それでは、まず、よりよい教科書で子どもたちが学ぶためにという意味で、今回、複数の議員から質問がございます中学校の教科書採択についてお伺いいたします。
まず最初に、検定中の扶桑社の申請本が配付され、流出したことについて、市教委は報道等で承知をしているという答弁が先日ございました。文部科学省は、昨年10月、そしてことしに入って1月、3月と3回にわたって扶桑社を指導しております。再三の指導にもかかわらず、扶桑社が各教育委員会の関係者に対して配付を続けてきたことが判明しています。文部科学省の調査によれば、東京都でも流出していますが、本市では、違法な申請本の配付が教育関係者にされたのかどうか、調査をしているかどうか、お答えをいただきたいと思います。
また、みずからルール違反をした扶桑社の教科書が検定を合格したのは問題で、これは裏口入学だという人もおりますけれども、市教委はこのような事態についてどのような評価をしているのか、お伺いいたします。
次に、近隣諸国条項について伺います。
1982年、国内外から批判の起こった中国侵略を進出と記述した問題を契機につくられた近隣諸国条項とは、近隣のアジア諸国との間の近現代の歴史的な事象の扱いに、国際理解と国際協調の見地から必要な配慮がなされていることという条項でありますが、この条項の意義について市教委はどのようにとらえているのか、お伺いいたします。
昨年11月にも従軍慰安婦とか強制連行とかいった言葉が教科書から減ってきたのはよかったと発言をし、批判を受け、後に陳謝をした中山文部科学大臣は、再び11日のタウンミーティングで、そもそも従軍慰安婦という言葉はなかった。なかった言葉が教科書に出ていたが、間違ったことが教科書からなくなってよかったと発言し、中国、韓国から強い怒りと非難が出ています。
このように、繰り返される文部科学大臣の発言は、かつて戦争加害国であった教育の責任者として、被害国、被害者への思いやりに欠けるものであります。近隣諸国条項にも反するこうした一連の発言について、市教委はどのように受けとめているのか、お答えをいただきたいと思います。
採択制度、そしてその手続についてお伺いいたします。
採択方法や手続が前回から大きく変化をいたしました。これは教育現場の声が反映されにくくなってきています。本来、教科書の採択には、現場教員に最も重要な役割を与えるべきであります。97年3月28日に閣議決定された規制緩和推進計画の再改定では、教科書の採択方法について、将来的には学校単位の採択の実現に向けて検討していくとの観点に立って、当面の措置として教科書採択の調査研究により多くの教員の意向が反映されるよう、現行の採択地区の小規模化や、採択方法の工夫、改善について都道府県の取り組みを促すというふうにしています。
また、既に多くの議員からも紹介されておりますけれども、ILOとユネスコが採択した教員の地位に関する勧告でも、教科書の採択について不可欠な役割が教員には与えられるべきであるとしているように、子どもたちの状況を最もよく知る現場教師が、その考え方が採択に反映されなければならないと思います。こうしたユネスコの勧告や、規制緩和推進計画の理解についての教育委員会の御見解をお示しください。
今回の採択方法で、現場の声を生かすための学校ごとの調査、研究は時間が足りないと指摘をされております。決して十分に確保されたとは言えません。また、多忙な中で調査、研究した現場の意向は生かされるのでしょうか。大変不安があります。例えば、前回は各社ごとにA4判1枚の調査報告を出しておりました。しかし、今回、全社をA4判1枚の調査報告にまとめてます。これでは記述欄が縮小し、十分な調査内容を記すことができません。そして、重点項目も学校では調べられません。報告様式が変わったことによって、現場教員の十分な意見が反映されなくなってきているという問題はないのでしょうか。
さらに、どの教科書を使用したいという希望や、教科書の評価は記入できません。このことも、現場教員の声を最も反映しなければならない教科書採択の手続において、極めて不備だと思いますが、いかがでしょうか。
私も教育センターに行って教科書を見てまいりました。各社、本当に特色がありまして、私が使うのだったらどの教科書がいいのかなという視点からも見ましたけれども、それぞれ、各学校によっても、地域の事情によっても、子どもたちの状況が違うとすれば、子どもたちを最もよく知り、この単元では子どもたちがどのように反応するかということを十分に経験している教師によって、適切な教科書が採択されると思います。こうしたことが今回の採択方法の中では保障されておりませんけれども、これで現場教員の声がきちんと反映されているという手続だとお考えでしょうか。お聞かせいただきたいと思います。
次に、東京都教育委員会から6月10日送付された調査資料についてお伺いいたします。
教育委員会の5名の最終的な採択のときの参考資料となるというのが、他の議員に対する答弁でありました。調査資料の内容として、東京都独自の着目点として、歴史、公民に関する点では、領土や拉致の問題、神話、伝承が挙げられています。この着目点は、陣内議員からも指摘がありましたように、扶桑社の教科書の特徴でもあります。そして、この点は、昨年の小学校社会科の教科書の採択で都教委が調査を指示した内容と同様であります。
新しい歴史教科書をつくる会は、昨年の第7回総会の議案書の中で、実際に成果をかち取るための採択線の基本方針として、次のように述べています。
まず、具体的に、採択基準と運用の改善を挙げております。そこで、このような記述がございます。東京都教委は、ことしの小学校の社会科教科書採択で北朝鮮による拉致問題の扱い、神話や伝承を知り、日本の文化や伝統に関心を持たせる資料などについて調査するように指示をした。こうした先進的な自治体の取り組みを広く紹介し、最もふさわしい教科書だという資料の作成を求めていきたいというふうに出ております。
そして、関係者との対話を進めようとして、直接に採択権限を有する教育委員と、間接に政治責任を負う首長に教科書問題の重要性を訴え、学習指導要領を基準とした公正な採択を実現するよう協力を求める対話活動は、会が独自になし得る重要な活動である。特に首長、教育長ラインがしっかりした見識を持つことは、教科書改善の決め手である。また、これらの直接の当事者を含むさまざまな採択関係者に協力を求めることも必要であるというふうに、採択線の基本方針を明らかにしています。
そして、つくる会は、支持者への報告会をことし4月28日に東京都で開きました。そこで東京都は、横山教育長の働きにより、扶桑社が約半分は採択することが可能との発言を行ったといわれております。
こうした一連の経過、そして東京都教委が養護学校や台東区の中高一貫校でも、都民の反対の声を押し切って扶桑社の教科書を採択しているという状況から考えるならば、東京都教委のこの参考資料というのは、扶桑社、すなわち、つくる会が主張してつくった扶桑社の教科書を採択させる誘導資料になるのではないかという、強い疑念を抱かざるを得ません。このことは、教科書採択の自主性や独立性を侵害するものだと言えると思います。
そこでお伺いいたしますが、東京都教委の調査資料はどのように扱われるのか。そして、学校や調査部会、検討委員会の市独自の調査報告が、調査研究、そしてその報告が採択時には確実に反映されるのかどうか、お伺いしたいと思います。
先ほども私は述べましたように、八王子市が独自で行っている調査研究、そして現場教員の声というものが、不十分な採択方法の中ではありますけれども、最大限保障され、尊重されなければならないと思います。東京都教委の調査資料というのは、つくる会と一体となって、あるいはつくる会から東京都、横山教育長に大変な働きかけがあったような発言が伝えられているわけでありますけれども、そういった公正ではない1つのルールのもとで作成されたかもしれないこの参考資料を使っていいのかどうか、その正当性を疑うわけでありますけれども、この参考資料の扱い方及び学校から上がってきた調査、あるいは調査部会や検討部会の内容について、採択権者はどのように扱うのか、明確にしていただきたいと思います。
次に、教育長にお伺いいたします。教育長は、採択に当たり、憲法、教育基本法を尊重して公正に採択するとの答弁をしておられます。公務員として憲法99条が定める憲法尊重義務があることからも、その基本姿勢をきちんと貫いてほしいと私は考えています。憲法は主権在民、基本的人権、平和主義を原則としており、教育基本法は、戦前の天皇制と軍国主義教育を基本理念とした教育勅語の否定、そして日本国憲法との一体性、教育法令の原則となる位置と特徴を持っています。それでは、教育長が尊重して採択するという憲法、教育基本法の内容について、どのように具体的に尊重していくのか、お答えをいただきたいと思います。
さらに、扶桑社の歴史教科書あるいは公民教科書が市民から大変高い関心、それは教育現場では決して使ってほしくない教科書として言われているわけでありますけれども、公民や歴史を学ぶ意義についてどのようにお考えになっているかということもお示しいただきたいと思います。
具体的には、学習指導要領に示されている目標というのは、私も十分に承知しておりますので、先ほど教育長が平和的な国家の形成者としてというようなことを前の議員にも御答弁されておりますけれども、八王子で学ぶ子どもたちが、どんな人間として育っていってほしいと願って、この公民と歴史を学んでほしいと考えているのかということについて伺いたいと思います。
ある公民の教科書では、生きた知識や情報を身につけたり、生きる希望と正しい判断力をつけてくださいというメッセージを、最初、公民を学ぶ前に扱っている教科書もございましたけれども、そのような子どもたちにもわかりやすいメッセージを教育長からお伺いしたいと思います。
次に、個人情報保護とプライバシー権の問題についてお伺いいたします。
2002年8月に稼働いたしました住基ネットに対しまして、私を含めて19名の市民が住基ネットの接続中止の請求をいたしました。2002年10月に請求をいたしまして、ことしの3月31日、情報公開、そして個人情報保護審査会から答申が出されました。その答申の内容というのは、市が市民の4情報について外部提供したのは妥当ではないという意見で、私たち市民の意見を認めた答申でございました。しかし、市長の決定は、接続は妥当であるとして、審査会の答申に対しては、それを尊重しないという態度をとったわけであります。
金沢地裁判決や、これからのプライバシー権の展開の中では、個人情報の自己情報コントロール権というのが大変大きな意味を持ってくるだろうと思いますけれども、そのことに従わなかった市の対応については、ここで抗議をしたいと思います。
それでは、答申の進歩的な部分について、これをどのように受けとめているのかということをまずお伺いしたいと思います。
審査会の答申は、5点において大変画期的な答申でありました。まず、住基ネットを自治事務として自治体の法令解釈権を認めたことです。2点目には、住基ネットの危険性と、住基カードの無用さとを認めたことです。3点目には、自己情報コントロール権としてプライバシーを積極的に認めたことであります。そして4点目としては、オンライン結合による外部提供の禁止という条例の趣旨に基づいて、中止請求を拡張的に解釈し、その適用を認めたことであります。そして、本件決定時における適正な管理のために必要な措置、すなわち、接続先が十分な個人情報保護をしていないという不十分さから、手続上の問題があったということを指摘した点において、審査会の答申は大変意義があったと思いますけれども、この5点の指摘を市側はどのように受けとめているのか、お伺いいたします。
次に、住基台帳の大量閲覧の規制の問題であります。これも審査会の答申の中で、市はことし4月1日から閲覧手数料を値上げして、抑制策を講じているけれども、これは決して十分ではないというふうに指摘をしております。そして、市民が安心できる住民基本台帳の写しのあり方について、さらに検討を進めるよう促し、熊本市の住民基本台帳にかかわる個人情報保護条例なども参考としながら、新たな条例の設定を求める結論となっております。
そこでお伺いいたしますけれども、この4月1日の条例改正によって、大量閲覧は抑制されるというような効果が生まれてきているのかどうか、お伺いしたいと思います。
そして、現状の大量閲覧の実態とはどのようなものであるのか、明らかにしてください。
そして、母子家庭の住民票の記録を見て、その1人でいる女子の家に乱暴に入るという犯罪が発生したわけです。このことによって、国も法改正の検討を始めておりますけれども、きちんとしたプライバシー保護の対応をとらなければ、こうした事件、犯罪というものが起きかねない。逆に言えば、市は市民の情報を売って犯罪を生み出しているという立場にもなりかねないわけでありますけれども、プライバシー保護と大量閲覧の抑制のために、現在どのような運用を行っているのか、明らかにしてください。
そして、この閲覧されている4情報、氏名、住所、年齢、性別といったものはだれのものであるのか、明らかにしていただきたいと思います。
私たちは住基ネットの情報は市民自身の個人のものである。したがって、自分たちの情報が危険にさらされるときには、自分たちでその規制をしたいという思いから、住基ネットへの接続の中止請求をいたしましたし、また、住基台帳の大量閲覧も、そういった意味から規制をされるべきだと考えておりますけれども、この4情報はだれのものであるのか、明らかにしていただきたいと思います。
以上で第1回目の質問を終わります。
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