◎ 井上睦子委員
それでは、財政健全化法と財政運営について、まずお伺いいたします。

 財政健全化法が施行されるのが、新年度の決算、2008年度決算から4指標が市民に対しても、それから議会に対しても公表、報告されることになります。この財政健全化法は夕張ショック、1年前、夕張が債権団体に陥った。今、1年後の夕張の状況は極めて医療サービスも、さまざまな点で国民の最低水準を確保できるのかというような大変な厳しさが指摘されておりますが、どこの自治体もそういうことに陥ってはいけないということで、財政再建の健全化に向けてさまざまな取り組みを進めているわけでありますが、本市については、この財政健全化法をどのように評価しているのかということを、まずお伺いしたいと思います。

 昨年の12月12日、朝日新聞で、全国首長アンケートが実施されました。その中で、第2の夕張になるなと歳出カット、歳入増に取り組む自治体の姿が浮き彫りになったというふうに報道されております。従来の普通会計だけではなく、健全化法で新たにチェック対象となる下水道、病院などの公営事業で特に赤字減らしの動きが加速しそうだ。住民にとっては負担増、サービス低下を意味する。借金を膨らませる原因となった公共事業を奨励してきた国への批判も聞かれたということで報道されております。

 例えば、連結決算となる病院事業や下水道、国民健康保険に関しては、病院事業では7割が赤字で見直しに拍車をかけていて、指定管理者制度の導入などが進められていると。しかし、一方で、診療報酬のマイナス改定など、国が行ってきた政策の責任は問わない国の姿勢はいかがなものかというような批判もありますし、下水道事業についても、国が奨励して負債が膨らんだ結果の問題を国はどのように責任をとるのかということも投げかけられておりますし、国民健康保険事業に関してもそうです。制度上の問題がありながら、そして繰り入れが欠かせぬ状況でありながらも、この連結によって市民への公共サービスの切り捨てにつながるという危機感を全国の首長のアンケートからは見てとれるわけです。

 同時に、三多摩30市町村の財政アンケート、これはこの中で三多摩を上げているわけですが、国保では15自治体が値上げし、下水道も11自治体で値上げの方向ということが12月の時点で報道されていて、八王子市は下水道、国保も値上げにはなっていないわけですが、この財政健全化法が国の掲げる4指標のコントロールのもとに、みずから今は自主的にさまざまな公共サービスへのカットという事態があらわれているわけですが、八王子市としては、こうした財政健全化法と、そして地方自治体が住民サービスを適切に提供し、その水準を守っていくという意味において、この健全化法が今も既に与えている意味といいますか、その辺をどのように評価しているのかお伺いしたいと思います。


◎田沼財務部長
財政健全化法につきましては、地方公共団体の財政の健全化を損なわないよう、早期是正機能をルール化するということとともに、財政状況が健全な段階から財政指標を整備いたしまして、これを毎年度、監査委員の審査に付し、議会に報告した上、公表することを義務化しております。言わば情報開示を徹底するということとしておりまして、地方公共団体の財政の健全化に資するものということで評価しているところでございます。


◎井上睦子委員
市民に対する公表や議会に対する報告ですね、それから監査機能の強化という意味では評価はできると思うんですが、国がさまざまな政策を誘導し、あるいは交付金や補助金を下げておきながら、最終的には自治体の責任だというふうに4指標を掲げて、ある意味で政策をその数値によってコントロールしてくるということについては、どういうふうにお考えでしょうか。


◎田沼財務部長


この財政健全化法は、健全化判断比率という、今、御指摘がございました4つの指標を用いまして、議会、監査委員、そして広く市民にその場でチェックをいただきまして、その結果を生かしながら地方分権の観点から地方公共団体が自主的かつ主体的に取り組むことができるようにするというものでございます。


◎井上睦子委員


そうしますと、自治体の自主性のようなものは担保されているというふうにお考えで、国が、例えば国保の問題なんかは、構造的な問題があるわけですよね。国保の中では国の補助金の率というのが下げられてきて、それ以降、大変運営が困難に陥ったというような事情があって、その問題は解決されないわけですね。国がこういうふうな4指標を掲げて、自治体の、ある意味ではこの数値によってコントロールし、自治体はみずからコントロールするというふうに錯覚をするのかもわかりませんけれども、自治体がみずからコントロールするという前提には、国が基本的には住民のサービスをナショナルミニマムというか、全国水準である一定は守るという財政的な担保があって初めて自治体の自主的な財政コントロールというのはできるんじゃないでしょうか。そういった意味で、今回の財政健全化法、財政債権団体に陥らない、あるいは健全化して財政運営をしていくという1つの評価はありますけれども、もう一方で、それをやるには国がきちんとした財源を各自治体、地方に対して保障していくということ、もう一方のシステムも併存しなければ、これは自治体だけが大変苦しい再建を強いられると、運営を強いられるという側面があるのではないかと思いますが、その点についてはいかがでしょうか。


◎田沼財務部長


早期健全化基準である25%、あるいは再生団体基準であります35%、そういったところで実質公債費比率がそこに達しますと、当然、自治体としての方策を考えなきゃいけませんし、改善に向けても努力していかなければいけないということで、地方自治体の自主性がそういう時点になりますと損なわれる可能性は出てまいりますけれども、現在の八王子市の財政状況では、お示しの4つの指標について、そういう状況に達するということは当面考えられないということでございます。


◎井上睦子委員


八王子市の状況はそういう危機的な状況にはないということは私も承知しておりますけれども、ただ、この法の制度の仕組みとして、自治体の財政健全化を言うならば、国が果たすべき役割もあるだろうということです。そこの部分がなおざりにされて、法だけが制定されたことは問題だというふうに考えております。  それで、例えば、将来負担比率は今後、公社や第三セクターを含むということで、08年度以降の決算では数値が明らかになるわけです。先日の議論では、現在のところ100%というようなことが報告されておりましたが、例えば住都公社、これからは民間への会社への移行は断念して、新しい法人体系に移行していくというような方向性が出されております。その中で、例えば川口の物流拠点の開発構想も持っているわけですが、例えば理論的な問題ですね、この開発に着手し、あるいは成功しなくて莫大な負債を抱え込むというようなことになった場合に、この将来負担比率というのは高まっていく危険性があると。理論的な問題ですね。その点についてはどういうふうに考えていらっしゃいますか。


◎田沼財務部長


将来負担比率につきましては、将来負担額が標準財政規模にどういうふうに占めるかということになります。これにつきましては、地方債の現在高と債務負担行為に占める支出予定額、あるいは将来の退職手当支給予定額などが含まれてまいります。御指摘のものがそういう中に入ってまいりますと、当然、分子が膨らんでまいりますので、比率的には上がってくるかと思いますけれども、現在の八王子市の段階では100%程度ということで、基準の350%に達するということは、ある意味、到底考えられないかなというふうに思っています。


◎井上睦子委員


現在のところでは、その350%の水準ということはないとは思うんですが、理論的な数値として、住都公社が新公社に移行して、新たな物流拠点開発について着手し、これが成功しないで失敗して多大な負債を抱えるというようなことになれば、普通会計にも影響が出てくるという仕組みになっているということは確認できますでしょうか。理論的な問題ですね、現実的な問題ではなくて。


◎田沼財務部長


確かに、お示しいたしました350%を超えますと、一般会計での自由度といいますか、そういうところは損なわれる可能性はございます。


◎井上睦子委員


そういった意味で、今後、地方公社、住都公社なり、第三セクターと言われる部分の財政運営についても、かなり慎重にならなければいけないというふうに一方では考えております。

 それで、これまでの八王子市の財政再建への取り組み、市長も高く自己評価していらっしゃいますが、返した以上に借りない、あるいは6%以下に公債費比率を抑えるということで削減してこられました。このことは財政白書なども公表されて、市民にきちんと現在の八王子市の財政状況を公表しながらおやりになってきた。そういった意味では評価はできると思います。

 しかし、一方で、市債残高は減少いたしましたけれども、現在の実質公債費比率の15.1%というのが、全国的にはどの程度の水準であるとお考えでしょうか。


◎田沼財務部長


全国の市町村1,800ほどございますが、そのほぼ中間程度じゃないかと思います。


◎井上睦子委員


そうですね。「エコノミスト」がことしの1月29日号で発表している1,827の市区町村のワーストランキングでは994位で真ん中なわけです。だから、財政再建に取り組んで8年前は大変ひどかったわけですから、それをどんどん市債残高を減らしながらというのは、市長を初め職員の皆さんの努力だというふうに思いますけれども、ただ、実質公債費比率から考えれば、全国では真ん中程度ということで、まだまだ財政再建への取り組みの途中であるというふうに考えていいのでしょうか。


◎田沼財務部長


18年度決算は15.1%です。19年度の決算見込みは11%前後というふうに、また改善もしてきております。20年度は10.2%ということでさらにポイントが下がっておりますので、そういう意味では公債費に充当する金額も年々下がってまいりますので、10%以下になるのではないかというふうには考えております。


◎井上睦子委員


今後の数値ですね、それは2月の総務企画委員会に出された数値でもそういった方向が出されているわけですけれども、今後も返した以上に借りないということはずっと継続していくということですので、ぜひこの実質公債費比率がきちんと安定したいい水準になるような努力をしていただきたいと思いますが、隣の日野市と町田市は、日野市の場合、実質公債費比率が5%で全国1,798位、これはワーストランキングですので、順位が高ければ高いほど財政はいいという内容なわけですが、日野市は1,798位、それから、町田市は8.1%で1,707位ということで、26市は、東京もそうですけれども、ワーストランキングの中では低い位置にあるわけですね。26市の中でも八王子市はまだまだ悪いというところですので、きちんと引き締めて財政運営をしていかなければならないと考えております。

 それで、財政健全化法の施行とあわせて、多治見市は多治見市健全な財政に関する条例を制定して、国からのコントロールではなくて、みずからの自治体によって、市民自治によって財政の健全化を図るということを条例の第1条で宣言して、財政運営の指針並びに基本的な原則と制度を定めることによって、市民自治に基づく健全な財政に資することを目的とするというふうに、自治体内部のコントロールを市民も参加して財政運営していくという条例を制定しました。その中で、多治見市は、財政調整基金に関して、ちゃんと条例の中にうたってあります。市は災害復旧に要する経費について、財政調整基金において資金を適切に留保しなければなりませんというふうに、きちんと積み立てていく、あるいは確保していくということを条例上うたっているわけです。

 八王子市の財政調整基金に対する取り組みの問題について、代表質疑でも質問いたしましたが、部長は60億円を目標にするというような答弁でありました。しかし、ことし2月の総務企画委員会に出された数値では、公的資金補償金免除繰上償還にかかわる財政健全化計画では、平成23年度の段階でゼロになる計画になるわけです。この23年度というのは、黒須市長が3期目は総仕上げと言われている最終年になるんですが、現在、36億円程度、38億円ですかね、ある基金が、23年にはゼロになる計画というのは、じゃ、その任期は財政調整基金を使い切って終わってしまうのかというような議論を持ったわけですが、この計画と、それから部長がお答えになった60億円というのは、どういうふうに整合性があるのか御説明いただきたいと思います。


◎田沼財務部長


補償金免除繰上償還に伴います財政健全化計画でございますけれども、これはあくまで実施計画ベースの内容で作成しております。実施計画では、20年度以降、毎年10億円を取り崩すということになっております。一方、予算執行を見ながら行おうとしている積み立てについては計上しなかったということでございます。このため、現実的には適正な予算の執行管理を行うということでございますので、基金の取り崩しは極力抑制し、そして積み立てについては積極的に行うという考えでございますので、計画にございますような基金が底を突くようなことは想定しておりません。


◎井上睦子委員


そうしますと、これは国に出した計画ですよね。それは取り崩しだけを出して積み立ては計上していないということでゼロになったということなんですが、国に出す計画がこれでいいのかどうかということと、もう1つは、代表質疑での部長の答弁は60億円なんですよね。それはいつの時点で60億円確保されるということなのか、そこを明らかにしていただきたいと思います。

 08年度の予算では、07年度末の財政調整基金の積立金が38億5,000万円、08年度の予算額では3億円積み立てて20億円取り崩すと。そのうちの10億円は南口再開発への貸し付けであるということが説明されております。このような使い方をした結果、08年度末の現在高は21億5,000万円残るということで、この償還計画の健全化計画と07年度、08年度の数値は少々違いますけれども、30億円台、20億円台の数値なわけですね。その60億円というのが、いつの時点で60億の財政調整基金が積み立てられるのかどうか、そこを明らかにしていただきたい。


◎田沼財務部長


財政調整基金を含めまして、基金への積み立ては年度内の予算の執行状況と前年度からの繰越金の状況を見て、各年度決定していく方針でございます。そういった意味で、達成時期の明確な設定は難しいと考えておりますが、今、御質問者お示ししていただきました基金の経過でございまして、19年度の最終補正予算ではお示しした14.5億円積み立てするということで、このときの残高は38.5億円ということになります。これに加えまして、本年度19年度当初予算で計画しております10億円の取り崩しにつきましては、できるだけ留保したいと考えておりまして、仮にこうした場合には48.5億円程度になるだろうと。そして、20年度については再開発事業に10億円を貸し付けする、そういう活用を考えてございます。その後、毎年余裕のある資金がもしあれば、毎年積み増しをしていけば、60億円は全く見込みのない数値ではないというふうには考えております。


◎井上睦子委員


行革プランの追補では、財政調整基金に対しては、類似団体のように5%を目標とするというふうにあるわけです。今、1,700億円ですから、5%というと85億円の財政調整基金がなければいけないということになりますが、38億円しか今の時点ではないわけですね。そして、財政白書もこのように19年度の中では言っています。年度間の財政の不均衡を調整するための基金不足などによる税収の減や、災害の発生などによる予期せぬ支出の増加などに対応するため、この設置が財政調整基金は義務づけられているわけですけれども、「八王子市は市債を減少させるために市の貯金である財政調整基金や減災基金などを活用しました。今後は市債残高を引き続き減少させながら基金の補強に努めることが必要です」というふうに、17、18は留保して積み立てていますからいいですけれども、それ以前は借金を返すために財政調整基金を取り崩してきたという財政運営があったわけですね。こうした財政運営というのは妥当だと言えるのでしょうか。


◎田沼財務部長


確かに、市税収入が平成16年度に底を打ったと、その前後の時期は財政調整基金を有効に活用して、それを補ってきたというこがございます。それから、借金もできるだけ返済したいということがございましたので、公債費にもそういうところを活用してきたということがございます。できるならば借金もなくなり、それから市税収入もきちっと確保するようになれば、財政調整基金が御質問者がお示しいただきました80億円ということにならなくても、十分財政運営はできるだろうと、そういうふうには思っております。


◎井上睦子委員


新年度の予算編成の方針の中にもこう書いてあるんですよね。「20年度から3ヵ年の実施計画上、事業を確実に実施するためには、財政調整基金を毎年度取り崩さなければならず、歳入不足は避けられない見込みであることなど厳しい状況であることに変わりはない」というふうに書いてあって、先ほど60億円というのは望めない目標ではないとおっしゃりながらも、でも大変厳しい財政運営を強いられて、歳入不足は避けられない見込みだというふうにも書いてあるわけですね。その点の60億円の目標と、それから予算編成で書かれた歳入不足が避けられないというような予算の立て方というのは、合理性があるんでしょうか。


◎田沼財務部長


財政調整基金を活用しないで歳入、歳出、予算を組めるということが本来の姿だというふうには思っておりますけれども、そういうことを踏まえましても、実施計画の3ヵ年の中でも、現状では財政調整基金を活用しないと予算が組めない状況にはあるということは認識しております。


◎井上睦子委員


最後に市長にお伺いします。市長就任以来、市債残高の減少には努めてこられましたけれども、基金ですね、財政調整基金を初め多くの基金、220億円ぐらいあったのが、現在111億円と半減しているというような状況のわけですが、財政調整基金を初め基金に対する今後の取り組みについてお伺いしたいと思います。


◎黒須市長


理想を言うならば、市債残高は減少して、そして財政調整基金は大幅に積み増しして、市税収入は大幅に増加する、これは理想ではあるわけですけれども、現実はそんなうまいぐあいにいかないわけですよ。財政調整基金というのは、やっぱりそのときに応じて必要なときに、苦しいときにはそれも使う、そのための財政調整基金ですから。1つの基準というのは、幾らなきゃいけないということはあっても、それはその折々に応じて十分に活用することが財政運営の中でも常套手段だというふうに私は思っております。


◎井上睦子委員


それでは、昨日に引き続きまして質問いたします。

 昨日、財政運営の件について、財政調整基金の活用、それから積み立ての考え方について、市長は、税収も少ないというような中で積極的な財政調整基金の活用というのはいいのではないかというような答弁だったと思います。先ほどの質疑の中では、今期3期目で市長の職は引退し、次は新しい市長に譲るというようなことも出されましたが、2月に出された総務企画委員会での公債費の返還計画の中では、平成23年度財政調整基金の積み立てはゼロになるということで、それは市長の任期の最終年度でありますけれども、新しい市長に渡すときに、財政調整基金がゼロ、使い切って災害のときにも何ら対応ができないというようなお金の使い方というのは、ぜひ避けていただきたいと思います。財政改革の行革プランの追補では、5%を目標とする。あるいは昨日の部長の答弁では60億円ということが出されましたが、60億円の根拠については明確には示されませんでした。それがいつの時点であるかということも明確に示されませんでした。使い切って基金を終わるというようなことのないような財政運営をぜひやっていただきたいと思います。

 次に、後期高齢者医療制度についてお伺いいたします。

 後期高齢者医療制度の問題は、いろんなところから指摘されて、この制度自体が問題だというふうに思います。滞納者への対応の問題でお伺いいたしますが、4万2,000人がこの後期高齢者医療制度の対象者であります。特別徴収では100%の納入率、普通徴収では納入率は90%として予算には出されておりますけれども、この滞納者数というのはどの程度考えていらっしゃるのでしょうか。


◎橋本高齢者・障害者担当部長


保険料の滞納者数でございますが、全体の約3%程度と見込んでおります。


◎井上睦子委員


3%というのは、1,260人というふうに考えていいんでしょうか。そういう方たちが保険料を払わずに、ある意味では保険証を取り上げられて、資格証が発行されるという人数の対象としてあるというふうに思いますが、1,260という数字でいいんでしょうか。


◎橋本高齢者・障害者担当部長


滞納者イコール資格証の発行というふうには全く考えてございません。これは今までも説明はしておりますけれども、広域連合では、区市町村が納付交渉を再三にわたって行ったにもかかわらず、特別な理由もなく保険料を滞納している場合に、市町村に設置されます審議会で慎重な審議をした後、さらに広域連合で設置いたします資格証明書交付審査会の方で最終判定を行うというふうに、資格証の発行に際しては十分慎重な形をとって行う、そういうことでございます。


◎井上睦子委員


私も1,260人が全員、資格証を発行されるということではなくて、その対象者であるというふうな質問をしたわけですから。それで、今の答弁では、慎重な対応をする。再三の催促、あるいは、支払い能力があるにもかかわらず払わないという人に対して発行するということであって、経済的に困窮している、払えない事情があるということについては、配慮をするという、発行については慎重に行うということを確認してよろしいでしょうか。


◎橋本高齢者・障害者担当部長

慎重な配慮をしてまいります。


◎井上睦子委員

全国保険医団体連合会の調査によりますと、2006年度の資格証を発行された人たちの受診率というのが、一般の人に比べて51分の1という、極めて著しい受診率の低さであったということが明らかになっています。これで資格証の発行によって、医療にかかれなくて亡くなっていくという事態がNHKなどでも報道されていて、手おくれ死だといわれておりますけれども、こうした事態が八王子で起きないというように、この資格証の発行については慎重に行っていただきたいと思います。

 次に、主治医と、医療の質の問題であります。診療報酬が決定いたしました。包括診療が後期高齢者医療では導入されるということになりますけれども、このことは、今行われている説明会の中でも、高齢者の皆さんには十分に説明はされておりません。4月1日、こうした制度が導入されると、現場では大変な混乱が起こると思いますが、この点については、4月1日以降、包括診療が導入されて、主治医というかかりつけ医ですね──が指定されるという事態になったときに、高齢者はかかりつけ医を必ず選ばなければいけないのか、それとも従来のように複数の医療機関にかかってもいいのか、その場合、窓口で支払う金額というのはどのようになるのかということが、詳細がわかっておりますでしょうか。


◎橋本高齢者・障害者担当部長

医療機関等へのフリーアクセス等の問題でございますが、厚生労働省では老人保健に基づきます診療報酬と同様に、後期高齢者の心身の特性に応じて、今までと変わらずに御本人が選択した医療機関で診療が受けられるものとされておりまして、そしてまた、包括診療といわれるものに該当する病気は、糖尿病とか、そういった慢性疾患に限定されているということでございます。細かい診療報酬の金額については、大変申しわけありませんけれども、存じ上げてございません。


◎井上睦子委員

そうすると、慢性疾患の人たちは包括診療を受けて、それ以外は出来高払いということになる。慢性疾患で包括診療の対象とされるその人については、主治医なりというところで受けなければいけないということでしょうか。


◎橋本高齢者・障害者担当部長

基本的にはそのように聞いております。


◎井上睦子委員

そうしますと、選択ができるわけではなくて、慢性疾患を抱える高齢者の人たちには包括診療ということになります。これは日本医師会なども批判しているように、どこでも、だれでもということが制限される。医療機関へのフリーアクセスが制限されるということで、問題だといわれておりますし、神奈川県の医療団体の調査では、包括診療が6,000円だというふうに決定されましたけれども、実際、出されている項目では7,716円かかる。したがって、包括診療をしたとしても、医療機関はマイナスで、報酬が低水準にとどまるということの問題。

 あるいは、6,000円での治療を行おうとすれば、74歳まで受けていた治療が受けられなくなるという問題が出てきて、これは75歳以上の高齢者に対する差別的な医療を持ち込むというふうに批判されているわけです。

 もともと、後期高齢者医療制度は、この制度の中で、いずれ避けることのできない死を迎えることになる人々の医療保険ということで、ある人に言わせれば、枯れ木に水はやらないという医療制度ではないかという批判もあるわけです。しかし、75歳以上の人たち、例えば、女性は平均年齢が86歳ですから、この後期高齢者医療制度の中で10年は生きるわけですね。そして、10年以上もこの制度の中で生きるわけです。74歳と、それ以降の年齢で、医療が受ける質が違ってくるということは、私たちが人間らしく健康で生きていくということを阻害する制度ではないかと思います。

 市長は先日の質疑の中で、この後期高齢者医療制度については問題も課題もあるということを認識しているというような答弁もあったと思います。4月1日以降、この主治医になるには、医療機関が4日間の研修を受けて、指定を受けなければいけない。ただ、今の中ではまだ何も説明が来ていないというような状況で、スタート時も混乱するのではないかと思いますが、この問題について市長は医療機関とどのような議論をしているのか。あるいは、この後期高齢者医療制度には課題があるというふうにお答えになったと思いますが、どのような課題があるということを医師会などと議論をしているのかどうか。医師会の意見の聴取などをしているのかどうか、お伺いしたいと思います。


◎黒須市長

課題があるということは私も承知しておりますし、また、課題が生じるだろうというふうなことは推察をいたしております。ただ、これはまだ実施されていないということもありまして、医師会から具体的に私どもに、このことについてはどうなんだというような、そういう質問あるいは意見等はありません。今後、出てくるんじゃないかと思いますが、そのときは適切に対応してまいりたいと思っています。


◎井上睦子委員

医師会もこの後期高齢者医療制度の問題については、日本が戦後築き上げてきた国民皆保険の制度を崩すものだと。そして医療機関へのフリーアクセス、だれでもが命や健康を大切にする、その制度を破壊するものだというふうな強いメッセージをずっと出しています。実施されたならば、たくさんの課題が出てくるだろうということを市長もおっしゃいましたので、医師会、それから高齢者の声も受けとめながら、この制度の課題についてはきちんと解決をするという方向で取り組んでいただきたいと思いますし、制度の改正が必要であれば、あるいは改廃が必要であれば、そういう態度で臨んでいただきたいというふうに要望して終わります。