◎40番井上睦子議員
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議員提出議案第7号、道路特定財源の制度維持に関する意見書に対して、生活者ネットワーク・社会民主党を代表して、反対の立場から討論を行います。
ガソリンの暫定税率は、3月末で期限切れとなることが濃厚です。3月4日の朝日新聞によれば、3月1日、2日の世論調査では、道路特定財源に反対する国民の声は59%と大きくなり、2月に比べて5%、1月に比べて13%も増加しています。
道路特定財源制度は、受益者負担の考え方に基づき、道路の利用者、つまり、自動車の所有者やその燃料を使用した人が道路の建設・維持費用を負担する制度として1954年にスタートしました。1974年に暫定税率が導入され、本来1リットル当たり本則24.3円の揮発油税を暫定48.6円にし、本則4.4円の地方道路税を暫定5.2円として徴収し、始めました。導入の理由は、道路5ヵ年計画とオイルショックのための消費抑制を目的としたため、2年間の暫定措置でありました。しかし、暫定措置が34年続き、さらに10年継続しようというのが政府の方針でありました。
暫定という理由で増税をし、なれたら継続して、見直さないというのは、納税者をだます手法だと言えます。暫定で導入したものは一定期間で必ず廃止して、改めて導入の可否を議論し、国民に問うべきであります。
道路整備は2006年4月には、総延長18万キロ、改良率は83%、舗装率は97%になり、高速道路も7,392キロに及んでいます。これまで54年間で特定財源の収入は150兆円、総額350兆円の道路投資を行ってまいりました。この制度は道路整備が立ちおくれていた時代にはそれなりに意義のある制度でありましたが、現在では世界と比較しても、道路密度が圧倒的に高く、既に役割を終えたと言えます。
国会審議の中で、道路特定財源が道路建設とは関係のないミュージカルや利用されていない道の相談室、あるいは5年間で23億円のタクシー券の購入など、多くのむだ遣いが明るみになりました。また、八日町夢街道パーキングでは1日9万円の収益しかないことや、東京湾アクアラインや本州四国連絡橋も交通量が予想を大幅に下回り、赤字が続いていることなど、計画性の甘さや高い建設コストが指摘され、道路特定財源への信頼は失われています。
長崎県佐世保市内では、工事中の西九州自動車道の8.3キロメートルの佐世保道路は、在日米海軍佐世保基地に近接し、事業費1,629億円で1キロ当たり約200億円と、他地域の約4倍から7倍に達しています。工事中の佐世保みなとインターチェンジと佐世保インターチェンジの区間はわずか2.9キロしかなく、米海軍佐世保基地前の佐世保インターチェンジの新設には軍用道路という指摘もあります。また、佐世保インターチェンジ建設に伴う米軍の幹部用住宅の移設には11戸分に28億円もの道路特定財源が支出されています。このように、道路特定財源がさまざまな理由をつけて米軍のために使われていることは大きな問題だと国会でも議論になりました。
2008年度の道路特定財源の見積もり総額は5兆4,000億円で、その内訳を見ると、本則分2兆8,000億円に対して暫定分が2兆6,000億円となっています。今後10年間で59兆円をすべて道路に使う。中期計画では当初67兆円と発表されていました。しかし、1週間程度で59兆円に変更されていますが、その変更の理由は説明されていません。この道路中期計画は20年前の四全総に基づいて1万4,000キロメートルを前提として出されています。しかし、四全総は人口増を前提としていますが、近未来には急激に人口が減少します。2002年の交通需要推計を下回る推計値が国交省の委託研究でも明らかにされています。道路需要予測を過大に見積もった中期計画は、税金のむだ遣いということが明らかになりました。
また、10年という長期計画の計画は、現在、この道路計画だけであります。この間、全国総合開発計画とともに、公共事業の5ヵ年計画は廃止され、社会資本整備計画に重点的に移行されました。なぜならば、暫定的な措置である計画を永遠に延長し、そして、予算消化だけに使われるむだな計画だという批判があったからです。道路計画だけが10ヵ年で59兆円もの計画を立てていることは、こうした財政の健全化、運営という面からでも大きな問題です。
道路財源は自治体の持ち出しが2分の1で、道路がつくれる制度です。自治体にとって非常に魅力がありますが、そのまま道路に使えるわけではありません。全国の自治体で約3分の1強が道路に関する借金に回されています。全国知事会の会長である福岡県の麻生知事は、先ほども御紹介しましたが、道路特定財源制度の堅持を求める急先鋒です。その福岡県の2008年度道路予算は587億円のうち9割近くの509億円は借金返済に回っています。つまり、道路をつくるための予算のはずが、ほとんど借金返済に回り、新しい道路がつくれないという構造になっているのです。このように、地方自治体が道路整備のために借金地獄に陥っている実情もあります。
また、道路特定財源の使い方も、自治体にとって決して使い勝手のよいものではありません。道路構造令に従い整備されなければ、道路特定財源による補助は受けられなくなっています。長野県下條村は、村民によって村道の整備をし、1メートル3,000円でこの事業を行っています。これを道路構造令どおりにつくれば、10倍から20倍はかかるというふうに言われており、画一的な構造令が公共事業の高コストの原因となっています。
以上のように、59兆円もに上る過大な中期計画の見直し、あるいは事業の必要性について精査をすること、また、徹底したむだ遣いなどを排せば、暫定税率を廃しても、自治体に必要な生活道路は確保できるのではないでしょうか。
野党の各党の案では、自治体の不足分9,000億円分は全額国の責任において補てんし、法人税や高額所得者の所得税減税廃止を復活する。あるいは、国の直轄事業への地方負担金制度の廃止分を充当することなど、さまざまな提案がされています。
地方では、高齢化や過疎化が進み、公共交通のバス路線が廃止されていますが、自治体が運営するコミュニティバスやローカル電車など、こうした鉄道には、道路特定財源は使えません。少子・高齢化、人口減少社会の進行、そして、地方分権、自治の観点からも、道路特定財源は一般財源化すべきであります。道路が必要かどうか、だれが決めるのか。従来までは国交省とそれに伴う一部の人たち、国会議員や、あるいは権力を持った人によって決められてきました。しかし、一般財源化すると、道路が必要なのか否か、ほかの教育や福祉にこのお金を使うのかどうか、地域の住民が決められるようになります。これこそが地方分権ということになると考えます。
全国知事会や地方自治体約1,800の自治体の首長のうち6名が道路特定財源の制度を維持することに署名しておりませんけれども、ただ一方で、こうした自治体が地方財政の危機感をあらわすことは、国が今まで進めてきた三位一体改革や地方交付税の切り捨て、カットということに原因があるというふうに思います。一般財源化をし、自治体の財源を保障するという国の姿勢があれば、各自治体の首長も一般財源化に賛成するのではないでしょうか。
道路が必要かどうか、だれが決めるかということが、今問われておりますし、そして、実は地域の住民自身、そして、自治体が決められるようになれば、政治システムが大きく変わってきます。本当の地方分権ということが可能であります。今度の道路特定財源の廃止、そして、一般財源化の問題は、地方分権と私たち自身の自治という問題が大きく問われている問題だというふうに思います。したがって、本意見書には反対する立場を表明いたします。
先ほど他の賛成討論者から野党の責任、民主党の責任ということが強く言われました。しかし、そうではありません。逆転した参議院の中で、民主党が野党が多数を占める国会運営が極めて困難であることは、昨年7月の参議院選以降、総理大臣初め与党の皆さんはおわかりのはずであります。今回の特定財源の問題修正協議の中に、なぜその協議に入れないのかという問題について、朝日新聞の社説は3月26日、このように書いています。それができないのはなぜか。与党の対応に問題がある。民主党の対案が参議院で可決されれば、政府案の否決と見なし、政府案を衆院の3分の2ですぐに再可決するとの構えをちらつかせているからだというふうに言っています。これは決して参議院の野党側の責任ではなく、国の運営全体に責任を持つ国及び与党の責任であることは明らかでありますし、先ほどの提案説明者もこれまでに政治的にも混乱をもたらし、地方自治体の財政にも心配をかける、こうした事態を生んだのは国の責任であるということを明確におっしゃったではないでしょうか。したがって、私どもはこうした混乱の原因は政府・与党にあるということを明らかにして、反対討論といたします。
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