第95号議案、2005年度八王子市一般会計補正予算(第3号)、第97号議案、2005年度八王子市介護保険特別会計補正予算(第1号)及び第103号議案、八王子市介護保険条例の一部を改正する条例設定について反対討論を行います。

 介護保険制度は、介護の社会化、利用者本位のサービス、そして、高齢者の選択と自己決定などを理念として、2000年にスタートいたしました。しかし、今回の介護保険の制度改正は、制度の持続可能性を主な理由として、介護費用の縮減のためにサービスの削減と利用者の負担をふやし、介護保険制度の理念や原則を実質的に危うくするものです。そして、国民の制度への不信を招くものとなっています。

 直面する超高齢社会に向かって、制度の充実、発展を図る改正点はごくわずかでしかなく、介護保険制度制定以前の介護不安に再び国民を陥れるという内容を多く含んでいます。例えば、要介護認定によって介護給付サービスと異なる新予防給付に軽度要介護者を振り分けるということは、必要なサービスを自分で選び、自分らしい暮らし方を自分で決めるという介護保険制度の理念を根本から覆すことになります。

 また、今議会で上程された施設利用者の居住費及び食費を保険給付から外し、10月から自己負担化するということは、施設の利用料が高額になり、利用者本人が施設を選ぶのではなく、施設が利用者を選ぶ、利用料を払える高齢者を選ぶという傾向が強くなってまいります。居住費、食費の自己負担化は、在宅生活のかなめであるショートステイやデイサービス、デイケアにも及び、在宅との不公平感を是正するという改正理由にも矛盾しています。

 今回、補正予算の概要で示された利用者負担の変化では、利用者の負担額は1割負担と居住費及び食費の合計ですけれども、施設からの請求は雑費なども加算されてまいります。そして、支出は所得税、住民税、国民健康保険料や介護保険料、医療費などが加算されてまいります。現在、現金給付である年金が先細っていく中で、現物給付である介護保険の現金負担をふやすことは、高齢者やその家族に過度な負担を強いることになります。第1段階から第3段階については、低所得者対策として居住費、食費の負担の上限が設定されておりますけれども、高齢者の収入実態に合った負担の仕組みとは言えません。年金収入しかない高齢者にとっては、非常に重たい負担となっています。

 また、新第2段階、年金の80万円以下の者は、全国では特養入所者の25%を占めています。国民年金の平均月額は5万2,000円、そして、新第2段階は受給者が一番多い年金月額3万円から4万円の層に当たります。相部屋で月3万7,000円、ユニット型の個室は5万2,000円となり、現実の年金収入を上回る負担の増加となってきます。  また、新第3段階、これは年金80万円を超え、226万円以下の層ですけれども、この層は特養ホーム入所者の38%を占めます。相部屋で月5万5,000円、個室では9万5,000円の負担額となります。年金80万円と226万円では3.3倍もの開きがあり、きめ細かい段階設定とは言えません。

 年金80万円しか収入がない場合、施設の雑費、各種保険料を支払えないというケースが出てきます。特養ホームを良くする市民の会の本間郁子さんは、参議院厚生労働委員会で参考人として意見陳述し、新第3段階は幅が広過ぎ、年間所得80万円の人は特養に入ることができず、140万円以下の人は個室にすら入れない。また、主たる所得者が入居した場合、在宅に残された配偶者の生活は困難となると厳しく指摘しています。

 低所得者への減免措置は、また、世帯単位ともなっています。同一世帯に子や配偶者等で住民税納税者がいる場合には補足的な給付はありません。施設入所が必要であっても、家族の意向で利用を抑制するケースが多くなると予想されます。本当に困っている高齢者が行く場がなくなってきます。

 国の負担軽減策は、厚労省のつくったパンフレットで詳しく出ています。その一部を紹介いたします。まず、特別養護老人ホームの従来型個室に入所していますが、室料は払っていません。要介護4で年金は月額10万円程度です。私の負担はどうなるのでしょうかという問いに対して、その答えは、この方は所得状況から見て利用者負担第3段階になると思われますが、従来型個室における経過措置の対象者であれば、居住費が減額されますとして、経過措置が適用されない場合は月額7万円であるけれども、経過措置が適用されれば5万5,000円になるというふうに厚労省は示しています。

 さて、この経過措置というのは、先ほども若干御説明がありましたけれども、従来、入所している方たちで特別な室料などを払っていない者はそのまま入所できる。新規の入所者は、感染症や居住する居室での面積が一定でない者、あるいは著しい精神状態などによって相部屋では同室者の心身の状況に重大な影響を及ぼすおそれが高い者、すなわち個室以外での対応が不可能である者という3つのパターンに分かれてしまいます。これでは、経過措置がなくなれば個室から追い出されるという危険性もありますし、また、新規に入所する場合にはこの3つのいずれかの条件を満たしていなければならないということになります。所得の低い層は個室を利用できないということが、この厚労省のパンフレットからも明らかであります。

 また、第4段階の人からの質問として、このような例が掲載されています。夫婦2人暮らしで、夫婦の年金の合計が月額19万円程度。夫は要介護5で、介護療養型医療施設のユニット型個室への入院を考えていますが、特別な室料がない場合でも月額約14万円かかると言われています。税制改正によって夫が市町村民税課税者となるので、夫が個室に入ったら、私の生活費は月額7万円程度しかありません。預貯金は400万円程度です。何とかならないでしょうかという問いに、厚労省のパンフレットは、この方は所得状況から見て利用者負担第4段階になると思われますが、高齢夫婦世帯等の居住費、食費の負担軽減の対象者であれば、居住費や食費が軽減されますとして、月13万9,000円かかるものが11万7,000円となって、2万2,000円の負担軽減となるというふうに示されています。

 しかし、この対象要件は6項目あります。1つは、市町村民税の課税者がいる高齢者の世帯が対象になります。そして、個室に入り、利用者負担第4段階の居住費、食費の負担を行っていること。これは世帯員が負担を行っていること。3点目としては、世帯の年間収入から施設の利用者負担を除いた額が80万円以下となること。世帯の預貯金の額が450万円以下であること。日常生活に供する資産以外に活用できる資産がないこと。介護保険料を滞納していないことという、この6つのすべての条件を満たさなければ、軽減の対象にはならないということです。

 世帯の年間収入から利用者の負担を差し引いた額が80万円以下であることというのは、一方の配偶者が在宅で生活する1年間の費用は80万円で暮らせということになります。実質的には、この負担軽減策というのは極めて適用しにくい、そして、第4段階の人にとっては個室を選択するという可能性もまたなくなるということにもなってまいります。

 以上のように、低所得者への負担軽減策、そして、第4段階の人に対する負担軽減策は極めて不十分だと言えます。

 さらに、在宅の高齢者については、デイサービス、ショートステイなどの軽減策がとられておりませんし、生きがいデイサービスでもそれは同様の問題をはらんでいます。在宅の高齢者にも負担を増大することになります。

 法改正による高齢者の負担増に対して、千代田区は増加分の一部を助成するとして予算を計上し、激変緩和を行っています。詳しくはさきの討論者が述べられたとおりでありますけれども……。市は委員会質疑の中で、所得の高い人しか個室を利用できなくなるという問題を認めました。来年1月までに実態調査をし、負担軽減策を検討すると答弁しておりますけれども、10月実施に合わせて軽減策を実施すべきでありました。

 さらに、税制の大幅な見直しがこれから予定されておりますけれども、その問題が今回の改正では一切考慮されておりません。2007年度から実施される公的年金の控除額の引き下げ、老年者控除の廃止等によって住民税の非課税世帯が課税対象となるケースは、概算で全国では100万人と言われています。これに合わせて居住費、食費の軽減を受けられる低所得者が減少してまいります。厚生労働大臣は、激変緩和措置を行うと言っていますが、これも2年間の経過措置にしかすぎません。さらに、税制改正による影響は、国税、地方税のアップ、国民保険料、介護保険料のアップ、そして、施設利用へのアップへと連動してまいります。さらに、定率減税の縮小が追い打ちをかけてきます。高齢者にとっては、幾重もの大打撃です。介護保険の改正は、税制の大幅な見直しをあえて無視していると言えます。

 また、先ほども指摘がありました、私も委員会で意見として述べましたけれども、第2期の介護保険料は、食事、居住費の費用を保険給付として算定されています。10月実施は、市民との契約においても違反していると指摘したいと思います。

 以上で介護保険の理念を危うくする居住費、食費の自己負担にかかわる条例改正及び補正予算に反対をして討論を終わります。