◎【40番井上睦子議員】
第63号議案、市立第七中学校体育館改築工事請負契約の締結について、生活者ネットワーク・社会民主党を代表して反対討論を行います。

 本工事の入札は、2007年7月から施行されている施工計画評価型総合評価方式による解除条件付一般競争入札で、市内Aランクの事業者を対象にして行われました。総合評価方式は、最も安い価格で入札した企業を落札者としてきた従来の価格競争自動落札方式とは異なり、より技術力の高い企業を落札者として選定することができるとして、価格評価点と技術評価点を加算して、最も評価値の高い者を落札予定者とするものです。

 本議案に反対する第1の理由は、今回の入札において、競争性が確保されていなかったという問題です。予定価格は、既に御紹介がありましたが、2億4,720万円、最低制限価格は1億9,770万円で、黒須建設と横瀬建設の2社が入札をしています。

 黒須建設の技術評価点は30点、価格評価点は0.08、評価値は30.08、横瀬建設の技術評価点は10点、価格評価点は3.03、評価値は13.03となり、その結果、黒須建設が落札者となっています。

 黒須建設の入札金額は、予定価格より20万円低い2億4,700万円で、落札率は99.92%もの高い落札率となっています。横瀬建設の入札金額は2億3,970万円で、落札率は黒須建設よりも低い96.97%でしたが、技術評価点が20点も低かったため、落札をできませんでした。

 横瀬建設が落札するには、価格評価点で20.09以上を出さなくてはなりません。その場合、入札価格は1億9,753万円以下で、最低制限価格以下でなければ落札できないことになります。したがって、今回の場合は、最低制限価格で入札しても落札できなかったということになります。

 他方、黒須建設は、技術評価点で満点の30点ですから、他社が最低制限価格で入札した場合の対応策として、予定価格より最低0.025%減じた金額で入札すれば、落札するということになります。

 このように、技術評価点に20点もの差がある場合、落札しようとすれば、入札金額では20%、本件の場合には約5,000万円もの差となってしまうことが明らかになりました。

 落札率が99.92%であることからも明らかなように、この入札については競争性が確保されていたとは到底言えません。

 施工計画評価型では、技術評価点の配点は、企業の技術力と企業の信頼性、社会性の合計評価点が最大のものに満点の30点を与え、その他のものには相対点を与えるという1位満点方式になっています。これは、技術力の高いものを優位に評価できるという方式であります。例えば、技術評価の素点が20点と21点の場合にも、1位の者が満点の30点を取ることになり、2位以下との技術力の差が正しく評価点に反映されるとは言えません。黒須建設と横瀬建設はJVを組み、過去において楢原斎場建設工事や、第四中学校体育館改築工事などを受注しています。技術力において20点もの差が出るのかは疑問です。

 今回の技術評価点の素点は、法人情報あるいは個人情報との理由で公開されておりません。公正、公平に評価されたのかは明らかではありません。

 総合評価方式では、発注者の恣意性を高め、官製談合を誘発するという指摘があります。これを防止するためには、徹底した情報公開による市民や議会の監視が必要なことは言うまでもありません。したがって、技術力において20点もの差が出ているということを明らかに証明するものは、委員会でも議会審議でも出されませんでした。評価項目では2年間の同種工事の工事成績や検証実績、過去5年間の同種工事の管理技術者としての施工経験、工事成績などが評価の対象となり、過去において工事を受注している企業が有利になる評価となっています。総合評価方式を実施すればするほど、特定の企業しか受注できない仕組みと言えます。

 加えて、本年度から手持ち工事件数の制限が、市内企業は3件から5件に見直されていることも、結果として寡占状態をつくり出す危険性があります。今後、学校校舎や体育館などの耐震補強等の工事が前倒しで計画されていますが、9,000万円以上が総合評価方式となりますので、経験のある数社しか工事を落札できないという事態になる危険性があります。

 総合評価方式導入の根拠は、公共工事の品質確保の促進に関する法律ですが、この法律の背景を脇雅史自民党参議院議員がこのように語っています。これは日刊建設工業新聞に出ている記事ですが、「公共工事が減り、当然、建設業界も縮小せざるを得ない。ところが、うまく再編、淘汰が進まない。品確法はこうした時代背景を踏まえて生まれた。」と説明をしています。

 本市でも、総合評価方式は建設業界の再編、淘汰策としての役割を果たすとすれば、特定の企業に受注が集中するということになります。そして、こうした背景を持ついわゆる建設業界の再編、淘汰策としての意味を持つとすれば、総合評価方式は市内の有力企業である黒須建設にとっては有利な制度と言えるのではないでしょうか。したがって、市内企業育成の観点から、この総合評価方式については再考するということが求められると思います。

 反対理由の第2点目は、政治倫理の問題です。黒須建設は市長の親族企業であり、市長は黒須建設の株を本年1月の段階でも25万6,380株と大量に保有し、株主として経営に関与し、利益を得るという立場にあります。市長就任以来、2007年度までの黒須建設の契約金額は、JV案件を含めると、約20億7,000万円となります。既に2008年度に入って3件、4億4,900万円の受注ですから、現在まで約25億1,800万円の契約金額となります。2005年、2006年、2007年度は、土木工事部門では市内企業で3年連続1位の受注金額となっています。また、さきに述べた住都公社の発注した楢原斎場建築工事も、2006年度6億4,500万円で横瀬・黒須建設共同企業体で落札したことも記憶に新しいことです。こうしたことは市民として理解ができないことです。

 私は市長と親族企業である黒須建設との関係について、政治倫理条例を制定して、親族企業が市の公共事業を辞退するよう、今日まで議会で強く求めてまいりました。昨年の決算審査特別委員会で市長は、政治倫理条例の制定は考えていない。市長に就任する前、議員の立場であったときにも、そういうことで人に云々言われることは全くやっておりません。私が最も忌み嫌うことはアンフェアなこと。もし何か私がほんの少しでもおかしなことがあるようなことがあるならば、私はその政治倫理条例も必要であろうと思いますと答弁されています。

 また、先日の代表質問では、血がつながっているというだけで非難されるのは納得がいかないともお答えになりました、しかし、田中副市長は、文教経済委員会でこのような答弁をされました。これはすべて正常な形で行われているわけでありますけれども、市民感情だとか、お二人の委員が発言されていますけれども、ここにおられる発言されない皆さんの思いというのも受けとめて、私ができる範囲の中で対応してまいりたいという答弁でありました。

 これは私たち議員の訴え、そして市民が納得できないと思っている感情を、田中副市長は、一定、理解ができる、思いを受けとめるという答弁であったと思います。納得できないのは市長だけかもしれません。一貫して政治倫理条例の制定には市長は否定的で、みずからは公正、公平であると宣言されています。しかし、先日の代表質疑で取り上げられました1982年に起きた児童文化会館、図書館の建設にかかわる談合疑惑事件について、八王子市議会だより第96号には、100条委員会の結論として次のように記載されています。雄建築事務所は当初の指名に入っていなかったが、小川代表及び黒須議員の橋本助役への働きかけで指名業者となり、最終的に落札したことは、業者、市内有力者及び市民との癒着を示す大きな疑惑を招いた。この軽率な行動は自戒すべきであるというものです。この事件は、市民の記憶に鮮明に残っております。

 また、予算等審査特別委員会でも取り上げられた解除条件付一般競争入札で、3件が不正入札の疑いがあるとして、入札無効とされた件についてであります。これは2005年度のことですが、このうち2件に黒須建設が入札し、2件ともに落札率が95%、1件については全社の入札金額が2%の間に、他の1件は3%の間にあると指摘をされています。落札者は公表されておりませんけれども、黒須建設も不正入札の疑いがあると指摘をされた入札者の1社であったことは、重い事実であります。

 黒須建設が3年連続、八王子市の公共工事が市内業者でトップであること、また、今年度は既に4億5,000万円もの過去最高額の受注金額となっていることは、決して市民の理解を得られることではありません。過去の経緯からも、市民が市政に対して公正、公平である、そして市政に対する信頼を持つためには、ぜひとも市長には親族企業との契約については自粛をするということが強く求められております。

 代表質疑では、市長は私に、市長をやめろということなのかとも答弁をされました。私は市民の信託を受けた市長は、親族企業が市の公共工事を受注することを優先するのではなく、市民との信頼を第一に考え、行動すべきだと考えますし、同時に、そのことは市長に立候補されるときに熟慮されなければならなかったことだということをあえて申し上げたいと思います。

 私たちは市民との信頼ある市政を築くために、政治倫理条例がぜひとも必要だと思います。それは市長のみならず、議員、私たち自身の行動を縛るものとして必要だということを申し上げ、そして、そのためにこれからも力を尽くすということを申し上げて、反対討論を終わります。