◎【40番井上睦子議員】
それでは、まず新体育館整備事業についてお伺いをしたいと思います。

 新体育館の整備基本方針・基本計画が本年3月に策定をされました。その新体育館の内容は、メーンアリーナとサブアリーナ、そして多目的室、トレーニング室、ラウンジ、会議室、そして屋内駐車場を兼ねるという内容になっています。本年度予算では、PFI事業の実施方針の策定、事業内容の検討、民間事業者の選定方法等、契約締結までの一連の資料作成を行うとして、PFI導入可能性調査委託料とPFIアドバイザリー委託料、計3,150万8,000円が計上されています。

 8月27日に開催された文教経済委員会では、新体育館整備事業について、PFI導入可能性の調査結果について報告がありました。その調査結果は、たったA4、1枚の用紙にまとめられたものでありました。これです。これで私たちには、需要予測、定量的評価、定性的評価とも問題なく、民間事業者の参画意欲が確保できる事業スキームを構築することにより、PFI事業として成立する可能性が高いとして、PFI導入を政策決定したという報告でありました。

 定量的評価とか定性的評価というのは何を意味するのかもよくわかりませんけれども、その段階で私は、このPFI導入可能性調査結果についての情報開示、報告書の開示を求めました。しかしながら、市側は、これは公開することについては今後の事業者選定について影響が出てくるので、公開はできないということでしたので、このA4、1枚に書かれた内容について、詳細にお聞きをしたいと思います。

 PFI事業は、民間の資金を活用して、公共施設の設計、建設、管理運営について一体的に民間事業者にゆだねることによって、市の財政負担を軽減し、サービスを向上させることができるといわれてきました。しかし、PFI法の制定から10年を経過し、近江八幡市立総合医療センターや高知医療センターの経営破綻によるPFI契約の解除、それから福岡市のタラソ福岡、北九州市のひびきコンテナターミナルや、名古屋市の名古屋港イタリア村の経営破綻などが起きています。こうした事例から、本当にPFIは民間の資金を活用して市の財政負担を軽減できるという有効な手段なのか、大変に疑問であります。

 まず、新体育館整備事業とPFIによる事業概要についてお聞きをいたします。

 2009年度から2012年度のゆめおり実施計画では、新体育館の整備として、2009年度、2010年度の2ヵ年でアドバイザー委託、これはPFI事業の実施方針の策定から契約締結に至るまで、事業費が2009年度で3,330万円、2010年度で400万円が計上され、2011年度、2012年度で建設工事をするという計画になっています。2011年度、2012年度では建設工事に入るわけですが、事業費は2011年度600万円、2012年度はゼロ円となっています。これでは事業費の総額や後年度負担などが全くわかりません。

 そこでお伺いをいたしますが、新体育館の事業費総額は幾らなのでしょうか。はっきりとお示しをいただきたいと思います。

 また、国庫補助金も含めた資金調達の方法、PFIの契約期間、単年度負担額及びランニングコスト、また、タイムスケジュールについては、この導入可能性調査ではどのような想定をして行ったのか、詳細にお答えいただきたいと思います。

 また、事業者選定はどのような方式で行うのか。体育館施設の所有は契約期間後の所有になるのか否か、お答えをいただきたいと思います。

 次に、PFI導入可能性調査結果についてですが、この調査をした調査会社、委託金額、調査期間についてもお答えいただきたいと思います。

 先ほど申しましたように、この調査結果の全面開示を文教経済委員会で求めましたが、事業者選定に影響があるので、公開をしないとの答弁でした。しかし、入札では予定価格を明らかにしていますし、指定管理者制度では、その要求水準を明示して管理者を募集しています。調査結果を公表することでどのような悪影響があるのでしょうか。  議会は、PFI導入が妥当であるのか、調査結果を検討し、判断する役割があります。結論だけ示されることは、議会のチェック機能を否定するにも等しい対応だと言えます。調査結果の全部を公開すべきですが、いかがでしょうか。お答えください。

 次に、調査結果の内容についてお聞きをいたします。

 まず、1の需要予測では、メーンアリーナで平日約20%、土・日では約70%の利用率。サブアリーナでは、平日が100%。これは個人参加型事業に使用するためだといわれています。土・日は大会、イベントで使用するので、約60%となっています。委員会では、メーンアリーナの需要が平日20%なのは課題とされていましたが、結論としては、問題がないというふうになっています。なぜ採算がとれるのか、事業が成立するのか、その理由を明らかにしてください。無理な結論になっているのではありませんか。お答えください。

 民間事業者の意向調査が行われています。建設会社の意向は、事業スキーム、サービス対価、リスク分担などの面で、検討すべき点もあるが、非常に積極的で参画意欲が高いとなっています。運営会社の意向は、参画意欲があるとなっておりまして、委員会では、運営会社は指定管理の傾向が強いとも報告をされました。建設会社の意向は、非常に積極的で、参画意欲が高い。運営会社の意向は、非常に積極的ではなくて、ただ参画意欲がある。そして、指定管理の傾向が強いという報告でありました。建設会社と運営会社の意向には温度差があるように感じられます。建設会社、運営会社はどのような企業を対象に調査をしたのでしょうか。

 また、事業スキーム、サービス対価、リスク分担などの面で、検討すべき点とは、具体的に運営会社や建設会社からどのような意見が出されているのか、明らかにしてください。

 次に、PFI事業導入の根拠となるバリュー・フォー・マネーについてお聞きをいたします。これは調査結果のA4の用紙、(3)に当たるところですが、このようになっています。想定した事業スキームにおけるバリュー・フォー・マネーはおよそ10%程度となっています。

 バリュー・フォー・マネーとは、投入した税金に対する公共サービスの価値をあらわすものといわれています。単純化して言うならば、これまで100億円の税金を投入して実施していた公共サービスについて、PFIにより90億円の税金で実施することができる場合、10%のバリュー・フォー・マネーが得られるということだそうです。

 2001年に公表された国のバリュー・フォー・マネーに関するガイドラインによれば、公共がみずから実施する場合の事業期間全体を通じた公的財政負担額の見込額の現在価値と、PFI事業として実施する場合の公的財政負担額の見込額の現在価値とを比較し、PFI事業が下回った場合にバリュー・フォー・マネーがあるとしています。これだけ読んでもわかりませんけれども、大変難しい言い回しをしています。そして、両者が等しい場合は、PFI事業において、公共サービスの水準の向上が期待できる場合にバリュー・フォー・マネーがあると考える旨の説明がされています。

 このガイドラインは大変難解です。バリュー・フォー・マネーとは何か、よくわかりません。そして、現在価値の比較とはどういうことなのか。これもよくわかりません。  新体育館整備をPFIで実施した場合、バリュー・フォー・マネーが10%程度となるという、たった1行の報告でありますが、このことについて、どのような計算をして10%となるのか。その根拠を具体的な数値を示して説明をしてください。そして、バリュー・フォー・マネーについてもよくわかるように説明をしていただきたいと思いますし、現在価値の比較とはどういうことなのかについても、わかるように御説明をしていただきたいと思います。

 最後に、定量的評価であるバリュー・フォー・マネーと同様に、PFI導入の根拠となっている定性的評価について、これは(4)で4点挙げられています。大変難しい定性的評価であるとか定量的評価であるという言葉が出てきますけれども、これも難解です。

 その4点とは、財政負担の平準化、2点目が設計・施工・管理・運営を一体で行うことによる経費削減、収入増、3点目は、多様なニーズへの対応、利用者サービスの向上と多様な事業の提供などができる。4として、リスクの軽減などの効果を見込むことができるので、PFI導入を行うということになるわけです。この4点についても、よくわかりません。

 では、財政負担の平準化について、詳しくお尋ねしたいと思います。従来型で市がみずから建設、運営する場合と、PFIで行う場合の財政負担額平準化という意味では、どのように変化をするのか、具体的な数値でお示しいただきたいと思います。

 2点目に、設計、施工、管理、運営を一体で行うことによって経費の削減と収入増が図れる。そして、多様なニーズへの対応が可能だといわれています。PFIで、経営破綻した近江八幡市立総合医療センターの場合、長期にわたる契約期間と支払い総額があらかじめ決められているので、経営の質や効率性を追求する意欲が働かなかったとの指摘が、市の代理人弁護士からされています。近江八幡市の報告書でも、民間に任せただけで民間の活力やノウハウが発揮されると期待した甘さがあったとしていますが、経費削減や収入の増加、多様なニーズへの対応が可能だとする根拠を挙げてください。

 私たち委員会に示されたのは、先ほど述べましたように、4点だけの箇条書きの文章でしかないわけですから、これは理解できるように説明をいただきたいと思いますし、同時に、近江八幡市の病院経営の破綻の教訓をどのように受けとめているのでしょうか。すなわち、効率性を追求するインセンティブがPFIでは働かないという指摘をどのように受けとめますか、お伺いをいたします。

 次に、リスクについて伺います。PFIでは想定されるリスクを事業者に分担させることによってリスクが軽減できるとされています。しかし、PFI事業のリスクは、事業者の破綻などが考えられます。

 また、仙台市のスポパーク松森の屋内プールの天井が崩落した事故に見られるように、安全の確保についてのリスク管理ができていないことや、福岡市のタラソ福岡の需要リスクへの対応ができず破綻した事例など、事業者がリスクに対応できないという場合も出ています。PFI事業のリスク、すなわちデメリットとしてはどのような場合が想定されるのか、お聞きをいたします。

 次に、公共事業で働く人たちの格差是正と労働条件の確保についてお伺いをいたします。

 経済不況や公共サービスのアウトソーシングが進む中で、官製ワーキングプアの問題などが顕在化してまいりました。そして、公共事業で働く人たちの公正で生活できる賃金や労働条件の確保が求められています。2006年、八王子市議会でも、公契約における公正な賃金、労働条件の確保を求める意見書が上げられており、ILO94号条約の早期批准も求められております。ILO94号条約は、公契約条例について定めており、公的な業務の賃金など、関係ある産業の労働条件に劣らないものとする条項を含まなければならないとするものです。

 私はたびたび公契約条例の必要性を提案してまいりました。ことしの予算審議で、総務企画分科会では、田中副市長より、幾つかの団体から公契約条例の早期制定に向けての要望を受けています。今、総合評価方式の中でも一部そうした考え方を入れて取り組んでいるわけですが、現在、庁内に地方分権推進財政確立労使協議会、こういう協議会を設けて、その中でもこの問題を今議論しておりまして、検討しているところでございます。最終的に一定程度の結論を大至急出したいというふうに私自身は思っているところですという答弁がありました。

 そこでお伺いをいたしますが、この地方分権推進財政確立労使協議会での公契約条例の制定についての議論はどのように進んでいるのか、お伺いをいたします。

 現在、野田市では、市長提案で9月議会に公契約条例が上程されております。条例の前文を紹介しますと、地方公共団体の入札は、一般競争入札の拡大や総合評価方式の採用などの改革が進められてきたが、一方で、低入札価格の問題によって、下請の事業者や業務に従事する労働者にしわ寄せがされ、労働者の賃金の低下を招く状況になってきている。このような状況を改善し、公平かつ適正な入札を通じて、豊かな地域社会の実現と、労働者の適正な労働条件が確保されることは、1つの自治体で解決できるものではなく、国が公契約に関する法律の整備の重要性を認識し、速やかに必要な措置を講ずることが不可欠である。本市はこのような状況をただ見過ごすことなく、先導的にこの問題に取り組んでいくことで、地方公共団体の締結する契約が、豊かで、安心して暮らすことのできる地域社会の実現に寄与することができるよう貢献したいと思う。この決意のもとに、公契約にかかわる業務の質の確保、及び公契約の社会的な価値の向上を図るため、この条例を制定するとして、今提案がされております。

 この公契約の条例の内容では、4点のポイントがあります。予定価格が1億円以上の公共事業と1,000万円以上の業務委託契約が対象となっており、市長が定める最低賃金以上の賃金を支払わなければならないとされています。2点目は、市が定める最低賃金は、毎年、農林水産省と国土交通省が公共事業の積算に用いる労務単価や、市職員の給与条例を勘案して決めるということになっています。3点目は、最低賃金が守られない場合は、契約を解除することができ、受注者は、市に損害が生じたときは損害賠償をしなければならない。4点目は、総合評価、一般競争入札や指定管理者の選定のときにも、この者に雇用される労働者の賃金を評価するとしています。こうした条例が制定されれば、大変画期的なものになるというふうにいわれておりますけれども、こうした公契約条例制定の意義を市はどのように考えているのでしょうか。お伺いをして、1回目の質問を終わります。


◎【榎本茂保生涯学習スポーツ部長】
新体育館整備について、順不同になりますが、事業の概要について御答弁申し上げます。

 資金関係ですが、設計、施工等の工事費は、国庫補助金のほか起債を75%充当する考えです。

 事業費単年度負担、ランニングコストですが、サービス内容、契約期間やリスク分担、事業の提案内容などによって大きく異なります。現時点でのお示しは難しいと考えております。

 スケジュールでございますが、今後、アドバイザー契約をし、事業計画、実施方針の策定を進め、ゆめおりプランの実行編に基づき、進めていきたいと考えております。  手法でございますが、BTO方式で、民間が建設、管理をいたしますが、施設は完成後、所有権は行政に移管をいたします。

 業者選定の方式でございますが、国は総合評価一般競争入札を推奨しておりますが、評価項目を数値化し、客観的な基準を設け、実施能力や提案内容、事業内容、安定性などを総合的に判断したいと考えております。

 次に、契約の期間ですが、導入可能調査では完成後15年を仮定しておりますが、先進例などを参考に検討していきたいと考えております。

 次に、調査結果でございますが、委託会社は株式会社日本経済研究所、委託金額は388万5,000円、調査期間は21年3月から7月まで。調査の開示ですが、民間事業により、よりよい提案をしていただくため、全面的な開示は差し控えたいと考えておりますが、できる限りの情報を開示し、事業を進めていきたいと考えております。

 利用率でございますが、調査結果の平日利用率20%を高め、市の負担を減らすこともPFIに求めるテーマでございます。また、事業成立は、バリュー・フォー・マネーなど総合的に判断をしております。

 民間事業の意向でございますが、建設関係が大手5社、準大手10社、中堅10社、運営会社は大手4社、準大手・中堅7社ということで、意見につきましては、事業スキーム、サービス対価、リスク分担などで、企業に優位な意見が多くありました。検討するのは、リスク分担の役割や負担など、事前の契約条項の明確化でございます。

 あと、バリュー・フォー・マネーの10%の根拠ですが、従来型の手法とPFI手法のライフサイクルコストを比較したもので、国のガイドラインにより算出し、総事業費でPFI手法の方が10%削減できる数値です。

 また、現在価値ですが、貨幣の価値が時間の経過とともに低下することを前提として、将来におけるキャッシュが現在の幾らになるかを割り引き換算したものです。

 従来手法とPFI手法の財政負担の比較ですが、定性的評価は金額で示すことはなかなかできませんが、財政負担の平準化につきましては、イニシャルコストとランニングコストを合わせて、契約期間で平準化して毎年払うような形になっております。

 また、経費の削減と収入の増については、設計、施工、管理、運営を一括して発注することで、建設費の削減と運営に合わせた建設等、質の高いサービスが提供できます。  次に、近江八幡市立総合医療センターの破綻ですが、これの原因でございますが、民間業者の病院経営のノウハウがなかったこと。それと、病院事業は内部運営が複雑な上、診療報酬が2年ごとに改定するなど外部要因があった。また、資金調達の関係で金利等に原因があったと聞いております。

 あと、PFI事業のリスクですが、PFI事業の成否はリスク分担が重要で、事業に内在しているリスクを分解し、的確にリスク分担することで、民間に負担が大き過ぎると事業は成り立ちません。リスク内容は、事故、需要の変動、物価の上昇など、そういうものは影響を想定できないものでございます。今後、アドバイザーを入れて慎重に検討していきたいと思っております。


◎【田沼正輝財務部長】
公契約条例につきましてお答えをいたします。

 議論につきまして、その進捗は目に見えるような形とはなってございません。これは企業の信頼性や社会性の項目を含みます総合評価方式が、議会から要請などに基づきまして今年度当初から再び見直しが図られ、試行が継続となりましたことを受け、一定の検証を踏まえることとしていることによるものでございます。

 次に、条例の意義でございますが、御指摘のワーキングプアなどにつきましては、深刻な社会問題と受けとめておりまして、その解決は図られるべきものと思いますけれども、公契約条例でなすべきかについては、慎重な検討が必要であると考えております。

 労働者の労働条件については、労働基準法や最低賃金法などの労働関係法規に基づき、保護や規制がされるものでありますので、基本的には発注者として関与すべきものではないというふうに考えているところでございます。


◎【40番井上睦子議員】
それでは、まず、新体育館整備についてお伺いをいたします。

 事業費総額については、明らかにできないということでありました。今後の中で検討していく内容だということなんですけれども、バリュー・フォー・マネーが10%というふうに出ておりますので、調査の内容の中では事業費総額をどのように見積もって、在来型とPFIではどういう差が出たのかということは、やはり明確にしていただきたいと思います。調査結果の内容については、できるだけ開示をするという方向でありましたので、バリュー・フォー・マネーの部分についても全面的な開示を再度求めたいと思いますが、その点についてお答えをいただきたいと思います。

 先ほど、資金調達では75%起債を充当する。国庫補助金が若干あるでしょうけれども、全体の約25%が民間の資金調達になるということが明らかになりました。

 1回目の質問でも申し上げたように、PFI事業の問題点については、全国で破綻をした例からも、さまざまな教訓が出ています。まず、バリュー・フォー・マネーの信頼性の問題についてです。バリュー・フォー・マネーでは、現在価値に換算した金額の比較だということです。現在価値について説明がありましたけれども、将来の金額、割り引いてということなんでしょうけれども、とすれば、これは現実に削減できる金額とは異なってくるのか、確認をしておきたいと思います。

 例えば、従来型が100億円、PFIでやった場合は90億円、そのバリュー・フォー・マネーは10億円の10%というふうになりますが、現実に精算の段階ではこういう数字ではなくなるという、いわゆる理論上の数字であって、現実の数字とは異なるということなのか、お答えをいただきたいと思います。

 需要予測や、市場の金利などによって、この現在価値というのも多分変わってくるんだろうと思います。そこの数値をどのようにでも当てはめれば、10%とか15%とか20%とかという数値も、これまた操作によっては可能になる数字なのではないかなと思います。

 南大沢の土地信託事業では、事業手法は異なりますけれども、30年間で配当金があり、かつ、建物は完全に市のものになるという試算があって、30年間の長い土地信託事業に入りました。しかし、現実には、15年経過しても配当金はないという状況です。経済の変動や、長いスパンですから、それを考えれば、このバリュー・フォー・マネーも現実には削減できる金額、効果を生む価値というふうにはならないのではないか。すなわち、削減金額は検証できないのではないかというふうに思いますが、お答えをいただきたいと思います。

 では、バリュー・フォー・マネーとは一体何なのか。どうも信頼できない数値のような気がいたしますけれども、それを納得できるように説明をしていただきたい。そのためには、10%の根拠を調査報告ではどのように数値化をして計算をしたのか。それを明らかにしていただかないと、信頼ができないと思います。これは情報開示とも絡みますので、ここはぜひ具体的に明らかにしていただきたいと思います。

 PFIでなぜバリュー・フォー・マネーが得られるかということも不思議でしようがありません。PFIでは、資金を民間から調達します。新体育館の場合は、建設費の25%を民間から調達することになりますが、この部分は金利は起債より高くなります。民間事業者は利潤を追求するので、その利潤分が公共側にとっての追加コストになってまいります。また、入札にもコストがかかります。PFIは事業の内容が複雑であるため、契約書の作成などにアドバイザー費用が必要となり、実施計画では2ヵ年で3,730万円の予算が見込まれています。

 このように、従来の方法で市が直接に実施する場合の方がコストは安く、逆にPFIはこうしたコストの要素が加わりますので、高くなってきます。PFIは本当にどのような根拠で財政負担の軽減となるのか、お答えをいただきたいと思います。

 建設会社、運営会社の意向調査で、民間にとって都合のよい意見というのが出されたということです。事業リスクの分担など、今後の検討課題だと言われております。民間事業者の参画意欲が確保できる事業スキームに協議をしていくということになりますけれども、民間事業者の参画意欲が確保できる事業スキームとは、民間事業者にとって都合のいい意見になるのではないでしょうか。

 例えば、光熱水費を市の負担とするとか、法令や税制が変わった場合のリスクは市側の分担とするとか、事業予測、事業リスクが出たときには、行政と民間側のリスクは折半にする。あるいは公共側が持つ。そういったことがいろいろ民間側から求められてくるのではないでしょうか。決して民間は自分たちが損失を出すような事業には乗ってこないはずです。近江八幡市の病院の中でも、赤字は事業者がかぶり、運営機関の黒字は民間事業者が持っていくという結果となったと聞いています。本当に民間事業者の参画意欲が確保できる事業スキームとは、民間の利益にはなるけれども、行政の財源の削減や効率化のサービスといった内容と、お互いがウイン・ウインの関係になれるのかどうか。大変不思議でありますので、その関係についても御説明をいただきたいと思います。

 また、PFI事業は設計、施工、管理、運営を一括で発注し、性能を満たしていれば手法は問わない、性能発注方式が採用されます。これが経費削減の根拠と言われていますけれども、1回目でも紹介しましたように、仙台市のスポパーク松森では、2005年の宮城沖地震のときに屋内プールの天井が崩落し、利用者数十名が負傷するという事故が発生しています。この事故を検証した検討委員会の中間報告は、民間がPFI契約に定められた責務を果たしていなかったことが事故の要因になったことがうかがわれる。これまでの官による公共施設整備の実績から見れば、官により施設整備が行われていれば、事故を未然に防ぐ可能性は高いとし、意匠や設計について行政の関与の強化が必要だったとしています。事故が発生し、負傷者が出れば、行政の賠償責任は免れません。PFIは行政の負担を軽減するとされてきましたが、安全性や質を確保しようとすれば、行政の側でも建築法規や建築技術などに通じた専門職員の体制を整備しなければならず、決して負担は軽減されないのではないでしょうか。

 以上のように、再度申し上げますけれども、民間企業の利益を確保しながら、効率的なサービスを提供するということは矛盾し、実際にはできないことです。逆にPFIは行政にとってはモニタリングにコストがかかると言えます。PFIは市の財政負担を軽減し、効率的なサービスを行うということは幻想ではないのか、お答えをいただきたいと思います。

 次に、情報公開と守秘義務の問題についてです。PFIの導入について、議論の過程でも、調査報告の全部公開は行政が拒否をしています。部分公開はするということでありましたけれども、そこまでは答弁がされておりません。

 PFI法では、実施方針、特定事業者や民間事業者の選定、事業計画や協定について公表することを定め、基本方針では、選定事業者に事業の実施状況報告や財務状況報告の提出を求めることができるとされています。しかし、民間事業者の権利、競争上の地位、その他、正当な利益を害するおそれがある事項は公表しなくてもよいとなっています。事業者と行政とが知り得た相手方の秘密を第三者に漏らしてはいけないとする守秘義務も課せられています。

 このように、建前は公開であっても、税を投入する公共サービスであるにもかかわらず、民間事業者にとって不利益な情報は公開されないということになります。

 近江八幡市立医療センターの場合、市長は、バリュー・フォー・マネーについての積算根拠は、入札想定価格をあらかじめ示すことになり、自由で公正な競争に影響を与えるとして、導入当初、明らかにしませんでした。

 また、契約解除となった高知医療センターでも、高知県と高知市で構成する企業団が経営改善プランを策定するに当たって、この医療センターの運営組織である特定目的会社が委託業者とどんな契約料で契約しているかを明らかにするよう要望したのに対し、企業秘密を理由に、その資料は出されなかったという事例もあります。これが行政の事業であれば、当然、公開されるものです。

 PFI事業は公共サービスである以上、議会の調査の対象となり、市民に対しても情報公開されるべきものです。しかし、PFIでは情報の公開度、事業の透明度は低くなり、議会や市民の監視を遠ざけるという問題があるのではないですか。お答えください。

 また、地元経済への影響についても、意向調査を行ったのは大手、中堅の企業です。地元企業がこうした事業へ参画するということは、極めて難しいというふうに言われておりますけれども、こうした事業が地元経済へ与える影響、地元の企業者に対してどのような利益や不利益があるのか、明らかにしていただきたいと思います。

 次に、市財政への影響の問題です。新体育館の総事業費は明らかにされておりません。PFIを導入するのは、初期費用が不要であることが主な理由であると考えられます。市長も基本方針・基本計画で、経済情勢が大変厳しい中で新体育館建設に踏み切ることによる市財政への負担は非常に大きく、これをできるだけ軽減できるよう、21年度予算ではPFI導入を視野に入れた予算を計上したとしています。PFI導入によるコストの削減が可能か、疑問でありますけれども、一方で75%を起債で賄えば、返す以上に借りないの財政規律を崩すというようなことにもなりかねません。

 昨年秋以降の金融危機によって、市税収の確保も極めて厳しくなっています。2009年度の市税収入は、ゆめおり実施計画では約941億5,000万円ですが、予算では約930億6,000万円となっています。既に法人市民税では予算を上回る還付金の支払いが生じていますが、今年度は予算どおりの市税収入を見込むことができるのか、財政当局にお伺いをいたします。

 また、財政状況によっては、ゆめおりプランの見直しと事業凍結も必須だと考えますが、どのように判断をしているのか、お伺いをいたします。

 次に、公契約条例についてであります。庁内での労使協議会ではこの公契約条例の議論は進んでいないとのことでありました。野田市などでの制定の動きなどを受けて、本市でも公契約条例の制定を視野に入れた有識者、市民、労働団体も参加した検討会を設置すべきではないかと思います。労働条件の問題は、労働関連法制や最低賃金など既存の法体系の中で賄うべきだという意見がありましたけれども、働くワーキングプアの問題、あるいは官製ワーキングプア、行政みずからがそういう人たちをつくり出しているという問題を避けて通ることはできません。ぜひこのことについては条例制定を視野に入れた検討会の設置をすべきではないかと思いますが、お考えをお示しください。

 さらに、事業者への指導の問題についてです。地域の求人情報誌には、学校給食の調理員のスタッフを契約社員として月18万円から25万円で募集する広告や、地域包括支援センターの職員については、保健師が29万円から、介護支援専門員の方が25万円から、社会福祉士の方が24万円からという募集広告が出ていたり、団地の清掃では時給766円という広告が出ていたり、公共サービスを担う人たちの募集が出ているわけですが、こういう人たちに対してきちんと労務単価を定めて積算を公共事業の事業費や契約費用はなっていると思いますけれども、実際に労働者に支払われている賃金が労務単価を下回っていないか、そういったことを調査すべきだと思いますが、その点についてお考えをお聞きをし、そして、そういった労働者からの相談の窓口を市にも設置をすべきだと思いますが、その点についてお考えをお聞きいたします。

 以上で2回目を終わります。


◎【榎本茂保生涯学習スポーツ部長】
まず、バリュー・フォー・マネーの数字の根拠を公表するということですが、これについては情報公開だとか資料の方を検討して、また調整したいと思っております。

 次に、バリュー・フォー・マネーの信頼性でございますが、これにつきましては、国のガイドラインにのっとって行っておるので、信頼はあるものと確信はしております。  また、PFI事業の効率性をはかる指針であり、従来型の事業とPFI事業との比較をすることがルール化されております。先ほどもお話ししたとおり、現在価値に置きかえて比較するため、実際に削減できる額とは異なりますので、バリュー・フォー・マネーだけでPFI導入について決定するものではありません。定性的な評価や、PFIとしての場合のメリット、デメリット、総合的に判断をしたところでございます。

 次に、民間利益を確保しながら効率的サービス提供の矛盾ということでございますが、今回のPFIは独立採算制ではなく、市が一定の負担をするサービス購入型であり、官と民との役割を明確にした上で、一定額を市が負担する仕組みで、民間の持つノウハウや技術力を活用し、効率的なサービスを提供していきたいと思っております。

 次に、守秘義務と情報公開でございますが、原則は公開と考えております。しかし、公開できない時期や内容がございますので、御理解をお願いしたいと思います。

 また、市の方にも情報公開条例などもありますので、その判断に従っていきたいと思っております。
 また、契約の方の開示でございますが、業務範囲やリスク分担などを事細かに決めていく必要があります。複雑にはなりますが、契約締結後は公開できると思っております。

 あと、地元経済への影響でございますが、地元業者の育成や雇用の拡大等も踏まえ、検討はしていきたいと考えております。

 あと、従来の手法とPFIの財政的負担でございますが、PFIにつきましては、民間の資金、経営能力、技術的能力を活用するとともに、効率的、効果的に公共サービスができるということを感じております。


◎【田沼正輝財務部長】
公契約制度の関係でございますけれども、検討会につきましては、現在、契約担当として総合評価方式を施行しているところでありますので、できるだけ情報や課題の把握、検証、分析の上、検討をしてまいります。

 次に、労務単価につきましては、公共事業の発注者が事業費の積算に用いるための単価でありまして、雇用契約における労働者への支払い賃金を拘束するものではございませんで、賃金は事業者と労働者の間で取り決めがなされ、支払われるべきものというふうに考えております。

 それから、相談窓口の関係で御質問をいただきました。市の発注する事業で賃金の未払いが生じた場合には、発注者として契約担当課が、労働関係法規等を遵守するよう受注者を指導しております。しかし、賃金水準については事業者と労働者との間で定められるべきものでありますので、市がその相談を受けるというふうなことは難しいというふうに考えております。

 それから、最後に市税の還付金でございますけれども、先日、専決処分をいただきました。これらを踏まえますと、21年度当初予算から市税が減収になるということは見込まれるというところでございます。


◎【原島一総合政策部長】
今後の市税収入の見通しを踏まえた上で、ゆめおりプランの見直しをしたらどうかというお尋ねでございます。

 市税収入につきましては、今、財務部長からお答えしたとおり、経済状況からいたしますと、当面、厳しい状況が続くものと思っております。現在、ゆめおりプランの実施計画のローリング作業を進めているところで、この場で個別の事業をどうするという段階ではございませんが、計画の一部見直しも視野に入れております。いずれにしましても、事業の優先順位づけを行うに当たりましては、年度間のバランスや、後年度負担への影響にも配慮をいたしまして、市民ニーズの高い事業を選択していく考えでおります。今回の市民体育館の建設につきましても、市民ニーズとしては高い事業であるというふうに受けとめているところでございます。


◎【40番井上睦子議員】
それでは、最後に市長に対して、新体育館の整備について伺いたいと思います。

 手法としてのPFIは、財政削減と公益的なサービスという意味では、先ほどから述べましたように大変疑問があります。バリュー・フォー・マネーの問題についても、その効果というのは大変疑わしい。実際的な金額とは異なるという答弁もあり、これは事業手法としてはリスクが大きいのではないかと考えます。

 また、先ほどから答弁がありますように、市税収入は当面厳しい状況が続く。そして、義務的経費である扶助費等の比率も高まっている中で、事業の優先順位をどのように考えるのか。そして、新体育館の建設の事業凍結の考え方も視野に入れなければならないのではないかと私は考えますが、市長の見解をお聞きして質問を終わります。


◎【黒須隆一市長】
40番、井上睦子議員の質問にお答えいたします。

 新体育館の整備について、PFIの導入には問題があるのではないか、また、事業の優先度、そして場合によっては事業を凍結するという考え方はないのか、こういう御質問をいただきました。

 御承知のとおり、現在の市民体育館は建築後35年が経過しております。老朽化も進んでおりますし、また、耐震工事を初め改修の必要性に迫られております。また、市民のニーズにこたえていくためには、大変狭隘であります。一昨日、第63回市民体育大会の開会式が体育館で行われました。残念ながら御質問者には出席をいただけませんでしたけれども、ことしも大会には35団体、2万1,000人の皆さんが参加をされております。当然、開会式も会場立錐の余地もない、こういう状況で開催されたわけでございます。また、本年の東京都の市町村総合体育大会におきましても、八王子市が4連覇を果たした。スポーツ人口も大変多いわけですし、また、それが、競技スポーツだけではなくして、生涯スポーツにもつながっているわけですから、市民の健康ということを考えたときには、スポーツの重要性というのは御理解をいただけるんじゃないかというふうに思っております。したがって、環境を整えるということも極めて重要な課題だろうというふうに思っております。こういう状況からも、新しい体育館が必要だというふうに私は考えております。

 ただ、一方で市の財政状況は非常に厳しいわけでございまして、市の直接施行による整備は現状では難しいというふうに思っております。PFIであれば、官と民とが役割を分担し、民間の資金、経営能力、技術力を活用することで施設を建設し、市民にサービスを提供することができるというふうに考えております。ただ、日本におけるPFIはまだ歴史が浅いわけでございまして、課題もあることは先ほど御質問者からもるる例がお話しされましたけれども、十分に私どもも認識をしております。それぞれの課題に適切に対応しながら、慎重に事業を進め、市民のニーズにこたえていきたい、このように考えております。