◎40番【井上睦子君】
 それでは、八王子市土地信託について質問をいたします。今年度、この事業は11年目に入ります。30年間の長期にわたる事業の中で、当初入居率は70%前後でありましたけれども、現在では95%ということで、一定市の努力、それから信託会社の方の努力もあったかというふうに思いますけれども、まだまだ課題がございますので、何点か御質問をいたします。

 まず、信託報酬料率の引き下げ交渉について、先ほどの他の質問に対する御答弁がございました。昨年11回の協議の中で、困難であるというような報告がされましたけれども、これは協議の交渉を打ち切ったということではなくて、交渉は継続をするということで確認をしていいのかどうかお答えをいただきたいというふうに思います。

 これは、私は2003年の6月議会で、信託報酬の引き下げに取り組むようにということで指摘をいたしました。オフィス棟の賃料が3億8,000万円と公共施設の賃料が8億7,000万円の合計額の2.4%が信託報酬でございます。当初の計画では、オフィス棟、そして、公共施設、ともに4,800円の賃料であったわけですが、オフィス棟の方は現在2,700円ということで、大幅に引き下げて貸し出しをしております。公共施設の方は4,000円ということであまり変わっていない。これは平米単価です。そうしますと、約80%の部分を支える公共施設の賃料の信託報酬で信託会社の方は大方の報酬を得ているということになります。このことは、しっかりと信託側に指摘をして、0.1%でも引き下げるという努力をしていただきたいというふうに思います。

 0.1%でも報酬料率を引き下げることによって、年額125万円の報酬の引き下げになり、それだけ信託利益が出るということになります。先ほど借入金の利率の改定のところで、実利をとるということでありましたけれども、御報告をいただいた中での昨年度の金利のところでの軽減は121万円というような御報告でございました。あわせて努力をすれば、少しでも利益が出るということになりますので、このことはぜひ御努力をいただきたいというふうに思います。

 そして、信託側は手落ちがあったというふうに認められるので、利率の改定には応じられないという回答であったようでありますが、手落ちがなかったというふうには言えないのではないかというふうに思います。当初の計画提案からは大幅に狂ってきておりますし、これは平成13年の包括外部監査で指摘をしていることでありますけれども、修繕積立金が事業計画では99億円計上されているが、見直しを行っていない点、そして、信託銀行が当初作成した事業計画の想定する信託配当金151億1,200万円の実現は疑わしいというふうに指摘をされております。

 これだけの利益があるというふうに提案をされて、信託報酬の料率2.4%も契約として締結をされてきたわけです。しかし、この信託配当金は中期事業計画では、平成22年度まで一切ゼロ配当ということになっていて、このこと自体が手落ちがあったというふうには考えられないのでしょうか。経済的な動向だけではなく、提案自体に問題があったとすれば、市側はオフィス賃料の大幅な引き下げをのみ、公共施設の賃料の4,000円という筋をキープをして、市側自身も痛みを持っているわけですから、信託会社側も痛みをしっかりと受けてもらうように引き下げに御努力をいただきたいと思いますが、その決意をお伺いをしたいと思います。

 次に、借入金の問題についてであります。当初、安田信託銀行から97億円、日本政策投資銀行から70億円、167億円の借入金がありました。現在の借入金残高は幾らになっているのか。そして、今後の返済計画はどのようになるのか、明らかにしていただきたいというふうに思います。

 中期事業計画の中では、平成22年度まで信託配当はありません。そして、平成22年度でみると信託利益として出てくる約7億8,000万円の利益は借入金の返済に約6億6,000万円、その他残りを修繕積立金として約1億2,000万円前後を積み立てるということになっていて、利益が出れば、それは借入金の返済と修繕積立金に充てられるという大変厳しい計画が22年度まで続くようになっています。今後の長期的な見通しについては、信託銀行側とどのような協議をしているのか。そして、今度9月には、借入金の利率の変更についての協議があるということでありますけれども、この実利をとるためにはどのような方策を採用しようとしているのか、明らかにしていただきたいと思います。

 次に、修繕積立金について伺います。先ほども、現在17年度末で7億1,300万円の積み立てがあるというふうに御報告がございました。18年度、1億円、19年度では約1億5,000万円の修繕費が計上をされております。今後年数がたつにつれて、大規模修繕の時期を迎えてまいりますけれども、大規模修繕の時期とその必要な金額についてはどのように計画をされているのか明らかにしてください。

 最後に、長期事業計画の策定の問題についてであります。先ほども紹介をいたしました13年の包括外部監査では、中長期事業計画の再検討が必要であるということと同時に、土地信託契約書の第26条第3項によって定められている計算期日までに安田信託銀行は翌計算期以降の事業計画を八王子市に報告をしなければならないというふうに定められているけれども、この指摘の時点まではこの中長期の事業計画の報告書は出されていなかったわけです。この指摘を受けて、中期事業計画が提出をされるようになりました。

 しかし、30年後、今後では20年間ですが、長期の事業計画の策定は行わせていないのではないかというふうに思いますが、私どもがいただいているのは、中期の事業計画でしかありません。5年先までしかないわけですけれども、この30年間の長期計画の策定については、しているのかしていないのか。していないとすれば、包括外部監査の指摘をどのように受けとめて信託銀行側とこの間交渉をしてきたのか明らかにしていただきたいと思います。  以上で1回目の質問を終わります。


◎ 財務部長
 一部順不同になるかもしれませんけれども、まず、信託報酬改定の協議に関してでございます。銀行側の言い分、それから現状につきましては、先ほどお話ししたとおりの状況となってございます。ただ、この交渉をどういうふうに打ち切るかということに関しては、先ほど副市長が答弁いたしましたような形で、料率改定が実現できないとしても、変わる金利面での交渉、この余地は残す形で実質的な交渉は継続ということで考えております。

 それから、手落ちという言葉を使って先ほど答弁しておりますけれども、この手落ちというのは、信託契約書上の管理運営面における手落ちがあったという、こういうことを意味しています。

 それから、この交渉の見通しとしましては、やはり一番重たいのは、契約条項上、この信託報酬料率が両者合意の上で定められているという、そこのところがやはり一番重たいというふうに思っております。

 それから、借入金の関係ですが、御質問者がおっしゃったとおり、みずほ信託銀行からと日本政策投資銀行、その両者の方から借り入れを行っております。当初の借入額につきましては、みずほ信託銀行が97億円、日本政策投資銀行からは70億円を借り入れております。現在高としましては、みずほ側が72億円、日本政策投資銀行側が51億円ということになってございます。両者合わせて123億円が現在高ということです。

 返済でございますが、どちらにしても、信託期間が切れる30年後、このときに借入金は全額返済できるように、毎年の信託収益の中から返済をしていくという、こういう考え方でございます。

 それから、実利をとるための考え方、先ほど副市長が他の議員にお答えした中での実利ということですが、これは、これからの交渉の中で、優遇金利の適用を求めたいというふうに思っております。

 それから、大規模修繕への対応ということです。建物もここで10年を経過しまして、一定の目安として、竣工後15年から20年あたりで大規模改修が必要となってまいります。18年度の事業計画書の中で、外壁の劣化調査などを行うことになっております。信託収支の財務状況を踏まえ、さらに調査結果に基づく建物の保全状況などをとらえて、総合的な判断に基づき、一気の負担増とならないような修繕計画を立てたいというふうに考えております。

 それから、長期事業計画の策定の関係でございますが、信託事業は30年にも及ぶ長期の期間を要することから、社会経済情勢など不透明な部分が多くなってございます。将来を見据えた計画策定は極めて困難でありますし、どうしても予測の域を超えない計画書となってまいります。現時点では、この長期計画について策定することは考えてございません。


◎ 40番井上睦子議員
 それでは、信託報酬の問題について再度伺いますけれども、実質的には契約上の定められた管理上の問題ということなので、難しいということでありましたけれども、引き下げ交渉はぜひ継続をしていただきながら、金利との交渉も含めてきちんと利益へ回るようにぜひ努力をさらに引き続いてお願いをしたいというふうに考えております。

 結局土地信託というのは、信託会社がどのような損害も受けないというか、信託会社のお金を借りて、その利率を行政側が払う。また同様に、その報酬も支払うということで、どんなに経済情勢が変動して自治体が負債なり困難を背負ったとしても、信託銀行の方は自治体が背負うほどの問題は背負わない。逆に利益はきちんと確保されるという制度であります。しかしながら、ぜひこの信託報酬や金利のところできちんと行政側の主張を通して対応をしていただきたいというふうに思います。

 修繕計画の問題ですけれども、今年度外壁の劣化調査をしながら計画を立てていくということでありましたけれども、15年から20年の間でやるということですが、それでは大規模修繕計画というのは18年度策定をされるというふうに考えてよいのか明らかにしてください。今後の計画です。一定の見通しを持って修繕積立金も行わなければなりませんし、不足をするとすれば、その資金の準備もしていかなければなりません。早期にその修繕計画を立てることを求めたいというふうに思いますが、どのようにお考えでしょうか。

 最後に、長期事業計画の策定の問題です。大変長期にわたる事業なので、計画を立てることが困難であるということでありましたけれども、そうしますと、そもそもこの土地信託、30年間の計画で立てたこの計画自体に対する否定とも受け取れかねない答弁だというふうに思います。議会で議決をした平成4年の段階だったというふうに思いますが、30年間の事業計画が提出をされて、それについて議会は承認をしてこの事業に取り組んだわけです。あと20年間残っているわけですけれども、今さら長期事業計画については経済社会情勢の変動があるので出すことは考えない、策定することは考えないということは、みずからが提案をした内容について否定をするような考えではないでしょうか。

 実際に経済は変動しますし、見通しは困難だというふうに思います。しかしながら、中期事業計画は毎年度ローリングをしながら、5年先を見通して計画が出されているわけです。ぜひ30年間の長期事業計画も出していただいて、変動があれば毎年ローリングをしていけばいいわけです。そうしますと、私どももいつの段階で信託配当が配当されるのか、あるいは最終年度の段階では赤字にならないのかということを確認をしながら、さまざまな提言もしていけるというふうに思いますので、ぜひ長期事業計画については策定をすべきだと、そして、信託銀行側にもそのことを求めるべきだというふうに思いますし、これは外部監査でも指摘をされていることです。ぜひそのことはきちんと実行していただきたいというふうに思いますけれども、担当副市長の御答弁をお願いをいたします。


◎ 財務部長
 修繕計画の関係でお答えをいたします。

 18年度に調査をして、その結果で修繕計画を策定するのかという、こういうことでございますけれども、調査を18年度で行う予定となっております。その調査の結果がベースになって、今後の修繕計画というものは策定されていくというふうに考えております。また、こうした修繕費用を賄っていきますのは、修繕積立金等、それから各年度で実施しています管理費の中で、その対応は考えていきたいというふうに思っています。すべてを修繕積立金という形で必要なトータル額を積み立てるということではなくて、当該年度での対応経費の中でも修繕の方は進めていきたいというふうに考えております。


◎ 副市長
 信託事業についてでございますが、報酬の改定については、先ほどもお答えしましたとおり、大変粘り強くやってきているわけですけれども、これがなかなか壁が厚くて、風穴をあけることができないということであれば、そこはまた、先ほどの私が御答弁申し上げたように、貸付金のところで交渉していった方が私どもの方で実利がとれるということ、また、これが市民の皆さんの税の負担の軽減になるということであれば、それはそちらの方にシフトしてやっていくことも私は知恵の1つだろうと思っていますから、その辺の当然信託報酬の協議も継続してまいりますけれども、当面はそちらの方に9月という時期がございますので、そちらに力を注いで交渉してまいりたいというふうに思っています。

 それから、長期事業計画でございますけれども、これは求めるべきだということです。これは、これまでの事業計画についての事務方同士の協議というものを私は十分に把握していませんが、おっしゃっていることは理解をできますので、またこうした計画策定ができるかどうか、これも交渉の中で臨んでまいりたいというふうに思っています。