◎40番【井上睦子君】
 それでは、議員提出議案第7号、八王子市乳幼児医療費助成条例の一部を改正する条例設定について、生活者ネットワーク・社会民主党を代表して、賛成の立場から討論を行います。

 昨年の国勢調査の速報によって、日本は人口減少社会に入ったことが明らかになりました。深刻な少子化現象に歯どめをかけるべく、国や地方も近年子育て支援に本腰を入れてきました。八王子市でも、こども育成計画が策定され、2005年度はスタートの年でありました。しかし、少子化対策は何とか女性に子どもを産んでほしいという政策ではありません。若い世代が子どもを持つ動機は、子どもが好き、育ててみたいなどの自分自身の意思が大きな要因となっています。そして、もう一つの要因は条件です。子どもを持っても経済や住宅などは大丈夫なのか、自分の仕事や趣味などの都合はどうなのかを検討し、それらの条件が満たされていることが子どもを産む決断になると言われています。子どもを産むことが自然なことではなく、選択の対象となっているのです。

 子どもを産み育てたいと決めたカップルが、本当は子どもは3人から4人欲しいと思っていても、実際はそれを下回っているのが日本の現実です。子どもをもっと産み育てたいと思っても、現実は女性に一方的に育児負担がかかってくることや、経済的な理由、または十分な保育体制がないために女性が仕事を続けられないなど、子どもを産みたいのにあきらめざるを得ない、抑制せざるを得ないという不本意な少子化をなくすことがその課題だと言えます。

 乳幼児医療費助成制度は、子どもたちの健やかな成長を保障し、若い世代が安心して子育てに取り組むことができる制度として、全国の自治体で実施されています。本条例改正案は、2003年6月から1年審査をされた就学前までの所得制限を撤廃する条例改正の議論、すなわち財政難が叫ばれている現在、年齢を引き下げて実施する案が必要との反対意見を受けて、所得制限の撤廃を1歳未満から3歳未満にまで、まず段階的に広げようとするものだと考えます。

 既に23区では、就学前の乳幼児については所得制限を撤廃し、さらに2006年4月実施を含めて、14区で小学生、中学生に対する医療費助成を行っています。

 三多摩地域でも、次第に所得制限の撤廃がされ、所得制限なしは2006年度から実施する羽村市を含めて6市にもなります。八王子市と同様に、1歳未満に所得制限はなく、1歳以上は所得制限ありという市は八王子市を含めて3市、全年齢児に所得制限があるのは3市のみとなっております。各市は所得制限の撤廃の年齢引き上げに向けて努力をされております。子育てナンバーワンのまちを目指す本市としては、低い水準にあると言えます。

 こうした所得制限撤廃の拡大は、乳幼児医療費助成制度が福祉的な施策から、すべての家庭の子どもへの子育てへの支援として、政策的な考えを転換したことにあります。児童手当も法改正によって、ことし10月から所得制限額が引き上げられました。これも同様の考えによるものとの答弁が市側からありました。

 児童手当の法改正に準拠して、乳幼児医療費助成制度の所得制限も引き上げられます。これによって、92%の就学前の子どもたちが助成制度を受けられるようになります。所得制限の緩和によっても受給できない子どもたち、すなわち1歳以上、3歳未満の子どもたちは約8%の870名が残ることになります。3歳未満の子どもたちの所得制限撤廃にかかる費用は1,710万円ということも質疑の中で明らかになりました。所得の高い世帯は、それだけ税の負担をしている層です。あらゆる制度にはまだ所得制限があり、こうした世帯はそのサービスを受けることができないというのも大きな不満となっています。子育て支援は、保護者の所得に関係なく、どの子にもひとしく行われるべきものであります。ヨーロッパの多くの国では、子育て支援策には所得制限がなく、効果を上げているということからも明らかであります。

 財政が厳しいとき、優先順位があるという議論がありますが、八王子市の新年度予算に占める子育て支援の割合は15%でしかありません。子育てナンバーワンのまちを目指すならば、子育て支援の予算枠の拡大こそが求められています。こども育成計画では、乳幼児の医療費負担の軽減が取り組みの内容で示され、所得や対象年齢等の制限緩和が打ち出されています。年齢や所得制限の緩和は既に大きな政策課題となっています。

 昨年発表された少子化と男女共同参画に関する社会環境の国際比較報告書によれば、女性労働力と合計特殊出生率との割合について、OECD24ヵ国の比率が示されています。この結果、女性の労働力率が高い国ほど合計特殊出生率も高いという傾向が見られます。これは、両立支援が進んだことにより、女性が働き、そして、子どもを産み育てる環境が整ったためだとも言われています。日本は、合計特殊出生率が、これは2000年の段階ですけれども、1.29、女性労働力率は60でしかありません。大変高い特殊出生率を示すアイスランドは2.0以上。このときのアイスランドの女性労働力率は80%以上にもなっています。これは男女がともに働き、子育てを担うという国こそが出生率が高いということをあらわしたものであります。

 共働き家庭は必然として所得の高い世帯となっています。先ほど各討論者が挙げられました今回の児童手当の所得制限額の引き上げは、扶養3人ということで、妻は専業主婦、そして、子どもが2人、男性の片働きのモデルが主流となっています。日本は男女がともに働き、子育てを担うという女性の労働力率を高める政策に転換しなければなりません。そのためには、共働き家庭として、必然的に所得の高い層が生まれてくるわけであります。したがって、乳幼児の医療費助成制度についても、ただ単に経済的に困難な家庭の子どもたちにのみ経済的な支援をするということではなくて、子育て全体を応援する。そして、子育てのモデルを男女がともに働き、子どもたちを育てるという形に転換していくならば、所得制限全体を撤廃していかなければならないのだというふうに思います。

 乳幼児医療費助成制度は、国の制度として創設されるべきだと、八王子市議会も主張してまいりました。何度も意見書が提出されております。本来ならば、国がこの制度を創設すべきでありますけれども、現在の子育て支援に対する経済的な要求が高い中で、各自治体が努力をしている。国が創設するまでの間、自治体が所得制限の撤廃に向けて努力をすべきだという観点から、この条例改正案には賛成したいと思います。  以上で討論を終わります。