、シミュレーションしています。住民案は、建物を西から12階、10階、8階と階段状にし、延べ床面積約2万2,800平方メートルを確保しています。鹿島建設案の約2万3,600平方メートルとの面積は大差がありません。しかし、日照時間が年間187時間も侵害される地域がなくなり、年間52時間から88時間程度の侵害が予想されている地域も大幅に縮小されてまいります。設計者の鹿島建設は、第2回説明会で、設計の変更は可能であると回答しています。明星大学は広大な土地を所有しており、日照権に配慮した設計は可能であります。したがって、計画の見直しを求めることは妥当なことであります。

 第2の問題は眺望権の侵害です。計画中の建築物は、頂上の海抜が200メートルを超え、半径5キロメートル以内において最も標高の高いものとなります。明星大学は2001年に10階建ての23号棟を住民に何の説明もなく建設しております。その隣接地に17階建て、約79メートルもの、2倍近い高層建築物が建つことになります。さらに、現在グラウンドとして利用されている場所に、地上19階、高さ81.8メートルもの共同演習棟、教育研究所の建設計画が3月9日、表示をされました。10階、17階、19階という3棟もの高層建築物が並び立つことは、住民に圧迫感を与え、眺望権の著しい侵害となり、景観を損ねることになります。

 第3の問題として、貴重な自然環境の破壊という問題があります。工事予定地一帯は、もともと天野谷戸と呼ばれ、貴重な自然環境を有していました。現在でもホタルの生息地を含み、他の昆虫なども生息しています。建設が予定されている土地は、ホタル生息地の水源の1つであります。工事によって水源が枯渇する危険性があります。

 さらに、住民は、昨年、オオタカの飛しょうを明星大学付近で観察しておりましたけれども、本年3月、自然保護団体によって明星大学西側でオオタカの営巣木が確認されました。営巣木付近から、雄と雌の鳴き交わしなど繁殖初期の行動や、ドバト、カラスなどをえさとした食痕なども確認されております。オオタカは絶滅危惧種に指定されています。環境省は、猛禽類保護の進め方で、オオタカの生息が確認された場合、保護策を検討するための調査を実施すること。その調査方法や保護の方策についてガイドラインを示しています。保護策については、営巣中心地域と繁殖期に利用度の高い高利用地域の2地域を設定し、留意事項を掲げています。校舎建設予定地は、オオタカの高利用地域に当たると考えられます。高利用地域とは、繁殖期の主要な飛行ルート、主要な回旋場所などを含む繁殖期に悪影響が及ぶ地域です。約79メートルもの高層建築物は、オオタカの飛しょうの妨げになるとし、オオタカの行動に著しい影響が出ると自然保護団体は指摘しております。

 事業者は、自然環境を適正に保全するために、必要な措置を講ずる責務を有すると、環境基本法第8条は事業者としての責務を定めています。明星大学は、事業者として環境基本法の理念に沿って、まずは調査を行い、その結果を保護策として生かさなければなりません。そして、保護策として計画の見直しもすべきであります。  八王子市は、東京都と連携して、オオタカ保護のために明星大学に対して本格調査の実施など、強力な指導を行うべきであります。

 最後に、明星大学の高等教育機関としての責任について指摘したいと思います。

 まず、住民に対する説明責任が果たされておりません。3月12日の読売新聞の取材に対し、大学側は、2001年6月に住民の代表に対して説明をしたとしていますが、そのような事実は全くありません。住民に具体的な計画が示されたのは、1月22日、第1回目の説明会でした。しかし、前日の1月21日に建築審査会への申請をし、2月4日に審査会の終了後、同日に事前協議の申請をしています。当初から住民に対して十分な説明をし、理解を得るという努力をしていません。また、説明会は、1月22日、2月19日と2回開催されておりますが、高層建築物を建設するその理由と必要性については十分な説明がありませんでした。住民は大学の役割について十分な理解をしており、校舎建設そのものに反対ではありません。1月22日の説明会では、建物の上部をカットし、その部分をラウンジに移して面積を確保するという案を提示しています。しかし、2回目の説明会はなかなか開催されず、やっと開かれた説明会では、計画変更には一切応じられないとするかたくなな態度で、計画変更を求めるのであれば、説明会は打ち切ると、大学と鹿島建設は断言したのであります。

 2回目の説明会まで約1ヵ月もの間、時間がありながら、大学側は理事会を開催するなどとして真剣に住民の要求にこたえようとした努力はありませんでした。それは先ほど述べました市への申請、協議の手続の経過からも明らかであります。

 このように、明星大学は住民との話し合いにおいて真摯な態度を持っていなく、説明責任を果たしていないのです。  明星大学は、高等教育機関であり、公共的な性格を持っております。大学の大半を占める敷地は調整区域であります。開学当時、そして現在もまた、民間や住民には認められない市街化調整区域丘陵部の開発が認められているのは、大学であるがゆえです。そうであるならば、周辺住民との真摯な協議によって信頼関係を築き、地域や環境との調和のもと、生活環境や自然環境に配慮した校舎建設を行うことが教育機関として求められていることではないでしょうか。

 住民は、建築基準法上は合法であっても、民法上合法であるかは別問題である。日照権侵害を理由に建築主に対して損害賠償を命じた多くの裁判例は、建築基準法は合法的な建築物であっても、民法上違法であるとして、住民の請求を容認している。民法上は、日照権の侵害が受忍限度を超えているか否かという基準で判断するというのが確立した判例であると指摘をしています。受忍限度とは、日照権の侵害の程度、周辺の土地利用の状況、建築主側の建築物の必要性、建築主と住民との交渉の経緯を総合的に判断されるものだと請願の補充意見書では指摘されております。

 設計変更は技術的に可能なこと、さきに述べましたように、説明責任が大学によって果たされていないこと、年間187時間以上もの日照権の侵害があることなど、これは受忍限度を超えるものだと主張しています。委員会でも日照権をめぐって受忍限度を超えるのかとの質疑がありました。市は、判断は裁判所が行うものだが、民法上違法とした判例として国立のマンション建設に対する判決などがあると答弁しています。

 また、斉藤助役は、住民の意向を大事にするということは行政の基本的な姿勢であると答弁し、委員会の翌日18日には、市は明星大学に対して住民との話し合いを行うよう指導を行っています。人材の育成と教育機関という大きな社会的役割を担っている明星大学は、こうした判例や市の指導を重く受けとめ、住民の意向と八王子市のまちづくりに協力をすべきです。

 少子化が進行し、各大学で存続をかけた改革が始まっています。明星大学も例外ではなく、理工学部の改組改変が2005年に行われ、新学科が開設されています。大学が尊敬される存在としてあり続けるためには、住民との共生、信頼関係は不可欠であることを強く明星大学に対して主張したいと思います。

 残念ながら、委員会の審議を通じても、本会議でも、反対の明確な意見は表明されないようです。私どもは、さきに述べました住民の日照権や眺望権の保障など、生活環境への配慮とオオタカなどの動植物の保護策を万全に行うために建設計画の全面的な見直しを求める本請願に賛成をし、討論を終わります。