◎【40番井上睦子議員】
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議員提出議案第18号、イラク特措法を廃止し、自衛隊の撤退を求める意見書について、生活者ネットワーク・社会民主党を代表して、賛成討論を行います。
2007年を象徴する1文字は「偽」という字でした。まさにイラク戦争も偽りの戦争であったと言えます。アメリカの先制攻撃を正当化する理由として挙げられたイラクの大量破壊兵器の保有について、アメリカ政府の調査報告書でも、イラクに大量破壊兵器が存在しなかったことは明らかになっています。ことし、参議院選前の6月、日本政府は、7月末で期限切れとなるイラク復興支援特別措置法を2年間延長する法案を慌ただしく強引に成立をさせました。
特措法が当初想定していた4年が経過したにもかかわらず、イラク国内では混乱がより一層深まり、地獄と化しています。各国で高まっているイラク戦争への批判を全く無視して、復興支援を名目に、多国籍軍への支援を続けることは許されません。世界の動向も、イラクの動向も、イラクの人々の命も、憲法も、すべて無視したもので、延長は全く根拠がないと言えます。イラクの人々の命を奪い、住む場所を破壊するために、私たちの税金が使われたのです。そして、今もまた、使われているのです。イラクの少女、8歳のサナリアさんは、日本の平和運動団体の招待で来日をいたしました。集会では、遊び場も学ぶ場所もありません、私はどうしたらよいのでしょうと問いかけています。
アメリカでは、ブッシュ政権のイラク戦争と占領に反対する世論が過半数以上となり、軍隊の撤退を求める声が強まっています。イラクからの即時撤退を求めて、9月にはワシントンで10万人の大行動が、そして、10月にもサンフランシスコで3万人集会が持たれ、全米11ヵ所で少なくとも10万人もの人々が抗議行動に立ち上がっています。爆弾ではなく教育を、戦争と占領ではなく仕事と教育にお金をのスローガンが掲げられました。
このデモの先頭には、シンディ・シーハンさんが立っています。このシンディ・シーハンさんは、息子がイラクで戦死をいたしました。なぜ息子がイラクで死んだのか、息子の死は認められない。そして、イラク戦争は正当な戦争ではない。大義ある戦争ではないと訴えて、夏休み中のブッシュ大統領の牧場に1人でテントを張り、そして、それ以降全米のイラク反戦運動の牽引役となった人です。シーハンさんは、イラク撤退を引き延ばすのは、70万人を超えるイラク人の犠牲者、400万人もの難民、1日3.72人もの米軍兵士の死を認めることになる、そして、多くの遺族の悲しみを生み出すことになると怒り、訴えています。
米軍兵士の死亡者数は、11月7日、朝日新聞の報道によれば、ことしで既に854人を超えました。開戦後からの合計は3,857人にもなります。アメリカの大手マスコミCBSは、2005年だけで、軍で兵役についたことのある人々の中で少なくとも6,256人が自殺をしている、毎週120人が自殺者であると報道し、開戦からの帰還兵の自殺を推計しています。このCBSは、戦死者も加えると、アメリカでのイラク戦争による戦死者と自殺者、合計1万5,000人を超えるのではないかと結論づけています。これは、大義なきイラク戦争に動員され、激烈な都市ゲリラ戦争の真っただ中にほうり込まれた兵士たち、そして、帰還後、心の苦しみ、PTSDや負傷による苦しみを抱え、社会生活に復帰できなかった兵士たちの苦悩を象徴する数字となっています。
イラクの戦場に立った兵士、そして、元兵士の自殺の問題は、米軍だけの問題ではありません。イラクやインド洋に派遣された自衛隊員からも多くの自殺者が出ています。社民党の照屋寛徳衆議院議員が11月に提出をしたイラク帰還自衛隊員の自殺に関する質問趣意書に対して、政府は、イラクやインド洋に派遣された経験のある自衛隊員、在職中の死亡者総数は35人に上り、そのうち16人が自殺であることを明らかにしました。米軍と単純に比較はできませんけれども、インド洋に派遣された海上自衛隊員延べ1万900人、イラクへ派遣をされた自衛隊員延べ8,800人、合計して約2万人とした場合、2万人に16人の自殺者は明らかに高いと言えます。アメリカで大きな問題となっている退役軍人のPTSDや自殺者の問題は、戦争に加わった兵士の苦しみと末路をあらわしています。
日本は、憲法9条に反して、イラクに自衛隊を派遣をいたしました。その中で、ことし、参議院議員になった初代イラク復興支援隊長であった佐藤正久参議院議員は、選挙中このような発言をいたしました。オランダ軍が攻撃を受ければ、情報収集の名目で現場に駆けつけ、あえて巻き込まれ応戦するという事実上の駆けつけ警護を発言をしたのです。これは、憲法9条が禁止をした集団自衛権への参加になりませんし、また、自衛隊員独自でそのことを判断するということは、文民統制を無視した、シビリアンコントロールを無視した発言として大きな問題になりました。
これに対して総理大臣は、そのようなことは関知はしないという答弁をしておりますけれども、現行法上、憲法上、それは攻撃を受けている他国の軍隊等を救援するために武器を使用することは認められないことでございますというふうに答弁をしておりますけれども、実際、この佐藤正久元隊長の言葉にあらわれているように、自衛隊員自身が文民統制を無視し、そして、彼らのイラクでの任務とは、そのようないわゆる後方支援あるいは集団的自衛権をそこに踏み入れるような、そういった思惑があったということはこの発言からも受けとめられるわけであります。
私は、2004年のイラク撤退を求める意見書について、イラク復興支援特措法は国連安保決議1483を根拠としておりますけれども、これは決して軍事力による貢献を求めたものではありません。にもかかわらず、受け入れ国の同意を欠き、米英両軍の占領統治下にあるイラクに自衛隊を派遣したことは、後方支援であっても、憲法9条が禁じる交戦権の一部の行使にほかなりませんというふうに申し上げました。そのことが、やはりイラクの派遣によって米英軍の兵士を輸送することというのは武力行使との一体であるということが明らかだというふうに思います。
今、世界各国の軍隊がイラクから撤退をし、アメリカでもかつてない動きだそうでありますけれども、退役軍人の会、そして、戦死者家族の会などがイラク反戦運動に多くが参加をしてきています。そうした中で、イラクの人々、アメリカの人々、世界の人々のそうした気持ちに連帯をしない、先ほど反対討論者は、イラク政府あるいはアメリカ政府というふうにおっしゃいましたけれども、そういった機関だけをパートナーとする考え方は誤りだというふうに思います。
米兵の自殺者、自衛隊の自殺者、そして、イラクでの多くの死亡者、そのことは戦争がいかに悲惨で、侵略をする側も、またされた側も大きく傷ついているということをあらわしていると思います。決して武力で平和はつくることはできないというのがこの4年間のイラク戦争の結果であります。したがって、このことをしっかりと受けとめ、そして、参議院での撤退法案の可決を受けとめ、潔く政府はイラクから撤退をすることを求めるものであります。
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