◎【40番井上睦子議員】
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それでは、生活者ネットワーク・社会民主党を代表して、2010年度八王子市一般会計及び各特別会計予算並びに関連する諸議案に対し、反対の立場から討論を行います。
来年度の国の一般会計予算案は92.3兆円で、前年度比4.2%と、当初予算ベースで2年連続、過去最高を更新いたしました。歳出の主な項目を見ると、社会保障経費27.3兆円、これは9.8%の伸び、文教及び科学振興費は5.6兆円で、5.2%の伸びとなります。地方交付税交付金は17.5兆円で、これも5.5%と伸びており、鳩山政権の掲げる地方主権、コンクリートから人へという政策スローガンが予算へ反映される形となっています。
ただし、一方の歳入では、国税が急速な景気後退や税制改正などを背景に大変厳しい見込みとなっており、当初予算ベースでは37.4兆円、マイナス18.8%と、1999年度のマイナス19.5%以来の大幅な落ち込みとなっています。この結果、歳入不足の大半は赤字国債に依存することとなり、国債発行額は建設国債も含めて44.3兆円と、1946年度以来、国債が国税を上回る事態となっています。
2009年度の国債発行額も、決算ベースではこれに近い数字だともいわれております。それでも国税は政府の強気ともいえるプラスの経済見通しにより、2009年度の第二次補正予算で減額された36.9兆円をやや上回っており、景気の二番底に陥れば、さらに赤字国債の追加発行を余儀なくされるリスクを負った予算となっているということも、私は正直に申し上げたいと思います。
こうした予算編成が八王子市の経済見通し、国の経済見通しを基準にしながら、市税収入の見通しを持っているとすれば、八王子市もまた国と同じようなリスクを抱えているということを指摘したいと思います。本市の新年度予算も、大変厳しい経済状況を反映して、市税収入が888億円と、2009年度当初予算と比較して42億6,000万円の減額となることに対応して、財政調整基金から59億5,000万円を取り崩し、臨時財政対策債60億円を借り入れるという予算編成になりました。
これまで市債残高を縮減することに力を尽くし、2010年度も返す以上に借りないという方針は、全会計で守られてはいますが、一般会計では2009年度、2010年度とも市債発行額が返済額を上回っております。これは、既に多くの議員から指摘をされておりますが、南口再開発事業などによるものでありますけれども、一般会計の市債残高は、2009年度、2010年度の対前年度比、それぞれ47億円、31億円と増加をしてきています。財政規模の大きい一般会計での市債残高の増加や、財政調整基金が年度末に8億円となること、1人当たりの三多摩での最低の基金残高ということは、財政再建に対してのイエローカードが出ているということだと思います。
予算審議では、市税確保に全力を尽くすとしながらも、不安があるとの答弁でありました。これは国の財政運営でも心配されることでありますけれども、同様に市も赤字債を発行し、底をついた基金のさらなる取り崩しという事態に陥らないように、市税収入に見合う歳出とすべきだと考えます。すなわち、大型開発計画などの投資的経費の見直しをしっかり行うべきであります。
川口物流拠点構想は、172.8ヘクタールの開発面積のうち、54.2ヘクタールもの緑の部分が喪失いたします。北西部幹線のインフラ整備について、事業費と完成時期についてはわからないとして、まちづくりのメーン事業としているにもかかわらず、明確な答弁がありませんでした。事業費や資金の全体計画が明らかではありません。少子化による人口減少社会は、経済と税収の縮小をもたらし、過大な投資は財政負担となってまいります。こうした計画は中止をすべきであります。
旭町・明神町地区のまちづくり構想についても、検討調査委託料800万円が計上されております。八王子商工会議所は、産業交流拠点として国際的なレベルのコンベンションセンターをつくるなどの構想を提案しておりますけれども、しかし、全体事業費や市負担及び市財政に与える影響については何も明らかにされておりません。構想だけがひとり歩きをしております。そして、東京都から移管をされた保健所の扱いについても不明確であります。南口再開発事業に見られるように、大規模な開発事業は今日の財政運営の困難さの一要因となっております。再開発手法による旭町・明神町の開発事業は慎重でなければなりません。
八王子インター北地区のイオンリテールの開発についても、310万円の調査費が計上されておりますけれども、一企業のために市費を投じることは問題があります。また、この計画に対して中心市街地の活性化と相反することが商業関係者から声が出ており、全国各地でイオン出店への反対運動が起きているように、両者の機能分担と共存が可能とは思えません。
雇用情勢は依然として厳しく、高校、大学新卒者の就職内定率は近年では大変低くなっています。市役所が市内最大の事業所で、雇用創出の場であります。公共サービスへのニーズが高まる中、市職員の削減というのは到底認められません。削減によって、一方では非正規雇用の臨時職員、嘱託職員が、この間、拡大をしてまいりました。公正な労働をきちんと確保しなければいけない行政が、官製ワーキングプアを大量に生み出すことになります。そして、正規職員と非正規職員がほぼ同様の仕事を行うにもかかわらず、賃金に大きな格差があるという問題、すなわち同一価値労働、同一賃金の点からも大きな問題があります。
教育予算は、この10年間、一般会計に占める割合は変わらず、学校建設、学校改築などハード面に重点が置かれ、ソフト面は低い水準に据え置かれたままです。新年度予算では、マイナスシーリングによって学校配当予算が減額され、そして、就学援助の基準の引き上げも行われませんでした。
新体育館建設はPFI事業で進められますが、総事業費の75%は起債で賄い、25%は利子の高い市中銀行から調達するとしております。しかし、PFI事業で行う市直営での建設より事業費は少なくて済むとの答弁でありました。しかし、その根拠は明らかではありません。企業の利益をもたらし、そしてリスクのために保険を掛けるなどを考えれば、本当にPFI事業の総事業費は安くて済むのか。しっかりと情報を明らかにして、議会でもきちんとした議論をできるように情報を公開すべきです。
両者の手法のメリット、デメリットを公表し、事業費も公表するようにと求めてまいりましたけれども、事業者選定に障害が出るという理由で、私たち議会に示されているのはA4、1枚のペーパーだけであります。この事業が本当に経済的にも運営的にも大丈夫な事業なのかどうか。市はきちんと情報を公開すべきであります。
都立小児病院の移転・統合について、八王子市は移転反対を掲げてきましたが、やむなく移転を認めることになりました。そして、そこでの市民への約束は、現行の都立小児病院にあった医療水準を後退させないということでありましたけれども、残念ながらNICUの確保の見通しは立っておりませんし、ベッド数も八王子小児医療のベッド数、それ以上のものを確保はできておりません。旧自公政権によって市民の暮らしは、雇用や労働の破壊、規制緩和や社会保障費の削減によって、貧困と格差が市民生活の中で広がっております。本市でも生活保護費が200億円になろうとしています。
こうした中で自治体の役割は、市民福祉の向上に全力を挙げるべきです。医療や福祉については先ほど指摘をいたしました。福祉についても、保育園待機児の増加に歯どめがかかっておりません。市は、こうした市民生活の安心・安定のために、まずは全力を挙げるべきであります。
最後に、昨年9月に施行された政治倫理条例は、親族の範囲を1親等としたために、兄が発注し、弟が受注するという構図は変わりませんでした。2009年度の黒須建設の発注額は3億円以上となっております。条例制定時に親族企業の受注にお墨つきを与えるような条例だと私たちは指摘をしてまいりましたが、まさにこの事実が証明をされました。多摩市では、2親等以内を自粛の対象とする条例が制定をされております。条例の実効性を確保し、公正・公平で市民から信頼を得られる市政確立のためには、政治倫理条例をより厳しく条例改正をする必要があるということを申し上げておきます。
以上で2010年度予算に対する反対討論を終わります。
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