◎【40番井上睦子議員】
続いて、包括外部監査について、私もお伺いをしたいと思います。

 先ほど、監査結果の総論について指摘がございました。私も同様な違和感を持ちました。すなわち、学校における教育活動を、教育サービス、顧客とも擬せられる児童、生徒、保護者を顧客というふうに、民間企業の経営手法を活用するという発想から、この外部監査が行われています。教育活動すべてにわたって、このような評価、手法が全体を通して行われているわけではありませんけれども、基本的な視点はそこにあります。私は、教育活動を教育サービス、そして教育を受ける子どもたちのことを顧客というふうに表現をする、そのようにとらえることには大変な違和感を感じました。

 学校現場での教育活動というのは、教師と子どもたちの人間と人間とのぶつかり合いの中で、知的、学力、そして人間的にも成長していくという営みの場でありますので、そこに民間が教育サービスを提供して、子どもたちが消費者であるというようなことは、やはりなじまないのではないかというふうに思うわけですが、その点について、教育委員会は監査結果総論、そして全体にわたる指摘意見をどのように受けとめたのか。先ほどとダブる点もありますけれども、私はこの点に大変な違和感を感じましたので、お答えをいただきたいと思います。

 2点目に、学校経営計画の策定でありますけれども、策定のためのマーケットリサーチ的な調査活動などが提言をされています。本来の教育活動より、机上の計画策定や教育委員会への文書報告といったものが重視をされて、こうした、先ほども触れられましたけれども、事務の多さというものが、現場教員の多忙化を招いているということは、全国的にも指摘をされています。

 今、教員の大変な不足ということが発生をしておりまして、定年前に退職をしていく教員がいる。新採用で採用したけれども、採用した人たちが継続して勤められないということで、東京都では、首都圏はそうでありますけれども、教員の不足が指摘をされています。それは教育現場が魅力がなくなっている。あるいは、こうした教師が本来的に子どもたちと接しながら子どもたちの学びや成長を助けるという役割が、事務の多さや、それからいわゆる学校経営という視点から教育をとらえるというところでの違和感というものが多くなっているのではないかと思います。

 ここで提言をされている学校経営計画の策定、策定のためのマーケットリサーチ的な調査活動というのは、教師の多忙化というものを解決するのではなくて、より忙しく、拍車をかけるものではないかというふうに思いますが、その点についてどのようにお考えか、お聞かせください。

 そして、民間企業でも活用されているバランススコアカードなどの活用によって、これは学校教育部自体が指摘をされているわけですけれども、戦略マップの策定の必要性、そして学校教育部の弱みというものが4点にわたって指摘をされているわけです。こうした学校経営、民間企業の発想から、学校教育部も指摘をされているわけですけれども、これに違和感はなかったのか、これをどういうふうに受けとめたのかということをお伺いしたいと思います。

 次に各論の部分で、学校選択制のところです。

 23ページになりますが、監査人は、学校選択制について、仮に、余りにも制度趣旨からかけ離れた理由によって、当該学校選択制を活用している実態が把握されれば、そのような理由による学校の選択に対して一定の規制を行うことも考えられるというふうに指摘をしています。

 今年度、小学校は14.1%、選択制の割合があります。中学生では19.2%と、5年目にして、選択をする率というのは徐々にふえてきているわけですが、これが拡大していけばいくほど、地域というものが固定をしなくなってくる。そして、ある学校は小規模化し、統廃合の対象になっていくというような危険性もあるのではないかというふうに危惧をするわけですけれども、ここで監査人が不安を感じている、制度趣旨からかけ離れた理由によるというような選択制の理由、そして一定の規制というのはどういうこととして受けとめたのか、お伺いをいたします。

 次に、83ページの学校給食費のところです。これも先ほど指摘がありました。未納者の要因分析をすれば、現状では、理由がわかっている42世帯のうち、40世帯は経済的な理由で払えない。2世帯は支払い能力があるが支払わない場合があるということで、多くの給食費の滞納の要因は、経済的な理由だということが明らかになりました。

 したがって、何をしなければいけないかということでは、先ほども提案があったように、就学援助の幅をもう少し実態に合って拡大をしていくということが必要なのではないかと思います。そのことは否定はされませんでしたけれども、今後の動向を見てということですが、急速に経済状況が悪くなっていっておりますし、子どもの貧困ということもかなり今大きなテーマとして取り上げられています。

 そういった中では、給食費を払っている世帯でも、就学援助を1.1から1.2、1.3に拡大していけば、具体的にどのような世帯の子どもたちが救済できるのかということも実態として調査をして、政策的に確立をしていただきたいと思いますが、その点についてお伺いをいたします。

 それから、85ページで指摘をされているのは、今現在、学校ごとに給食費を徴収しているわけでありますけれども、国分寺市などは市の公会計の中で徴収をし、処理をするというふうになってきています。教員の多忙化、学校現場の多忙化の解消にもなりますし、より明確に給食費の、ここでは財政民主主義の趣旨に合致するというふうにも書いてあるわけです。

 監査人はこういう方向にはまだ合理性が見出せないというふうには言っておりますけれども、私は、学校の多忙化を解消する意味でも、そして給食費が明瞭に、そして滞納者の給食費が滞納されている分、給食費を払っている子どもたちのその枠の中で食材費を調達するわけですから、そういった不平等も発生をしますので、ぜひ、公会計の中で処理をすべきではないかというふうに思いますが、この点についてお伺いをしたいと思います。


◎【由井良昌教育指導担当参事】
学校経営計画の導入により、教員の多忙化がより進むのではないかという御質問でございました。

 学校がよりよい教育をしていくためには、学校の置かれている現状、特に目の前の子どもの状況、保護者や地域、学校そのものの状況、これらの現状を確実に分析して、目指すべき方向性と具体的な計画を示していく。このことが学校経営計画であるというふうに考えております。

 これによって、学校経営と教育活動の改善が図られていく。これは教員も望むところであり、教員にとっては具体的な方向性が見えるということで、特に多忙化につながっていくというふうには考えておりません。


◎【石垣繁雄学校教育部長】
今回の監査人の指摘意見をどのように受けとめているかというような御質問だったと思いますけれども、監査人につきましては、公認会計士ということで、財務的な指摘のほかに、経営的な観点から、私は貴重な意見をいただいたのではないかなと思っているところでございます。

 学校経営のあり方への考え方、それから学校教育部の戦略マップの必要性などにつきましては、今後、方法の1つとして考えていかなきゃいけないだろうと、そういうふうにして思っているところでございます。そういう中で、現在やっている教育施策がいかに効果的に行われ、教育内容が充実するのかということがなされていかなきゃいけないだろうと考えております。

 ただ、そういう中で、教育ですから、単に、幾らその中で効果が出るとか、そういう計算というのはできないと思いますし、議員のおっしゃるように、これは人間と人間のぶつかり合いですし、そういう中で、お金とか、あるいは利益とか、そういう部分じゃないものというのがそこで生まれてくるんだろうと思いますし、それが教育の原点だろうと私も思っておりますので、そこはまた別の話だろうと思っておりますので、施策は施策として効果的、あるいは充実するものとして実施をしていく。先生方はそういう中で、子どもとぶつかり合って教育をしていく、そういう体系が必要なのかなと思っているところでございます。

 次に、バランススコアカードの関係について、ちょっとお話がございましたけれども、試行的に4つの視点が示されているところでございますが、私の方は、そのいずれもが大切な視点だと考えております。どのような形であれば実施しているのかは、これから検討してまいりたいと思っております。

 それから、学校教育部の弱みとして指摘されました4点でございますが、日常的な業務において見直しをしていくものと、計画的に取り組むものとがございます。教育に関する事務の点検評価が、地方教育行政の組織及び運営に関する法律に規定され、業務を見直すこととされたので、この中で取り組んでまいりたいと思っているところでございます。

 それから次に、選択制のお話が出ました。監査の中で、保護者の選択理由に対して規制が必要ではないかという一文がございましたが、それについての私どもの見解でございますが、保護者や児童、生徒が学校を選択する理由に対して、一定の選択基準などを設けて、例えば、単に校舎が新築だからと、そういう理由のみで選択したという部分を規制していくということは非常に難しいんじゃないかなと考えております。

 ただ、学校と家庭の連携、協力体制が希薄にならないよう、学校選択制の趣旨など、さらに周知して保護者の理解を深めていく必要はあるだろうと思っているところでございます。

 また、少子化が進んでいる地域、ここら辺におきましては、指定校以外の学校の方が、近いなどの地理的な理由から、学校選択制により児童、生徒数がさらに減少していく学校も確かにございます。これらの学校におきましては、学校の経営努力のみでは改善できない面もありますので、教育委員会による一定の支援を検討するとともに、学校の適正な配置についても、一方では考えていかなきゃいけないだろうと考えているところでございます。

 最後に、給食費の関係が出ましたけれども、実態調査を他の視点からもして判断をしていくということは、先ほども申し上げましたけれども、やっていきたいと考えているところでございます。

 あとは、公会計への移行という部分がございましたけれども、他市の事例もございました。私の方としましては、給食費を学校ごとに取り扱うのではなく、一般会計等の公会計で処理することのメリットもあるということは十分承知しております。しかし、公会計に移行した他市の例を見ますと、滞納額の増加が逆にふえる、そういうことも予想されるのではないかなと思っておりますし、給食事業の安定した経営というのが、逆に危惧されるなと思っているところでございます。今後は他市の状況を参考にしながら、この件につきましては研究してまいりたいと思っております。

 また、対応につきましては、学校任せということではなく、教育委員会も学校の状況に応じて連携しながら対応するということも、これからは必要かなと思っているところでございます。


◎【40番井上睦子議員】
学校選択制の問題については、今後これが、選択率というか、拡大をしていくことによって、特に中学校などは全地域での選択ですから、もっと率が高くなったときに、地域との関係がどうなるのかというような問題、それから小規模化、統廃合ということが出てくるというふうには思います。しかし、小中学校は地域のコミュニティの核でもありますので、その点、きちんと把握をしながら、市の方としても支援をしていくということがありましたので、ぜひそのことはお願いをしたいと思います。

 学校給食費の関係については、就学援助の率を拡大して、経済的に困難な子どもたちに対しての援助策をぜひお願いをしたいと思います。そのことは、先ほども触れられましたけれども、20年度の教育に関する事務の管理及び執行の状況の点検及び評価の報告書の中にも強く指摘をされていることですので、ぜひお願いをしたいと思います。

 それから、校門オートロックシステムの設置の問題について、これは監査人が大変こだわって、十数ページにもわたって詳細な分析がされております。平成17年度には購入をされたわけですけれども、18年度以降はリースということになった経緯、それから、ここではC社というふうに言われておりますけれども、初年度、C社との随意契約が、3校のうち1校は、モニターとして1円での契約であったために、C社との随意契約は不要な疑義を招きかねないというふうな指摘がありました。こうした随意契約についての指摘についてはどのようにとえているのか、伺いたいと思います。

 それから、18年度以降の問題についてもたくさんの指摘があります。その中でも、見積書の妥当性の検証の指摘や、積算時のリース料率の適用方法の誤り、あるいは見積書の採用についての指摘など、細かな点について詳細に述べられています。このことが、公認会計士という立場からすれば、かなり学校教育のこの校門オートロックシステムの設置の手続について、問題があるというふうに考えたんだろうというふうに思いますけれども、このことについてはどのように受けとめているのか、お伺いをしたいと思います。

 最後に、教育長にお伺いをいたします。先ほど、学校教育部長から、教育は教師と子どもとのぶつかり合いの中で、効率的なものではない面もあるというふうなお答えがありました。今、外部監査の中では、民間企業の経営手法を活用して、今回の学校教育における経営を分析するという立場に立っているわけです。このことは、教育長はどのようにお感じになったのか。先ほどから私が言っておりますように、子どもたちは教育サービスを受ける顧客であるのかどうか、その視点は正しいのかどうかということをお答えいただきたいと思います。

 公教育は国民の税金によって成立をしておりまして、子どもたちは教育サービスを買う消費者ではありません。だからこそ、お互いに教師と子どもとの関係の中で、消費者として気を使うのではなくて、人間的な成長を保障するという教育活動が営まれているのだというふうに思います。その原点を忘れてはいけないというふうに思いますが、ここ数年の教育改革というのは、子どもたちを教育サービスの受け手というふうに規定をして、ある意味では新自由主義的な傾向が出てきているというふうに思うわけですが、そのことについて、教育長は長年教育の現場にいらっしゃって、どういうことを感じていらっしゃるのか。そして、八王子の教育はどのようにあるべきかということについて、お考えをお示しいただきたいと思います。


◎【石垣繁雄学校教育部長】
オートロックの導入につきまして、御質問いただきました。

 確かに、当初の部分で、3校中1校がそういうような状態の中であったということ、それから、18年度以降の部分についての価格の問題がございます。これらについては、私の方も反省をしているところでございますが、今後、まず適正価格の算定をする場合については、十分いろんな資料を取り寄せまして、適正価格を算定して、適正な契約ができるように今後はしてまいりたいと思っているところでございます。


◎【石川和昭教育長】
包括外部監査結果、この報告書をどのように受けとめているのかというお尋ねでございます。

 教育分野に民間企業の経営手法がなじむのかどうかということにつきましては、いろんな意見があるところでございます。私も、サービス業であることには間違いないと思っておりますけれども、児童、生徒を顧客と呼ぶことにはいささか抵抗を感じております。

 ただ、今回の監査人からの報告書に、高尾山学園の指導補助員の賃金への意見がございました。必要な人員を安定的に確保するには、専門性に対する賃金面での考慮をすべきというものです。この点につきましては、民間企業だけの経営手法ではない、ごく一般的な手法だというふうに考えております。指摘意見のあったことが事業の改善に役立つのであれば、そのことも手法の1つとして取り組んでいきたいと考えております。