◎【40番井上睦子議員】
それでは、生活者ネットワーク・社会民主党を代表して、2010年度八王子市一般会計及び各特別会計予算並びに関連する諸議案に対し、反対の立場から討論を行います。

 来年度の国の一般会計予算案は92.3兆円で、前年度比4.2%と、当初予算ベースで2年連続、過去最高を更新いたしました。歳出の主な項目を見ると、社会保障経費27.3兆円、これは9.8%の伸び、文教及び科学振興費は5.6兆円で、5.2%の伸びとなります。地方交付税交付金は17.5兆円で、これも5.5%と伸びており、鳩山政権の掲げる地方主権、コンクリートから人へという政策スローガンが予算へ反映される形となっています。

 ただし、一方の歳入では、国税が急速な景気後退や税制改正などを背景に大変厳しい見込みとなっており、当初予算ベースでは37.4兆円、マイナス18.8%と、1999年度のマイナス19.5%以来の大幅な落ち込みとなっています。この結果、歳入不足の大半は赤字国債に依存することとなり、国債発行額は建設国債も含めて44.3兆円と、1946年度以来、国債が国税を上回る事態となっています。

 2009年度の国債発行額も、決算ベースではこれに近い数字だともいわれております。それでも国税は政府の強気ともいえるプラスの経済見通しにより、2009年度の第二次補正予算で減額された36.9兆円をやや上回っており、景気の二番底に陥れば、さらに赤字国債の追加発行を余儀なくされるリスクを負った予算となっているということも、私は正直に申し上げたいと思います。

 こうした予算編成が八王子市の経済見通し、国の経済見通しを基準にしながら、市税収入の見通しを持っているとすれば、八王子市もまた国と同じようなリスクを抱えているということを指摘したいと思います。本市の新年度予算も、大変厳しい経済状況を反映して、市税収入が888億円と、2009年度当初予算と比較して42億6,000万円の減額となることに対応して、財政調整基金から59億5,000万円を取り崩し、臨時財政対策債60億円を借り入れるという予算編成になりました。

 これまで市債残高を縮減することに力を尽くし、2010年度も返す以上に借りないという方針は、全会計で守られてはいますが、一般会計では2009年度、2010年度とも市債発行額が返済額を上回っております。これは、既に多くの議員から指摘をされておりますが、南口再開発事業などによるものでありますけれども、一般会計の市債残高は、2009年度、2010年度の対前年度比、それぞれ47億円、31億円と増加をしてきています。財政規模の大きい一般会計での市債残高の増加や、財政調整基金が年度末に8億円となること、1人当たりの三多摩での最低の基金残高ということは、財政再建に対してのイエローカードが出ているということだと思います。

 予算審議では、市税確保に全力を尽くすとしながらも、不安があるとの答弁でありました。これは国の財政運営でも心配されることでありますけれども、同様に市も赤字債を発行し、底をついた基金のさらなる取り崩しという事態に陥らないように、市税収入に見合う歳出とすべきだと考えます。すなわち、大型開発計画などの投資的経費の見直しをしっかり行うべきであります。

 川口物流拠点構想は、172.8ヘクタールの開発面積のうち、54.2ヘクタールもの緑の部分が喪失いたします。北西部幹線のインフラ整備について、事業費と完成時期についてはわからないとして、まちづくりのメーン事業としているにもかかわらず、明確な答弁がありませんでした。事業費や資金の全体計画が明らかではありません。少子化による人口減少社会は、経済と税収の縮小をもたらし、過大な投資は財政負担となってまいります。こうした計画は中止をすべきであります。

 旭町・明神町地区のまちづくり構想についても、検討調査委託料800万円が計上されております。八王子商工会議所は、産業交流拠点として国際的なレベルのコンベンションセンターをつくるなどの構想を提案しておりますけれども、しかし、全体事業費や市負担及び市財政に与える影響については何も明らかにされておりません。構想だけがひとり歩きをしております。そして、東京都から移管をされた保健所の扱いについても不明確であります。南口再開発事業に見られるように、大規模な開発事業は今日の財政運営の困難さの一要因となっております。再開発手法による旭町・明神町の開発事業は慎重でなければなりません。

 八王子インター北地区のイオンリテールの開発についても、310万円の調査費が計上されておりますけれども、一企業のために市費を投じることは問題があります。また、この計画に対して中心市街地の活性化と相反することが商業関係者から声が出ており、全国各地でイオン出店への反対運動が起きているように、両者の機能分担と共存が可能とは思えません。

 雇用情勢は依然として厳しく、高校、大学新卒者の就職内定率は近年では大変低くなっています。市役所が市内最大の事業所で、雇用創出の場であります。公共サービスへのニーズが高まる中、市職員の削減というのは到底認められません。削減によって、一方では非正規雇用の臨時職員、嘱託職員が、この間、拡大をしてまいりました。公正な労働をきちんと確保しなければいけない行政が、官製ワーキングプアを大量に生み出すことになります。そして、正規職員と非正規職員がほぼ同様の仕事を行うにもかかわらず、賃金に大きな格差があるという問題、すなわち同一価値労働、同一賃金の点からも大きな問題があります。

 教育予算は、この10年間、一般会計に占める割合は変わらず、学校建設、学校改築などハード面に重点が置かれ、ソフト面は低い水準に据え置かれたままです。新年度予算では、マイナスシーリングによって学校配当予算が減額され、そして、就学援助の基準の引き上げも行われませんでした。

 新体育館建設はPFI事業で進められますが、総事業費の75%は起債で賄い、25%は利子の高い市中銀行から調達するとしております。しかし、PFI事業で行う市直営での建設より事業費は少なくて済むとの答弁でありました。しかし、その根拠は明らかではありません。企業の利益をもたらし、そしてリスクのために保険を掛けるなどを考えれば、本当にPFI事業の総事業費は安くて済むのか。しっかりと情報を明らかにして、議会でもきちんとした議論をできるように情報を公開すべきです。

 両者の手法のメリット、デメリットを公表し、事業費も公表するようにと求めてまいりましたけれども、事業者選定に障害が出るという理由で、私たち議会に示されているのはA4、1枚のペーパーだけであります。この事業が本当に経済的にも運営的にも大丈夫な事業なのかどうか。市はきちんと情報を公開すべきであります。

 都立小児病院の移転・統合について、八王子市は移転反対を掲げてきましたが、やむなく移転を認めることになりました。そして、そこでの市民への約束は、現行の都立小児病院にあった医療水準を後退させないということでありましたけれども、残念ながらNICUの確保の見通しは立っておりませんし、ベッド数も八王子小児医療のベッド数、それ以上のものを確保はできておりません。旧自公政権によって市民の暮らしは、雇用や労働の破壊、規制緩和や社会保障費の削減によって、貧困と格差が市民生活の中で広がっております。本市でも生活保護費が200億円になろうとしています。

 こうした中で自治体の役割は、市民福祉の向上に全力を挙げるべきです。医療や福祉については先ほど指摘をいたしました。福祉についても、保育園待機児の増加に歯どめがかかっておりません。市は、こうした市民生活の安心・安定のために、まずは全力を挙げるべきであります。

 最後に、昨年9月に施行された政治倫理条例は、親族の範囲を1親等としたために、兄が発注し、弟が受注するという構図は変わりませんでした。2009年度の黒須建設の発注額は3億円以上となっております。条例制定時に親族企業の受注にお墨つきを与えるような条例だと私たちは指摘をしてまいりましたが、まさにこの事実が証明をされました。多摩市では、2親等以内を自粛の対象とする条例が制定をされております。条例の実効性を確保し、公正・公平で市民から信頼を得られる市政確立のためには、政治倫理条例をより厳しく条例改正をする必要があるということを申し上げておきます。

 以上で2010年度予算に対する反対討論を終わります。


◎【40番井上睦子議員】
それでは、議員提出議案第10号、選択的夫婦別姓制度導入の民法改正を求める意見書について、提案説明を行います。

 明治時代になって、すべての国民が氏、姓を名乗らなければならなくなりました。1898年、明治民法の制定によって家制度が導入され、氏は家の名称となります。戸主及び家族は、皆、その家の氏を称し、その結果、夫婦同氏、夫婦同姓となりました。家の氏は変更してはならず、個人の氏は嫁入り、婿入り、養子縁組みなどによって、その属する家が変わる結果として氏も変わりました。

 家制度のもとでは、どの家に属するかによって、扶養の権利や義務、相続権などが左右されたので、氏は重要な法律上の意味があったといえます。

 1947年、日本国憲法が制定され、憲法24条は、婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならないとうたわれ、民法改正によって家制度は廃止をされました。氏は家の名称ではなく、個人の呼称になりました。婚姻は、当事者の同意とし、夫婦の姓も夫または妻の姓を選べるようになりましたが、民法750条で、夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称すると、夫婦同姓の原則は維持されてまいりました。これは家制度の名残といえます。

 2005年の調査では、夫の姓を夫婦の姓に選択する。すなわち、妻が夫の姓に変えるのは96.3%にもなっています。この背景には、家制度の名残から、夫が妻の家の嫁として夫の姓を名乗る。また、男は仕事、女は家庭という性別役割分業のもとで、仕事をする夫の姓を改めることはできないといった理由があると考えられます。夫婦の姓の選択は男女平等にはなっていません。しかし、女性の社会進出が進み、姓を変えることによって、職業生活や社会生活上の信用や実績が中断するなどの不利益が出る。また、姓名は自分らしさやアイデンティティーなのだから、姓は変えたくないという理由で、1980年代から夫婦別姓を求める声が大きくなってまいりました。

 1996年2月、法制審議会は、選択的夫婦別姓制度の導入を求める民法改正要綱を答申しました。その骨子は、婚姻のときに夫婦同姓、別姓が自由に選択できる。

 2点目に、婚姻後に別姓から同姓への変更も、同姓から別姓への変更も認めない。

 3点目に、夫婦別姓を選択した場合、婚姻の際に、子の姓を父または母の姓のどちらにするか、あらかじめ定めておく。したがって、兄弟姉妹の姓は統一をされるということになります。

 4点目に、既に婚姻している人も、法律施行後、1年以内に配偶者と共同の届け出をすれば、夫婦別姓を選択できるという内容でありました。しかし、当時の政府与党であった自民党内の意見がまとまらず、以後、十余年を経ても政府からは法律案が提出をされておりません。

 他方、2000年から各政党または当時の超党派の野党で、民法改正案がたびたび衆参両院に提出されております。2006年に内閣府が行った世論調査では、選択的夫婦別姓制度について、反対は35%、賛成は36.6%と拮抗をしています。年齢別に見ると、反対の割合が高いのは60代、70代、賛成の割合が高いのは20代から50代となっています。年齢別、性別に見ると、20代から50代の男女ともに賛成が反対を上回っています。この結果から、若い世代は選択的夫婦別姓に賛成が多いということが明らかであります。

 昨年8月、国連の女性差別撤廃委員会は日本政府に対して、民法における夫婦の姓の選択に関する差別的な法規定が撤廃されていないことについて懸念を有するとして、選択的夫婦別姓制度を採用するよう勧告をしています。これまで女性差別撤廃委員会は繰り返し勧告をしてまいりましたが、日本政府が世論調査を理由に法改正をしてこなかったことについて、女子差別撤廃条約の批准による締約国の義務は、世論調査の結果にのみ依存するのではなく、条約の規定に沿うよう、国内法を整備するという義務があると、強く指摘をしています。

 イギリス、アメリカ、オーストラリア、ドイツ、フランス、北欧諸国などは、夫婦同姓、夫婦別姓、夫の姓と妻の姓を併記する結合姓の中から、個人の選択に任せるようになっています。また、夫婦別姓を認めていない国として、日本とともに名前が挙がっていたトルコ、タイ、インドのうち、トルコは2001年に法改正し、翌年の1月から別姓が可能となりました。また、タイは2005年に姓名法を改正し、選択的夫婦別姓を認めました。インドは法律で同姓を強制していないため、今や、夫婦同姓を法律で強制しているのは日本ぐらいだといわれています。

 このように、世界各国は個人の尊重と、男女平等の方向に沿った形で、選択の自由を広げる制度となっています。3月3日、市民団体主催で、民法改正を求める集会が行われ、各党からのあいさつがありました。民主党の小宮山洋子衆議院議員は、民法改正は議員になった目的の1つ、少数だから選べなくてよいということではなく、足を踏まれて痛い側、困っている人のために政治があると、長年の悲願であることを披露しました。公明党の浜四津参議院議員は、公明党はかねてより民法改正を主張してきた。選択的夫婦別姓は真の男女平等に不可欠で、多様な生き方ができる社会が豊かな社会だ。公明党は全力を挙げて法務大臣を後押しすると、政府に協力する考えを明らかにしました。

 共産党の仁比参議院議員は、夫婦同姓を強制している我が国の民法下では、通称使用が拡大しても、解決できない精神的苦痛と、具体的な不利益が多くの場合、女性の側に見られていて、若い世代のカップルが法律婚をちゅうちょする要因になっているという現実があるという訴えがありました。

 もちろん、社民党からも、民法改正に向けて今がチャンスと、全力で頑張る決意を表明いたしました。

 参加した市民も、各政党も、多様な生き方や家族のあり方を認めるために、民法改正に積極的な法務大臣のもとで、今こそ選択的夫婦別姓を実現しようとの思いに満ちた集会であったと伝えられております。

 選択的であっても、家族の崩壊を招くと反対する意見がありますが、今日、既に共働き夫婦が過半数を超え、夫婦と子の世帯は、2005年の国勢調査では29.9%に下がり、離婚や再婚もふえて、多様な家族が存在をしています。職業上の理由や、個人の生き方として自分の生来の姓を名乗り続けたい。別姓によって対等な夫婦関係を築きたいと思う人々の願いにこたえるために、本意見書は、選択的夫婦別姓制度導入のための民法改正を求めるものであります。

 どうぞ議員各位の御賛同をお願いいたしまして、提案説明を終わります。


◎【40番井上睦子議員】
たくさんの質問があったようですが、集約すると、この夫婦別姓制度というのは、子どもたちにどのような影響を与えるか、そして日本の文化の解体になりはしないか、あるいは、今、家族のきずなが壊れていっているのに、さらにそれを加速することになりはしないかというような内容だったと思います。

 まず、戦後の日本人の変化についてお話になりました。私もこの夫婦同姓になってから、明治時代以降100年間、家族のあり方というのは変わってきたと思います。それは特に高度成長期以降、3世代、4世代が同居できないというのは、農村の長男、次男、そういう人たちが都会に出てきて働きながら核家族をつくっていった。すなわち、夫婦と子どもという核家族ですね。これを近代家族というそうですけれども、そういった流れがありました。したがって、これは家族や日本人の意識が変わったのではなく、経済の仕組みや働き方そのものが変わったために、家族の形態も大きく変わってきたのだと思います。

 夫婦同姓が現在は法律で決まっております。夫婦別姓が選択できない状況の中でも、徐々に家族の形態は異なってきており、離婚率も増加をしており、そして、家族間のきずなが弱まっているということは、一方であるだろうと思います。したがって、別姓を導入していない現在でも、家族は多様化をしている。御質問者の言葉で言えば、きずなが崩れてきている、なくなってきているという現実があるのではないかと思います。したがって、夫婦別姓を導入したからといって、こうした家族関係というのが急激に悪化をする材料には決してならない。加速をするという状況にもならないと思います。

 私は社民党ですけれども、社民党の福島瑞穂党首は事実婚です。子どももおりまして、もう二十を過ぎました。これは「娘たちへ」という本の中で、このように書いてあります。

 結婚届がなくても子どもは育つ。私は結婚届を出さずに娘を産んだ。もちろん、後悔はしていない。ただ、当時、おそれたのは、娘に迷惑をかけること。結婚届を出さない事実婚も、夫婦別姓も、当時は意識して選んだことだった。真新しい洋服のように、正直少し気負って着ていた。20年以上たって、事実婚も夫婦別姓も着古した洋服のように体になじみ、説明の必要もなく、当たり前のこととなった。

 どうしてママは福島瑞穂で、パパと姓が違うの。娘にそう聞かれたのは、多分、小学校の高学年のときだったろう。ママは産まれたときには福島瑞穂で、パパに会ったときも福島瑞穂で、ママがパパと同じ名前になることはしっくりこなかったのよ、私はそう答えたように思う。そうだよねというのが娘の反応だった。

 中学生のとき、娘が学校から帰ってきて、こう報告した。担任の先生に、どうして親と姓が違うのと聞かれたんだ。両親は結婚届を出していないので、私は婚外子ですと答えておいたよ。まあ、そこまで説明できればいいや。姓を変えなかったのは、そうしたかったからとしか言いようがない。形にとらわれたくなかったのかもしれないし、形式よりも愛と思ったのかもしれない。愛情がなくなって関係が壊れたとき、夫婦同姓という婚姻届を出して、国家があんたたち夫婦と言ってくれることにどんな意味があるのかと思った。形式で保護されない分、実質しか頼るものがないから、実はお互いの関係を大事にするのではないかとも思った。

 結局、結婚届を出さないまま普通に娘を育てることにした。不思議なことに、娘を婚外子で育てても、人から迫害されたり、いじめられたりということはなかった。そして、だれからも問い詰められなかったというふうにあります。

 福島さんの場合は、夫婦別姓制度が導入されていないので、産まれたときからの姓をそのまま使用するということで事実婚を選んで、子どもも産んで、今、二十を過ぎたお嬢さんがおりますけれども、このような家族関係を築いて、家族が壊れているわけではなく、家族関係はしっかりときずなで結ばれて、大変お互いに尊敬し合ったいい家族だというふうに思っております。

 ですから、夫婦別姓という制度が導入されたからといって、御質問者が心配するような事態というのは起こらないというふうに思います。そして、加速することもないと思います。家族のきずなが薄れていくこと、そして、今、家族が危機に面しているさまざまな問題は、こうした制度にあるのではなくて、私たちの、例えば福祉とか、教育とか、経済とか、さまざまいろんなものが絡み合ってそういう状態が起きているのだというふうに思います。事実を直視して、ただ単に家族を法律や形で縛るということこそが私は問題なのだというふうに思います。

 国連の差別撤廃委員会について、わからないということがありました。1985年に日本は差別撤廃条約を批准しております。その批准をした各国は、その条約の精神に基づいて国内法を整備しなさいというのが国連の考え方、そして各国との合意です。そのために、日本は批准をするために、家庭科の男女共修、それから国籍法の改正をいたしました。今までは子どもたちは、外国人と結婚した場合、85年以前は、父親の国籍を取ることしかできませんでした。母親が日本人であっても、日本の国籍にはならなかったわけです。これが男女不平等だということで、国籍法を改正して、父親、母親、どちらかの国籍を選択できるようになりました。

 もう1つは、労働法の改正です。雇用機会均等法ができたのを御存じだというふうに思いますが、労働の分野での男女平等を実現するために雇用機会均等法が制定されました。女子差別撤廃条約を署名し、批准するためには、国内法の法整備が必要である。そして、批准をした後には、日本の国が男女平等に向かってどのように取り組みを進めているかということを、これは内閣府が国連に対して報告をします。その報告に対して、女子差別撤廃委員会、これは国連にある人権の委員会ですけれども、そこが各国に対して、もう少しこのようにしなさいという勧告を出しています。去年出たのは6回目ですけれども、たびたびそういうことが指摘をされています。そういった指摘に従って各国は法を整備しているという状況があります。

 それから、日本の文化の解体ということですけれども、夫婦同姓というのは文化ではありません。制度です。これを法律で変えれば、別姓もできるようになるわけですから、これは制度です。人々がどのように生きるのか。結婚の形態、どのような姓を名乗るのかというのは、個人の自由というか選択というのが保障されて当然だというふうに思います。

 法律は、人々の生き方を文化とか伝統とかということで縛ってはいけなくて、どのように生きようがいい。その幅を保障する。だから、生き方には中立的な制度でなくてはいけないというふうに思います。明治民法では家制度があって、家が集団だったわけでありますけれども、1947年以降、日本国憲法の中で、個人の自由、そして婚姻においてはお互いの男女平等ということが保障されたわけですから、それに基づいて、夫婦の姓というものも変えなければならない。少数であってもそういう声があるわけですから、そのことはきちんと保障されなければならないと思います。

 どのくらいの人々がそれを望んでいるのかということがありましたが、正確な調査はわかりませんけれども、多分10%未満、ある調査によれば7.7%というような数字が出ておりましたけれども、多くはないというふうに思います。それはそれでもいいと思います。少なくとも、やっぱり夫婦同姓であって、生きがたさを感じていて、別姓で名乗りたいという人々がいれば、それはそれをきちんと保障するのが法律の役割だというふうに思います。

 それで、この意見書の中で引用した世論調査でありますけれども、2006年に内閣府が家族制度についての調査をやった、選択的夫婦別姓制度についてどのように思うかということをやった調査結果です。だから、これは内閣府の調査です。詳しくお示しをいたしますと、どのくらいの人たちがということですが、アンケートの総数は2,786人です。それで、60歳から69歳が594人、70歳以上が431人で、60代、70代で3割強を占めています。20代、30代、40代、50代で残りの数です。

 60代から70代が夫婦別姓には反対ということの方が、例えば60から69歳の年代で反対が47.3%、賛成が31.0%、70歳以上では反対が58.2%、賛成が20.4%というふうに、3割強の人たちが、高い年齢の人たちなわけですけれども、これが圧倒的に反対だということです。

 20代から29歳の年代、これは225人の調査ですけれども、44.4%が賛成で、21.3%が反対です。30代は42.3%が賛成で、18.8%が反対です。40代は42.3%が賛成で、22.2%が反対です。50代は41.4%が賛成で、33.1%が反対という結果になっておりまして、若い世代が賛成が多いという結果になっているというふうに思います。

 まだほかに補足があれば、2回目の質疑で御質疑いただきたいと思います。  以上で1回目の答弁を終わります。


◎【40番井上睦子議員】
御質問者にわかっていただきたいのは、希望者が夫婦別姓を選択するということで、逆に、すべての人に夫婦別姓を強制するという、そういう内容ではないです。先ほど7.7%と申し上げたのは、希望者が7.7%だという数字を私は読んだことがあるというふうに申し上げました。

 それから、夫婦別姓をしたい人たちは、自分たちの都合だけで言っているんじゃないか、子どものことを考えていないんじゃないかというふうにお話になりますけれども、子どもたちも、制度として夫婦別姓というものがあって、それは両親の考え方によって、うちは父親と母親が異なる姓を持つのだと、子どもはどちらかの姓になるのだという制度があるというふうに理解をすれば、おかしいだとか、そして悩みだとか、そういうことは考えないんじゃないかと思います。今の段階では制度がないので、母親と父親の姓が違って、自分の姓も違うと、それは家族として、例えば離婚をした家族なのか、あるいはおっしゃったように同棲の家族なのかというような、ある意味では社会的な厳しい目があるから、思春期の子どもたちが悩むのかもしれません。しかし、国が制度として夫婦別姓をきちんと認めているならば、それは家族のあり方としての1つの形態なのだということがわかれば、子どもたちも安心するのではないかというふうに思います。

 それから、例えば、中国とか台湾とか、韓国もそうだというふうに思いますけれども、夫婦別姓ですね。父親と母親の姓は違うわけです。子どもは大体多くは父親の姓を名乗るみたいですけれども、今は社会がグローバル化していますから、例えば、日本の保育園の中に外国人の子どもたちもいて、お母さんと子どもの名前が違うということも、社会のあり方としてみんなは理解をしているというふうに思います。そういうふうに認知をするのではないかと考えています。

 私は今、民法750条の夫婦別姓導入についての改正についてお話をしています。これは家族の保護をしているのではなくて、家族の氏について、夫婦がどのように選べるかという、このことを拡大しようという法律の内容であって、家族の保護について今議論をしているわけではないので、その点については、どのように答えていいか、わかりません。意見書の提案の趣旨から外れていくと思いますので、その点はまた別の機会に御質問をいただければというふうに思います。

 家系の、例えばどんどん夫婦別姓をやっていけば、2代、3代続いた中で、お墓の継承という問題がありました。お墓の継承は、今、民法上は、その氏を名乗る人が継承していくのだというふうに思いますが、多くは男性がそれを担ってきました。女性は、何代も何代も、自分のファミリーネームというのはどんどんなくなっていったという経過もあるということも御理解をいただきたいというふうに思います。


◎【40番井上睦子議員】
議員提出議案第11号、永住外国人の地方参政権の確立に関する意見書について提案説明を行います。

 日本には永住者91万人、非永住者130万人の計221万人の外国籍の人々が暮らしています。非永住者は3年以内の在留期間を与えられ、定期的に在留状況の審査を受けて在留する外国人です。永住者のうち特別永住者は42万人で、植民地とされた朝鮮半島出身者と、その子孫である在日コリアンの人々が41万6,000人と大部分を占めています。  1990年、在日コリアンが地方参政権を求めて大阪地裁に提訴し、それに対して、1995年、最高裁は請求は棄却しましたが、永住者等であって、その居住する区域の地方公共団体と特段に密接な関係を持つに至ったと認められる者について、法律をもって地方公共団体の長、その議会の議員等に対する選挙権を付与する措置を講ずることは憲法上禁止されているものではない。このような措置を講ずるか否かは、専ら国の立法政策にかかわる事項であると指摘をしています。

 すなわち、地方参政権については、国籍を絶対の根拠とするのではなく、憲法第8章の地方自治に関する規定によって、その住民性を根拠に付与しても可能だとして、住民の論理が認められたのです。国籍だけを基準としてきたそれまでの解釈から一歩広げ、永住外国人等の住民に付与しても憲法上禁止されていないという画期的な判決が出されたのです。

 この判決を受けて、1998年以来、各政党から今日までに14本の永住外国人地方参政権付与の法案が提出されていますが、いずれも解散により廃案等となっています。

 外国人参政権について、OECD加盟30ヵ国とロシアの状況は、国政選挙で選挙権を認めているのはニュージーランド、アイルランド、オーストラリア、ポルトガル、イギリスのわずか5ヵ国ですが、地方選挙で参政権を全く認めていないのは日本だけです。EUは1992年に、マーストリヒト条約でEU市民権を確立し、加盟国27ヵ国のいずれに居住しても加盟国市民は地方参政権を行使できるようになりました。

 また、デンマーク、フィンランド、オランダ、スウェーデンなど14ヵ国は、EU市民に限らず、居住または永住権取得を条件として地方参政権を付与しているので、日本人も投票できます。韓国は2005年に法改正を行い、2006年の統一地方選挙では、永住日本人も投票をいたしました。

 このように、先進国といわれる国々では、永住あるいは定住外国人への地方参政権の付与が進んでいます。日本では、海外に生活する日本人には全く選挙の投票ができませんでしたが、2000年の選挙から国政選挙だけ在外投票が可能となりました。しかし、地方自治体の長や議員の選挙はできません。在外邦人は約100万人ですが、この人々は日本の国民であるけれども、住民ではないからです。参政権は、国籍に基づく国政参政権と、居住に基づく地方参政権に分かれているのです。韓国やEU諸国のように、在日外国人は国民ではないけれども、住民ではあるので、地方参政権を認めることは可能といえます。これが1995年の最高裁判決の趣旨といえます。

 永住する外国人は、日本で生活しながら地域住民として地域社会に貢献をしている納税者でもあります。市民の暮らしにかかわる水道料金や保育料などの公共料金や税の決定、まちづくりなどの方向を決めるのが政治ですが、自分の住んでいるまちをどうするかという政治への発言権を永住外国人の人々は有していません。日本は国際人権規約の内外国人平等の精神を受け入れています。ぜひとも永住外国人の地方参政権を確立すべきです。

 日本の国立大学は、1982年から外国人の教員を採用し、全世界の有能な研究者たちが日本の国立大学の資質を向上させ、日本の国際化を推進した実績は大きいといわれています。このように地方参政権の付与は多様な価値観を持つ外国人との共存・共生をはぐくみ、懐の深い社会へと大きく変わる可能性を持っています。中曽根康弘元首相は、ことしの1月27日付の朝日新聞で、外国人参政権に賛成をし、大局から見て日本の前途を開拓する立場で進まなければ政治家の器量が問われると発言をしています。同趣旨の意見書は、本市議会で1996年第1回定例会で全会一致で可決されています。ぜひ議員各位の御賛同をお願いして、提案説明を終わります。