◎【飯沢俊一議長】 次は、第40番、井上睦子議員。 。                   
  生活者ネットワーク・社会民主党を代表して、2004年度八王子市一般会計決算及び各特別会計決算に反対の立場から討論を行います。

 地方税収入は総額813億円で、2001年度862億円であったものから年々減少しています。そして、個人市民税も同様に2004年度は291億円となり、個人所得の減少が顕著にあらわれています。この要因は、多くの企業が年功序列、終身雇用といった雇用条件を変え、人件費の管理を能力給、効率給の導入にし、リストラと正規社員の削減という動きを加速させた結果と言えます。勤労者家計調査によれば、勤労者家計の所得は2000年の631万2,000円から2004年は605万4,000円へと4.9%も減少しています。実額にして25万8,000円も年収が減っています。しかもこの間の公的負担は増大をいたしました。雇用保険の料率引き上げ、介護保険料の徴収開始と引き上げ、国民年金・厚生年金保険料の引き上げ、定率減税の見直し、配偶者控除の見直しによる税負担の増加が進行しています。この結果、勤労者世帯の最終可処分所得は2000年の549万6,000円から2004年の526万3,000円へと4.2%の減少となって、実際に使えるお金は収入よりもさらに減ってきています。

 本市では、納税者の個人市民税所得割の段階別で見ると、200万円以下の所得階層が増加をし、300万円から700万円以下の層が減少しています。さらに深刻なことが進行しています。ほとんどの企業が進めたリストラやアウトソーシングによって年収250万円以下の雇用条件で働かざるを得ない立場の人が極端にふえ、パート、非常勤雇用者が1,750万人、フリーターは213万人、ニートは64万人、失業者313万人、生活保護者134万人などを加えると、約2,500万人が250万円以下の収入で生計を立てる人たちということになります。市民の貧困化という事態が生まれています。自治体の政策はこうした厳しい市民生活を立て直し応援するものでなければなりません。

 こうした視点から決算を総括すると、以下の問題があります。2004年度の市税収入はゆめおりプランの財政見通しとも大きく乖離をしてきています。税源移譲と補助金の削減など三位一体改革とサラリーマン増税と言われる税制見直しや景気、雇用状況の動向など、今後の財政についても不安定要因が大きく、見通しは容易ではありません。来年度以降も厳しい財政運営が続くことが予想されます。3,000億円を超えていた市債残高を2,800億円まで下げるという、返す以上に借りないという努力は評価するところですけれども、今後も厳しい財政運営が続き、投資的経費の抑制は必須のことであります。

 2004年度、川口リサーチパーク予定地であった場所に予定されている西南部物流センターの開発のために、住宅・都市整備公社は市の意向を受けて用地を取得いたしました。しかし、構想実現には造成費の捻出、そしてフルインターの整備という難題が待ち受けています。ハーフインターからフルインターにするには圏央道完成後利用調査を行い、フルインターの必要性が確認されなければなりません。しかし、これには最低10年はかかると言われる事業に民間の投資を期待することは困難です。市税収入の減収という財政運営の厳しさが増す中で、造成費や下水道整備などといったインフラ整備に財政の支出はすべきではありません。こうした基本的な計画を持った財政運営は行うべきではありません。

 また、JR八王子駅南口再開発事業について、ペデストリアンデッキが繰越明許費となりましたけれども、一部説明不足があったと昨日田中副市長が答弁もしたように、再開発事業についての市民への情報公開や説明責任が十分に果たされませんでした。都市計画決定までに総事業費4%から5%の補助金の投入、また市民会館、ミニ市役所の保留床の取得費や建設費、また今後の市財政に与える影響等を明らかにし、このことによって市民合意を本当に得られるのか否か、慎重に判断をすべきであります。

 また、ごみの有料化導入については、私どもはごみ減量の効果は否定をしないとの立場でありましたけれども、導入以前にするべきことがあると指摘をしてまいりました。それは、廃棄物処理の長期計画の策定やプラスチック、生ごみの堆肥化などが課題だと指摘をしてまいりました。これらの施策は2004年度なかなか推進されませんでした。ごみの減量については目標を上回る32.4%の減量がありましたけれども、早くもリバウンド傾向が指摘をされています。資源回収が進めば進むほどリサイクルコストがかかり、3億6,000万円という税金が2004年度は使われています。市民にはペットボトル1本のリサイクルコスト、輸送のための二酸化炭素の排出量など、リサイクルのコストをきちんと伝え、再利用や発生抑制の意識を高めていく施策が重要であります。そのために、エコショップ認定制度の実現や生ごみの資源化については、市民の声を聞きながら循環の仕組みをつくる必要がありますし、発生抑制への重点的な取り組みが求められます。

 2004年度は第4次行政改革プランの最終年度でありました。その報告レポートでは、2000年度から452人の職員の削減、市民との協働が進んだことを成果として挙げています。しかし、職員の削減に伴って非正規職員は増加をしております。2004年度では再任用29名、嘱託職員が425名となっております。そして、臨時職員、これは週40時間労働に換算した場合には385人と、約1,000人弱の人々が非正規労働の職員として働くようになっています。非正規で働く人たちは正規職員と賃金や休暇、社会保障などで大きな差があって、職場での疎外感なども生じてきています。公共サービスにおける非正規労働の増大は社会動向の一つとも言えますけれども、社会全体の非正規労働がふえていくことによって市の税収はふえず、減収するという悪循環を生み出す要因にもなっております。

 また、深刻なのは職員の健康問題です。2004年度の療養休暇取得者総数は215名で、3年前に比べて30人も増加しており、心の病による長期休業者も増加をしています。このことは極めて深刻だというふうに思います。

 そして、職員の削減によって必要な所管に必要な人が配置をされないという問題も起きています。年々生活保護世帯が増加しておりますけれども、担当所管の100世帯に1名のケースワーカーをという要求からは10名以上の人員不足になっておりますし、障害者福祉課などの人員不足も障害者への適切な支援に支障を来すほどになっています。これは適切な部署に適切な人員配置をということが強く求められていると考えます。

 市民との協働は今後の市政運営に不可欠なテーマであります。市民活動支援センターの開設はその一歩でした。市民との協働とは行政の政策立案、決定過程への参画によって、ともに政策を実現し、その担い手に市民がなるということです。しかし、その意義が十分職員に理解されていないために、ただ行政の下請的な仕事だけが回ってくるという不満も市民から出始めています。改めて協働の意義と制度づくりについて確認するということが必要になってまいります。

 福祉費の分野について、福祉サービスは民間の事業者に委託をされているのが大部分となってまいりました。介護保険事業計画策定委員会でも委員から指摘をされたように、介護サービス等を市が直接担っていないために、利用者や市民の実態、そうしてサービスの実情を市がよく理解できていないという指摘がありました。こうした傾向はさまざまなところで出てきているというふうに思います。ぜひ民間事業者のサービスの質を評価し、利用者の権利擁護としての苦情処理や異議申し立てに対する制度化が急務であります。このことは、公費によって福祉サービスを受ける市民の権利擁護という視点から、この制度の実現を強く求めたいというふうに思いますが、残念ながら、この制度は三多摩各市の中で制度化されてまいりましたけれども、八王子市ではまだまだ実現できていないという問題があります。

 最後に、教育費についてでありますけれども、予算の配当額が少ない中で最大限の執行が求められていました。しかし、特色ある学校づくりや学習活動支援補助者の予算配置については執行率が極めて低く、学校からの人の配置の要請に柔軟にこたえられない予算の仕組みになっています。

 また、子どもたちが持っている可能性を最大限に引き伸ばす学校教育が求められておりましたけれども、学力向上のために学力定着度調査が実施されて2004年度は2年目になります。業者テストによる評価によって学校の目標管理が実施をされ、本当に子どもたちの学力の向上になるのかという疑問が保護者からも寄せられています。

 また、少人数学級は子どもたちの学力を高めていく上で最低限の保障という準備をしなければならないというふうに思いますが、まだ実現されていません。教員の加配による習熟度別学級という苦肉の策が多くの学校で導入されておりますけれども、中学校では学力が十分でない子どもたちのクラスは学習を放棄するという実態が生まれていると言われています。こうした子どもたちに競争をもたらすという教育が本当によい結果をもたらすとは考えられません。

 また、2003年度から強制されている卒業式、入学式での教職員への日の丸、君が代の強制も大変問題であります。2004年度も指導室長名で通知が出されております。子どもや教職員、保護者の思想信条の自由を侵すこうした強制的な措置はすべきではありませんし、こうした対応は撤回を強く求めたいと思います。

 政府が進める小さな政府は国民に大きな負担を強いるものです。今後も医療費の高齢者負担増、2006年度からの増税の政策と、市民の暮らしはより厳しくなっていくことは論をまちません。一番身近で頼れる存在の市役所の役割は、市民のセーフティーネットとしての機能を十分に果たしていかなければなりません。しかし、2004年度決算はさきに指摘をいたしました問題点があるということを明らかにして、反対討論といたします。