それでは、まず、よりよい教科書で子どもたちが学ぶためにという意味で、今回、複数の議員から質問がございます中学校の教科書採択についてお伺いいたします。

 まず最初に、検定中の扶桑社の申請本が配付され、流出したことについて、市教委は報道等で承知をしているという答弁が先日ございました。文部科学省は、昨年10月、そしてことしに入って1月、3月と3回にわたって扶桑社を指導しております。再三の指導にもかかわらず、扶桑社が各教育委員会の関係者に対して配付を続けてきたことが判明しています。文部科学省の調査によれば、東京都でも流出していますが、本市では、違法な申請本の配付が教育関係者にされたのかどうか、調査をしているかどうか、お答えをいただきたいと思います。

 また、みずからルール違反をした扶桑社の教科書が検定を合格したのは問題で、これは裏口入学だという人もおりますけれども、市教委はこのような事態についてどのような評価をしているのか、お伺いいたします。

 次に、近隣諸国条項について伺います。

 1982年、国内外から批判の起こった中国侵略を進出と記述した問題を契機につくられた近隣諸国条項とは、近隣のアジア諸国との間の近現代の歴史的な事象の扱いに、国際理解と国際協調の見地から必要な配慮がなされていることという条項でありますが、この条項の意義について市教委はどのようにとらえているのか、お伺いいたします。

 昨年11月にも従軍慰安婦とか強制連行とかいった言葉が教科書から減ってきたのはよかったと発言をし、批判を受け、後に陳謝をした中山文部科学大臣は、再び11日のタウンミーティングで、そもそも従軍慰安婦という言葉はなかった。なかった言葉が教科書に出ていたが、間違ったことが教科書からなくなってよかったと発言し、中国、韓国から強い怒りと非難が出ています。

 このように、繰り返される文部科学大臣の発言は、かつて戦争加害国であった教育の責任者として、被害国、被害者への思いやりに欠けるものであります。近隣諸国条項にも反するこうした一連の発言について、市教委はどのように受けとめているのか、お答えをいただきたいと思います。

 採択制度、そしてその手続についてお伺いいたします。

 採択方法や手続が前回から大きく変化をいたしました。これは教育現場の声が反映されにくくなってきています。本来、教科書の採択には、現場教員に最も重要な役割を与えるべきであります。97年3月28日に閣議決定された規制緩和推進計画の再改定では、教科書の採択方法について、将来的には学校単位の採択の実現に向けて検討していくとの観点に立って、当面の措置として教科書採択の調査研究により多くの教員の意向が反映されるよう、現行の採択地区の小規模化や、採択方法の工夫、改善について都道府県の取り組みを促すというふうにしています。

 また、既に多くの議員からも紹介されておりますけれども、ILOとユネスコが採択した教員の地位に関する勧告でも、教科書の採択について不可欠な役割が教員には与えられるべきであるとしているように、子どもたちの状況を最もよく知る現場教師が、その考え方が採択に反映されなければならないと思います。こうしたユネスコの勧告や、規制緩和推進計画の理解についての教育委員会の御見解をお示しください。

 今回の採択方法で、現場の声を生かすための学校ごとの調査、研究は時間が足りないと指摘をされております。決して十分に確保されたとは言えません。また、多忙な中で調査、研究した現場の意向は生かされるのでしょうか。大変不安があります。例えば、前回は各社ごとにA4判1枚の調査報告を出しておりました。しかし、今回、全社をA4判1枚の調査報告にまとめてます。これでは記述欄が縮小し、十分な調査内容を記すことができません。そして、重点項目も学校では調べられません。報告様式が変わったことによって、現場教員の十分な意見が反映されなくなってきているという問題はないのでしょうか。

 さらに、どの教科書を使用したいという希望や、教科書の評価は記入できません。このことも、現場教員の声を最も反映しなければならない教科書採択の手続において、極めて不備だと思いますが、いかがでしょうか。

 私も教育センターに行って教科書を見てまいりました。各社、本当に特色がありまして、私が使うのだったらどの教科書がいいのかなという視点からも見ましたけれども、それぞれ、各学校によっても、地域の事情によっても、子どもたちの状況が違うとすれば、子どもたちを最もよく知り、この単元では子どもたちがどのように反応するかということを十分に経験している教師によって、適切な教科書が採択されると思います。こうしたことが今回の採択方法の中では保障されておりませんけれども、これで現場教員の声がきちんと反映されているという手続だとお考えでしょうか。お聞かせいただきたいと思います。

 次に、東京都教育委員会から6月10日送付された調査資料についてお伺いいたします。

 教育委員会の5名の最終的な採択のときの参考資料となるというのが、他の議員に対する答弁でありました。調査資料の内容として、東京都独自の着目点として、歴史、公民に関する点では、領土や拉致の問題、神話、伝承が挙げられています。この着目点は、陣内議員からも指摘がありましたように、扶桑社の教科書の特徴でもあります。そして、この点は、昨年の小学校社会科の教科書の採択で都教委が調査を指示した内容と同様であります。

 新しい歴史教科書をつくる会は、昨年の第7回総会の議案書の中で、実際に成果をかち取るための採択線の基本方針として、次のように述べています。

 まず、具体的に、採択基準と運用の改善を挙げております。そこで、このような記述がございます。東京都教委は、ことしの小学校の社会科教科書採択で北朝鮮による拉致問題の扱い、神話や伝承を知り、日本の文化や伝統に関心を持たせる資料などについて調査するように指示をした。こうした先進的な自治体の取り組みを広く紹介し、最もふさわしい教科書だという資料の作成を求めていきたいというふうに出ております。  そして、関係者との対話を進めようとして、直接に採択権限を有する教育委員と、間接に政治責任を負う首長に教科書問題の重要性を訴え、学習指導要領を基準とした公正な採択を実現するよう協力を求める対話活動は、会が独自になし得る重要な活動である。特に首長、教育長ラインがしっかりした見識を持つことは、教科書改善の決め手である。また、これらの直接の当事者を含むさまざまな採択関係者に協力を求めることも必要であるというふうに、採択線の基本方針を明らかにしています。

 そして、つくる会は、支持者への報告会をことし4月28日に東京都で開きました。そこで東京都は、横山教育長の働きにより、扶桑社が約半分は採択することが可能との発言を行ったといわれております。

 こうした一連の経過、そして東京都教委が養護学校や台東区の中高一貫校でも、都民の反対の声を押し切って扶桑社の教科書を採択しているという状況から考えるならば、東京都教委のこの参考資料というのは、扶桑社、すなわち、つくる会が主張してつくった扶桑社の教科書を採択させる誘導資料になるのではないかという、強い疑念を抱かざるを得ません。このことは、教科書採択の自主性や独立性を侵害するものだと言えると思います。

 そこでお伺いいたしますが、東京都教委の調査資料はどのように扱われるのか。そして、学校や調査部会、検討委員会の市独自の調査報告が、調査研究、そしてその報告が採択時には確実に反映されるのかどうか、お伺いしたいと思います。

 先ほども私は述べましたように、八王子市が独自で行っている調査研究、そして現場教員の声というものが、不十分な採択方法の中ではありますけれども、最大限保障され、尊重されなければならないと思います。東京都教委の調査資料というのは、つくる会と一体となって、あるいはつくる会から東京都、横山教育長に大変な働きかけがあったような発言が伝えられているわけでありますけれども、そういった公正ではない1つのルールのもとで作成されたかもしれないこの参考資料を使っていいのかどうか、その正当性を疑うわけでありますけれども、この参考資料の扱い方及び学校から上がってきた調査、あるいは調査部会や検討部会の内容について、採択権者はどのように扱うのか、明確にしていただきたいと思います。

 次に、教育長にお伺いいたします。教育長は、採択に当たり、憲法、教育基本法を尊重して公正に採択するとの答弁をしておられます。公務員として憲法99条が定める憲法尊重義務があることからも、その基本姿勢をきちんと貫いてほしいと私は考えています。憲法は主権在民、基本的人権、平和主義を原則としており、教育基本法は、戦前の天皇制と軍国主義教育を基本理念とした教育勅語の否定、そして日本国憲法との一体性、教育法令の原則となる位置と特徴を持っています。それでは、教育長が尊重して採択するという憲法、教育基本法の内容について、どのように具体的に尊重していくのか、お答えをいただきたいと思います。

 さらに、扶桑社の歴史教科書あるいは公民教科書が市民から大変高い関心、それは教育現場では決して使ってほしくない教科書として言われているわけでありますけれども、公民や歴史を学ぶ意義についてどのようにお考えになっているかということもお示しいただきたいと思います。

 具体的には、学習指導要領に示されている目標というのは、私も十分に承知しておりますので、先ほど教育長が平和的な国家の形成者としてというようなことを前の議員にも御答弁されておりますけれども、八王子で学ぶ子どもたちが、どんな人間として育っていってほしいと願って、この公民と歴史を学んでほしいと考えているのかということについて伺いたいと思います。

 ある公民の教科書では、生きた知識や情報を身につけたり、生きる希望と正しい判断力をつけてくださいというメッセージを、最初、公民を学ぶ前に扱っている教科書もございましたけれども、そのような子どもたちにもわかりやすいメッセージを教育長からお伺いしたいと思います。

 次に、個人情報保護とプライバシー権の問題についてお伺いいたします。

 2002年8月に稼働いたしました住基ネットに対しまして、私を含めて19名の市民が住基ネットの接続中止の請求をいたしました。2002年10月に請求をいたしまして、ことしの3月31日、情報公開、そして個人情報保護審査会から答申が出されました。その答申の内容というのは、市が市民の4情報について外部提供したのは妥当ではないという意見で、私たち市民の意見を認めた答申でございました。しかし、市長の決定は、接続は妥当であるとして、審査会の答申に対しては、それを尊重しないという態度をとったわけであります。

 金沢地裁判決や、これからのプライバシー権の展開の中では、個人情報の自己情報コントロール権というのが大変大きな意味を持ってくるだろうと思いますけれども、そのことに従わなかった市の対応については、ここで抗議をしたいと思います。

 それでは、答申の進歩的な部分について、これをどのように受けとめているのかということをまずお伺いしたいと思います。

 審査会の答申は、5点において大変画期的な答申でありました。まず、住基ネットを自治事務として自治体の法令解釈権を認めたことです。2点目には、住基ネットの危険性と、住基カードの無用さとを認めたことです。3点目には、自己情報コントロール権としてプライバシーを積極的に認めたことであります。そして4点目としては、オンライン結合による外部提供の禁止という条例の趣旨に基づいて、中止請求を拡張的に解釈し、その適用を認めたことであります。そして、本件決定時における適正な管理のために必要な措置、すなわち、接続先が十分な個人情報保護をしていないという不十分さから、手続上の問題があったということを指摘した点において、審査会の答申は大変意義があったと思いますけれども、この5点の指摘を市側はどのように受けとめているのか、お伺いいたします。

 次に、住基台帳の大量閲覧の規制の問題であります。これも審査会の答申の中で、市はことし4月1日から閲覧手数料を値上げして、抑制策を講じているけれども、これは決して十分ではないというふうに指摘をしております。そして、市民が安心できる住民基本台帳の写しのあり方について、さらに検討を進めるよう促し、熊本市の住民基本台帳にかかわる個人情報保護条例なども参考としながら、新たな条例の設定を求める結論となっております。

 そこでお伺いいたしますけれども、この4月1日の条例改正によって、大量閲覧は抑制されるというような効果が生まれてきているのかどうか、お伺いしたいと思います。  そして、現状の大量閲覧の実態とはどのようなものであるのか、明らかにしてください。

 そして、母子家庭の住民票の記録を見て、その1人でいる女子の家に乱暴に入るという犯罪が発生したわけです。このことによって、国も法改正の検討を始めておりますけれども、きちんとしたプライバシー保護の対応をとらなければ、こうした事件、犯罪というものが起きかねない。逆に言えば、市は市民の情報を売って犯罪を生み出しているという立場にもなりかねないわけでありますけれども、プライバシー保護と大量閲覧の抑制のために、現在どのような運用を行っているのか、明らかにしてください。

 そして、この閲覧されている4情報、氏名、住所、年齢、性別といったものはだれのものであるのか、明らかにしていただきたいと思います。

 私たちは住基ネットの情報は市民自身の個人のものである。したがって、自分たちの情報が危険にさらされるときには、自分たちでその規制をしたいという思いから、住基ネットへの接続の中止請求をいたしましたし、また、住基台帳の大量閲覧も、そういった意味から規制をされるべきだと考えておりますけれども、この4情報はだれのものであるのか、明らかにしていただきたいと思います。

 以上で第1回目の質問を終わります。


◎【飯沢俊一議長】 教育指導担当参事                   
 教科書採択につきまして何点か御質問をいただきました。順次お答えいたします。

 まず、扶桑社の関係で御質問いただきましたけれども、いわゆる教科書会社が作成しております白表紙本というものが事前に本市で配られているかというお話でございますけれども、配られたという事実はつかんでおりません。

 続きまして、扶桑社の件で新聞報道等での内容について、3回指導を受けたという話で、評価についての御質問でございますが、他の発行者についての情報等は新聞等では一切報道されておりませんので、何とも評価できませんけれども、少なくとも文部科学省が3回指導しているという事実につきましては、私どもはしっかりつかんでいるところでございます。

 続きまして、近隣諸国条項についての意義をどうとらえているかということでございますが、これにつきましては、御質問者からもございましたように、近隣のアジア諸国との間の近現代の歴史事象の扱いにつきまして、国際理解と国際協調の見地から必要な配慮をするために、昭和57年に検定基準に設定された大事な条項であるというふうにとらえているところでございます。

 それから、中山文部科学大臣の発言についてということでございますけれども、文部科学大臣につきましては、本市の採択事務に直接かかわらない立場でございますので、特に私どもは評価等については一切考えておりません。

 続きまして、現場の先生方の意見等を反映したり、あるいは採択を学校ごとにというお話、それからユネスコの勧告等についての教員の役割等についてのお話がございましたけれども、学校ごとの採択につきましては、国レベルでも行政改革の中で検討中であるという情報をつかんでおりますので、そのような方向性で動いていくのかなというふうに予想しているところでございます。

 それから、教員の方の意見等の参考でございますけれども、これも何回も申し上げておりますように、学校ごとの研究もしていただいております。それから、調査部会にも多くの先生方に入っていただいておりますし、当然、検討委員会の方にも多くの先生方に入っていただいておりますので、十分に反映しているというふうに考えております。

 それから、時間の方につきましては、確かに期限が決まっておりますので、十分な調査研究の時間というふうには言えないと思いますけれども、その中でも可能な限り努力をしております。

 調査研究につきましては、教員の意向等を直接求め、採用するシステムではございませんので、先ほど申し上げましたような検討委員会、調査部会等を通じて、十分に生かされているというふうに考えているところでございます。

 続きまして、都の調査研究資料についてでございますが、これにつきまして、どのように活用していくのかというお話でございますけれども、これは先日申し上げましたように、5部来てございますので、教育委員に配付をして、採択時の参考にしていただくように考えております。

 これの都の方の立場でございますけれども、都は市町村の方で教科書の採択事務を行うときには、指導、助言、支援をするという形でとらえておりますので、そのような立場でこの報告書が本市に送られてきたというふうに考えているところでございます。

 それから、最後に、同じような質問で、学校あるいは調査部会等の意見が反映されているのかというお話がございましたけれども、先ほどのような検討委員会、調査部会、学校の方の調査内容につきまして、集約いたしまして、教育委員会の方に情報提供いたしますので、十分に吸い上げられていると考えているところでございます。


◎【飯沢俊一議長】 市民部長。                   
 私の方からは、住基ネットに対する審査会答申について、及び住民基本台帳の大量閲覧の規制について、何点かの質問にお答えをさせていただきます。

 まず、自治事務としての自治体の法解釈権についての答申の指摘をどう受けとめたのかという御質問についてでございますが、答申の考え方は、法令解釈の1つのあり方を示していると考えております。また、地方自治の今後の方向の1つを提示された貴重な示唆と受けとめておるところでございます。

 次に、住基ネットの危険性と、住基カードの無用さと危険性を認めたとされる答申部分、及び個人情報保護の不十分さを指摘したことについての御質問についてお答えいたします。

 市としては、このような不安をお持ちの市民で、不安解消策をとり続けることが市としての責任と考えております。もとより、100%安全ということは言い切れないことでございますが、可能な限り100%安全を目指す責務があると認識しております。

 次に、個人情報保護の不十分さについてですが、その後、個人情報保護関連法制が整備され、本年4月から施行されておりますことから、この部分につきましては不十分さは解消されたと考えております。

 次に、答申が自己情報コントロール権としてのプライバシーを積極的に認めたこと、及び外部提供についてでございますが、プライバシー権については十分尊重してまいりますが、しかし、それも無制限に保護されるのではなく、憲法に定められておりますとおり、公共の福祉のため、必要ある場合には相当の制限を受ける場合もあると考えております。

 最後に、条例第19条は、第13条の場合にも適用されるとの解釈、拡張的な解釈についてでございますが、第19条には、条例第12条第1項または第2項の規定によらない場合に中止請求ができると規定されておりまして、私どもはその範囲で考えております。


◎【飯沢俊一議長】 石川教育長。                   
 私には2点のお尋ねがございました。1点目は、日本国憲法や教育基本法をどのようにとらえ、また、どのように尊重するのかということでした。

 日本国憲法は国の最高法規であります。教育基本法は我が国の教育の最高法規であるととらえております。具体的にということでしたけれども、私も基本的には質問者がおっしゃるのと同じ認識を持っております。教科書の採択に当たりましては、当然のことながら、憲法、教育基本法は重視すべきものと考えております。

 2点目は、歴史や公民を学ぶ意義についてどのようにとらえ、どのような人間に育ってもらいたいか、特に八王子の子どもについてということでございました。歴史、公民を学ぶ意義は、我が国の国土と歴史に対する理解と愛情を深め、公民としての基礎的教養を培うことにあると考えております。これらの学習を通して、国際社会に生きる民主的、平和的な国家、社会の形成者を育成してまいりたいと思っております。本市の子どもたちにも、平和を希求する心豊かな、しかも自分の考えをしっかり持った、バランス感覚のある子どもたちを育成してまいりたいと思います。


◎【飯沢俊一議長】 市民部長。                   
 住民基本台帳の大量閲覧の規制につきまして、答弁漏れがございましたので、答弁させていただきます。

 まず、抑止効果でございますが、実質的な運用といたしましては、4月は繁忙期であったため、4月25日から運用しております。効果につきましては、しばらく様子を見ないと、現段階では、その効果について詳しく報告することはできないと考えております。

 そして、閲覧の実態と運用についてでございますが、閲覧に関する要綱を本年4月1日から施行しております。それに基づきまして年間の閲覧回数の規制、あるいは事前登録制を取り入れたり、事業者についてさまざまな書類を提出させて運用しております。また、閲覧する本人の確認につきましても、厳格に行っているところでございます。  そして、4情報はだれのものかという御質問でございますが、住民基本台帳法に定められておりますように、市が市民の届け出等によりまして管理する情報でございます。内容といたしましては、市民の皆様の情報ではございますが、居住関係の公証としての性格から、公の情報資産と考えております。


◎【飯沢俊一議長】 第40番、井上睦子議員。                   
 それでは、2回目の質問をいたします。

 まず、教科書の問題でありますけれども、申請本の流出については、そういう事実はないというようなことなのでしょうか。そこをはっきりさせていただきたいと思います。

 市教委が、3回にわたって扶桑社が指導されているということについては、事実をそういう事実としてつかんでいきたいということでありましたけれども、他の教科書会社がどうであるかわからないということであれば、きちんと調査をしていただいて、適正なルールといいますか、公正なルールにのっとらない教科書については、きちんとした対応策をとっていただきたいと思います。というのは、そのことは教科書の採択の基本的な判断基準の中でもあらわれていたのではないでしょうか。

 次に、近隣諸国条項の問題について、重要な条項であるということの答弁がありました。そのことをきちんと認識をして、採択事務及び採択に当たっていただきたいと思います。このことは、先ほど議会からもやじが出たように、近隣諸国条項の撤廃を唱える政党もあるわけで、このことは、アジアでより信頼されない国に当たっていく危険性もありますが、八王子市としてはこのことは大事な条項だという見識を示されましたので、きちんとした対応をお願いしたいと思います。

 中山文部科学大臣の発言については、採択手続について関心がないので評価については考えていないということでありましたけれども、近隣諸国条項に、この発言は教育の責任者として全く外れるわけです。こういった非難を内外から受けないようにするということは、先ほど教育長が平和的な心豊かなバランスのとれた国際人を育てるといった意味からも、重要なことになると思いますので、きちんととらえていただきたいと思います。

 歴史教科書、そして公民の教科書をめぐっても、将来、日本がアジア諸国とどのようにつき合っていくのか、どういう友好関係を築いていくのかということが極めて重要となってまいります。韓国の盧武鉉大統領は3月1日の独立運動を記念する演説で、このように述べました。今、中国、韓国とも小泉首相の靖国神社参拝や教科書問題など、歴史問題に対しては緊張した関係が続いておりますけれども、韓国大統領は3月1日、日本の知性に訴えるとして、このように演説を行っています。私は拉致問題による日本国民の憤怒を十分に理解します。同様に、日本も立場を変えて考えてみなければなりません。日帝36年間、強制徴用から従軍慰安婦問題に至るまで、数千、数万倍の苦痛を受けた我々国民の憤怒を理解しなければならないのです。

 さらに、竹島の領土問題等でより関係が厳しくなった3月23日の声明では、このように声明が出ています。これは日本に向けてでありますけれども、教科書問題も同様です。2001年、日本で歪曲された歴史教科書がほとんど採択されなかったとき、我々は日本の良心に期待をかけ、東北アジアの未来に対して楽観的な見込みを持ちました。ところが、今、その歪曲された教科書が再び生き返ろうとしています。これもまた侵略の歴史を正当化する行為ですというふうに、未来志向で行こうとする韓国から、厳しい指摘と、そしてそのことはお互いにきちんと分かり合おうというメッセージが届いています。

 教科書検定における近隣諸国条項が、隣国の理解を十分に得ていないということのあかしでもありますし、また、在日韓国人の団体であります民団の新聞では、日本の子どもたちと在日韓国人の子どもたちが、将来、ひとしく義務教育の場で学んでいる。その中で正しい歴史をともに学んで、将来ひとしく継承していけることを願うからこそ、偏見を植えつけない、偏った歴史認識に基づいた歴史教科書が学校教育の場で使用されることを強く危惧いたしますというメッセージも出されております。このことを採択に当たる採択権者としては受けとめなければならないと思いますが、このような韓国、そして在日の人々からのメッセージは、国際理解と協調の精神を大事だとする市教委はどのように受けとめているのか、明らかにしていただきたいと思います。

 次に、採択への教員の関与の問題です。将来的には学校ごとの採択の方向に動くだろうという見解が示されました。ということは、各学校ごとの採択を進めていくとするならば、その学校で教育に携わる教員の声がきちんと反映されることが一番正しいということではないでしょうか。そのために、今回、変わってきた制度、採択方法の手続というのは、そこから大変逆行しているように思います。

 この採択の方法の変更は、2000年2月、八王子市の教科書採択制度の適正化・公正化についての請願、これは新しい歴史教科書をつくる会の八王子地区の代表世話人によって出された請願でありますけれども、ここでは、「八王子市の教科書の採択に当たっては、法の定める採択権者である八王子市教育委員会が自らの責任において採択方針を明確にし、適正かつ公正に行ってください」という請願項目がありますが、その前段に、請願趣旨として、教科書検定を経た教科書であったとしても問題がないわけではないのですとして、今使われている教科書が唯物史観的、自虐的な内容で満ちているという評価をしております。

 この請願が全国的にも展開され、採択方法が変わってまいりました。教育委員会への権限を集中して、学校現場の声がなかなか反映されなくなってきています。今回も時間的な不十分さは認められました。そして、1回目で指摘しましたように、記述の欄の少なさ、あるいは教科書そのものをきちんと評価できないといった現場の声が反映されないという危惧がございますけれども、今後はその制度の中に十分に反映されるだろうという答弁でありましたけれども、そのことが透明性を持って反映されるように、ぜひお願いしたいと思いますけれども、現在、教育委員会が採択権限を持っているという法の根拠は、地教行法の第23条、これは「教科書その他の教材の取扱いに関すること」という規定を挙げておりますし、教科書の無償法、これは採択区域を示す内容でありますけれども、これで教育委員会に権限があるというふうに言っております。しかし、そのことは異なるのではないでしょうか。ただ単に教科書の取り扱いを定めただけであって、この法律が教育委員会の権限を担保する法律ではないと考えますが、どうでしょうか。お伺いをいたします。

 次に、東京都の資料の扱いについて、東京都が指導、助言、支援という目的のために各市町村に配付したのだという御説明がございました。しかし、東京都の調査資料というのは、先ほども申し上げたように、拉致や領土問題、そして神話や伝承といった扶桑社の教科書の特徴をより浮かび上がらせる役割を持っておりますし、つくる会の総会の資料にもあらわれているように、彼らがそのような働きかけをしようという方針があったということも明らかであります。

 したがって、これは公正な資料としては役立たないのではないかと思います。採択権者である教育長は、この東京都の資料の扱いについてどのようにするのか、伺いたいと思います。

 公正で適正なルールのもとに採択手続が進められているわけですけれども、1回目に紹介したような事実があったとすれば、これは採択権者に対する教育の独自性や自主性を守れないということにもなりますし、扶桑社の教科書を採択せよという誘導策にもなると危惧をするわけでありますけれども、私は学校や調査部会、検討委員会という、現場の教師がきちんと調査した内容をもって、そのことを尊重するという態度を明確にしていただきたいと思いますが、お聞きいたします。

 次に、つくる会の教科書の内容について少しばかり紹介をしたいと思います。特に公民について御紹介をいたします。

 まず、歴史教科書では124件、公民では75件。8社中、最も検定意見、修正が加えられた教科書としての特徴があります。

 そして、その内容は、公民では、大日本帝国憲法を評価して、日本国憲法の改正を誘導するような教科書になっています。大日本帝国憲法と日本国憲法ということで、扶桑社の教科書はそれぞれ1ページずつを憲法の説明に充てておりますけれども、大日本帝国憲法については、その憲法のもとで近代的な民主国家づくりが進められていったとして、国民にたたえられた大日本帝国憲法とするなど、この憲法の大変な賛美が繰り返されています。

 問題点としては、わずかに、天皇のもとで国民が暮らしやすい社会をつくるという憲法の理念、理想は、大きく損なわれていくことになったとあるにすぎません。そして一方で、日本国憲法の制定では、原文は徹底した押しつけ憲法論の記述で埋め尽くされています。さすがにこの部分については4件もの検定意見がつき、かなり修正されました。申請の段階では、まず、戦争に勝った国が、負けた国の法を変えさせることは国際法によって禁止されている。加えて、日本国民が自分の意見を自由に表明できない占領中に日本国憲法が制定されたという事実などが、憲法をめぐる論議のもととなっている。これについては修正が加えられました。

 この検定意見は、我が国の政治が日本国憲法に基づいて行われていることの意義について考えさせるに照らして、扱い方が不適切であるとして、このように書きかえられています。この憲法は、国民主権、基本的人権の尊重、平和主義などを基本原則としている。また、民主主義を我が国の政治の基本に据え、戦後の政治原理として、国内はもちろん、国外にも広く受け入れられたというふうに書きかえられておりますけれども、憲法の全面的な書き直しになっていいはずでありましたけれども、この部分を部分的に手直ししただけで、GHQ案を突きつけられたことばかりを強調した経過説明が本文の大半を占めております。

 そして、英文で書かれた憲法草案に、検閲を受けた出版物で、占領下だったという一面だけを印象づけています。これは、先ほどの修正部分を幾ら直したからといっても、竹に木を接ぐような本文記述の差しかえであって、ページ全体が押しつけ憲法論でまとめられていることに変わりはありません。これは修正意見に従って直したものとしては、とても受けとめられない内容となっています。

 加えて、憲法改正の欄では、日本国憲法が世界最古の憲法であるということを書き、憲法改正が必要だという意見の論拠にするために、現在の憲法をいろいろと否定する評価をしております。

 そして、今の私たちの日本国憲法にはない国防の義務の記述が公民では出てまいります。基本的人権の尊重の大半部分を、公共の福祉と国民の義務という説明で埋めて、これからの国の憲法では、国民の崇高な義務として国防の義務が定められるというふうに1行解説をつけております。

 国防の義務をめぐっては、戦後の日本では余り広く議論されたことがありませんでした。これが社会的にも認知をされているとは到底言いがたい内容でありますけれども、これも先ほどと同様に、9条の改憲を意図した政治的な思惑さえ感じると言わざるを得ません。

 憲法で国民に国を守る義務を課している国が多いなどという説明も加えています。これは、こうしたある1つの偏った政治的な傾向、考え方を示していると思われますけれども、子どもたちがこれからの社会の中で生きていくためには、バランスのとれた多様な考え方という情報が公民教科書の中では確実に提供されなければならないと思います。教育長は、憲法、教育基本法にのっとって採択事務を進めていくとおっしゃっておりますけれども、ぜひ十分に教科書の精査をしていただきたいと思います。

 また、男女平等に関しても、さまざま、家族の中での女性の役割というもの、そして男女共同参画社会基本法については、男女差別と、男らしさ、女らしさというのを混同していて、性差と男女差別を混同している。男らしさ、女らしさという日本の伝統的な価値観まで否定しているという反対の声がある。あるいは男女の違いというものを否定的にとらえることなく、個性を磨き上げていくことが大切であると述べて、現在、男女平等に関してさまざまなバックラッシュがありますけれども、それの一方の考え方を披瀝する内容となっております。

 そこで、お伺いいたしますが、八王子市は男女共同参画を進めています。これは男女がともに生きる社会の実現を目指して、行政が男女共同参画基本法あるいは女子差別撤廃条約の理念に基づいて展開している内容でありますけれども、どのような理念に基づいて行っているのか、お伺いしたいと思います。

 最後になりますけれども、扶桑社の教科書は市民の間でも大変高い関心、それは決して子どもたちには渡したくない教科書として高い関心があります。教育長は、憲法と教育基本法を尊重して採択事務に当たられるということでありました。公民の教科書は、現実政治に極めて結びつくものであります。そして、将来、平和的な国家の形成者として育ちゆく子どもたちが、本当に適切な教科書を手にすることができるよう、十分な調査をお願いし、きちんとした判断をするべきだと思いますが、最後に教育長の決意をお伺いして質問を終わります。


◎【飯沢俊一議長】 教育指導担当参事。                   
 本市において教科書の白表紙本が流出しているかということで、先ほどはっきりと答弁していなかったというお話でございますけれども、本市においてはございません。

 それから、扶桑社の方で文部科学省から3回にわたって指導を受けているということでございますけれども、いずれにいたしましても、検定済みの教科書として事務局は扱ってまいります。

 ただし、ほかの教科書会社についても関連のものがあれば、事務局レベルで調査をしてみたいと考えているところでございます。

 それから、近隣諸国の関係でございますけれども、諸外国からの教科用図書に対するさまざまな反響があることは認識して事務作業を進めております。教育委員会として適正かつ公正な教科用図書採択事務を進めていくことが責務であるというふうに認識をしているところでございます。

 それから、教員の意向をどのように反映するかというようなことで、先ほど、国の動きも私の方でわかる範囲で紹介いたしましたけれども、いずれにいたしましても、記述欄が少ないとか、期間が十分でないということは御指摘の部分はあると思いますけれども、可能な限り尊重した形での事務作業は進めていくつもりでございます。

 それから、採択の権限についてでございますが、これは解釈の違いもあると思いますけれども、私どもは地教行法と、それから無償措置法に基づいてやるべきものというふうに理解して作業を進めているところでございます。


◎【飯沢俊一議長】 市民活動推進部長。                   
 市として男女共同参画社会の実現に向けてどのような理念で取り組んでいるかという御質問でございます。

 女子差別撤廃条約につきましては、男女共同参画社会基本法成立への取り組みの礎となった条約であるというふうに理解しております。本市の男女共同参画施策につきましては、男女共同参画社会基本法第9条に規定された地方公共団体の責務を果たすべく、法の理念に沿って、男女が互いにその人権を尊重しつつ、責任も分かち合い、性別にかかわりなく、その個性と能力を十分発揮できる男女共同参画社会の実現を目指し、推進を図るものでございます。


◎【飯沢俊一議長】 石川教育長。                   
 東京都の資料の扱いをどうするのかということでございますけれども、報道されている範囲で私も承知をしておりますけれども、まだ現物を見ておりません。多分、報道されているとおりの内容かなというふうには思っておりますけれども、この内容に関して私が意見を申し上げることは、採択に影響を与えると思われますので、ここでは避けますけれども、これを教育委員に紹介するかどうかということにつきましては、当然のことながら、これは紹介をしていくつもりでおります。それを受けて、その取り扱いをどうするかは、それぞれの委員の考えるところかというふうに思っております。

 それから、もう1つは、公民教科書の件で、多分、趣旨は、憲法をどう扱っているのか。それは私がとらえている憲法の理解と同じなのかという、そういうような内容で決意を述べろということかと思いますけれども、先ほどから申し上げておりますけれども、憲法は国の最高法規であります。私自身もこの憲法を尊重、擁護する義務を負っているわけです。学習指導要領は、憲法の学習において日本国憲法の基本原則を理解させることを示しております。これを踏まえまして、本市では適正、公正に、関連法令等も遵守しながら採択をしてまいります。