◎【40番井上睦子議員】
議員提出議案第17号、六ヶ所再処理工場の本稼動中止と閉鎖を求める意見書に対して、生活者ネットワーク・社会民主党を代表して賛成討論を行います。

 六ヶ所村には、再処理工場のほかにウラン濃縮工場、低レベル放射性廃棄物埋設センター、高レベル放射性廃棄物貯蔵管理センターと、4つの核施設があり、核燃料サイクル基地と呼ばれておりますけれども、これはまさに核のごみ集積所とも言えます。使用済核燃料からプルトニウムを取り出す再処理工場は、放射能を原料とした巨大な化学プラントでありますけれども、提案者からも説明があったように、臨界事故や放射能漏れ、被爆事故などの危険性、そして、チェルノブイリ原発事故のように火災爆発などの大きな危険性を持っております。

 再処理は次のような工程でプルトニウムを取り出してまいります。まず、使用済燃料を燃料のさやごと切断をし、高温高濃度の硝酸に溶かして、ウラン、プルトニウム、死の灰のまざった硝酸溶液がつくられます。最初に硝酸溶液から死の灰を分離をし、死の灰は濃縮された高温のガラス原料とまぜ、ステンレスの容器に入れて冷やし固められます。これが高レベルガラス固化体で、専用の埋蔵建屋で30年から50年貯蔵され、人間が近づけばこれは即死をしてしまうという非常に強力な放射線と熱を出す大変危険なものだと言われています。

 さらにウラン溶液とプルトニウム溶液を分離をし、ウランは硝酸を抜き、酸化ウラン粉末の状態で埋蔵します。そして、プルトニウム溶液は1度分離したウラン溶液と1対1の割合で混合され、そこで硝酸を抜き、ウラン、プルトニウム混合酸化物が粉末の状態で貯蔵されます。このプルトニウム、すなわちウラン、プルトニウム混合化合物が再処理工場の製品となるわけです。

 そして、これを再び原発の燃料として利用しようとするのがプルサーマルであります。この5つの過程の中から考えられるのは、極めて高濃度高温の硝酸に溶かしてプルトニウムを精製していく過程で、多くの放射能漏れや労働者の被爆事故、そして、少し間違えば大きな火災や爆発事故につながるという危険性と常に隣り合わせであるということでありますし、東海村の事故なども記憶に新しいところであります。こうしてこの過程の中で出てきたガス化された放射能は大気に、そして、液体はどんな処理もされることなく海洋に放出をされていくことになります。

 先ほど1日の再処理工場の放出量は100万キロワットの原発1年分の放射能と同レベルだという提案者の提案に対して、反対討論者からは、それは誤りであるという趣旨の討論がされました。しかし、そうではありません。これは、青森県の元浪岡町長だった○○さんの解説でありますけれども、ずっと再処理工場のアクティブ試験を注目をしながら出ております。まず、気体廃棄物のクリプトン85の放出量と2005年度の全原発放出量の希ガス放出を比べてみると、これは3万倍にも達するということが明らかになっておりますし、液体廃棄物のトリチウムの放出量でも、2005年度の全原発トリチウムの放出量の約1.3倍もの放出をしているということが明らかになっていて、1年間に原発で環境に放出する放射能をわずか1日で出すというけれども、実態としてはこれはもっと大きいのではないかということが言われております。

 これは、2006年度の比較でありますから、2007年度、今年度の稼動状況から比べれば、もっと大きな数値になっているということが指摘をされております。どのような数値をもって言われたのかわかりませんけれども、日本原燃が発表しているクリプトン85の放出量とトリチウムの放出量のその数値を比較をしていただければ、反対討論者も理解をされるのではないかというふうに考えます。

 さて、こうして大気中に放出された放射能は、風向きによっては、陸奥湾や八戸市の方向に、そして、海洋から放出された放射能は青森県から東京湾の入り口まで及ぶと言われています。被害は青森県だけではなく広範囲に及ぶということになります。これは、いたずらに風評被害を呼び起こすということではありません。実際に三陸の漁業者は放射能による水産物の汚染を心配して、岩手県議会に、岩手県はアクティブ試験の実施について青森県に対して慎重を期すことを申し出ることの趣旨の請願を提出し、岩手県議会はこれを全会一致で採択をしております。

 また、岩手県沿岸の自治体では、放射能を海に流さないこととする法律制定を求める請願も採択をされております。さらに御紹介がありましたけれども、重茂漁協では、再処理工場の稼動に反対する決議も上がっております。自然界の放射能レベルと同じだというような乱暴な言い方は許されないというふうに考えております。

 2006年度版の原子力安全白書は、電力会社の不正の総点検を特集をしています。2007年3月現在、東京電力をはじめとするすべての電力会社で1万件以上に及ぶ原子力発電や火力発電所の事故、トラブル隠しが明らかになっています。中越沖地震で明らかになった柏崎刈羽原発の活断層の存在を隠ぺいしたことは記憶に新しいところですけれども、六ヶ所再処理工場でも使用済燃料プール設備の設計ミスが隠ぺいされていたことが発覚をし、耐震補強工事が実施されることになりました。

 2006年3月31日からの試運転、アクティブ試験の過程では、第4ステップ前で不適合21件、試験には関係ない不適合が328件も起きています。また、放射線業務の従事者の被爆も深刻で、メンテナンスや耐震補強工事が原因で被爆量が平均より多い労働者は06年度と07年度の第2・四半期を合わせて41人にも上っています。六ヶ所再処理工場の費用は全体で総額約11兆円と電気事業連合会は発表しておりますけれども、さらに六ヶ所工場全体の費用を含めたバックエンドの総額が約19兆円にも達することが明らかになっています。

 この費用は、建設費だけでも当初計画の4.5倍となっており、40年間フル稼動無事故というあり得ない試算なので、実際はこれ以上の額になることが予想をされております。これらの費用は原発を操業し利益を得ている電力会社が負担をするのではなく、原発を利用した人が負担をするという論理で、すなわち私たち国民が数十年にわたってこの何兆円もの費用を負担をすることになります。今再処理工場を中止すれば19兆円の約7割が削減可能と原子力情報誌では試算をしております。

 もともと再処理は核兵器の材料であるプルトニウムを取り出すことを目的に開発された核軍事の中心的技術です。韓国環境運動連合のイ・サンフンさんは、韓国から見た場合、六ヶ所再処理工場は朝鮮半島の非核化問題にとって障害となる。北朝鮮の核問題は同国がプルトニウム40基を持っているかどうかというレベルの問題であったけれども、既に40トン以上を保有する日本が使い道のないプルトニウムを増産することが許されるのかと、六ヶ所再処理工場は北東アジアの平和を脅かすものであると稼動中止を訴えています。

 六ヶ所村沖には活断層があり、三沢基地からの戦闘機の空路が近く、六ヶ所上空でも事故の心配が言われております。そして、今回の工場のアクティブ試験の中断、すなわち、これは工場の耐震補強のために試運転が4ヵ月間中断したわけですけれども、そのことによって来年の2月に本格稼動の開始時期の延期がされました。このことによって地元青森県と六ヶ所村の財政は大きな影響を受けています。試験の中断によって、今年度の使用済燃料の搬入計画は538トンから269トンに減少しました。これに伴い、県の核燃税収入は約50億円もの減額となります。また、操業延期によって、六ヶ所村が見込んでいた初年度固定資産税約20億円、これは07年度一般会計の約2割にも及ぶと言われておりますけれども、これも来年度分は消えてしまいました。村は事業計画の見直しを迫られています。財政の大きな部分を巨大な原子力施設が生む核燃マネーに依存する地元自治体が今後も事故やトラブルに翻弄されることは目に見えています。

 このように危険なものをその土地に持っていって、それには税収入をあてがうという、貧しい地域に人々の危険である、不安がある、そういった施設を持っていきながら、地域の経済というものを縛っていくというやり方は決して地方の経済にとっても健全ではないということが今回の地元財政の混乱があらわしていると思います。

 最後に、この言葉を御紹介したいと思います。24時間ネオンの輝いている都会生活の陰に、孫子の代まで放射性廃棄物と実験動物よろしく共生させられ、日夜放射能被爆の不安におののいている多くの人々がいる事実を知ってほしいのです。豊かな生活の裏で、国策国益という説明に素直に従い、協力と我慢を強いられている貧しさと悲しさ、そして、それを許している恥ずかしさとわびしい思いを察してくださいというように訴えています。これは、先ほど御紹介をした青森県の元浪岡町長の○○○○さんの言葉です。

 私たちは、日本のエネルギー政策、国策だからそれに従うということではなくて、その施設がどのようにその地域の住民にとって被害をもたらすのか、そのことをしっかりと受けとめなければならないと思います。そして、そのことに至って原子力は徐々に新たな自然エネルギー、代替エネルギーへの開発を進めながら、縮小、廃止をしていくことが必要でありますし、また、私たちは自分たちの生活も見直しながら、環境に優しいエネルギーへと転換をしていかなければならないと思います。

 そういった方向性も含めて、本意見書には賛成の立場といたします。以上で討論を終わります。


◎【40番井上睦子議員】
議員提出議案第18号、イラク特措法を廃止し、自衛隊の撤退を求める意見書について、生活者ネットワーク・社会民主党を代表して、賛成討論を行います。

 2007年を象徴する1文字は「偽」という字でした。まさにイラク戦争も偽りの戦争であったと言えます。アメリカの先制攻撃を正当化する理由として挙げられたイラクの大量破壊兵器の保有について、アメリカ政府の調査報告書でも、イラクに大量破壊兵器が存在しなかったことは明らかになっています。ことし、参議院選前の6月、日本政府は、7月末で期限切れとなるイラク復興支援特別措置法を2年間延長する法案を慌ただしく強引に成立をさせました。

 特措法が当初想定していた4年が経過したにもかかわらず、イラク国内では混乱がより一層深まり、地獄と化しています。各国で高まっているイラク戦争への批判を全く無視して、復興支援を名目に、多国籍軍への支援を続けることは許されません。世界の動向も、イラクの動向も、イラクの人々の命も、憲法も、すべて無視したもので、延長は全く根拠がないと言えます。イラクの人々の命を奪い、住む場所を破壊するために、私たちの税金が使われたのです。そして、今もまた、使われているのです。イラクの少女、8歳のサナリアさんは、日本の平和運動団体の招待で来日をいたしました。集会では、遊び場も学ぶ場所もありません、私はどうしたらよいのでしょうと問いかけています。

 アメリカでは、ブッシュ政権のイラク戦争と占領に反対する世論が過半数以上となり、軍隊の撤退を求める声が強まっています。イラクからの即時撤退を求めて、9月にはワシントンで10万人の大行動が、そして、10月にもサンフランシスコで3万人集会が持たれ、全米11ヵ所で少なくとも10万人もの人々が抗議行動に立ち上がっています。爆弾ではなく教育を、戦争と占領ではなく仕事と教育にお金をのスローガンが掲げられました。

 このデモの先頭には、シンディ・シーハンさんが立っています。このシンディ・シーハンさんは、息子がイラクで戦死をいたしました。なぜ息子がイラクで死んだのか、息子の死は認められない。そして、イラク戦争は正当な戦争ではない。大義ある戦争ではないと訴えて、夏休み中のブッシュ大統領の牧場に1人でテントを張り、そして、それ以降全米のイラク反戦運動の牽引役となった人です。シーハンさんは、イラク撤退を引き延ばすのは、70万人を超えるイラク人の犠牲者、400万人もの難民、1日3.72人もの米軍兵士の死を認めることになる、そして、多くの遺族の悲しみを生み出すことになると怒り、訴えています。

 米軍兵士の死亡者数は、11月7日、朝日新聞の報道によれば、ことしで既に854人を超えました。開戦後からの合計は3,857人にもなります。アメリカの大手マスコミCBSは、2005年だけで、軍で兵役についたことのある人々の中で少なくとも6,256人が自殺をしている、毎週120人が自殺者であると報道し、開戦からの帰還兵の自殺を推計しています。このCBSは、戦死者も加えると、アメリカでのイラク戦争による戦死者と自殺者、合計1万5,000人を超えるのではないかと結論づけています。これは、大義なきイラク戦争に動員され、激烈な都市ゲリラ戦争の真っただ中にほうり込まれた兵士たち、そして、帰還後、心の苦しみ、PTSDや負傷による苦しみを抱え、社会生活に復帰できなかった兵士たちの苦悩を象徴する数字となっています。

 イラクの戦場に立った兵士、そして、元兵士の自殺の問題は、米軍だけの問題ではありません。イラクやインド洋に派遣された自衛隊員からも多くの自殺者が出ています。社民党の照屋寛徳衆議院議員が11月に提出をしたイラク帰還自衛隊員の自殺に関する質問趣意書に対して、政府は、イラクやインド洋に派遣された経験のある自衛隊員、在職中の死亡者総数は35人に上り、そのうち16人が自殺であることを明らかにしました。米軍と単純に比較はできませんけれども、インド洋に派遣された海上自衛隊員延べ1万900人、イラクへ派遣をされた自衛隊員延べ8,800人、合計して約2万人とした場合、2万人に16人の自殺者は明らかに高いと言えます。アメリカで大きな問題となっている退役軍人のPTSDや自殺者の問題は、戦争に加わった兵士の苦しみと末路をあらわしています。

 日本は、憲法9条に反して、イラクに自衛隊を派遣をいたしました。その中で、ことし、参議院議員になった初代イラク復興支援隊長であった佐藤正久参議院議員は、選挙中このような発言をいたしました。オランダ軍が攻撃を受ければ、情報収集の名目で現場に駆けつけ、あえて巻き込まれ応戦するという事実上の駆けつけ警護を発言をしたのです。これは、憲法9条が禁止をした集団自衛権への参加になりませんし、また、自衛隊員独自でそのことを判断するということは、文民統制を無視した、シビリアンコントロールを無視した発言として大きな問題になりました。

 これに対して総理大臣は、そのようなことは関知はしないという答弁をしておりますけれども、現行法上、憲法上、それは攻撃を受けている他国の軍隊等を救援するために武器を使用することは認められないことでございますというふうに答弁をしておりますけれども、実際、この佐藤正久元隊長の言葉にあらわれているように、自衛隊員自身が文民統制を無視し、そして、彼らのイラクでの任務とは、そのようないわゆる後方支援あるいは集団的自衛権をそこに踏み入れるような、そういった思惑があったということはこの発言からも受けとめられるわけであります。

 私は、2004年のイラク撤退を求める意見書について、イラク復興支援特措法は国連安保決議1483を根拠としておりますけれども、これは決して軍事力による貢献を求めたものではありません。にもかかわらず、受け入れ国の同意を欠き、米英両軍の占領統治下にあるイラクに自衛隊を派遣したことは、後方支援であっても、憲法9条が禁じる交戦権の一部の行使にほかなりませんというふうに申し上げました。そのことが、やはりイラクの派遣によって米英軍の兵士を輸送することというのは武力行使との一体であるということが明らかだというふうに思います。

 今、世界各国の軍隊がイラクから撤退をし、アメリカでもかつてない動きだそうでありますけれども、退役軍人の会、そして、戦死者家族の会などがイラク反戦運動に多くが参加をしてきています。そうした中で、イラクの人々、アメリカの人々、世界の人々のそうした気持ちに連帯をしない、先ほど反対討論者は、イラク政府あるいはアメリカ政府というふうにおっしゃいましたけれども、そういった機関だけをパートナーとする考え方は誤りだというふうに思います。

 米兵の自殺者、自衛隊の自殺者、そして、イラクでの多くの死亡者、そのことは戦争がいかに悲惨で、侵略をする側も、またされた側も大きく傷ついているということをあらわしていると思います。決して武力で平和はつくることはできないというのがこの4年間のイラク戦争の結果であります。したがって、このことをしっかりと受けとめ、そして、参議院での撤退法案の可決を受けとめ、潔く政府はイラクから撤退をすることを求めるものであります。


◎【40番井上睦子議員】
議員提出議案第20号、沖縄戦「集団自決」に関する教科書検定に対する意見書について、提案説明を行います。

 9月29日、沖縄県宜野湾市で開かれた教科書検定意見の撤回を求める県民大会には約11万人が、八重山、宮古でも、計6,000人の人々が集まり、復帰以後最大規模の集会、抗議行動だったと翌日の各紙は1面トップで大きく報道しました。大会実行委員長の仲里県議会議長は、今回の検定について、文部科学省がシナリオを書き、審議会は公平中立を装いつつシナリオどおりに修正を求めたもので、検定意見は審議会を隠れみのにした文部科学省の自作自演であったとしか思えないと断言し、本日の県民大会は住民を巻き込んだ悲惨な地上戦の惨禍に見舞われた沖縄が全国に発信する警鐘、また、軍隊による軍命による集団自決だったのか、あるいは文科省の言うみずから進んで死を選択した殉国美談を認めるのかが問われている大会だと述べています。

 本年3月30日、2006年の検定で、5社7点の高校日本史教科書の沖縄戦における集団自決の記述について、日本軍による命令、強制、誘導などの表現を削除、修正する検定結果が明らかになりました。その削除、修正は次のようなものです。

 まずA社では、「なかには日本軍に集団自決を強制された人もいた。」であったものを「集団自決に追い込まれる人々もいた。」というふうに「日本軍」が削除をされています。

 B社では、「日本軍によって壕を追い出され、あるいは集団自決に追い込まれた住民もあった。」が、「そのなかには日本軍に壕から追い出されたり、自決した住民もいた。」として、「集団」が削除されています。

 C社では、「日本軍がスパイ容疑で虐殺した一般住民や、集団で「自決」を強いられた者もあった。」が、「そのなかには、「集団自決」においこまれたり、日本軍がスパイ容疑で虐殺した一般住民もあった。」というふうに、日本軍の関与をここではわからせないように後に「日本軍」を持っていっています。

 D社では、「日本軍は、県民を壕から追い出し、スパイ容疑で殺害し、日本軍のくばった手榴弾で集団自害と殺しあいをさせ、800人以上の犠牲者を出した。」であったものが、「日本軍は、県民を壕から追い出したり、スパイ容疑で殺害したりした。また、日本軍のくばった手榴弾で集団自害と殺しあいがおこった。犠牲者はあわせて800人以上にのぼった。」として、「日本軍のくばった手榴弾」というところが書き換えられています。

 このように集団自決に日本軍の強制があったとは読み取れない記述に改変させられたのです。教科書各会社の集団自決の記述は極めて多様であるにもかかわらず、付された検定意見は、沖縄戦の実態について誤解するおそれのある表現であるという画一、同一のもので、教科書執筆者にとっては極めて抽象的で、どこがどういうふうに誤解されるおそれがあるのかわからないものでした。この点、執筆者が調査官に質問をしたところ、調査官の答えは、軍からの強制力が働いたという受け取り方をされるような記述は避けてほしいと口頭で検定意見の本音が明らかにされました。その理由として、日本軍の命令があったか明らかでないことや、最近の研究成果では、軍命はなかったという説があることなどを取り上げていますが、沖縄戦における集団自決は日本軍の関与なしに起こり得なかったことは、生き残った人々の証言、体験者からの多くの証言、そして、研究からも紛れもない事実です。

 文部科学省は、記者や教科用図書検定調査審議会への説明で、検定意見の参考にした資料の1つとして、「沖縄ノート」の著者である大江健三郎さんとその出版社、岩波書店を名誉棄損で訴えた大阪地裁での裁判の原告の陳述書を挙げており、検定調査審議会もまた、何の審議もないままにそれを追認したことが明らかになっています。文部科学省自身のこれまでの言明に反して、係争中の裁判の一方の主張、すなわち大阪地裁で係争中の原告の陳述書を検定意見の根拠にしたのは極めて異常なやり方です。さらに検定調査審議会が何の疑問を呈することもなくそのまま通してしまったことは、検定調査審議会の中立性や独立性に疑問を持たざるを得ません。検定調査審議会を隠れみのにした文部科学省の自作自演と仲里沖縄県議会議長が指摘するとおりであります。

 大阪地裁で係争中の裁判は、沖縄集団自決訴訟と呼ばれています。「沖縄ノート」ほか2点の出版物では、1945年3月26日、座間味では住民234人が、28日には渡嘉敷島で住民329人が自決をした。その集団自決が隊長の命令によるものと出版物は記しているが、原告側、これは隊長と部隊長の弟でありますけれども、この原告側は命令はしておらず、原告側の名誉を棄損したという裁判の内容です。

 これに対して、9月29日の県民大会で、渡嘉敷島の集団自決の生き残りである吉川渡嘉敷村教育委員会委員長は、今の状況では、また日本に私らの体験したあの時代が来ないとは限らないと強調し、1点目として、日本兵がいない島では集団自決は起きていない。2点目として、渡嘉敷島第三隊長の命令で西山に住民を集めなければ、一夜にして200人も死んでいくはずがない。3点目として、軍隊の手りゅう弾が民間人に渡らなければ集団自決はなかった。4点目として、防衛招集された軍人である地元の防衛隊員が西山で自決に駆り出さなければあんな惨事にはならなかったということを挙げて、軍の関与は明白と指摘をしています。

 3月の集団自決の記述から日本軍の強制を削除させ、住民があたかも自発的に死んだともとれる修正は、苦しみながら死んでいった人々や残された人々の苦悩を消し去るものです。それは、沖縄戦の体験と記憶、教訓を踏みにじるものであります。3月以降、今まで語っていなかった集団自決の体験者も語り始め、当時の家族の会話から、日本軍の命令がどのように伝えられたか、座間味では集団自決を行うために忠魂碑前に集められた住民に対し、当日日本兵が手りゅう弾を配ったという事実も62年ぶりに明らかになっています。これは、真実を知ってほしい、私たちがいなくなって歴史が忘れられてはいけないからと、大勢の人々がつらさや苦しみを乗り越えて語り、若い世代にその体験を託しているからです。

 大会では、高校生が、このまま検定意見が通れば、事実でないことを教えなければなりません。分厚い教科書の中のたった一文、たった一言かもしれません。しかし、その中には、失われた多くのとうとい命があるのです。二度と戦争は繰り返してはいけないという沖縄県民の強い思いがあるのです。教科書から軍の関与を消さないでください。あの醜い戦争を美化しないでほしい。たとえ醜くても真実を知りたい、学びたい、そして、訴えたいとのメッセージが読み上げられました。

 県民大会までに沖縄県議会では2度の意見書決議が採択をされ、41市町村議会すべての意見書が採択をされているにもかかわらず、文部科学省は教科用図書検定調査審議会の決定ということを理由に、検定意見の撤回と集団自決に関する記述の回復を拒否していました。しかし、11万人もの大会にあらわされた県民の意思に対して、文部科学大臣は訂正申請を提示をし、現在各社は訂正を申請中であります。仲里県議会議長の大会発言にある、軍命による集団自決だったのか、みずから進んで死を選択した殉国美談を認めるかが問われるのは文部科学省自身であります。戦争で死ぬことは決して美しいことではありません。無謀な戦争に人々を巻き込み、人々の命を道具のように扱い、残虐に殺した戦争の実相を正しく伝えることこそ、再び悲惨な戦争を起こさないことであります。

 本意見書は、沖縄戦集団自決について、軍の関与、強制があったとの記述の復活を、そして、検定意見の撤回を求めるものです。ぜひとも議員各位の御賛同をお願いをして、提案説明を終わります。