◎【40番井上睦子議員】
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それでは、まず新体育館整備事業についてお伺いをしたいと思います。
新体育館の整備基本方針・基本計画が本年3月に策定をされました。その新体育館の内容は、メーンアリーナとサブアリーナ、そして多目的室、トレーニング室、ラウンジ、会議室、そして屋内駐車場を兼ねるという内容になっています。本年度予算では、PFI事業の実施方針の策定、事業内容の検討、民間事業者の選定方法等、契約締結までの一連の資料作成を行うとして、PFI導入可能性調査委託料とPFIアドバイザリー委託料、計3,150万8,000円が計上されています。
8月27日に開催された文教経済委員会では、新体育館整備事業について、PFI導入可能性の調査結果について報告がありました。その調査結果は、たったA4、1枚の用紙にまとめられたものでありました。これです。これで私たちには、需要予測、定量的評価、定性的評価とも問題なく、民間事業者の参画意欲が確保できる事業スキームを構築することにより、PFI事業として成立する可能性が高いとして、PFI導入を政策決定したという報告でありました。
定量的評価とか定性的評価というのは何を意味するのかもよくわかりませんけれども、その段階で私は、このPFI導入可能性調査結果についての情報開示、報告書の開示を求めました。しかしながら、市側は、これは公開することについては今後の事業者選定について影響が出てくるので、公開はできないということでしたので、このA4、1枚に書かれた内容について、詳細にお聞きをしたいと思います。
PFI事業は、民間の資金を活用して、公共施設の設計、建設、管理運営について一体的に民間事業者にゆだねることによって、市の財政負担を軽減し、サービスを向上させることができるといわれてきました。しかし、PFI法の制定から10年を経過し、近江八幡市立総合医療センターや高知医療センターの経営破綻によるPFI契約の解除、それから福岡市のタラソ福岡、北九州市のひびきコンテナターミナルや、名古屋市の名古屋港イタリア村の経営破綻などが起きています。こうした事例から、本当にPFIは民間の資金を活用して市の財政負担を軽減できるという有効な手段なのか、大変に疑問であります。
まず、新体育館整備事業とPFIによる事業概要についてお聞きをいたします。
2009年度から2012年度のゆめおり実施計画では、新体育館の整備として、2009年度、2010年度の2ヵ年でアドバイザー委託、これはPFI事業の実施方針の策定から契約締結に至るまで、事業費が2009年度で3,330万円、2010年度で400万円が計上され、2011年度、2012年度で建設工事をするという計画になっています。2011年度、2012年度では建設工事に入るわけですが、事業費は2011年度600万円、2012年度はゼロ円となっています。これでは事業費の総額や後年度負担などが全くわかりません。
そこでお伺いをいたしますが、新体育館の事業費総額は幾らなのでしょうか。はっきりとお示しをいただきたいと思います。
また、国庫補助金も含めた資金調達の方法、PFIの契約期間、単年度負担額及びランニングコスト、また、タイムスケジュールについては、この導入可能性調査ではどのような想定をして行ったのか、詳細にお答えいただきたいと思います。
また、事業者選定はどのような方式で行うのか。体育館施設の所有は契約期間後の所有になるのか否か、お答えをいただきたいと思います。
次に、PFI導入可能性調査結果についてですが、この調査をした調査会社、委託金額、調査期間についてもお答えいただきたいと思います。
先ほど申しましたように、この調査結果の全面開示を文教経済委員会で求めましたが、事業者選定に影響があるので、公開をしないとの答弁でした。しかし、入札では予定価格を明らかにしていますし、指定管理者制度では、その要求水準を明示して管理者を募集しています。調査結果を公表することでどのような悪影響があるのでしょうか。
議会は、PFI導入が妥当であるのか、調査結果を検討し、判断する役割があります。結論だけ示されることは、議会のチェック機能を否定するにも等しい対応だと言えます。調査結果の全部を公開すべきですが、いかがでしょうか。お答えください。
次に、調査結果の内容についてお聞きをいたします。
まず、1の需要予測では、メーンアリーナで平日約20%、土・日では約70%の利用率。サブアリーナでは、平日が100%。これは個人参加型事業に使用するためだといわれています。土・日は大会、イベントで使用するので、約60%となっています。委員会では、メーンアリーナの需要が平日20%なのは課題とされていましたが、結論としては、問題がないというふうになっています。なぜ採算がとれるのか、事業が成立するのか、その理由を明らかにしてください。無理な結論になっているのではありませんか。お答えください。
民間事業者の意向調査が行われています。建設会社の意向は、事業スキーム、サービス対価、リスク分担などの面で、検討すべき点もあるが、非常に積極的で参画意欲が高いとなっています。運営会社の意向は、参画意欲があるとなっておりまして、委員会では、運営会社は指定管理の傾向が強いとも報告をされました。建設会社の意向は、非常に積極的で、参画意欲が高い。運営会社の意向は、非常に積極的ではなくて、ただ参画意欲がある。そして、指定管理の傾向が強いという報告でありました。建設会社と運営会社の意向には温度差があるように感じられます。建設会社、運営会社はどのような企業を対象に調査をしたのでしょうか。
また、事業スキーム、サービス対価、リスク分担などの面で、検討すべき点とは、具体的に運営会社や建設会社からどのような意見が出されているのか、明らかにしてください。
次に、PFI事業導入の根拠となるバリュー・フォー・マネーについてお聞きをいたします。これは調査結果のA4の用紙、(3)に当たるところですが、このようになっています。想定した事業スキームにおけるバリュー・フォー・マネーはおよそ10%程度となっています。
バリュー・フォー・マネーとは、投入した税金に対する公共サービスの価値をあらわすものといわれています。単純化して言うならば、これまで100億円の税金を投入して実施していた公共サービスについて、PFIにより90億円の税金で実施することができる場合、10%のバリュー・フォー・マネーが得られるということだそうです。
2001年に公表された国のバリュー・フォー・マネーに関するガイドラインによれば、公共がみずから実施する場合の事業期間全体を通じた公的財政負担額の見込額の現在価値と、PFI事業として実施する場合の公的財政負担額の見込額の現在価値とを比較し、PFI事業が下回った場合にバリュー・フォー・マネーがあるとしています。これだけ読んでもわかりませんけれども、大変難しい言い回しをしています。そして、両者が等しい場合は、PFI事業において、公共サービスの水準の向上が期待できる場合にバリュー・フォー・マネーがあると考える旨の説明がされています。
このガイドラインは大変難解です。バリュー・フォー・マネーとは何か、よくわかりません。そして、現在価値の比較とはどういうことなのか。これもよくわかりません。
新体育館整備をPFIで実施した場合、バリュー・フォー・マネーが10%程度となるという、たった1行の報告でありますが、このことについて、どのような計算をして10%となるのか。その根拠を具体的な数値を示して説明をしてください。そして、バリュー・フォー・マネーについてもよくわかるように説明をしていただきたいと思いますし、現在価値の比較とはどういうことなのかについても、わかるように御説明をしていただきたいと思います。
最後に、定量的評価であるバリュー・フォー・マネーと同様に、PFI導入の根拠となっている定性的評価について、これは(4)で4点挙げられています。大変難しい定性的評価であるとか定量的評価であるという言葉が出てきますけれども、これも難解です。
その4点とは、財政負担の平準化、2点目が設計・施工・管理・運営を一体で行うことによる経費削減、収入増、3点目は、多様なニーズへの対応、利用者サービスの向上と多様な事業の提供などができる。4として、リスクの軽減などの効果を見込むことができるので、PFI導入を行うということになるわけです。この4点についても、よくわかりません。
では、財政負担の平準化について、詳しくお尋ねしたいと思います。従来型で市がみずから建設、運営する場合と、PFIで行う場合の財政負担額平準化という意味では、どのように変化をするのか、具体的な数値でお示しいただきたいと思います。
2点目に、設計、施工、管理、運営を一体で行うことによって経費の削減と収入増が図れる。そして、多様なニーズへの対応が可能だといわれています。PFIで、経営破綻した近江八幡市立総合医療センターの場合、長期にわたる契約期間と支払い総額があらかじめ決められているので、経営の質や効率性を追求する意欲が働かなかったとの指摘が、市の代理人弁護士からされています。近江八幡市の報告書でも、民間に任せただけで民間の活力やノウハウが発揮されると期待した甘さがあったとしていますが、経費削減や収入の増加、多様なニーズへの対応が可能だとする根拠を挙げてください。
私たち委員会に示されたのは、先ほど述べましたように、4点だけの箇条書きの文章でしかないわけですから、これは理解できるように説明をいただきたいと思いますし、同時に、近江八幡市の病院経営の破綻の教訓をどのように受けとめているのでしょうか。すなわち、効率性を追求するインセンティブがPFIでは働かないという指摘をどのように受けとめますか、お伺いをいたします。
次に、リスクについて伺います。PFIでは想定されるリスクを事業者に分担させることによってリスクが軽減できるとされています。しかし、PFI事業のリスクは、事業者の破綻などが考えられます。
また、仙台市のスポパーク松森の屋内プールの天井が崩落した事故に見られるように、安全の確保についてのリスク管理ができていないことや、福岡市のタラソ福岡の需要リスクへの対応ができず破綻した事例など、事業者がリスクに対応できないという場合も出ています。PFI事業のリスク、すなわちデメリットとしてはどのような場合が想定されるのか、お聞きをいたします。
次に、公共事業で働く人たちの格差是正と労働条件の確保についてお伺いをいたします。
経済不況や公共サービスのアウトソーシングが進む中で、官製ワーキングプアの問題などが顕在化してまいりました。そして、公共事業で働く人たちの公正で生活できる賃金や労働条件の確保が求められています。2006年、八王子市議会でも、公契約における公正な賃金、労働条件の確保を求める意見書が上げられており、ILO94号条約の早期批准も求められております。ILO94号条約は、公契約条例について定めており、公的な業務の賃金など、関係ある産業の労働条件に劣らないものとする条項を含まなければならないとするものです。
私はたびたび公契約条例の必要性を提案してまいりました。ことしの予算審議で、総務企画分科会では、田中副市長より、幾つかの団体から公契約条例の早期制定に向けての要望を受けています。今、総合評価方式の中でも一部そうした考え方を入れて取り組んでいるわけですが、現在、庁内に地方分権推進財政確立労使協議会、こういう協議会を設けて、その中でもこの問題を今議論しておりまして、検討しているところでございます。最終的に一定程度の結論を大至急出したいというふうに私自身は思っているところですという答弁がありました。
そこでお伺いをいたしますが、この地方分権推進財政確立労使協議会での公契約条例の制定についての議論はどのように進んでいるのか、お伺いをいたします。
現在、野田市では、市長提案で9月議会に公契約条例が上程されております。条例の前文を紹介しますと、地方公共団体の入札は、一般競争入札の拡大や総合評価方式の採用などの改革が進められてきたが、一方で、低入札価格の問題によって、下請の事業者や業務に従事する労働者にしわ寄せがされ、労働者の賃金の低下を招く状況になってきている。このような状況を改善し、公平かつ適正な入札を通じて、豊かな地域社会の実現と、労働者の適正な労働条件が確保されることは、1つの自治体で解決できるものではなく、国が公契約に関する法律の整備の重要性を認識し、速やかに必要な措置を講ずることが不可欠である。本市はこのような状況をただ見過ごすことなく、先導的にこの問題に取り組んでいくことで、地方公共団体の締結する契約が、豊かで、安心して暮らすことのできる地域社会の実現に寄与することができるよう貢献したいと思う。この決意のもとに、公契約にかかわる業務の質の確保、及び公契約の社会的な価値の向上を図るため、この条例を制定するとして、今提案がされております。
この公契約の条例の内容では、4点のポイントがあります。予定価格が1億円以上の公共事業と1,000万円以上の業務委託契約が対象となっており、市長が定める最低賃金以上の賃金を支払わなければならないとされています。2点目は、市が定める最低賃金は、毎年、農林水産省と国土交通省が公共事業の積算に用いる労務単価や、市職員の給与条例を勘案して決めるということになっています。3点目は、最低賃金が守られない場合は、契約を解除することができ、受注者は、市に損害が生じたときは損害賠償をしなければならない。4点目は、総合評価、一般競争入札や指定管理者の選定のときにも、この者に雇用される労働者の賃金を評価するとしています。こうした条例が制定されれば、大変画期的なものになるというふうにいわれておりますけれども、こうした公契約条例制定の意義を市はどのように考えているのでしょうか。お伺いをして、1回目の質問を終わります。
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