◎【40番井上睦子議員】
生活者ネットワーク・社会民主党を代表して、2009年度八王子市一般会計予算及び各特別会計予算並びに関連する諸議案に対して、反対の立場から討論を行います。

 政府は2008年度の実質経済成長率をマイナス0.8%に下方修正した上で、2009年度の実質経済成長見通しをゼロとし、国の予算編成を行っております。しかし、IMFの見通しはさらに悪く、日本の経済成長率をマイナス5.8%としており、金融危機と世界経済の急速な落ち込みを受け、日本の景気後退も長期化が確実だといわれています。

 輸出の落ち込みによる生産の縮小によって、人員削減が実施され、派遣や期間社員切りが横行していますが、年度末になってさらに解雇は正規労働者にまで及ぶといわれ、雇用問題が深刻化しています。

 家計所得の悪化は消費購買力の低下となり、需要が落ち込み、さらに不況が長期化、深刻化していくという悪循環の中に入り込んでいます。

 厳しい経済状況の中で編成された2009年度予算の本市の特徴は、市税収入が前年比21億8,000万円の減額となったことに対し、財源不足を財政調整基金17億5,000万円の取り崩しをし、前年より66.9%もの増加の153億6,300万円の市債発行によって賄うという構造になっています。

 その結果、市税が大幅な減収であるにもかかわらず、一般会計の財政規模は7.2%増の1,836億円となっています。これまで財政運営について、返す以上に借りないを方針に、財政再建に取り組んできましたが、一般会計ではこの方針が崩れ、2009年度末の減債見込み額は、昨年度の08年度の見込み額に対して12億5,200万円の増加となってしまいました。

 財政調整基金も目標とする60億円台に遠く及ばず、年度末残高は20億円でしかありません。市長は任期の最終年度である2011年度の財政調整基金残高20億円を目指すと答弁しました。このことは、今後も厳しい財政運営が続くということを明言したものです。

 こうした厳しい財政運営の要因になっているのが、1つには、南口地区再開発事業が挙げられます。再開発事業及び関連事業は、住都公社が建設を進めている地下駐輪場を除いても、年々増額となり、全体で246億7,500万円にもなりました。市債発行額は09年度だけで61億円にもなります。これは05年、06年度の一般会計の全市債発行額と同額であります。この経済危機をいつ脱出できるのか。この先の見通しは楽観できません。市税収入が落ち込む中、巨大な事業費を費やす南口再開発事業は、今後も市政運営上の問題となってまいります。

 新市民会館の取得費は106億7,000万円、中央総合事務所の取得費は8億9,000万円と、金額が明示をされました。市が専門機関に依頼して不動産鑑定をしたのは2007年11月です。それ以降、地価が下落をしている今日、その取得費が妥当であるのかどうか、十分な検証が必要です。大林組を中心とする建設共同体の出資比率は、大林組85%、東急建設10%、地元の田中建設は5%の割合となっています。ことし7月31日まで独占禁止法違反で指名停止を受けている大林組が、新市民会館を分離発注すると約束されていた内装設備工事を含めて大部分の工事を請け負うのも、大きな問題だと指摘をしておきます。

 さらに、財政を圧迫する危険性の高い川口地区の物流拠点整備や、北西部幹線などの大規模プロジェクトは見直し、凍結が必要です。昨日の国会では、与謝野経済財政相は、成長率の下方修正を明言したように、今後の市税収入の見通しは大変厳しいと予想されます。北西部幹線の測量費が計上され、そして住都公社では物流拠点整備のための予算が計上されておりますけれども、無駄な支出はすべきではなく、ゆめおりプラン実施計画の見直しを行って、大型プロジェクトは即中止をすべきであります。

 経済危機による雇用の悪化は、市民の生活を直撃しています。生活保護費は165億7,000万円にもなり、急速に貧困が広がっています。特に子どもの貧困というものが大きく取り上げられるようになりました。本市の就学援助の率にも相当する7人に1人の子どもたちが貧困状態にあるという結果が、OECDのデータでは出ています。人生のスタートラインで平等な機会を保障し、子どもたちの希望を奪わないために、子どもの貧困に対する積極的な政策が求められています。

 保育園入所希望者は経済的な理由を背景に、本市でも急増していますが、待機児の解消にまで保育所整備が追いついていません。また、認証保育所の保護者負担の軽減補助金が実施されておりますけれども、それでも認可保育所と比べて特に低所得者層では保育料負担が重く、すべての子どもたちの育ちを応援するという考え方から、補助金の増額がされるべきですが、積極的な答弁はありませんでした。

 急激な経済悪化の中で、負担が増大する小学校給食費の値上げについて、保護者の意見を聞いていないこと、また、経済的に厳しい家庭への経済軽減策である就学援助の基準引き上げの検討もされていないことは問題です。就学援助は生活保護基準の1.1に、2003年度から切り下げられていますが、従前の水準に戻すべきであります。そして、小学校給食費については、公費からの補助で食材費の高騰分を賄うべきであり、値上げはすべきではありません。

 このように、今日、子どもたちが極めて大変困難な経済的生活の中に置かれているということに対する認識が極めて不十分な予算編成であると言わざるを得ません。

 小学校給食は、民間委託が5校ふえて13校となります。民間委託はコスト削減が大きな理由とされておりますけれども、学校給食の安全性と質の確保、公正な労働条件の確保について、十分な検討が必要であります。また、今後の小中学校の給食での親子給食の実施や、今ある給食設備等の有効活用も考慮し、学校給食全体のトータルビジョンを示すべきであります。

 都立小児病院の移転問題では、子育て中の市民に大きな不安が広がっています。特に障害児を抱える保護者の間では、都立小児病院が徐々に規模を縮小しており、医療機関への引き継ぎが十分にできるかなどの不安が募っております。また、中核病院にNICUを設置する見込みが立っておりません。高度医療の空白を生み出すことになり、これは大変重大な問題であります。

 地球温暖化防止対策は、普及啓発にとどまらず、都市農業や産業、雇用政策に生かされなければなりません。八王子市は都市農業を育てていくという大きなポテンシャルがあるにもかかわらず、農林業費は前年比より減額になっており、農業政策への意欲が見えません。

 介護保険制度が発足してから10年目を迎えますが、制度改定や見直しによって介護の社会化の理念は後退をし、抱える家族、そして当事者本人も大変な苦労を余儀なくされています。認定調査員テストが公表され、調査項目の選択基準が変更され、要介護認定が軽くなるという危惧がされており、実情と乖離したものになることの不安が広がっております。  また、介護報酬アップに対応して、利用限度額の上限が上がらないために、実質的なサービス抑制になることも危惧されています。利用者が必要なサービスを受けられるよう、自治体独自の支援策が必要ですが、そのメニューはありません。また、地域包括支援センターの増設が策定委員会でも強く求められていましたが、人員体制の強化にとどまったことは大変残念で、問題であります。

 最後に、市の雇用政策についてであります。市で働く非正規職員は1,000人を超え、全体の25%以上を占めるようになりました。嘱託職員で平均年収は約200万円でしかありません。行政みずからが、働いても十分な生活ができないワーキングプアを生み出しています。同一価値労働、同一賃金に基づく均等待遇が早急に図られなければなりません。また、市の入札契約を通じて公正な労働を請負事業者にも守らせる仕組みである契約条例の制定も急ぐ必要があります。しかし、本予算、施策の中ではその前進は見られません。経済危機によって明らかになったこれまでの小さな政府と、国民への自己責任を求めた構造改革路線は、金融資本の暴走を許し、雇用を破壊し、市民生活を圧迫しています。

 今、行政に求められているのは、大規模な開発事業などではなく、雇用を守り、再構築し、そして市民生活を守っていくことですが、その点において極めて不十分な予算であることを指摘して、反対討論を終わります。