◎40番【井上睦子君】
 ただいま上程されました議員提出議案第14号、児童扶養手当の減額を最小限にすることを求める意見書の提案説明を行います。

 2002年度に、母子及び寡婦福祉法、児童扶養手当法などが改正され、所得によって手当の額を細かく決め、母子家庭の半数の世帯で手当が減少するという結果になっています。また、この改正によって、児童扶養手当の減額が2008年度から行われることになっています。その内容は、受給5年後または7年を経過したときには、政令により手当の額を半額に満たない金額を減額をするというものです。

 2003年度の全国母子世帯調査によれば、母子世帯は123万世帯になっています。母子家庭の8割が就労し、そのうち正規で働いているのは約4割、パートなど非正規で働いているのは約5割の家庭です。これは、5年前の調査に比べて、正規で働く人たちが1割減り、非正規で働く人たちが1割ふえています。母子世帯の平均年収は212万円で、5年前より17万円減少し、一般世帯の平均収入の30%でしかありません。厳しい雇用環境が母子世帯を直撃しています。

 母子家庭に育つ子どもの約6割が貧困の中で育ち、企業が人件費を削減した結果、子どもがいるひとり親の就職は厳しく、就職できても最後、しかも、パートや契約、請負など、非常に不安定な雇用形態になっています。働いていない母子家庭でも、就職したいと希望している人は約9割という状況に対して、希望はあって意欲はあっても就職ができないという状態に置かれています。

 2003年度から、母子家庭等自立支援対策大綱にのっとり、母子家庭の母への就業支援事業が各自治体で取り組まれてきました。しかし、いまだに取り組んでいない自治体も多く、また、母子就業、自立支援センターを設置して職業紹介をしている場合でも、紹介をするのは非正規の仕事が多いなど、安定した暮らしにつながらないのが現状です。また、自立支援教育訓練給付金制度や高等技術訓練促進費もまだ実効性が上がってはいません。養育費の支払い制度は改善をされてきましたが、支払い率は17.7%に下がっています。この原因も父親の経済状況の悪化が指摘をされています。

 この全国母子世帯調査について、厚生労働省は、5年前の調査と比較しても、就労している者のうちの常用雇用が減少し、また、平均収入も減少しており、母子家庭を取り巻く環境は依然として厳しいものとなっているとまとめています。2002年度の改正は、児童扶養手当中心の支援から、就業、自立に向けた総合的な支援へというものでした。しかし、先ほどの調査からも明らかなように、自立への意欲があり、努力をしていても、状況はより悪化をしています。

 受給後5年または7年で減額をする理由は、児童扶養手当は離婚直後の生活激変に対応するためと説明をされていますが、不安定な就労をしている母子家庭の母の賃金が5年や7年で上がることは、さきの調査の結果から見てもわかるように、なかなか難しい状況です。母子の暮らしはずっと激変が続きます。子どもたちに教育費のかかるときには、母の年齢は40歳を過ぎ、よりよい条件の就労は厳しく、収入は下がっていく傾向があります。子どもが大きくなるに従って、教育費などは増大し、児童扶養手当は働きながら子育てをする母にとっては大きな生活の支えとなっています。

 こうした母子家庭の厳しい現状と児童扶養手当が子育ての大きな支えとなっている現実から、本意見書は2008年度から実施される児童扶養手当の減額を最小限にすることを求めるものであります。議員各位の御賛同をお願いをして、提案説明を終わります。