◎井上睦子委員
生活者ネットワーク・社会民主党を代表して、2010年度八王子市一般会計及び各特別会計予算、並びに関連する諸議案に対し、意見を申し上げます。

 新年度予算は市税収入が888億円と、2009年度当初予算と比較をして42億6,000万円の減額となることに対応して、財政調整基金から59億5,000万円を取り崩し、臨時財政対策債60億円を借り入れるという極めて厳しい予算編成となりました。これまで財政再建に、市長就任以来、全庁を挙げて取り組み、市債残高を2009年度末の見込みで約777億円縮減してきたことは高く評価するものであります。2010年度も、返す以上に借りないの方針は全会計では守られていますが、一般会計では2009年度、2010年度とも、市債発行額が返済額を上回っています。これは南口再開発事業などによるものですが、その結果、一般会計の市債残高は、2009年度、2010年度、対前年度比ではそれぞれ47億円、31億円と増加をしています。財政規模の大きい一般会計での市債残高の増加、そして財政調整基金が年度末には8億円となることについて、財政再建にイエローカードが出ていると考えます。予算審議では、市税確保には全力を尽くすとしながらも、不安があるとの答弁でした。減収補てん債や底をついた基金のさらなる取り崩しという事態に至らないように、市税収入に見合う歳出、すなわち大型開発計画などの投資的経費の見直しをしっかり行うべきであります。

 新年度予算では、生活保護受給者が急増する中で、ケースワーカーなどの人員配置を求めてまいりましたが、増員がされ、自立支援の体制が強化をされたこと、また、学校教育での学校図書館充実のためのサポーターや子どもたちの悩みなどに向かうスクールソーシャルワーカーなどの配置は評価をいたします。しかし、見直すべき開発計画は進行し、新たな開発計画も出てきています。川口物流拠点構想は172.8ヘクタールの開発面積ですが、そのうち54.2ヘクタールが緑の喪失面積となります。前提となる北西部幹線のインフラ整備の事業費と完成時期についてはわからないとして明確な答弁がなかったように、事業費や資金の全体計画が明らかではありません。少子化の進行による人口減少社会は、必然と社会や経済や税収の縮小をもたらします。そして、こうした開発は、過大な市への財政負担となってまいります。市の地球温暖化対策は、自動車交通からのCO2削減をし、緑の保全によるCO2の吸収を掲げておりますけれども、この物流構想は正反対の政策で、逆行するものであります。市長提案にあったように、自然を愛する慈しみの心根を持つならば、財政と環境の破壊につながる川口物流拠点構想は撤回すべきだと言えます。

 次に、旭町、明神町地区周辺のまちづくり構想について、検討調査委託料800万円が計上されています。八王子市は地区内の居住者・事業者を訪問し、意向調査をし、そして商工会議所は3つのハード戦略と5つのソフト戦略として、その構想を提案しております。しかし、全事業費は、いや、市の負担金は明らかになっておらず、また、市財政に与える影響についても明らかにされておりません。東京都から移管をされた保健所の扱いについても不明であります。南口再開発事業が市財政を圧迫し、今日の財政運営の困難さの1つの要因となっていることを考えると、再開発手法による旭町、明神町地区周辺の開発事業は慎重でなければならないと考えます。

 また、八王子インター北地区のイオンリテールの開発について、活用方法についての調査費が310万円計上されています。一企業であるイオンでは企業誘致が困難なため、市が調査を行うとのことですが、一企業のための市費を投じることには問題があります。また、この計画によって中心市街地の活性化とは相反すると商工関係者から不安の声が上がっており、全国各地でイオン出店への反対運動が起きているように、両者の機能分担と共存が可能とは思えません。

 また、雇用情勢は依然として厳しい中で、職員定数の1,000人もの削減が提案をされています。市役所は市内最大の事業所であり、雇用創出の場でもありますが、この1,000名もの定員削減ということには大変大きな問題があります。公共サービスへのニーズが高まる中、定数削減によってより一層の非正規雇用の拡大と官製ワーキングプアを大量に生み出すことになります。また、学校開放員の業務委託化も、再雇用職員との同一価値労働、同一賃金の観点からも大きな問題があります。

 教育予算では、学校配当予算が減額される反面、子どもたちの学力向上にはつながらないと批判のある学力テストは継続をされております。厳しい生活環境にある子どもたちに対する就学援助の引き上げも見送られました。新体育館建設はPFI事業で行うということになっておりますけれども、事業費など、その手法についても、また、そのリスクについても慎重な検討がされるべきでありますけれども、行政側はその情報を全く公開しておりません。極めて問題だと思います。

 また、都立八王子小児病院の閉院に伴ってさまざまな対策が講じられてまいりました。しかし、八王子としては、当初、移転反対を掲げ、そしてやむなく移転を認めるとしても、医療水準を後退させないことが市民への約束でありました。しかし、2011年度、小児・障害メディカルセンターを開設するとしても、NICUの確保の見通しは立たず、ベッド数も減少し、子どもたちの小児医療への後退は明らかであります。

 最後に、行財政運営についての市長答弁では、議員個人についてまで市長の個人的見解を述べるなど、やや冷静さを欠いた場面があり、私は大変不愉快でありました。55万都市の市長として、常に沈着冷静で品格ある答弁を今後は期待をしたいと思います。

 以上、2010年度予算に対して反対の意見といたします。