共通番号制制度は国民監視の制度
 「知る権利」を侵害する特定秘密保護法
 「消費税増収分は社会保障の充実に」はごまかし
 東京都の労働行政―後退させてはならない
 女性の生き方を差別する寡婦控除
 子どもが、お金がないことでつらい思いをすることがない社会に
 学習会報告 立憲主義・平和主義を否定する自民党改憲案
 市民・自治体の平和力をUPして9条を実現しよう
 井上むつ子市政報告 2011年1月1日
 菅政権は決断せよ!−朝鮮高校の無償化適用―
 「障害者自立支援法」廃止から「障害者総合福祉法」の制定へ
         私たち抜きに、私たちのことを決めるな!
 八王子市議会「選択的夫婦別姓制度導入を求める意見書」採択
 沖縄 基地押しつけの歴史に終わりを
 いのちを大切にする政治−政権交代の中身が問おう
 公正な市政のために−八王子市政治倫理条例の制定を目指す
 若い世代が市民団体をつないで 八王子平和映画祭
 「憲法改悪・格差社会にSTOP!」に拡がった支持―市議選を終えて
 子育て支援は前進−保育園の待機児解消は課題
 変えナキャ 議会  議会改革をすすめます
 定率減税の廃止でさらに増税−弱いものに負担を強いる増税策
 八王子城跡・御主殿の滝涸れ問題を追求−
     市長は圏央道トンネル工事が原因と明言
 第4回定例議会 11月30日〜12月15日
 高雄市を訪問  2006.10.30〜11.2
 もういい!2度目の東京オリンピック
 韓国挺身隊対策協議会を訪問して
 相次ぐ米兵による事件事故―不平等な日米地位協定
 光復60周年の韓国を訪ねて
 ―小泉構造改革と自治体― 貧困化する市民生活 悪循環の市財政
 「改憲国会にさせないー行動のうねりを」 1.21院内集会
 憲法24条の改悪にストップを
 年金問題への怒りと平和の選択
 子ども達が大切にされる教育を
 三位一体改革は自治体への赤字転嫁
 富士見町住民から出された2つの請願
 議会改革を進めています
 佐賀市・熊本市を視察しました
 憲法勉強会 「憲法のグローバル化を」報告
 ごみの有料化についてご意見を
 厳しい市民生活を福祉・教育予算の削減が追い討ち
 上川町に疎開していた旧相模海軍工廠の歴史と安全性
 憲法の命運を決する総選挙
 子どもの人権を考慮しない特別支援教育にかかわる実態調査
 衆議院憲法調査会 傍聴記
 正義なきアメリカのイラク攻撃に反対します
 談合事件を契機に入札契約制度の改善を
 まちづくりは市民参加で、市は責任ある判断を
 競争によって学校間格差を生む学校選択制
 表現の自由の規制を危惧
 住基ネット・プライバシー侵害が大きい
 障がい者が地域で暮らすことのできる制度に
 介護保険料の引き上げは市民の同意を
 井上むつ子の市政報告
 戦争にNO!ピースウオーク始めてを
 介護保険をより使いやすく、安心して老いを過ごすために
 情報公開条例が改正されました
 女性参画推進要綱ができました
 歴史の事実を学び、近隣の国々と共生できる歴史教科書の採択を
 外郭団体を厳しくチェックしてきました
 「八王子市高齢者介護基本条例」直接請求運動をふりかえって


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井上むつこ活動報告・2011年04月11日号


井上むつこ活動報告・2011年02月20日号


井上むつこ活動報告・2007年04月04日号


井上むつこ活動報告・2007年01月01日号


井上むつこ活動報告・2003年10月24日号
1面・4面見開き


井上むつこ活動報告・2003年4月14日号
1面・4面見開き


「憲法」を愛する女性ネット 2014年7月11日掲載    

●共通番号制度は国民監視の制度
全ての国民に強制的に12桁の番号をつける共通番号法が、2013年賛成多数で成立した。共通番号の使用は現在のところ、社会保障・税・災害対策の3分野に限られているが、3年後には金融機関など民間利用への拡大も含めた見直しの予定である。自治体では2016年1月からの開始にむけて、システム改修費などが予算化されており、人口56万人の八王子市では総額16億5千万円にもなる。

国がマイナンバーと呼ぶ共通番号は、1970年代国民総背番号制としてプライバシー侵害と管理社会への不安から強い反対運動がおきた制度と何ら変わらない。共通番号で紐づけにすれば個人情報の収集と管理・利用が可能になり、プライバシーは丸裸になる。すでに導入されている韓国や米国では漏洩やなりすましが横行し社会問題化しており、英国は監視社会の反省から「市民的自由の回復」のために廃止している。

今年3月に公布された施行令では、例外規定として共通番号を警察や公安にも情報提供できるとした。裁判所の令状も第3者機関のチェックや、むろん本人同意・開示もなく、捜査機関は共通番号を入手利用できるのである。どのように利用するかは、秘密保護法を根拠に秘密とできる。上智大学の田島泰彦教授は「共通番号制度は秘密保護法と連動して国民を管理するための制度。治安維持への活用にも道を開いた」と指摘する。

解釈改憲で「戦争のできる国」へとひた走る自公政権は、自治体に国民監視のシステムを莫大な予算を投じて作らせている。引き続きこの危険性を議会で追及し、自治体として可能な歯止めをかけたいと考えてしている。     (世話人 井上睦子)    



  2013年12月20日    

●「知る権利」を侵害する特定秘密保護法
衆参両院の国家安全保障特別委員会では、強行採決が繰り返され、12月6日、大多数の国民が反対する中、参議院本会議で特定秘密保護法が自公与党等の多数の賛成で成立した。成立後の世論調査(共同通信)では、修正・反対が合わせて82.3%、賛成はわずか9.4%にしかすぎず、内閣支持率は47.6%と10%急落した。

この特定秘密保護法に対するパブリックコメントは9万件寄せられ、そのうち77%が反対の意見であったにも関わらず、審議時間は衆議院で約46時間、参議院では約23時間とわずかな審議時間でしかなかった。国民の声を無視した

国会審議・採決のあり様は、人権と民主主義を軽んじる法案の本質を表している。

 日本ペンクラブ(浅田次郎会長)は、法案が閣議決定された10月25日、1.「特定秘密」に指定できる情報の範囲が過度に後半であること。2.市民の知る権利、取材・報道・調査・研究の自由が侵害されること。3.行政情報の情報公開の流れに逆行すること。4.「適正評価制度」がプライバシー侵害であること。5.このような法律を新たにつくる立法事実がないことを理由として抗議声明を出している。また、12月2日、国連のピレイ人権高等弁務官は「秘密の要件が明確でない。政府がどんな不都合な情報も秘密に指定できてしまう」「日本の憲法が保障する情報へのアクセスと表現の自由を担保する条項を設けないまま、急いで法案を成立させないよう政府と議会に呼びかけたい」と懸念を表明した。

国際機関からも、特定秘密の範囲が広範で定義が不明確であることが指摘されている。特定秘密は@防衛、A外交、B安全脅威活動の防止、Cテロ活動防止の4分野を別表で表し、担当大臣が指定することになっている。

2009年に情報公開された文書では、航空自衛隊がイラク派遣時、米軍を運輸していた事実が明らかになり憲法違反の実態が明らかになった。法が施行された場合、主権者である国民が知っていなければならない事実が「特定秘密」とされ、主権者に永久に知らされないままになる危険がある。自民党石破幹事長の「デモはテロ」との発言は撤回されたものの、行政機関の恣意的な解釈と運用によって、無限に特定秘密が拡大され、政府や権力にとって不都合な情報は隠される。国民の知る権利の侵害を合法化する法律なのである。

 特定秘密を取り扱う公務員や政府の契約業者の社員も対象としている「適正評価」は、調査事項が広範でプライバシ―や思想信条を侵害することが危ぶまれている。公務員やその家族、同居人が一定の思想信条や信仰、一定の国籍を有していることで、秘密漏えいのリスクがあるとして、特定秘密の取り扱い者から除外される可能性があると日弁連は指摘している。適正評価は、周囲を巻き込んだ人権侵害を起こし、監視社会へとつながる悪法である。

 特定秘密の漏えいは、上限10年の懲役である。処罰規定は、故意の漏えいの他、過失や未遂、共謀、教唆、扇動など広範囲にわたり、広く国民に刑罰を課すことになっている。これでは、ジャーナリストや市民も刑罰の対象となり、取材活動や市民活動に萎縮をもたらすことになる。

 秘密保護法は憲法が保障する立憲主義、平和主義、民主主義を否定する稀代の悪法である。八王子市議会では、12月16日「特定秘密保護法の撤廃を求める意見書」が提案された。賛成16(民主・共産・社民・生活者ネット・市民自治の会・無所属)、反対20(自民・公明・みんな)で否決されたが、政府を監視し、粘り強く悪法の廃止にむけた活動を続けることが必要だ。



  「憲法」を愛する女性ネット  2014年3月25日発行    

●2014年度自治体予算から 「消費税増収分は社会保障の充実に」はごまかし
自治体議会では、2014年度予算を審議中だ。

八王子市は一般会計・特別会計合わせて3496億円の規模である。消費税が4月1日から3%アップの8%に引き上げられるため、予算は消費税増税の影響を大きく受けている。自治体には、消費税増収分が一定の割合で国から地方消費税として交付されるので、八王子市では約10億9千億円の増収となる。しかし、公共工事や光熱水費などに消費税がかかるので歳出の負担額は11億円。加えて、国が自治体に配分する地方交付金は地方消費税の増額分(10億9千万円)を減額し、社会保障の充実分として2億円を増額するという操作によって、合計で9億円の減額という影響が出ている。消費税増税は市民生活にも大きな負担だが、自治体にとっても負担増となっている。

 さて、「消費税引き上げによる増収分は、全て社会保障4経費(子ども・子育て、医療・介護、年金)の充実・安定化に向ける」と政府は広報している。2014年度では、3%の増税分は約5兆円。内訳は、基礎年金の国庫負担に2.95兆円、消費税引き上げに伴う経費の増(診療報酬・介護報酬等の物価上昇などの増)に0.2兆円、社会保障の充実に0.5兆円、後代への負担のつけ回しの軽減(借金の返済)に1.3兆円である。このように、市民の暮らしに直結する子育てや医療・介護などの充実には0.5兆円しか回らない。これは増収分の1割。9割の4.5兆円が年金の国庫負担や借金の返済に使われているのだ。

消費税が10%になれば、増収額は14.1兆円になる。そのうち5割以上の7.3兆円が借金返済に、社会保障の充実には増税分の2割の2.8兆円を充てる計画だ。

八王子市では、消費税増税によって市財政はマイナスの影響が出ているが、理論上10億9千万円は社会保障に使わなければならない。しかし、社会保障の充実に充てられたのは5億5千万円でしかない。残りの5億4千万円は、福祉に使われるのか、道路建設に使われるのか、明らかにしようがない。法律は消費税増税分の使途を社会保障と明記したが、実際には国も地方自治体も全額を社会保障には充当していない。

このように、消費税アップ分は社会保障目的というのは"ウソ"なのだ。

専修大学の町田俊彦さんは、「国の社会保障4経費は26.9兆円であり、消費税収と大きなスキマがある。このスキマの範囲内では、消費税を増税しても社会保障に充当して社会保障目的税化を遵守したことになる。社会保障に充当されていた赤字国債や所得税・法人税が消費税によって置き換えられ、赤字国債の減額や公共事業に充当できる。こうして消費税増税分が社会保障の充実にほとんど充当されないとしても、社会保障財源化されたことになる。国民に対するある種のごまかしである。」と指摘している。

家計から吸い上げた消費税を、借金の返済や公共事業、法人税減税の穴埋め、軍事費に回してはならない。税の使い方は民主主義の根幹だ。権力に騙されたおとなしい有権者・納税者であり続けるのは止めよう。



 女のしんぶん  2014年2月25日 発行    

●東京都の労働行政―後退させてはならない
 約420万人が暮らしている東京都の三多摩地域の労働行政は、東京都が国分寺市と八王子市に設置している労働相談情報センターが担い、労使間のあっせん、労働者や企業の相談や研修、調査など幅広い活動を行っている。近年の厳しい雇用情勢を反映して、労働相談件数は年間4062件(2012年度、八王子事務所)となっており、働く人たちの拠り所である。

しかし、東京都はこの2つの労働相談情報センターを廃止して、2018年度に立川市に新しく建設する「東京しごとセンターTAMA」に統合する計画を2011年2月に「2020年の東京」で公表した。

さらに、労働相談情報センターに付属する労政会館は市町村に移管または廃止とされている。八王子労政会館は、会議室のほかホールや体育館、談話室もあり、JRや京王線の八王子駅から至近距離にあるため、労働組合の大会や市民活動や学習の場として幅広い市民に利用されている人気の高い施設で、年間利用者は25万6千人にもなる。廃止になれば、市民の大事な集いの場がなくなることになり、労働相談情報センターの統廃合と労政会館の廃止は、東京都の労働行政の後退である。

1月27日、八王子労政会館の存続を求めるスタート集会「えっ!!八王子労政会館がなくなるの?!」が開催され、多くの市民が参加した。

まず、労働行政に詳しく、『ブラック企業―日本を食いつぶす妖怪』で第13回大佛次郎論壇賞を受賞したNPO法人POSSE代表の今野晴貴さんから基調講演があった。

今野さんは、POSSEで年間千件近くの労働相談を受ける中で、新興産業のIT企業、小売業、飲食チェーン店などで、正社員として採用されても異常な長時間労働を課され、パワーハラスメントで人格攻撃を受け、鬱など心の病を発症して退職や過労死に追いやられている若者たちとブラック企業の実態を明らかにしてきた。労働者を大切にしないブラック企業は、医療費(20〜30代の精神疾患の医療費は増加)や社会保障費を増大させ、少子化の原因にもなっている。厚生労働省は、労働基準監督署による4000事業所への臨検、夜間の労働相談窓口の設置など、ブラック企業対策に乗り出しているが、労働基準監督署が行うのはあくまでの事業主への指導であり、被害者の民事的権利への救済には限界がある。行政の労働相談機能は労働契約全体への相談が可能であり、地域の労働団体の情報も把握している。今野さんは、ブラック企業対策を国が重点化している時に、東京都は労働相談窓口を縮小するのではなく強化が必要であると強調した。

 続いて、市民からのリレートークでは、労働相談をした若者から、労働組合を紹介されて解決につながったこと、スポーツ団体や労働組合、脱原発の市民グループなどからも労政会館は活動に必要不可欠な施設で、新たな出会いの場にもなっていることが訴えられた。

 I女性会議八王子支部も八王子労政会館の存続を求める会の呼びかけ団体となって、署名活動に取り組んでいる。舛添都知事が誕生したが、同会の公開質問状に対して、自由記述欄があるにもかかわらず「各設問の選択肢のみでは私の労働行政、雇用対策の真意を伝えることは困難。よって回答は控える」という内容であった。存続とともに、都知事に対してブラック企業対策や労働行政の強化についても求めていかなければと考えている。



 女のしんぶん   2013年10月10日発行    

●女性の生き方を差別する寡婦控除
 寡婦控除は、婚姻歴のある死別や離別の者にしか適用されず、「非婚の母」、「非婚の父」には適用されない。そのために、所得税、住民税、保育料、公営住宅入居資格や家賃について「非婚のひとり親家庭」は不利益を受けている。

 2009年、寡婦控除制度が非婚の母に適用されないのは差別であると、八王子市民等3人は日弁連に人権救済の申し立てを行った。本年1月、日弁連は「非婚の母を合理的な理由もなく差別するものであり、憲法第14条に違反する。みなし控除を適用し、非婚の母子世帯の経済的苦境を救済するよう求める」と、国や東京都、八王子市、新宿区、那覇市に要望書を提出している。

八王子市は、当事者や日弁連からの要望を受け、非婚のひとり親家庭の自立支援と子どもの置かれた経済的に不利益な状況の改善を図るとして、「非婚のひとり親」に対して、保育料、幼稚園通園補助金、市営住宅家賃について、寡婦(夫)控徐のみなし適用実施にふみきった。東京都の自治体では初めてである。当事者の訴えに真摯に向き合った職員の努力を評価する声が寄せられている。

八王子市の試算では、保育園に通う2歳の子どもと市営住宅に暮らしている年収201万円のひとり親家庭の場合、婚姻歴の有無によって年間で20.9万円もの負担差となる。

自治体でのみなし適用は第一歩だが、根本的な解決は税法を改正し、寡婦(寡夫)控徐を非婚 のひとり親にも適用することが必要である。八王子市議会は「寡婦控除をすべてのひとり親家庭まで拡大することを求める意見書」を自民党以外の賛成多数で可決し国へ提出した。自民党議員の反対理由は、「夫婦別姓を認めることになる」というもの。根底には、法律婚をしないで子どもを産むことに対する忌避感や家族に対する伝統的で固定的な価値観がある。「非婚の母」を対象としない寡婦控除制度は、女性の生き方や家族に対する一方的な価値を押し付け、「非婚のひとり親」に対する国家の制裁のように思う。是非、改正を実現したい。



 2013.10.28 「憲法」を愛する女性ネット   2013年7月2日  発行    

●子どもが、お金がないことでつらい思いをすることがない社会に
 子どもの貧困率は、14.2%(2006年)から15.7%(2009年)に1.5ポイント上昇した。これは、6人〜7人に1人の子どもたち、実数にして323万人の子どもたちが貧困の中に暮らしていることになる。

あしなが育英会や「なくそう!子どもの貧困」全国ネットワークなどの強力な運動で、6月19日、子どもの貧困対策法が成立した。法案審議の焦点は、貧困の削減率目標の設定についてだったが、自民・公明の反対で、目標は設定せず、大綱にゆだねられることになった。

 自民党憲法改正草案は、憲法前文や24条で家族の扶養義務を課している。これはすでに、社会保障制度改革推進法や生活保護削減の考え方に表れている。生活保護費の削減は子どもの貧困を増大させ、貧困の連鎖を断つことはできない。これは、子どもの貧困対策法と矛盾する。

貧困対策法は、国や都道府県に子どもの貧困を削減するための計画を義務付けている。自民・公明の子どもの貧困に取り組むというポーズだけに終わらせないよう、実効性を発揮するためには、当事者をはじめ市民からの具体的な政策提起と監視が欠かせない。

八王子市は6月、保育料と市営住宅家賃について未婚のひとり親家庭に「寡婦(夫)控除」をみなし適用すると発表した。寡婦控除は婚姻歴のあるひとり親家庭にしか認められない。

その結果、八王子市の試算によると、婚姻歴の有無によって年収258万円で12,8万円(所得税、住民税、保育料、市営住宅家賃の合計)、年収201万円で20.9万円もの差がある。母子家庭の貧困率は51.7%。未婚の母か否かによって税法上差別され、その結果、子どものより貧困な状況を作り出しているのだ。

子どもの貧困を解決するためには、税制や教育、社会保障制度など全般的な見直しが必要だ。

東日本大震災によって、家族や住居を失った子どもたちも多い。貧困を放置してきたことが、震災被害を拡大させているとも指摘されている。

 お金がなくて、子どもたちが悲しい思いや進学をあきらめなければいけない社会を変えていこう。 憲法はその実現を権力者に命じているのだから。



 2013.10.28 「憲法」を愛する女性ネット   2013年4月2日 発行    

●学習会報告 立憲主義・平和主義を否定する自民党改憲案
  3月2日、新宿区戸越地域センターで、広島市立大学広島平和研究所講師の川上暁弘さんを講師に迎え、自民党が昨年4月27日に決定した「自民党 日本国憲法改正草案」について、批判的検討を行った。

立憲主義の無視・軽視

立憲主義とは、「国家権力に対してその権力行使を制限し、人権尊重など憲法に基づく政治をする」ことであり、憲法は国民が権力に対してつきつける契約書といえる。だから、現憲法は第99条で「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。」としている。しかし、改憲案では第102条「全て国民は、この憲法を尊重しなければならない。」と、憲法を尊重する主体が国民となっており、国民は憲法を公務員に守らせる側であるという立憲主義の原則を無視している。

国民主権・民主主義の空洞化

改憲案前文では「日本国は、長い歴史と固有の文化を持ち、国民統合の象徴である天皇を戴く国家」、第1条で「天皇は日本国の元首」と明記し、第4条では「元号は皇位の継承があったときに制定する」と元号を憲法上制定し、天皇主権の強化と国民主権の後退・空洞化が顕著である。

第3条では「国旗は日章旗とし、国家は君が代とする」、2項「国旗および国歌を尊重しなければならない」としているが、日の丸・君が代は不変ではなく、その尊重義務を課すことは、思想信条の自由を侵すものであり、民主主義の否定につながる。

現行9条を無化し、戦争する国へ

改憲案では、第2章の表題を「戦争の放棄」から「安全保障」と変え、現行9条1項の「戦争放棄」は少し文言を変え一応維持するものの、集団的自衛権の行使も念頭に「自衛権の発動を妨げるものではない」と規定。

2項の「陸海空軍その他の戦力は保持しない。国の交戦権はこれを認めない。」を削除し、首相を最高指揮官とする「国防軍を保持」と明記。また、国防機密や軍人等の裁判のために「国防軍に裁判所を置く」と軍法会議を設置する。

3項では、「国は、主権と独立を守るため、国民と協力して、領土、領海及び領空を保全し、その資源を確保しなければならない」と、国民に領土と資源確保の義務を課し、資源確保のための戦争も想定しているとも考えられる。

改憲案第2章に「戦争放棄」という文言は残っても、国防軍という軍隊を創設し、その活動は、「国際社会の平和と安全を確保するための活動、国民の生命、自由を守るための活動」(9条2項3)へと展開し、アメリカとともに戦争できる国になる。これは、平和主義の否定である。

「公益・公の秩序」を理由にした人権の制限

 改憲案12条は国民の責務として「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力により、保持されなければならない。国民は、これを濫用してはならず、自由及び権利には責任及び義務が伴うことを自覚し、常に公益及び公の秩序に反してはならない。」としている。これは、常に「公益と公の秩序」が人権より上にあり、明治憲法時代のように、その範囲でしか人権を認めないことになる。「公益と公の秩序」を法律と解すならば、法律によって安易に人権の制限ができるようになる。法律は多数決で決めるが、自由や人権は多数決で決めてはならないことだ。

 さらに、個人の尊重規定や「奴隷的拘束」禁止規定を削除し、政教分離規定は靖国参拝などを合憲としかねない大幅な規制緩和をしている。改憲案24条は「家族は互いに助け合わなければならない」と、家族の助け合い義務を課し、家族に大きな価値を求めている。しかし、深く価値観に関わる事項を憲法に規定することは妥当ではない。

  まるで明治憲法に逆戻りしたかのような自民党改憲案は、主権在民、平和主義、民主主義を否定する何物でもない。この草案の起草者たちが、政権を担っていることに愕然とする。そして、憲法改正発議を衆参各議院の3分の2から2分の1に緩和して、憲法改正の突破口としようとしている。

決して参議院選挙で、3分の2を与えてはならない。                     

           (世話人 井上睦子)



 2011.03.03 「憲法」を愛する女性ネット ニュース  2011年2月23日発行    

●市民・自治体の平和力をUPして9条を実現しよう
 6期24年間、「人権が大切にされる政治、安心して暮らせるまち」のために、市民と一緒に行動し、市議会では行政運営のチェックと政策提言を行ってきた。

土井たか子さんが「平和なくして福祉なし」とよく言われたが、人権尊重や福祉の充実は平和が原点だ。小さな平和運動だが、2002年6月から友人たちと始めた毎月のピースウォークは、100回を超えた。

ピースウォークをしていると、政治情勢によって様々な市民の反応がある。最近気になるのは、急速な経済成長や尖閣をめぐる領土問題に対する中国への警戒心と、朝鮮半島の南北の緊迫について、日本の防衛強化を求める声をしばしば聞くことだ。そして、沖縄の基地負担もやむなしとの空気が広がっている。かつて、アジアを侵略し植民地化したことを忘れたかのように・・・

一方、私たちの街には在日韓国・朝鮮人が住み、多くの中国人が学び働いている。市はアジアの各都市と友好都市交流を続け、外国籍の人々の生活支援も行政課題として推進している。私もNPOで中国貧困地区の教育支援や朝鮮学校の高校無償化問題などに取り組んできた。感情と結びついた短絡的な防衛強化という考えを変えることは、なかなか難しい。

でも、隣に住む外国人との国家を超えた市民交流は、友情や信頼を育み、私たちの視野が広がっていく。自治体は国民保護計画を策定しているが、国の軍事政策とは異なる平和政策を市民レベルの友好交流を通して実現していく可能性を持っている。警戒や嫌悪の感情を率直な議論によって、理解と信頼に変えていくことができると思う。

こうした自治体と市民の持つ平和力が9条を実現することでもある。4月の市議選は7期目の挑戦になる。平和と人権、福祉をテーマにさらに頑張る決意だ。どうぞ、ご支援を!

           (世話人 八王子市議会議員  井上むつ子)



 2011.01.01 井上むつ子市政報告 2011年1月1日    

●井上むつ子市政報告 2011年1月1日
明けしておめでとうございます。

●12月15日まで開催された市議会では、ワクチン接種(ヒブ・小児用肺炎球菌・子宮勁がん)の予算化がされました。1割負担の任意接種ですが、市は効果と副作用の情報を知らせることが必要です。

●紹介議員となた「ホーメストタウン内の墓地反対」と「障害者がある人もない人も安心して暮らせるまちを実現する条例制定」の2つの請願が全会一致で可決されました。 市内の墓地は余っています。当面墓地はつくらせない、つくる場合は住民合意が前提という市の確固たる姿勢が問われています。

障害者が理不尽な理由によって辛く悲しい思いをすることがないように、当事者が学習会を重ねて作った条例案を尊重し、市条例に活かすよう努力します。

●毎月、ピースウォークを続けています。政権が交代しても沖縄米軍基地の縮小撤去の解決策は見えず、武器輸出三原則の緩和など問題は山積です。平和で幸せに生きるために、今年も皆さんと一緒に声をあげ、政治を変えていきたいと思います。



 2010.9.26 「高校無償化」からの朝鮮学校排除に反対する全国集会 報告    

●菅政権は決断せよ!−朝鮮高校の無償化適用―
今年4月30日には、外国人学校等31校は高校無償化の対象校として指定されたが、朝鮮高校だけは、適用を「保留」されている。8月31日、文部科学省の「高等学校等就学支援金の支給に関する検討会議」は、高校無償化適用のための基準を公表し、朝鮮高校は適用妥当との報告に至っている。

しかし、菅首相は民主党内の意見調整を慎重に進めるとして、政調会の結論待ちの状態である。現在も朝鮮高校の排除は続いている。

9月26日の全国集会は、賛同団体267、会場に入りきれない1000名以上もの参加で、即時適用を求める強い思いにあふれた集会となった。

全国の朝鮮高校から9人の代表が参加し、当事者としての思いを語った。

「排除の理由は矛盾が多い。国交がないと言うが、台湾学校には出ている。
全国朝鮮高校連絡会で署名活動を続け11万人の署名を集めた。自分たちの力と協力してくれる日本人の力で乗り越えられる。(東京)」

「ナイフや脅迫状が送られて、安心して学校に学校に通えなくなった。でも学校は好きだ。力を貸してほしい。(神戸)」

「今年は植民地支配から100年にあたる。自分たちは強制連行や仕事を求めやってきた朝鮮人の3世や4世。日本は朝鮮人として学ぶ権利や生きる権利を認める法的・道義的義務がある。排除されて大きな怒りと悲しみを感じる。(神奈川)」

「朝鮮学校への助成金は少ないので、家族の負担がとても大きい。両親は必死に働いて学費を出してくれているが、家庭の経済的事情で入学を断念する人もいる。親は納税もしている。日本の高校生すべてが平等であるべきだ。(広島)」

「橋下知事が来た。なぜ、朝鮮学校だけが差別されなければならないのか。民族差別が形を変えて出てきている。ウリハッキョ(私たちの学校)は私たちの誇りであり魂。学校が存在するために無償化は必要だ。(大阪)」

「私たちの学校は、小学校〜高校まで100人に満たない。自国のことを学びたいだけだ。朝鮮高校は大学受験資格が認められ、サッカーや合唱コンクールにも出場している。今年、県大会の合唱コンクールで金賞を受賞した。しかし、無償化延期となり不安で悲しい。朝日間の相互理解が必要だ。(茨城)」

 日本の高校生4名も参加し、「つい最近この問題を知った。同じ高校生なのに受けられないのはおかしい。若い自分たちが一緒に声をあげていきたい。」と、連帯の発言が続いた。  

 文科省の検討会報告書は、高校無償化を適用するかどうかは、「外交上の配慮などにより判断すべきものではなく、教育上の観点から客観的に判断すべきものであるということが法案審議の過程で明らかとされた政府の統一見解である」と述べている。拉致問題への圧力として、無償化からの排除を民主党が判断することは、許されないことだ。植民地支配をした国家責任として、人権としての民族教育を保障をすべきである。このことは、高校生たちの発言に尽きている。

 最終判断は、民主党・菅政権に委ねられた。日本の民主主義を前に進めるのか、もう一度排外主義の道を歩むのか・・。 (世話人 井上睦子)







 2010.5.29 「憲法」を愛する女性ネット 勉強会    

●「障害者自立支援法」廃止から「障害者総合福祉法」の制定へ
         私たち抜きに、私たちのことを決めるな!
2006年4月1日から施行された障害者自立支援法は、日常生活やコミュニケーションなどの支援に、重い障害の人ほど負担が増える「応益負担」が原則となっている。視覚と聴覚の障害をもつ福島智さん(東京大学教授)は、「応益負担は、無実の罪で収監された刑務所からの保釈金の徴収に等しい」と厳しく批判し、全国各地で障害当事者が「自立支援法は、憲法13条の幸福追求権、14条法の下の平等、25条の健康で文化的な最低限度の生活保障の理念に大きく反する」として、違憲訴訟を起こした。

政権交代によって政府は障害者自立支援法の廃止を決定し、内閣府に半数以上が障害当事者で構成される「障がい者制度改革推進会議」を設置し、新法の制定へと動き出した。今年1月には、違憲訴訟原告団・弁護団と国との基本合意が成立。合意文書には、「違憲訴訟を提訴した原告らの思いに共感し、これを真摯に受け止める。障害者の人間としての尊厳を深く傷つけたことに対し心から反省する。」と明記されている。これは政権交代を実感する出来事で、3党連立政権が当事者の思いを大切にする政権であることを歓迎した。

 現在、障がい者制度改革推進会議では、障害者権利条約の締結に向けた障害者基本法の抜本的改正、障害者総合福祉法の制定、障害者差別禁止法の制定について、活発な議論がされている。

しかし5月28日、民主党は厚生労働委員会の不正常な事態を打開するためなどの理由で、自公が提出した「障害者自立支援法改正案」をほぼ同じ内容で衆議院・厚労委員長提案とし、自公民による賛成多数で可決された。まだ連立与党であった社民党は、障害者自立支援法の廃止が曖昧であり同法の存続になりかねない、当事者の意見が反映されていないとして反対した。28日は、福島みずほ前大臣が普天間基地移設の日米合意に反対して罷免された日でもある。

この改正案は、鳩山首相の辞任で参議院本会議での可決成立はしなかったが、障害当事者から、「民主党は、障害者当事者の声に基づいて障害者政策を決定すると言い、総合福祉法を作り、自立支援法は廃止をすると言ってきたことに反する。」と強い抗議と怒りの声があがっている。民主党の対応は、自公政権とは異なる政権「市民が主人公の政治」を期待をした障害者や有権者を裏切るものといわざるを得ない。

2006年12月、国連総会で採択された障害者の権利条約は、「私たち抜きに、私たちのことを決めるな!」のスローガンに示されるように、障がい当事者や障がい者団体が参画して制定した条約だ。衆議院において圧倒的多数をしめ政権党である民主党は、このスローガンを肝に銘じ、障がい者制度改革推進会議の議論と結論を尊重すべきだ。そして私たちは有権者として、政権党の独善的な振舞いをしっかり監視していかなければならない。(世話人 井上睦子)





 八王子手をつなぐ女性の会 「ふぃふてぃ 第66号」 2010年3月31日発行    

●八王子市議会  「選択的夫婦別姓制度導入を求める意見書」採択
3月26日、八王子市議会で「選択的夫婦別姓制度導入の民法改正を求める意見書」が、賛成20票、反対13票で可決採択された。反対は自民党のみで、民主党は退席した。

夫婦別姓制度の実現について、八王子手をつなぐ女性の会も設立当初より取り組み、別姓を実践している会員もいる。千葉法務大臣は、選択的夫婦別姓制度の導入や嫡出子に比べて婚外子の相続は2分の1という差別を解消するため、民法改正に意欲を示している。しかし、亀井金融担当大臣の強い反対で内閣として法案提出の合意にまで至っていない。

夫婦同姓が義務付けられたのは1898年、明治民法の制定によって家制度が導入されてからだ。戸主及び家族はみなその家の氏を称し、夫婦同氏(夫婦同姓)となった。家の氏は変更できず、個人の氏は嫁入り、婿入りなどによって、その属する家が変わる結果として氏も変わった。

1947年、日本国憲法の制定によって家制度は廃止された。氏は家の名称ではなく個人の呼称となった。婚姻は当事者の同意とし、夫婦の姓も夫又は妻の姓を選べるようになったが、民法750条で「夫婦は婚姻の際に定めるところに従い、夫または妻の氏を称する」と夫婦同姓の原則は維持された。これは、家制度の名残りといえる。

2005年の調査では、妻が夫の姓に変えるのは96.3%にもなっている。

女性の社会進出が進み、姓を変えることによって、会社社長や研究者など職業上の信用や実績が中断するなどの不利益が出る。また、姓名は自分らしさ、アイデンティティなのだから姓は変えたくないという理由で、1980年代から夫婦別姓を求める声が大きくなってきた。

 1996年、法制審議会は選択的夫婦別姓制度の導入を認める民法改正要綱を答申したが、、当時の政府与党であった自民党内の意見がまとまらず、14年を経過しても政府からは法案が提出されていない。

2006年に内閣府が行った世論調査では、年齢別・性別にみると、20代〜50代の男女ともに賛成が反対を上回り、若い世代は選択的夫婦別姓に賛成が多いことが明らかとなっている。

夫婦別姓を認めていない国として日本とともに名前があがっていたトルコは2001年に、タイは2005年に法改正している。インドは法律で同姓を強制していないため、いまや夫婦同姓を法律で強制しているのは日本くらいだ。このように世界各国は、個人の尊重と男女平等の方向にそった方向で、選択の自由を広げる制度となっている。

選択的であっても「家族の崩壊を招く」「子どもへの影響が心配」と反対する質問や反対討論が市議会でも出された。今日すでに、離婚や再婚も増えて多様な家族が存在している。別姓と家族崩壊は別問題、両親が別姓を選択した理由をきちんと子どもが理解できれば、いじめも偏見も生じないと応えたのだが、家制度に郷愁を感じる反対論者の理解を得ることは難しかった。

法律は個人の生き方に対して中立的であるべきだ。職業上の理由や個人の生き方として自分の生来の姓を名乗り続けたい、別姓によって対等な夫婦関係を築きたいと思う私たちの声が国会に届くことを期待する。(井上 睦子)



 憲法を愛する女性ネットニュース  2010年3月30日 発行    

●沖縄 基地押しつけの歴史に終わりを
3月20日、沖縄で開催された研修会の途上、海上ヘリ新基地建設に反対して、座り込みを続けている辺野古のテント村を訪れた。普天間基地移設問題が、政権の最大の政治課題となっているために、全国から多くの人たちが来ている。

初夏のようなこの日、サンゴ群集や海草藻場がある大浦湾の海はキラキラと輝いていた。

 1995年の少女レイプ事件後、SACO最終報告で基地移転が明記されて以来、14年にも及ぶ長い闘いが続いている。1月24日の名護市長選挙では、あらためて基地反対の強い意志を市民は示した。

 ヘリ基地は、ジュゴンの生息域の海上160haを埋め立て、陸上部とあわせて210haの規模となる。埋め立てに必要な土砂は2,100万?。沖縄の東海岸の海砂を取りつくし、残りの土砂は水源である辺野古ダム周辺の山林を崩して埋め立てる。この結果、海砂は高騰し、公共事業への影響も大きいと地元の人は話す。

現在、政府が新たな移設先を検討しているため、環境アセスの手続きは進んでいない。しかし、「下地議員に投票したのに、裏切られた!」とタクシーの運転手さんが言うように、国民新党のキャンプ・シュワブ陸上案と嘉手納への統合案には強い反発の声が広がっている。

 沖縄県土の総面積に占める米軍基地の面積は10.2%にもなり、日本全体の75%もの米軍基地が集中している。高速道路には「流れ弾に注意!」の看板。いつ米軍の実弾演習訓練の犠牲になるかも知れない現実がある。

 研修会では、基地と子どもについての報告があった。

屋良小学校は、嘉手納基地の東側フェンスから200mに隣接し、飛行機墜落を想定した避難訓練が行われている。普天間第二小学校は、普天間飛行場の滑走路の東側、飛行航路の真下にある。運動場は、ヘリが着陸する際にパイロットの顔が肉眼で見える近さだという。飛行機が轟音をたてて離発着する中で、子どもたちは、学校生活を送っている。1959年には、宮森小学校に米軍戦闘機が墜落し、17名が亡くなっている。今日まで、基地があるために起こる様々な事故や騒音、被害が後を絶たない。

 沖縄の経済は厳しく、平均所得200万円という低さで、完全失業率も日本の平均の2倍以上という状態が続いている。新崎盛暉(沖縄大名誉教授)さんは、「60年代の復帰運動は、経済格差や人権、社会保障などの改善を目指して行われた。しかし、基地押しつけの歴史の中、教育や福祉といった問題の改善にはなかなか手が回らなかった。」と指摘する。基地があるが故に、経済発展や福祉の向上を阻害しているのだ。

 「日米安保が大事、だから県内移設やむなし」へと傾いている鳩山首相だが、基地問題に振り回される沖縄の人々の怒りを受け止め、米軍基地縮小撤去への道筋をしっかりとつけるべきだ。そのためにこそ、社民党の連立政権の中での役割は大きい。

 沖縄県議会は、2月24日「普天間飛行場の早期閉鎖・返還と県内移設に反対し、国外・県外移設を求める意見書」を全会一致で採択した。そして、4月25日、沖縄県民は10万人集会を計画している。

 3月31日、米軍が航空管制を行っていた嘉手納ラプコンが返還される。約半世紀にもわたって米軍の「沖縄の空の占領」を許してきたのは日本政府だ。

本土の無関心と日米安保のために、沖縄に基地を押しつけ犠牲を強いてきた歴史を終わらせなければならない。地域の中で沖縄への連帯を広げていきたいと思う。  

                        世話人 井上 睦子





 憲法を愛する女性ネットニュース  2008.11.02 発行    

●いのちを大切にする政治−政権交代の中身が問おう
金持ち優遇税制を変えよう

11月とも言われていた解散は見送りされたが、総選挙は来年は必ずある。
10月30日、麻生総理大臣は経済政策を発表し、「金融災害とでも言うべきアメリカ発の暴風雨」と経済悪化を説明したが、実体経済のないギャンブル資本主義がこの事態を生じさせたことは明らかだ。
経済政策の中身は、全世帯に定額給付金の支給、高速道路料金の値下げなど。しかし、3年後には消費税を上げ増税するという。消費税は逆進性が強いので、これではますます低い所得層の人々の生活は困窮することになる。
目先の負担軽減に騙されないで、これまでの金持優遇税制を転換することが必要だ。
日本人の金融資産は、2006年の野村総研の調査によれば1499兆2934億円。そのうち204万人の富裕層が584兆円の資産を保有している。これはたった1.7%の人が39%もの金融資産を所有していることになる。逆にワーキングプアと呼ばれる人や生活保護受給者など17%の2040万人は何も持っていない。
 1979年まで所得税の最高税率は75%だったが、1999年には37%までに下がった。逆に、定率減税は2007年に全廃された。この間、富裕層には減税し、そうでないものは増税され、政府の政策から置き去りにされてきた。所得の再配分機能が衰えたことが、格差拡大の一因となっている。富裕層に優しい税制を転換し、所得を再配分せよ!と訴えよう。

貧困問題を総選挙の争点に

 10月19日、反貧困ネットワーク主催による『反貧困「世直しイッキ」大集会−垣根を越えて、つながろう−』が開かれ、約2000人が参加した。
集会宣言は次のように訴えている。「政権選択の選挙だと、言われています。しかし、私たちが求めているのは単なる政権交代ではない。日本社会に広がる貧困を直視し、貧困の削減目標を立て、それに向けて政策を総動員する政治こそ、私たちは求める」と。
反貧困ネットは、貧困問題解決のために、労働者派遣法の抜本的改正、社会保障費の2200億円の削減方針の撤回、最低賃金と生活保護基準の引き上げ、貧困層の削減目標の設定を各政党に要請している。
10月15日、総選挙にあたって「政権選択と社民党の役割」について社民党総務部と「憲法」を愛する女性ネットとの学習意見交換会を持った。自公政権を終わらせ政権交代を実現することは、貧困や格差を拡大させてきた新自由主義の政策に終止符を打つことである。
政権交代が現実的になれば、民主党中心の政権になる。しかし、民主党は労働の規制緩和等に賛成してきた。顔が変わっても政策が変わらなくては拡大する貧困問題は解決しない。少数政党であっても、「いのちを大切にする政治」を貫いている社民党の役割が今こそ重要だ。
国民健康保険で無保険の子どもが全国に33000人いると厚労省が発表した。憲法25条が保障する健康で文化的な最低限度の生活を営む権利が脅かされている。これは、政治の責任である。

                        世話人 井上 睦子



 憲法を愛する女性ネットニュース  2008.11.02 発行    

●公正な市政勢のために−八王子市政治倫理条例の制定を目指す
八王子市議会議員  井上睦子
東京都南西部に位置する八王子市は人口54万7千人で、戦後一貫して保守市政が続いている。現在の黒須八王子市長は3期目。次の市長選挙には不出馬を表明し、総仕上げの時期として、箱物抑制の財政再建型から駅前再開発事業など開発・投資型市政へとを市政を転換しつつある。

私は、9月定例議会に12人の議員と共同で八王子市政治倫理条例案を提案し、現在条例案は委員会で継続審議となっている。

条例提案のきっかけは、市長の親族企業(2人の実弟が社長と専務、長男が常務、実母が取締役)が、06・07年度2年連続して土木工事の受注額がトップとなったこと、08年度でも既に4億5千万円の工事を受注し、その内の1件は、99.92%(技術点と価格点で落札者を決定する総合評価方式の入札制度で実施)もの高落札率だったことだ。

さらに、市長は親族企業の株を12%保有し、8年間の在任中で約750万円の配当を受けていたことも明らかになった。

地方自治法では、自分の利益のために公的な地位や権限を行使できないように、市長や議員が経営する事業者が直接自治体の仕事を請負うことを禁じているが、家族は含まれていない。

そこで、政治倫理条例案は、「市長や議員の2親等以内の親族が役員である事業者の請負契約や指定管理者の指定を自粛するよう努める」という内容とした。

八王子市の財政規模は3400億円、その予算執行権をもつ市長の権限は絶大である。

一般的に強力な権限は腐敗と無縁ではない。条例は、請負自粛を親族企業に求めることによって、契約等の透明性を確保し、未然に不正を防止しようとするものである。すなわち「李下に冠を正さず」ということなのだ。

しかし、議会審議では、「憲法22条の職業選択の自由に違反するのではないか」との議論が続いた。各地の政治倫理条例の制定に携わってきた斎藤文男さん(九州大学名誉教授)は、「親族企業の請負辞退規定は、職業選択の自由を制限していない。市長や議員になることを禁じていないし、その親族が建設業などを営むことも禁じていない。憲法22条は公共の福祉に反しない限りと制限を付しており、経済的自由権が公益によって制限されることを認めている。」としており、私たちもこの見解にたっている。八王子市法制課も「請負辞退は努力義務規定なので憲法に違反しない」という答弁である。とても重要な論点なので、さらに深い議論ができることを期待している。

私たちの提案した政治倫理条例は、マスコミの積極的な報道もあり市民の関心も高い。条例案は継続審議となっているが、市長の親族企業が再開発事業に関連する自転車駐輪場建設の下請けを辞退するなど、条例案の効果が出ている。成立に向けて頑張っていきたい。

 (参考: http://seirin8.web.fc2.com 八王子市政治倫理条例の制定をめざす議員の会HP) 



 憲法を愛する女性ネットニュース  2007.12.20 発行    

●若い世代が市民団体をつないで 八王子平和映画祭
今年で2回目となる八王子平和強化月間が、11月17日〜12月15日まで開催された。主催は、八王子平和市民連絡会に参加する市民や団体である。今回は、以下のように映画を中心に8企画。過去の戦争、植民地支配に起因する在日の人生、現在の戦争へと続く内容であった。

●「オレの心は負けていない」上映と前田朗さん講演会
●「戦争をしない国 日本」上映と高橋哲也さん講演会
●「君が代不起立」上映会 根津公子さん講演会
●<イラク−日本−アメリカ> 手をつなぐ人々 マブイ・シネコープ反戦平和映像作品一挙上映
●映画「基地はいらない、どこにも」上映会 本橋哲也さん講演会
●シネマ「三池−終わらない炭鉱(やま)の物語」&トーク 熊谷博子さん
●「海女のリャンさん」日本・韓国・北朝鮮に離散した家族の絆を守りぬいた母の物語
●「教えられなかった戦争 中国編」上映会

「オレの心は負けていない」は、宮城県に暮らす在日元「慰安婦」の宋神道さんと裁判を「支える会」の記録であり、宋さんが裁判闘争を通して、固く閉ざしていた心を開き、支援者と信頼を築きあげていく過程である。

安海龍監督は、「裁判に負けてもオレの心は負けていない」とは、「慰安婦」問題が未だ解決していないという事実を世界に知らしめる警鐘であり、共にたたかい続けようという宋さんの励ましのメッセージに他ならないと記している。

<イラク−日本−アメリカ>手をつなぐ人々は、イラク、アメリカの反戦運動を描く。イラクでは、イラク自由会議が組織され、労働組合やイラク女性自由協会、子ども保護センターなどが結集し、占領と傀儡政権を終わらせ「明日のイラク」をつくるために活動している。アメリカでは、イラク撤退を求める世論が過半数を上回り、退役軍人や戦死者家族も参加し大規模な反戦デモが組織されている。希望のもてる作品。

「三池−終わらない炭鉱(やま)の物語」は、1997年3月に閉山した三池炭鉱150年の歴史。囚人労働、強制連行、総資本対総労働の闘いといわれた三池闘争や灰じん爆発事故の映像と炭鉱に生きた人々の証言は、力強く感動的だった。

この企画は大学生や20代・30代の若い世代が事務局を担い、それぞれ特徴のある市民団体をつないでいる。改憲側や戦争をしたい人々に勝つために、私たちの側も大同団結をということである。

晩秋、戦争の愚かさを人々の心に受け止めてもらい平和への思いを共に、という映画祭は、私の心も豊かに耕した。



 07.5月号「憲法」を愛する女性ネットニュース  2007.6.1    

●「憲法改悪・格差社会にストップ!」に拡がった支持―市議選を終えて
4月22日投票で行われた八王子市議会議員選挙で、6676票(40人中4位・前回より1044票増)を獲得し、6期目の当選を果たすことができた。

初当選は、1987年の土井たか子社会党委員長時代の「マドンナブーム」といわれる選挙であったが、毎回の選挙は政治情勢を反映して、追い風や向かい風が吹く。07市議選は、格差拡大と憲法改悪に対する危機感の追い風が社民党1議席に対して吹いたように思う。

今回の選挙でも多くの有権者と会ったが、高齢者特別控除や定率減税の廃止による増税、日中独居となる高齢者へのヘルパー派遣の中止など介護保険制度の改悪や、医療費の負担増に対する怒りは今までになく強く「生きていてはいけないのか!」と嘆く高齢者が多かった。

「介護の社会化」を掲げた介護保険制度は家族介護へと逆戻りし、医療はより富裕層だけが長生きできる制度へと変質している。企業や富者にやさしく貧者に厳しい税制は、所得の再分配機能を脆弱化させていることを、市民の暮らしから痛感する日々だった。

若い世代の生活も決して楽ではない。フルタイム共働き世帯でも保育園に入所できず、非正規で働いている場合は正規の人たちが優先されるので待機児となる。経済的にも厳しい非正規労働の人たちが、正規の仕事につく機会さえ後押しする保育制度の不備も指摘された。

選挙期間中は、厳しい市民生活の中で、「憲法」は市議選の積極的な争点にならないとの判断から「格差社会にストップを!」との訴えを中心にしたが、結果としては、「憲法9条は変えるべきではない」と考える有権者の強い支持もあったように思う。街頭や選挙報告会では、戦争体験のある世代からは憲法の大切さが複数の人たちから語られ、2002年6月から毎月行っているピースウォークや、憲法連続学習会の参加者が積極的な支援をしてくれた。

全体的な選挙結果として、有権者の増加と投票率0.71%の上昇によって約1万票増えたが、議席数は、社民1・自民系15・公明10・民主系6・共産5・生活者ネット2・無所属1で、社民・民主系・共産・生活者ネット・無所属がそれぞれ得票を大幅に伸ばした。民主系は市議会与党だが、国会の政治状況を反映して野党の支持が伸びた選挙だったといえる。

 国民投票法が成立し、最短で3年2ヶ月で憲法「改正」が行われることが可能になった。
「戦争のできる国」は「社会保障を削減し市民の命を大切にしない国」である。これからの4年間は憲法の正念場でもある。「共に生き共につくろう平和と福祉のまち」の実現のために、市議会では少数野党という現実にあるが、市民と共に怒り悩み知恵を出し合って活動していきたい。

 最後に、厳しい選挙を一緒に闘い支えてくれた多くの人々に心から感謝したい。



 07.4月号議会報国レポート  2007.4.4    

●子育て支援は前進−保育園の待機児解消は課題
乳幼児医療費助成は所得制限が撤廃され、小・中学生の医療費の3分の1助成制度(制限あり)ができました。10月から実施されます。子育て支援は、所得によって差があってはなりません。乳幼児医療費の所得制限の撤廃は前進です。

 保育園は、1園(民間)120名の定員がふえますが、保育園の待機児解消は、大きな課題です。

子ども認定園が3園(10月開所)で始まります。利用料や障がいを持つ子どもの受け入れ、公正な選考がされるよう市がきちんと指導していくことを求めました。



 07.4月号議会報国レポート  2007.4.4    

●変えナキャ 議会  議会改革をすすめます
この4年間、会派代表者懇談会で「議会のあり方」について検討してきました。

評価できるものとして、傍聴者への資料閲覧や、試行ですが委員会での請願者の説明(委員会の了承が必要)ができるようになったことです。政務調査費の領収書添付は、条例を改正して、2006年度から公開されています。

議会だよりは、委員会審議などを載せるようになりましたが、一般質問はテーマと質問者名は一括掲載となったため、だれが何を質問したかわからないという指摘を受けています。また、予算や決算の分科会は非公開で議事録も作成されておらず、開かれた議会への課題は多くあります。

夕張市の財政破綻や各地での官製談合事件は、議会のチェック機能を問われた問題でもありました。

議会は執行機関を厳しくチェックし、多様な市民の意見が反映されなければなりません。

議会を「民主主義の広場」にと、自治体議会改革キャンペーンが始まり、私も賛同しています。まず第1ステップとして、@議員同士が責任を持って自由に討議する議会、A市民も参加できる開かれた議会、B積極的に情報を公開し透明性のある議会をめざします。

 市民にわかりやすい議会、行政となれ合わない議会、市民と政策をつくる議会へと、議会改革をすすめます。



 07.4月号議会報国レポート  2007.4.4    

●定率減税の廃止でさらに増税−弱いものに負担を強いる増税策
景気回復を理由に「恒久減税」といわれた定率減税の廃止によって、2007年度は、30億4千万円の増収となりますが、市民にとっては同額の増税となります。

90年代以降の税制改革は、金融所得課税や法人所得課税を減税する一方、給与所得課税や消費税の増税を志向してきました。

国の90年度決算では法人税の額が18兆4千億円であったものが、2004年には9兆4千億円に半減し、消費税は4兆6千億円から9兆6千億円へと倍増しています。 法人税は85年の43.3%をピークに現在は30%まで引き下げられています。

所得税も最高税率が75%から37%にまで引き下げられ、企業や富裕層に手厚く、そうでないものは置き去りにされ、負担だけが増える税制改悪が進められてきました。 その結果、所得の再分配機能が衰え、税制度が格差拡大の一つの大きな原因となっています。のこ逆立ちした税制を変えなければなりません。  



 07.1月号議会報国レポート  2007.1.1    

●八王子城跡・御主殿の滝涸れ問題を追求−
     市長は圏央道トンネル工事が原因と明言
国史跡八王子城跡の御主殿の滝涸れが、昨年の12月から今年の11月までに12回も起きています。自然保護団体は、滝枯れは圏央道のトンネル工事が原因だと指摘してきました。相武国道事務所は要因は「少雨のため」とトンネル工事との関係を否定していましたが、現在は「不明」との見解に徐々に変わっています。自然保護団体の皆さんとトンネル工事の視察や水量などのデーターを分析して、滝枯れ問題を6・9・12月の議会で追及しました。

 5月29日、保坂展人衆議院議員とのトンネル内の視察では、コンクリートの継ぎ目に張られたビニルシートの下から水漏れを発見しました。また、吹き付けられたコンクリートからセメントミルクが噴出しているのも確認しました。これは、止水が完全ではないことの証です。職員の説明は要を得ないものでした。

この事実を6月の議会で取り上げ、八王子城跡を管理する教育長は「トンネルの拡幅掘削工事を中止しても、止水構造の早期完成を求める」と答弁し、相武国道事務所長宛に@滝涸れ原因の特定、A止水構造の早期完成、B施行完了後も水が復することがない場合水環境を復するために必要な対策を講ずることの3点を求める「国史跡八王子城跡に関する水環境の保全に関する依頼文」を提出するに至りました。

9月の議会で、教育長は「相武国道事務所の報告は、市教委の依頼に十分対応したものではない」と従来の内容を繰り返す相武国道の対応を批判し、市長は「トンネル工事が原因で滝枯れが起きていることは明確」と断言しました。12月の議会でも、国土交通省の原因究明は依然として不十分との市教委の見解が示されました。

八王子城跡の山全体が乾燥し、滝周辺の岩が崩れ落ちる危険な状況にあります。まず、御主殿の滝を復活させるため、引き続き相武国道に原因を明らかにさせ対応策をとるよう強く求めました。

裏高尾地区で23年も反対運動が続いている圏央道工事は、いよいよ高尾山に迫っています。八王子城跡と同様の工法で高尾山トンネルを掘ることは、高尾山の水環境に重大な影響を及ぼします。蛇滝や琵琶滝は涸れ、1300種類の植物にも影響が出ることは必須です。高尾山にトンネルを掘ることは許されません。    



 07.1月号議会報国レポート  2007.1.1    

●第4回定例議会 11月30日〜12月15日
一般質問では、墓地開発の規制強化、教育行政、圏央道トンネル工事について質問しました。

墓地開発の規制強化を―許可は近隣住民の合意を前提に
市は「墓地造成の基準」について明文化し、新規の開発は認めないなど、墓地開発の抑制に取り組んできました。墓地を開発できるのは市内の宗教法人ですが、寺の所在地から遠く離れた緑地や、住宅地に隣接する地域の開発は、自然や住民の生活環境への影響が大きいと下柚木、犬目町、大船町で問題となっています。

07年4月から、八王子保健所が都から市へ移管されます。墓地の経営許可も市の仕事となり、都市計画と一体で墓地問題についても取り組みが可能となります。

墓地について、近隣の住民との合意を前提とし、宗教法人の隣接地のみの開発に限定することや開発面積の縮小、再開発までの年限の延長、名義貸しといった不正を防ぐために墓地経営者の適格性の審査の強化などを求めました。

市は、「墓地等の許可条例は07年第1回定例会で提案する。住民との協議・合意については、法律との整合性を図り市民の立場にたった条例を制定したい。基準は見直しが必要であり、条例に盛り込むことも含めて検討中。」との答弁でした。

 墓地開発の許可は近隣住民の合意を前提とすることは、、市民のまちづくりへの参加とトラブルを回避することになります。引き続き市民の声が反映した条例や基準となるよう働きかけていきます。

教育の規制緩和によって拡がる学校格差
第4回定例会では、いじめや自殺について市教委への質問が集中しました。子どもたちの苦しみは、教育行政の大きな転換も影響していると思われます。

学校選択制が導入されて3年。子どもたちが集中する大規模校がある反面、転出が続く小規模校は統廃合の検討対象にもなっています。

来年度から全国学力テストが実施され、八王子市教委も参加するとしています。元中山文部大臣が「学力テストで競い合う教育を」と発言したように、結果の公表によって競争や序列化が進むことが懸念されます。テストの結果で学校を選択するようになれば、学校格差が拡がり、子どもたちの心にやさしさより優越感や劣等感が生まれることにもなりかねません。

教育の規制緩和によって、07年度から市教委は「特色ある学校」として小中一貫実施校や地域運営学校の試行をします。「特色ある学校」がエリート校となり他学校との格差が生じないよう配慮しなければなりません。

子どもたちが自分で考え判断する力=真の学力を養うためには、30人学級などの小人数学級や教員の増員など、制度変更より教育条件の充実が優先されるべきです。地域の中で子どもたちが育つことは、異なった環境で育つ子どもが共に学びお互いを理解し合う事です。そのための条件を予算を確保して教育行政は追求すべきですが、現在の市教委の方針は予算をかけないで競争によって成果を出そうという逆方向になっています。

学力テストは来年度から国・都・市の3つのテストを子どもたちは受けなければなりません。子どもたちの負担をなくし、競争を煽らないためにテストの 中止を質しました。

地域運営学校はバランスの良い協議会構成を
教育委員会は、宮上中・6中・東淺川小をモデル校として地域運営学校を実施する計画です。地域運営学校とは、保護者・地域住民などで構成される学校運営協議会が、校長の運営方針の承認や教職員の任命についても意見を述べ尊重されるもので、協議会が強い権限を持ちます。

公立学校は地域コミュニティの核であり、保護者や地域住民が学校運営に参加することは、「開かれた学校」の試みとして歓迎すべきことです。しかしイギリスなどの学校理事会制度と異なるのは、子どもと教職員の参加が明確にされていないことです。子どもは学校の主人公であり、教員は日々子どもたちと接する教育の専門家です。また、保護者や地域住民の選出も広く意見を反映できるよう公募制を採用することが必要です。

学校運営協議会が強い権限を持つがゆえに、子ども・保護者・住民・教職員の構成バランスがとれてこそ公平で公正な運営ができます。

「子どもの参加については、協議会で意見を言う機会をつくる。教員については、学長の管理下にあり校長が参加するので協議会委員としては適当でない。選出方法は推せんや公募制を採用する。」との市教委の見解でした。

いじめや学級崩壊など多くの問題を解決するには、教職員の一体となった取り組みが必要ですが、運営方針の議論や決定に参加できず学校長からの指示のみでは、お互いの力を発揮できません。他地域では教職員が参名している例もあります。偏りのない運営がされているかなど、モデル校の実施状況をしっかり見守りたいと思います。           



 07.1月号議会報国レポート  2007.1.1    

●高雄市を訪問  2006.10.30〜11.2
友好交流協定の調印−活発な市民外交を

市制90周年を記念して、八王子市はアジアの3都市(泰安市、始興市、高雄市)との友好交流協定に調印しました。
高雄市との調印式に出席するため、高雄市を市議会から訪問しました。
高雄市は、台湾南部の経済・交通・文化の中心都市です。人口約150万人、世界第6位のコンテナ取扱量を誇る高雄港があり、地下鉄や新幹線、スタジアムの建設など開発が続く活気にあふれた街でした。
 11月1日、高雄市政府のロビーで調印式が行われました。これから、市民レベルでの文化や教育・経済面での多様な交流が活発に行われ、お互いを理解し合い信頼関係が築かれていくことを期待します。

高雄市議会−議会に女性・原住民保障枠

高雄市政府と高雄市議会は離れた場所にあります。議会のスタッフは63名、行政をチェックし議決機関としての体制が整っていると感じました。
市議会議員は44名。5つの選挙区に分かれ選挙区の人口によって定数が配分されています。その中で、選挙区の当選者数が4名以上の場合、必ず1人の女性議員を含まなければならないという女性保障枠が決められています。この保障枠というのは、得票数が男性より少なくても女性候補の上位の者が議席を占めることになります。11月現在、女性議員は13名で25%を超えていますが、女性たちは保障枠を使わなくても自力で当選しているそうです。この制度に男性は反発しないのかと質問すると、当然のこととして受け止めているので反対はないということでした。また、原住民の人たちは自分たちの代表を1名選出する保障枠があります。
保障枠(クオーター)制は各国が採用していますが、日本では制度化されていません。女性0議会がまだまだある日本の議会にこの制度が導入されたら、女性の政治参加は大きくに進むでしょう。
議場は、孫文の肖像が掲げられ、議員席の周りは書類の山でした。説明ボードもあり、かなり白熱した議論が展開されるようです。
 高雄市議会のシステムから学ぶことは多くありそうです。       



 「憲法」を愛する女性ネットニュース  2006.9.6    

●もういい!2度目の東京オリンピック
 2016年のオリンピック招致の候補として、東京が決まった。

石原都知事は、福岡を応援した姜尚中東大教授を、国内候補地のプレゼンテーションで「さっきどこか外国の学者さんが・・」とし、その後の祝賀パーティでも「怪しげな外国人が出てきたね。生意気だ、あいつは」と発言したと報じられている。

都知事就任以来、「三国人」「民族的DNAを表示するような犯罪」「フランス語は数を勘定できない」など、民族的な差別発言を繰り返す石原都知事に、『平和と友情の祭典』であるオリンピック開催候補都市の首長の資格はない。

7月のシンポジウムでは、「北京オリンピックは、ヒットラーの非常に政治的なベルリン・オリンピックにある意味で似ているような気がする」と侮辱。それ以前には、イギリスのタイムズ紙が「北京オリンピックをボイコットしよう」との発言を取り上げている。

他を貶めて得られる優越感にひたり、暴力的な発言を繰り返す者は、誰からの信頼も得られない。まして、IOCでアジア各国の支持を取り付けられるとは考えられない。

一方、東京オリンピック開催には、3500億円の負債を抱えて破綻した臨海第三セクターの再生と臨海副都心の再開発という目的がある。この開発資金は5000億円ともいわれる。「腕によりをかけて、国からお金を奪い取ってくるつもり」と石原知事は言うが、資金調達の内容は明らかではない。国も地方も財政難の時、東京だけにお金を使うことは、更なる東京への一極集中となる。

オリンピックは、選手たちの高度な競技や様々な出来事が感動を与えるが、国威発揚と都市基盤の整備という側面も大である。「2度目の東京オリンピックを」というのは、いかにも石原氏らしい。しかし、石原都知事も東京オリンピックももう要らない!                            



 女たちの21世紀 2006年冬号    

●韓国挺身隊対策協議会を訪問して
 1990年11月に発足した挺身隊問題対策協議会は「戦争犯罪の認定、謝罪と補償、歴史教育の実施を」という日本政府を告発する大きな運動のうねりをつくり、世界に「軍隊と性暴力」の問題を提起し続けている。

訪問した事務所の一室の壁面は、大きなハルモニたちの写真や亡くなったハルモニのデスマスクや遺品が陳列され、小さな資料館のようでもあった。

 日本では今年8月1日、早稲田奉仕園内に松井やよりさんの意志を受け継ぎ、「女たちの戦争と平和資料館」が開館したが、挺対協は「戦争と女性人権博物館」建設の準備を進めている。代表のシン・ヘスさんから西大門刑務所がある独立公園内の用地を確保するためにソウル市と交渉しており、今年中に計画を策定するとの報告があった。

 また、初代代表のユン・ジュンオクさんにもお会いすることができた。ユンさんは、「日韓現代史をジェンダーの視点から共同執筆したが、両国の政治トラブルに取り込まれることは一度もなく完成させることができた。それは加害国と被害国の女性という形で始まったのではなく、女性として犯罪は許せない、今度は人間の教育に取り組もうという共通の思いがあったから可能だった」と日韓同時出版となったジェンダー史教科書の意義を強調された。この出版は韓国では大きくマスコミに取り上げられ、私たちが帰国する機中で見た週刊の韓国女性ニュースに日本の執筆者である中原道子さんの記事が掲載されていた。

 戦後60年の日本は、扶桑社の歴史教科書やNHK「女性国際法廷」改ざん問題、小泉首相の靖国参拝など、歴史を消し去るばかりか書き換えることが公然と行われている。その流れを押し返すことに精一杯の年だったが、ハルモニたちのの名誉と正義を取り戻すための勇気ある告発と長い闘いを改めて思い、それを支える人々の活動や歴史館建設などの挺対協の取り組みに新たな力を得ることができた。

 日本政府に一日も早く「謝罪と補償」の実現をさせ、ハルモニたちの「恨」を晴らすことは私の課題でもある。                             



「憲法」を愛する女性ネット  2006年2月号より    

●相次ぐ米兵による事件事故―不平等な日米地位協定
 横須賀市での女性殺害事件など、昨年の暮れから米兵による事件事故が続発している。

私の住む八王子市でも12月22日、3人の小学生が米軍兵士にひき逃げされ、重軽傷を負うという事故が起きた。当日、容疑者は警察に逮捕されたが、直後に「公務中」との理由で釈放になっている。米兵は厚木基地から横田基地に備品を取りに行く途中だったという証明書が米軍から送られてきたためだ。

こうした事実が明らかになったのは28日の新聞報道で、市も教育委員会もそれまで詳しい情報を得ていなかった。被害者は小学生で鎖骨を折るなどの重傷であったにもかかわらず、逃亡するという悪質な事件が、なぜ6日間も事件が公表されなかったのか不可解だ。もし、米兵であるという理由で公表が配慮されたならば大きな問題である。  ひき逃げ事件に対して、八王子市長は、被害者への補償と日米地位協定の見直しを求める要請書を防衛施設庁長官に提出している。東京防衛施設局によると被害者の補償については、日本国が行うことになるという。

 私の所属する社民党も続発する米兵の事件事故について、全国連合はアメリカ大使館に、東京都連合は外務省に、再発の防止と米兵の身柄引渡し及び日米地位協定の抜本的な改正を求める申し入れを行った。外務省は、米兵の身柄引渡しや地位協定の見直しについては極めて消極的な回答を繰り返すだけだった。

 日米地位協定は日米安保条約に基づいて、在日米軍人・軍属の日本での法的地位を定めた協定だが、不平等であるために、事件事故が起きる度に改正が問題となってきている。

1995年、沖縄で起きた少女への暴行事件では、米軍は容疑者の身柄引渡しを拒んでいる。昨年、沖縄国際大学に米軍ヘリが墜落した事故では、わずか10分間の写真撮影を許可したのみで、県警は十分な現場検証を行うことができず、機体の残骸は米軍によって撤去されている。

 地位協定では、米兵の公務執行中の犯罪などについては米軍に第1次裁判権があると規定している。公務外の犯罪ならば日本が第1次裁判権を有するが、起訴までは米軍が身柄を拘束すると規定している。95年以後、重大犯罪の起訴前引渡しについて運用改善の合意がされ、日本側の要請に米軍が「好意的配慮」を行うとが確認されているが、裁量権は米軍にある。地位協定の運用改善では、公務中の事故については日本が裁判権を行使することはできない。

こうした米兵に有利な地位協定が犯罪を引き起こす要因にもなっているのではないだろうか。米軍は「日本の防衛と極東の安全に貢献している」と主張し、日本側に不利な地位協定をおしつけている。しかし、米軍の存在は、基地周辺の住民を守らないばかりか、安全を脅かす存在である。在日米軍再編について地元は受け入れを拒否しているが、再編成が強行されれば、地元負担はより深刻になることが明らかだ。米軍基地の縮小と同時に日米地位協定の抜本的改正は急務だ。

八王子でのひき逃げ事件は、沖縄など基地を抱える地元住民の大きなリスクと地位協定の不平等さを痛感した事件であった。

                    (世話人 井上睦子)  



憲法を愛する女性ネットニュース 2005年12月号    

●光復60周年の韓国を訪ねて
 11月初旬、アジア女性資料センター主催の「女性・戦争・人権」をテーマとした韓国スタディツアーに参加した。韓国挺身隊問題対策協議会(挺対協)、ナヌムの家、駐韓米軍犯罪根絶運動本部や韓国女性労働者会協議会など9団体を訪問し、女性たちと交流した。

未解決の日本軍「慰安婦」問題
 戦時下の女性への暴力として、世界に「慰安婦」問題を提起し、大きな運動のうねりをつくったのが挺対協である。挺対協は独立公園内の用地を提供してもらうようソウル市と交渉中で、「戦争と人権博物館」を開館する準備を進めている。
1992年から毎週行われている水曜デモは、14年間続いている。参加した11月2日のデモは、ハンセン病への差別判決に抗議する原告も加わって100名以上の規模になった。ハルモニたちは寒さの中、訴え続けたが、日本大使館の窓や門扉は閉ざされたままだった。
京畿道広州にあるハルモニたちが共同生活を送るナヌムの家の敷地内には歴史館がある。トラウマと闘い苦痛のはてに描かれた故姜徳景さんの絵画も展示されている。
長い沈黙を破り勇気を出して名乗り出たハルモニたちの名誉は、未だ回復されていない。加害の歴史を消し去ろうとしている日本政府に、公式謝罪と補償を早急に行わせることは、日本の私たちの課題である。

米軍の犯罪と基地拡張反対・撤去運動
 休戦中の韓国では、在韓米軍司令官が「戦時作戦指揮権」を掌握している。米軍に関する地位協定は極めて不平等な内容となっており、米軍犯罪に対して韓国当局が裁判権を行使する割合は極めて少ない。駐韓米軍犯罪根絶本部は1993年以来、タブー視されていた米軍犯罪問題を明らかにし、被害者の支援や地位協定の改正に取り組んでいる。 梅香里(メヒャンニ)の米空軍射撃場は、軍事訓練による被害を受けてきた住民の根強い運動によって54年ぶりに閉鎖された。しかし、米軍の世界戦略は、議政府(ウイジョンブ)基地の拡張という問題をもたらしている。毎日、高齢の住民たちはろうそく集会を開いて反対運動を続けている。米軍基地強化に反対する日本からの支援と連帯を求められた。

日本の植民地支配の解放から60年を迎えた韓国政府は、昨年「日帝強占下強制動員被害真相究明委員会」を設置し、隠蔽された過去の真実を明らかすること、その事実を後世に伝える事業を行っている。この委員会のスローガンは、「真実と和解 未来のための真相糾明」だ。憲法9条はアジア諸国に対する加害の反省と平和への約束でもある。韓国の努力に応えず9条を変えてしまうことは、再び日本がアジアにとっての脅威となることだ。 軍事政権と闘い民主化運動を担った人々が政権の中枢にあり、次世代がNGOで活動する韓国社会の力強さを感じる旅だった。



2005年11月   平和レポートに掲載    

●―小泉構造改革と自治体― 貧困化する市民生活 悪循環の市財政
 2004年度の決算審議が始まっているが、八王子市も国の財政と同様に市債残高の多さと市税収入の減少に、厳しい財政運営を強いられている。

八王子市の2004年度一般会計は歳入約1567.8億円、うち地方税収は総額813億円であり、1998年度から減少し続けている。納税義務者数は増えているにもかかわらず、個人市民税は291億円(2001年度は324億円)となり、所得の減少が顕著に表れている。 個人市民税所得割の段階別でみると200万円以下の所得段階層が増加し、300万円〜700万円以下の層が減少している。また、生活保護世帯は3700世帯(2003年度)であったものが4500世帯(2005年度)と増加し続けている。

この要因は、長引く景気の低迷による給与所得の減少と市長は説明するが、企業のリストラ、賃金カットと正規労働から非正規労働への転換の結果である。小泉構造改革が市民の低所得化と貧困化を生み出している。

 一方で、財政の厳しさは職員の削減に拍車をかけ、この5年間で452人の職員が減らされた。しかし、嘱託職員、臨時職員は大幅に増加している。非正規で働く人たちは、正規職員と賃金や休暇、社会保障で大きな差があり、職場での疎外感などが生じている。指定管理者制度の導入によっても、公務労働の場で、支払われる賃金だけでは生活できないという低賃金の労働者を生み出し、こうした状況を加速している。そして、これは市税収入の減少につながるという悪循環にもなっている。

 福祉サービスの分野では、生活保護世帯の急増は扶助費を増大させ、他の施策の自由度を失わせている。介護保険の見直しによって、施設入居者は居住費・食費を自己負担しなければならなくなった。年金140万円以下の人は個室に入れず、80万円以下の人は施設にさえ入れない。

国会で審議中の障害者自立支援法は、これまで積み上げてきた障害者の自立運動を否定し、自己負担の導入という厳しい内容である。

現在進行していることは、最も支援を必要とする人々を切り捨て、支援が必要なら費用を負担しろという、さらなる弱肉強食の不平等社会への転落だ。自民党圧勝によって、サラリーマン増税や医療制度の改悪など、この傾向は強まることは確実である。

市民の暮らしをしっかり見すえた対案を地方から提起し続けたいと思う。



「憲法」を愛する女性ネットニュース 2005年1月31日号    

●「改憲国会にさせないー行動のうねりを」 1.21院内集会
 第162国会が始まった1月21日、衆議院会館で、5.3憲法集会の実行委員会が主催して、「改憲国会にさせない」ための集会が行なわれ、130名が参加した。

主催者を代表して、高田健さん(許すな憲法改悪・市民連絡会)から、「今国会は憲法が大きな問題となる。5.3集会にとどまらず、立場の違いを超えて行動を起こした。経済3団体も足並みをそろえて、改憲案を出してきた異常な事態だ。憲法調査会は4月に最終報告を提出後、憲法改正を提案する組織に改組するといわれている。今国会に提出予定の国民投票法案は、一括投票なのか否か、有効投票数のことなどは書かれておらず、法案の体をなしていない。また一方では、検討中の教育基本法の改悪、派兵恒久法など、多くの悪法が準備されている国会でもある。」と、今国会の情勢について発言があった。

国会からは、社民党、共産党を代表して衆参の議員が参加し、参議院の糸数慶子議員(無所属)や円より子議員(民主党)の参加もあった。

沖縄選出の糸数議員は、「沖縄県民は4人に1人が亡くなっている。戦争につながる全てのものに反対していく」。社民党を代表して、福島瑞穂議員からは「今国会を平和憲法・くらしのための国会にする。憲法9条を刺し殺すための法案を上程させないために、全力を尽くす。日本最大の財産である9条を棄て去って、アメリカと共に生きていくのか、平和国家として生きていくのかが問われている。不戦の60年は重い。戦争で亡くなった多くの死者たちが、憲法を守れと励ましてくれている。全ての力を結集しよう」と力強い決意があった。

 会場からは次のような発言が続いた。

女性国際戦犯法廷の主催にかかわった西野留美子さん(「戦争と女性への暴力」日本ネットワーク):「NHK番組への政治介入が大きな問題となっているが、『慰安婦』問題を取り扱ったから介入が行なわれた。一連の安倍発言は事実を歪曲している。公共放送と政治家の密接な関係は表現の自由にかかわる問題であり、女性と平和に対する攻撃でもある。」

 赤石千衣子さん(ふぇみん民主クラブ):「憲法24条は家族の中の暴力を禁止し、9条は国家間の暴力を規制している。戦場にいた米国兵士の家庭内暴力の比率が高いといわれるように戦争と家族の暴力はつながっている。9条と24条はあわせて個人の尊厳を守るものだ。」

弁護士の内田雅敏さん(憲法を生かす会):「憲法改正試案に関与した自衛隊員を田英夫・大田昌秀参議員が、中谷議員を弁護士26人が、自衛隊法違反とその共犯として告発した。憲法改悪を先取りする動きに反対する。」

 憲法を愛する女性ネット世話人の新井和子さんからは、「憲法調査会のウオッチングや世界の憲法ノートを作成し、全国の会員にニュースレターを出している。全国の会員からは、憲法の危機を強く感じる。決して改悪させてはいけない。運動の連携を強めようと声が届いている。」と会員からのメッセージを伝えた。

 他に、日本青年団協議会、全港湾労組など7団体からも発言があった。

  深刻な情勢に緊張した集会であったが、自衛隊法違反やNHKへの政治介入に対する告発など、憲法を根拠とした闘いも広がっているとの思いを強くした。 「戦後60年を迎える節目の年に、憲法を改悪するどのような準備もさせてはならない」と、改めて新年の決意をした集会だった。                               (井上睦子)  



ふいふてぃ2005年1月31日号より    

●憲法24条の改悪にストップを
 今年は戦後60年。

戦争の反省から生まれた憲法は58歳になるが、「改憲論」が台頭し、改憲のための国民投票法案の上程も検討されている。

憲法は14条で「法の下の平等」を、24条で「婚姻、家族について個人の尊厳と両性の本質的平等」を謳っている。これらの条文は、男女共同参画社会基本法やDV防止法などの制定の根拠となり、女性の人権を確立するための力となってきた。

しかし、昨年6月に出された自民党憲法改正プロジェクトチームの「論点整理(案)」では、「24条は家族や共同体の価値を重視する観点から見直すべき」と明示された。 自民党憲法調査会では「国民の権利及び義務」を議題とした会議(04.3.11)で、「個人が優先しすぎで、公がないがしろになっている。家族が基本、家庭と家族を守っていくことが、この国を安泰に導いていく。」「せめて家族関係に、養育・扶養・保護の義務を定めることが必要。」「『国民はよい家庭をつくり、よい国をつくる義務がある』ことを可能であれば書いていただきたい。」などの議論がされている。

 こうした発言は、「個人より共同体を優先」し、「家族に育児や介護の義務」を課し、「家族を国の基本」とするもので、「個人は家族のために、家族は国家のために」という考えだ。    介護保険制度は、妻や娘たちによって担われていた介護を社会化したが、「家族や共同体の価値」を強調することは、もう一度女性たちに「家族や国家のために尽くせと」と性別役割分業を固定化させる危険性をもっている。

こうした24条改正論は、女性の権利の主張は「いきすぎた個人主義」として夫婦別姓に反対し、ジェンダー・フリー教育などへのバッシンクの流れと同根である。

 11月の自民党「憲法改正草案大綱・素案」では、24条については「家族の保護」を盛り込むにとどまったが、男女平等政策に対するこうした言説は根強い。24条の改悪にきっぱりと反対することは、バックラッシュを跳ね返す力にもなる。

戦後、女性たちは参政権を獲得し、女性の権利は人権だと確認しあって、平等のために進んできた。憲法にとっても女性にとっても向風の2005年だが、力と知恵を出し合いたいと思う。



井上むつ子の活動報告 2004年6月20日号より

●年金問題への怒りと平和の選択―参議院選挙
 6月定例議会は、6月10日〜25日までの予定で開催されています。

 一般質問では、より良い個人情報保護条例を求めて改正の課題と、地域で安心して暮らせるための地域保健福祉計画の策定について質問しました。

 年金法案の強行採決は、参議院の良識や日本の民主主義が否定されたことです。福島みずほ党首をはじめ3人の質問打切りは、政党や個人に投票した約1000万有権者をないがしろにしたのです。

 政府の年金法は、抜本的な改正を先送りにし、特に若い世代に負担を押し付けて、目先の数字合わせにしかすぎません。厚生年金も国民年金も14年間保険料はアップし、暮らしを直撃します。

 しかし、給付はダウンし、現役世代の収入50%の水準を確保するのは給付開始年だけで、翌年から40%台に落ち込むことを厚生労働省も認めています。これは欠陥法です。また、年金積立金の運用で6兆円もの損失を出していることも大きな問題です。

 社民党は、基礎年金の国庫負担率を2分の1にあげ、年金保険料を据え置きし、低所得者へのマイナス物価スライドを凍結して、批判の多い国会議員の年金制度は廃止します。そして、全額税方式の「基礎的暮らし年金」と「所得比例年金」を組み合わせた安心と公助の新年金制度を確立します。

 イラクでは、多くのイラクの人々だけでなく米英の占領軍兵士も命を失っています。

 米兵による虐待や日本の若者の人質事件、ジャーナリストの殺害など多くの悲惨な事件が起こり、イラク戦争が誤りであったことは、明らかになっています。

 小泉首相は、自衛隊の多国籍軍参加を表明しました。これは、米軍の指示を直接受け、米軍との武力行使の一体化が進むことになり、憲法を逸脱するものです。武力ではなく、ねばり強い交渉によって問題を解決することを憲法は国の為政者に求めています。

 改憲の動きが急でが、戦力の不保持と交戦権の否認を定めた第9条2項は、変えてはなりません。 年金問題への怒り、憲法9条を護る選択を参議院選挙では、訴えていきます。 政治に希望をつないで、一緒に変えていきましょう。



井上むつ子の活動報告 2004年6月20日号より

●子どもたちが大切にされる学校教育を
(12月議会一般質問・3月議会予算総括質疑)

ふきあれた卒業式・入学式での日の丸・君が代の強制

 今年の公立学校の卒業式・入学式の風景は昨年と大きく変わりました。

 教育委員会は、日の丸を舞台正面に掲げ、君が代はピアノ伴奏で参加者全員が起立し斉唱することを通知し、これに反する教師は、処分するとしたのです。都教委は、着席したなどの理由で200人以上を処分しています。

 日の丸・君が代については、1999年の国旗国歌法の審議でも強制をしないことが確認をされています。それは、憲法の定めた「思想良心の自由」という基本的人権にかかわるからです。日の丸・君が代は日本の戦争や侵略の歴史から歌いたくない掲げたくないと考える人がいる一方、日本の伝統文化の象徴として大事に思う人もいます。それぞれの考えや思いは自由であり、大切にされなければなりません。

 教師が様々な考えのある日の丸・君が代について、尊敬し歌うようにと指導することは、子ども自身の内心の自由を侵害し、心をしばることになるのです。学校に自由の風をーこれは、強制に反対する保護者や市民の願いです。

 私は、子どもたちの思想良心の自由を侵害してはならい、教師を処分すべきではないと市教委に強く求めました。

競争より共生の教育を

 2月に最終報告が出されたアクションプランは、学校選択性や学力テスト、習熟度別学習などの実施などを盛り込んでいますが、子どもたちの学びや育ちを保障するものになっていません。

 学校選択性は、今年度から始まりました。先行している足立区や品川区では、風評によって特定の学校に子どもたちが集まらないなどの問題が出ています。

 習熟度(能力)別学習は、子どもの理解や習熟度に応じた指導が学力を向上させるものとして広がっています。しかし、欧米諸国では成果の上がらない失敗した指導方法だとされ、学力格差が拡大し学校全体の学力向上にはつながっていません。逆に、フィンランド(国際学力比較テスト第1位)のように多様な個性や能力をもった子ども達が「協同」で学びあう方が、学びの経験を豊にし、結果として学力の向上がもたらされるといわれています。習熟度別学習は、子供達の間に優越感や劣等感が生まれることも心配です。

 昨年度から実施されている学力テストは、今年度、小学6年と中学1年で行われる予定ですが、結果は公表される方向です。学力テストの平均点などが学校ごとに公表されれば、それを基準に学校を選ぶようになり、学校格差が広がっていく危険性があります。

 市教委は、財政難を理由に学校予算を4年間で40%も削減し、学校からは必要な教材も購入できないと悲鳴があがっているにもかかわらず、「特色ある学校」運営をしている学校には予算の重点配分をするのです。これでは、ますます格差が広がります。

 義務教育は、全ての子どもたちに教育の機会均等を保障するものでなければなりませんが、教育改革アクションプランは子どもと学校に「評価と競争」を強いることです。 子どもたちが信頼しあって共に学ぶ教育の実現のために、教育予算の増額やプランの見直しを主張していきます。



井上むつ子の活動報告 2004年6月20日号より

●2004年度予算 ― 三位一体改革は自治体への赤字転嫁
 2004年度の一般会計予算は、1629億円です。国の三位一体改革の影響を大きく受け、約6億円の減収になりました。税財源の移譲を強く自治体は訴えていましたが、地方の負担は増えました。八王子市の場合、税源移譲では8.9億円の増収となりましたが、国と都を合わせた保育所運営費などの負担金・補助金の削減は、15億円にもなります。こうした結果、保護者の反対にもかかわらず、市立長房西保育園は民営化されることが決定しています。厳しい財政運営が続きますが、最も影響を受けるのは市民にほかなりません。

 ごみの有料化について、たくさんのご意見をいただきました。3月議会で有料化の条例と予算が可決し、10月からスタートします。有料化によるごみ減量の効果は否定しませんが、事業者責任を明らかにすること、ごみの発生抑制や生ごみのリサイクルなど長期計画を立てることなど、大量リサイクル社会からごみゼロ社会へ転換するためのトータルな政策の確立を求めました。



井上むつ子の活動報告 2004年6月20日号より

●緑地と環境保全を求めた富士見町住民から出された2つの請願
大谷町の緑地が保護地区に指定

 大和田7丁目の旧アーチェリー場のあった北斜面が宅地開発されています。この土地は、環境保全緑地に指定されている大谷緑地につながる雑木林でした。この開発予定地や周辺の緑地を守りたいと、富士見町の皆さんから、昨年の12月議会に「環境保全緑地の指定を求める請願」が出されていました。私は紹介議員として委員会でも緑地の重要性を訴えましたが、開発地域は地権者からの同意が得られない、東京都は買う意志がないという理由で、残念ながら3月議会で否決されました。

 しかし、周辺の緑地約5600uは、地権者の協力で市の緑地保護地区に5月に指定されました。緑地保護地区制度は、10年間は保護するというものですが、地権者の事情によって解除でき、永久に緑地を保護することはできません。請願によって保護地区に指定されたことは良かったのですが、やはり市の緑地として、将来に残せるようにしなければなりません。市の緑化基金は底をついています。市民ファンドやトラストなど市民と一緒に緑を守る新たな仕組みが必要となっています。

請願権を否定した行政定

 また、住民の皆さんから開発を契機として、トラック通行の規制や高齢者も安心して通行できる道路整備などを求める請願も3月議会に出されました。

 審議の中で明らかになったことは、開発の事前協議の中で、必要なトラックの通行ルートの書類が提出されないまま、市が同意をしたこと。市の幹部が請願権を否定するような言動をし、委員会では正確な事実の答弁がされなかったことです。助役や部長からは、委員会での追及や市民からの抗議に「不手際があった」と謝罪がありました。

緑地を破壊し、周辺住民の生活に大きな影響を与える開発行為については、行政の厳しいチェックが必要です。また、市民との協働をめざす市が、請願権を否定することは決して許されないことです。請願は、5月の都市建設委員会でまたもや否決となりました。生活環境を破壊されたくない、バリアフリーで安全な道路を求めるのは当然のことですが、反対の理由は納得できるものではありません。開催中の議会最終日に請願の賛成討論を行う予定です。



井上むつ子の活動報告 2004年6月20日号より

●議会改革を進めています
 市議会を市民にもっと開かれたものにするために、会派代表者会で議論をしています。

 テーマは、一般質問や委員会、市議会だよりのあり方、議会中継のインターネット配信など多岐にわたっていますが、意見が一致したものについては実施に移しています。 3月からは、請願署名の押印が廃止され(代表者は必要)署名を集めやすくなりました。

 5月からは1年間の試行ですが、請願代表者が直接委員会で趣旨説明ができるるよになりました。また、委員長の判断によるのですが、委員会の資料が傍聴者に配布されるようになりました。

早速、5月の厚生水道委員会では、ごみ有料化について請願者が説明し質疑に応えるという場面がありました。 議会が前例や権威主義に陥ることなく、より市民の声が反映されるようこれからも努力します。

是非、傍聴に来て下さい。



総務企画委員会 2004年5.11〜13

●佐賀市・熊本市を視察しました
 視察では、2市の先進的な取り組みを学ぶことができ、共通する課題もありました。改めて八王子市の現状を点検し、視察の成果を生かしていきたいと思います。

佐賀市  NPO支援センター / 国際交流協

NPO支援センターは、広いスペースが無料で市民に開放されています。情報コーナーには、議員の議会報告や政党のマニュフェストなども置かれ政治の情報も知りやすくなっていました。

 外国籍の人との多文化共生をめざす佐賀市は、アメリカ、韓国、中国の3都市と姉妹都市を結び、国際交流が活発です。毎年、日米の子供達の交換ホームステイが行われ、異なった文化を学びお互いを理解しあう良い機会になっています。

 韓国との交流は、3年前、朝鮮の植民地化を正当化するような教科書を文科省が認めた「教科書問題」のため、難しくなっているとのことでした。文科省の誤りと韓国の怒りの深さを痛感しました。自治体や個人レベルの交流を通じて、歴史の真実を知ることも大事なことです。

熊本市  パブリックコメント制度 / 総合支所の機能

透明で開かれた市政を掲げる市長のもと、条例改正や行政計画に広く市民の意見を聞くパブリックコメント制度が03年度から導入されています。例えば、市政改革計画には933もの意見が寄せられ、そのうち意見を取り入れたのは54件でした。市民意見の反映、合意の手法として課題もありますが、八王子市でも制度化をと、提案をしています。

91年に周辺の町と合併した熊本市は、人口66万人、面積266kuの都市で、支所機能が充実しています。道路の補修や福祉の申請など100以もの手続きができます。市民には市役所より支所の方が速く、あちこちの部署をたらい回しにされることがないと好評のようです。



憲法勉強会 2004年5月10日

●憲法勉強会 「憲法のグローバル化を」報告
 佐高信さんとの共著「神は憲法に宿りたまう」を出版したばかりの社民党党首、福島瑞穂さんを講師に、憲法勉強会を開催した。高校生や長崎県からの参加もあり、熱心な質疑が交わされた。
福島さんは、人質事件から憲法の価値などについて、明快に次のように話された。

 社民党はイラクで人質となった3人の釈放を求めて、アルジャジーラに「イラクの人々のために働いてきた彼らは殺されるべきではない。我々はイラクから自衛隊は撤退すべきだと考えている。」とのメッセージをNGOの人たちと送り、平和憲法を持つ国民として平和の意思を伝えた。政府の「自己責任論」は意地が悪く、思想信条によって政府が国民を差別することだ。

 周辺事態法、テロ特措法、イラク特措法、有事関連三法案が成立し、国会では、国民の権利を早い段階で規制する国民保護法制など有事立法7法案3条約が上程されているが、5月中に衆議院で成立の見通しだ。参議院選挙後は、公務員制度改革、教育基本法の改悪や憲法改正国民投票法案が議員立法で出されてくるだろう。この間の状況は、憲法9条明文改憲へと収斂してきている。

 このように、現憲法を踏みにじり自衛隊の海外派兵を進める法制度と有事法制が作られてきたが、政府与党は「戦争をするために自衛隊を出し米軍と共に戦争をする」ことは、決してできない。それは、憲法9条2項があるからだ。9条の価値は、日本の若者の命を守り、米軍への参戦を認めない最後の歯止めとなっていることだ。

 自民党は、自衛隊派遣恒久法と国防基本法の制定、武器輸出三原則と非核三原則の見直しを決定した。もし、武器輸出三原則が見直しになれば、日本製の武器が世界の戦争地域で人を殺していくことになる。10年に一度戦争をしなければ経済がもたないといわれる米国のように、軍需産業に依存した経済を作ってしまえば、そこからの転換は困難となる。

 今、憲法は、前文と9条2項だけではなく思想良心の自由や表現・集会結社・学問の自由、生存権、労働基本権などが制限され侵害されている。特に、思想良心の自由については、東京都の日の丸・君が代の大量処分のようにどんどん小さくさっている。「平和と平等は手を携えてやってくる」という言葉があるが、現在は、「戦争と排外主義が手を携えている」状況だ。

 EUでは、憲法草案に「戦争放棄」を入れようという動きがある。日本国憲法は時代の最先端であることを、世界に情報発信し国際会議に働きかけ、日本全国に憲法の価値を広げていきたい。憲法改正論の中でも、環境権やプライバシー権など新しい権利を定めるというのは、9条改憲のダシにしかすぎない。民主党から国連主導の軍事活動に参加する意見が出ているが、明らかに日本国憲法の禁止している武力による国際紛争の解決であり、憲法違反の軍事活動を容認し9条改憲に踏み込んだものだ。

 参加者からは多くの質問が出されたが、中でも「戦力不保持と交戦権の否定」を定めた9条2項の重要性について論議があった。福島さんは、「自民党は9条1項を残し2項の削除を明確にしているが、これは憲法9条の自殺だ。自衛隊は陸海空軍になり、防衛庁から防衛省になれば予算の増大など権限が拡大する」と指摘された。久保田眞苗さん(憲法を愛する女性ネット代表世話人)からは、「1項だけでは再び戦争の惨禍を繰り返すことになる。2項の交戦権の否定は、人を殺して罪にならないという特権を誰にも与えないことを定めたもので、市民運動の焦点は2項の削除反対にしぼるべきだ」との提起があった。

 参議員選挙後は、改憲一色になると言われている。福島さんが、厳しい参議院選挙を勝ち抜き、護憲のリーダーとして国会で再び活躍されるよう激励の拍手で会を終えた。

井上 睦子




井上むつ子の活動報告 2003年10月24日号より

●ごみの有料化についてご意見を
 市は、来年10月からごみの有料化と個別収集を行う予定と発表しました。議会では、まだ何も決めていません。来年の3月議会に、市が有料袋の価格を定めた条例を提案し、有料か否かが決まるというスケジュールです。

 有料化の目的は、「市民の環境に対する意識を高め、ごみの減量と資源化を促進すること、ごみ減量に努力する市民としない市民の負担の公平性を図ること」だと説明されています。

 ごみを再利用、再生利用すれば良いというのではなく、ごみの総量を減らしていくことが前提でなければなりません。有料化によって、どの程度の減量ができるのでしょうか。また、市民が納得できる指定袋の価格なのでしょうか。

 個別収集になれば収集場所は、現在の10倍の11万箇所になります。このコストもまだわかりません。不法投棄の心配、生ごみの資源化、増え続けるペットボトルをどうするのかなど、有料化とごみの排出抑制については、たくさんの課題があります。

 市はもっと適切で正確な情報を提供し、市民間での「ごみと環境」についての活発な議論を通して、ごみ有料化への結論を出していくべきです。  有料化について、一緒に考えていきたいと思います。どうぞ、ご意見をお寄せ下さい。



井上むつ子の活動報告 2003年10月24日号より

●厳しい市民生活を福祉・教育予算の削減が追い討ち
 2002年度一般会計・特別会計の総計決算額は、歳入:3,125億4,046万円、歳出:3,094億3,098万円でした。景気の低迷を反映して、歳入・歳出は前年に比べてマイナスです。市税も855億8千万円で、7億円の減少となりました。個人市民税は、納税者数は増加しているにもかかわらず、所得の減少や年金生活への移行で税収は増えていません。市民生活の大変さが市税収入の結果からもわかります。

 市財政は重病です。過去の施設建設などによって、借金である地方債現在高は3,018億円もあります。これは市民1人当たり約58万円になります。今後の財政計画をしっかり立て、過大な市税収入の見込みをせず、大規模な道路事業などへの投資的経費を削減し、市債の発行を厳しく管理していかなくてはなりません。

 94年度に景気浮揚策として所得税・住民税の減税が行われたことも財政を厳しくしています。減税のため市税収入が大きく落ち込み、政府の方針によって減税分を地方債によって補てんしています。02年度までに借り入れた額は、約270億円にもなり、来年度は125億円(95・96年度の借入分)を返済しなければなりません。減税しても景気は回復していません。国の失敗のしわ寄せが、地方自治体にきているのです。

 3年間で職員数は270名削減しましたが、新規採用していないため20代の職員の割合が極端に少なく、組織に活気がなくなっています。逆に、不安定な身分のアルバイトや嘱託の職員はそれぞれ、766人、377人と増えています。新規採用の再開と、増加している非正規職員の待遇改善を求めました。

 財政再建の名のもとに、難病福祉手当の縮小や移動教室の補助金削減など福祉や教育予算が削減されています。その結果、学校では施設整備や清掃が十分でなく、教材なども不足するという事態になっています。私は、こうした削減には反対してきました。市民の暮らしが厳しい時こそ、市民生活をしっかりと支援すること、子ども達の学ぶ環境をきちんと整えることが市の役割です。

 これから来年度の予算が編成されます。削減された福祉や教育予算の復活と充実を強く求めていきます。



井上むつ子の活動報告 2003年10月24日号より

●上川町に疎開していた旧相模海軍工廠の歴史と安全性
  戦後58年経た今日でも、茨城県神栖町、平塚市、中国黒龍江省で旧日本軍の毒ガスが原因と見られる健康被害が相次ぎ、戦争の被害が日中で続いています。

 1944年頃から上川町に疎開した旧相模海軍工廠は、神奈川県寒川町で毒ガスを製造していました。上川町では何が製造され、貯蔵されていたのか不明です。跡地の安全性も心配です。市の見解は「作業員の泊舎、木造の工場などが建てられたが、工場は稼動しなかったと伝えられており、地下水の調査を実施した結果では異常はなかった」とのことでした。国際法違反の毒ガス製造についての基礎的資料は、証拠隠滅のため、旧日本軍によって廃棄されたといわれています。安全であれば何よりですが、水質や土壌検査を徹底的に行い安全性が確認できるよう求めました。

上川町にあった旧相模海軍工廠の実像は、明らかにされていません。寒川町では町史研究で学徒動員や毒ガス製造にかかわった人たちの証言を集めて、解明する努力を続けています。教育委員会も郷土資料館を中心に地域の研究者と連携して、米軍資料などの収集に努めると積極的な姿勢を示しました。

 「八王子の空襲と戦災の記録」は、市民からの要求で編さんされました。監修の言葉には「戦争の与えた意味について深く探ることを考えた」と記されています。

 戦争の記憶が風化し、新たな戦争の危機を感じる時だからこそ、半世紀前の戦争に関わる郷土史を掘り起こしていくことは本当に大切です。



井上むつ子の活動報告 2003年10月24日号より

●憲法の命運を決する総選挙
 紅葉の季節になりました。各地で文化祭や運動会が開かれています。八王子市立夢美術館が、八日町にオープンしました。小さな規模ですが、身近な市民の美術館として発展するよう願っています。

 4月の市議選では大きなご支援を頂きありがとうございました。元気に活動しています。

 いよいよ、総選挙です。

 社民党は、議案提出ができる21議席以上の確保をめざしています。東京では5名を擁立する予定です。

 小泉内閣は、アナン国連事務総長も「無法な武力行使だ」と批判したイラク戦争を支持し、イラク復興支援という名目の戦費を、来年約1,650億円、4年間で約5,500億円の拠出を決めました。また、年内に自衛隊をイラクに派遣することを示しています。

 小泉首相は国会で、国民に対して一切の責任ある説明を行っていません。国民をないがしろにしています。構造改革によって雇用の不安が広がり、厳しい生活を余儀なくされている国民の税金を、ブッシュ大統領への協力のために使うことは許されません。大切な税金は、年金や失業保険など国民のセーフティネットにこそ使われるべきです。

 日本は、平和憲法の精神を踏みにじって、戦争のできる国への危険な道を選択する岐路に立っています。日本国憲法の命運を決する総選挙です。

 日本国憲法9条を守るため、全力でがんばります。そして、高齢者や子どもたちの人権が大切にされ、強い者だけが勝ち残る社会ではなく、互いに支えあって生きる社会の実現のため、力を尽くします。    



2003年10月1日発行  通信 「共に育つ」

●子どもの人権を考慮しない特別支援教育にかかわる実態調査
 7月下旬から9月上旬にかけて、普通学級に在籍するLDやADHDなどの学習障がいを持つ子どもたちの実態調査が全小中学校で行なわれました。この調査目的は、「特別な教育支援を必要とする児童・生徒の実態把握」とされ、都教委からの依頼を受けたものです。この調査は、人権侵害につながると新聞でも取り上げられ、保護者からも中止を求める意見が都教委に出されています。

 75項目にわたる調査は、学習面や行動面での不注意・多動性・衝動性・対人関係について学級担任がチェックし、一定ポイント以上の子どもが特別な教育支援を必要とするとみなされます。調査内容は「独特な目つき、表情、姿勢をしていることがある」「他の子どもから、よくいじめられることがある」「大人びている」など、主観的にしか評価し得ない項目や、逆に教師の子ども観を歪める項目も多くあります。

 個々の子どもたちの障がいの有無を調査するにもかかわらず、保護者への説明と同意の手続きもされていません。これは、社会的差別につながる個人情報の収集を禁じている八王子市個人情報保護条例の精神にも違反すると、実態調査の中止を強く求めました。市教委は、「子ども一人一人の調査ではなく人数の実態調査で、調査内容は妥当であり中止はしない、個人情報の管理はきちんと行なっている」との答弁にとどまりました。

しかし、子どもの氏名を記入して調査する作業リスト(使用は自由)が配布されており、個人調査が行われたことは否定できません。 一般社会では、たとえ支援のためという理由があっても、このような調査は許されません。教委には子どもの人権の視点が欠落しています。学校現場で子どもの人権を考慮することなく、調査が行われたことに大きな怒りを感じます。

 今回の調査は、「特別支援教育」が、障がいを持つ子どもと持たない子どもの新たな分離となる危険性を示したともいえます。 市教委は、特別支援教育対策委員会を設置し、文部科学省の最終報告書の具体化に向けて検討を開始しました。来年3月、最終報告の予定です。

「普通学級で学びたい」という子どものニーズに応えるための支援教育となるために、検討会への当事者の意見の反映と保障が今後の課題です。



憲法調査会傍聴記   2003・10・4  「憲法」を愛する女性ネット

●衆議院憲法調査会 傍聴記
 10月2日、テロ特措法延長の特別委員会と並行して開催された衆院憲法調査会は、小委員会設置(最高法規としての憲法のあり方、安全保障及び国際協力、基本的人権の保障、統治機構のあり方)を決定し、中山会長から「米国、カナダ、メキシコ憲法調査」の報告に続いて、委員間での自由討議が行われた。

 3カ国の調査報告では、米国のアーミテイジ国務副長官から「日本が安保理の常任理事国入りするためには、集団的自衛権の問題について根本的な決断をしないと難しいであろう。」と発言があったことに対し、「その趣旨は何か」との質問が平岡秀夫議員(民主)からあった。これに対し、副団長として参加した仙石由人議員(民主)から、「副長官が、集団的自衛権と集団安全保障の二つの概念を区別して述べたのかは不明。また、国連を二国間同盟の延長としてとらえ、そもそもこの二つの概念を区別して用いていないことも考えられる。」との答えがあった。また、副長官が「憲法9条についての内閣法制局の解釈は、もっと柔軟であってよいのではないか。しかし、それは、あくまで日本が決定すべき問題である。」と述べたことも報告があった。

 調査会では、アーミテイジ副長官の発言についてそれ以上の議論にはならなかったが、米国UCバークレイ校での意見交換の中で、仙石議員は「法治国家として、これ以上の解釈改憲は行うべきではない」。山口富男議員(共産)からは、「憲法9条は、アジアと世界の平和・安定にとって重要であり、守るべきである。」との意見表明がされたとのことだった。

 メキシコの調査報告では、次のような発言に興味を持った。
 「国境を接する超大国、米国と対等の関係を保つために、国家の安全に関して主権制限にかかわるような国際条約には加入せず、PKOにも一人も兵士を出していない。」(セラーノ教授、ブルゴア名誉教授)「現在の世界情勢は米国一国のヘゲモニー体制に傾いているが、メキシコとしては、米国に対してもノーと言うべき時がある。」(ソラ―ナ元外務大臣)各国は、その歴史を反映して、憲法に「戦争と平和」をどのように規定するか異なっているが、報告書を丹念に読んでみたいと思った。そして、議員達は何を学んだのか詳しく知りたいと思う。また、米国調査が、アーミテイジ発言に代表されるように、米国の改憲を求める政治的アピールに利用されてはならないだろう。

 自由討議では、憲法の焦点である9条について各党の姿勢が明確に出され、イラクへの自衛隊派遣について以下のような意見が出された。 
 改憲、あるいは拡大解釈する意見として、自民、保守新党、公明から発言があった。

 保岡興治議員(自民) 「一国平和主義を改め、9条2項の削除、個別的・集団的自衛権等の憲法への明記を検討すべきである。憲法改正のための国民投票を制定したい。」

赤松正雄議員(公明)「イラクへの自衛隊派遣に反対する声があるが、9条を日本が危ないことをしないための口実としているのではないか。9条の改正を議論する前に、まず、その解釈について、内閣法制局のみに任せずに、国際社会の常識と乖離しない方向で適正な解釈を確立すべき。」

 西川太一郎議員(保守新党)「新憲法においては(a)緊急事態に関する規定、 (b)自衛隊の位置付け、(c)集団的自衛権、(d)国際社会への責任・義務を明記する必要がある。憲法制定のための国民投票を制定する必要がある。」

これに対して、9条の平和理念を護り、現実政治の乖離を厳しく指摘する意見として、社民・共産から発言があった。

春名直章議員(共産)「イラク戦争は、国連憲章に違反し不法不当な戦争である。日本は、9条の理念に沿って世界の平和秩序の構築に努力すべき。イラク戦争支持を撤回し、自衛隊の派兵をとりやめ、テロ特措法の廃止、非軍事の人道支援に全力を挙げるべき。」

北川れん子議員(社民)「軍事力で問題は解決できないことから、平和憲法の理念の下で今ある問題をどう解決すべきかを議論すべき。」 金子哲夫議員(社民)「現時点において、改めてイラク戦争が何であったのかを、その根拠・正当性を含め、冷静に検証し、その上で憲法論議を行うべきである。米英により占領されているイラクへの自衛隊の派遣や、集団的自衛権行使を9条の解釈変更によって容認することは、立憲主義の見地から問題。武力でなく話し合いや国際協調による問題解決が憲法の指し示す道である。」

 論憲・創憲の立場の民主党議員からは、9条とイラク戦争についての明言はなかったが、大出彰議員から「国際政治においても国内政治と同様、戦争等によって引き起こされる人権侵害を防止する仕組みを構築すべき」、仙石議員からは「アジアでの地域的な安全保障体制の構築等は、日本が主導的に進めるべきことであり、憲法の規定がその足枷となってはならない」との発言があった。

 憲法調査会が設置されて、3年9ヶ月が経過した。相変わらず、議員の出席率は悪く、開会から2時間たった午前11時には、自民の出席者はわずか4名と空席が目立った。自由討議も、議論がかみあって深まるということもない。改憲派の人々は、改憲のために5年間の政治日程をこなしているように見える。

 イラク戦争という現実は、武力で問題は解決しないことを明らかにした。金子議員が指摘するように、戦争を冷静に検証し、憲法論議を行うべきだ。

小泉総理は自民党結党50年に合わせて、改憲案を提案するとしている。
「9条堅持・護憲」の私たちの活動も正念場を迎えていると痛感した。



井上むつ子の活動報告 2003年4月14日より

●正義なきアメリカのイラク攻撃に反対します。 1日も早い米英軍の撤退を
 2003年度がスタートしました。新1年生の元気な笑顔にたくさん出会います。

イラクでは同じ年頃の子どもたちが爆撃の中を逃げ惑い、命を失っています。アメリカのイラク攻撃に正義はありません。また、平和憲法に背いて、アメリカを支持し加担している日本政府にも道理はなく、強く抗議します。

 八王子市議会では、今議会で「憲法9条を守り、国際的な安全保障問題を平和的に解決することを求める意見書」を全会一致で可決しました。世界ではイラク攻撃に反対する世論が大きく広がり、連日のように集会やデモが行われています。友人たちと毎月行っているピースウォークが世界の人々とつながっていると感じます。

 1日も早くイラクから米英軍が撤退し、人々に平和な暮らしが訪れるよう願っています。  任期最後の市議会では、一般質問で教育行政と八王子駅南口再開発について、予算審議では談合防止への市の毅然とした対応について質問しました。



井上むつ子の活動報告 2003年4月14日より

● 談合事件を契機に入札契約制度の改善を
 2月に逮捕者を出し、市役所の家宅捜索まで受けた水道事業者の談合事件に対して、市は逮捕された3社に1年間、談合していた19社に6か月間の指名停止をしました。

また、損害賠償を求めて告訴する方針です。
再発防止のための入札契約の見直し案は、水道部の契約で1年間試行することになりました。

見直しの対応策は、@業者の対象範囲を広げ競争性を高める。A水道事業談合監視委員会を設置して取引の監視をする。B談合監視委員会が不適切と判断した場合は契約解除する。というものです。

 私は予算特別委員会で、談合していた19の業者名の公表をし、業者に決して談合は許さないという強い態度で臨むこと。水道事業だけでなく、全ての入札契約の改善策を定めること。又、価格以外の要素を重要視し、東京都などが実施している総合評価方式(環境や福祉などの視点を考慮する政策入札)の導入を主張しました。

業者名の公表は業者にとって不利益になり規定がないこと、全体での防止策や政策入札はとても困難であるとして、市の答弁は消極的で談合防止に対する毅然とした姿勢が見えませんでした。

 市長のイニシアティブによって、談合防止のための入札契約制度の改善を強く今後も求めていきます。



井上むつ子の活動報告 2003年4月14日より

●  まちづくりは市民参加で、市は責任ある判断を JR八王子駅南口再開発
JR八王子駅南口再開発は、商業業務ビルから高層の集合住宅を中心とし、市民会館などを併設する計画変更案が出されています。

3月には大林組が事業協力者に決定しました。

八王子市は、再開発準備組合に指導助言する立場として関わり、市の基本計画にも位置づけ、再開発準備への補助金もこれまでに約1億円を支出しています。

しかし、市民には計画の具体像が見えにくい状況が続いています。
低迷する経済情勢の中で、大規模な再開発は成功への不安も否めません。


再開発の主体は再開発組合を構成する地権者です。
しかし、総事業費の2%〜3%の補助金を出し、加えて市民会館の南口への移転建替をして再開発を後押しする市は、責任ある関わりと事業の成否の判断をするよう求めました。

 再開発計画とあわせて、南口駅前広場や南北自由通路と接続するペデストリアンデッキの整備も計画されています。

再開発の具体的な内容や広場の整備計画案を事前に公表し、再開発の影響を受ける周辺住民や、広場の利用者である市民の意見を十分反映できるようパブリックコメント制度の実施を提案しました。



井上むつ子の活動報告 2003年4月14日より

●  競争によって学校間格差を生む学校選択制
   学校は、子どもたちが生きていくための基礎学力だけでなく、人とのふれあいを通して人格形成をする場でもあります。

学校の役割はとても大きく期待されています。
たくさんの問題を抱える教育を変えようと様々な取り組みがされています。
八王子市では、学校選択制が2004年度から始まります。

新1年生は、小学校では隣接する学校を、中学校では全地域からどこの中学校も選択できるようになります。

市教委は選択制の目的を、学校が競い合うことでよりよい結果が期待できる。
「いかに学ぶか」という保護者や子ども達の意思を尊重することだと主張しています。

確かに、保護者や子どもたちが、学校情報を得て、学校を選択することは自己決定の保障です。

 しかし、学校選択制は反面、義務教育に競争原理を導入することです。

 特に中学校では、学力格差・学校間格差を助長する心配があります。

荒れている学校や小規模などの理由で子どもたちが集まらなくなる減少校の発生も危惧されます。

小規模となった学校は統廃合の対象ともなると市教委は明言しています。
このように、学校選択制は問題を含んでおり、負の側面を見ないわけにはいきません。

 「特色ある学校」が学校間や子どもたちの競争を煽ることのないよう、教育本来の基礎基本を学ぶ場であるよう強く教育委員会に求めました。

競争によって勝ち負けの二分化を子どもたちに強いることは教育にふさわしくありません。

 すべての子どもたちが個性を発揮し、ひとり一人にあった教育のためには30人学級や十分な教育予算など、教育環境の整備と教師や保護者の自由で積極的な教育への参加を保障することではないでしょうか。



井上むつ子の活動報告 2003年2月25日より

●  表現の自由の規制を危惧
  八王子駅周辺の執拗なつきまといや、勧誘行為を禁止する目的で、4月から施行される「生活の安全・安心条例」は、言論や表現の自由を規制し、市民生活に不当な制限を招くおそれのある内容で、私は反対しました。

 条例では、「つきまとい」や「勧誘」行為がどのような行為をさすのか、明確な定義がされておらず、あいまいです。拡大解釈によって街頭での市民の署名活動やビラ配布なども規制される心配があります。

現に、条例が審査された委員会では、畑中助役が「宗教活動、労働運動、政治活動も想定はしていないが、拒絶の意図を示したにもかかわらず、しつこく勧誘するということがあれば対象になると考えている」と答弁しています。これは、憲法の保障する表現の自由への制約と受止めざるを得ず、許しがたいことです。

 そもそも、繁華街周辺の「つきまとい勧誘行為」は軽犯罪法など各種の法律によって規制し、取り締まる権力を持つ警察が十分な役割を果たすべきです。

 また、犯罪防止のため監視カメラの設置推進を事業者にさせることも条例に規定されていますが、不特定多数の市民のプライバシーが侵害される危険性もあります。

 「安全な町」は市民の願いです。

しかし、その内容が基本的人権にかかわる市民生活の規制や監視につながることを市民は望んでいません。

 市は迷惑駐車条例や安全・安心条例に続いて、暴走族追放条例を提案予定です。

警察の機能を市が担うことは法的に限界がありできません。

また、市の役割でもありません。市民生活を規制する市条例は、人権を保障するために不服申し立ての手段や規制乱用に歯止めをかけるなど、きわめて慎重でなければならないと考えます。



井上むつ子の活動報告 2003年2月25日より

●  住基ネット・プライバシー侵害が大きい
 2002年8月5日から住民基本台帳ネットワークが稼動しました。
広域交付や住基カードの利用などの第2次稼動は8月25日です。
国は民間への利用拡大を否定していますが、懸念は払拭できません。

 国民一人ひとりに11桁の番号をつけ、ネット上で個人情報をやりとりするのは、人間を商品の在庫管理のように取り扱う違和感をおぼえます。

住基ネットについて、人間の尊厳からも、又プライバシー侵害や漏洩の危険性が大きいこと、全国で初期投資400億円の費用対効果がないことなどから反対してきました。

 杉並区や国分寺市、福島県矢祭町は、個人情報の保護などが万全ではないとして住基ネットに参加していません。また、中野区、国立市も安全性の確認ができないとして離脱しました。

 10月には私も含めて35名の市民が住基ネットへの接続の中止請求を行いました。しかし、市側からは法律で決まっているため、接続中止はしないという通知が届きました。

 自分の情報は、自分でコントロールすることができる「自己情報のコントロール権」を八王子市個人情報保護条例は定めています。

氏名・住所・生年月日などは、個人の大切な情報です。
横浜市では、住基ネットに不参加の市民は約25%の84万人にもなりました。

 私は、基本的に住基ネットに反対ですが、参加・不参加の選択の自由が八王子市民にも保障されるべきだと考えています。

 中止請求は認められなかったので、12月、個人情報保護審査会に21人の市民が不服申し立てをし、1月、審査会に諮問されました。

審査会での迅速な審議と市民の意見陳述を求めています。審査会が見識のある答申を出すことを期待しています。



井上むつ子の活動報告 2003年2月25日より

●  障がい者が地域で暮らすことのできる制度に
  2003年度から、障がい者の福祉施策が措置から契約へと大きく変わり、支援費制度へ移行します。支援費制度は、障がい者が自己選択と自己決定に基づいて、地域の中で暮らすことを理念としています。

 この理念を実現するためには、市が主体となって、グループホームや生活寮などの基盤を整備し、地域での生活がスムーズに行われるようなしくみづくりが不可欠です。

 障がいの状況や生活環境、利用の意向などの聞き取りを経て、支給決定は市が行います。支給決定の内容が自立した生活を営めるかどうかを左右します。

 財政負担の軽減やサービス基盤の未整備によって、障がい者の希望するサービスが受けられず、家族介護に頼ってしまうことのないよう、サービス水準の量と質を向上させていかなければなりません。

 また、支給やサービス内容についての異議申し立てや、利用者の権利を守る制度などたくさんの課題があります。

 当事者の声を反映した支援費制度となるために、利用者の皆さんと連携して取り組んでいきます。



井上むつ子の活動報告 2003年2月25日より

● 介護保険料の引き上げは市民の同意を
 2000年から始まった介護保険は、要介護者やサービス量が増加し、保険料の改定(別表)が提案されています。改定の内容は、保険料基準月額が3,167円から3,450円になり、保険料の段階設定は5段階から6段階に変更されています。

 6段階設定は、所得の低い高齢者の保険料負担を軽減する目的で、一定所得のある高齢者(市民税課税)の負担を重くする方法です。これによって、1・2段階は若干の負担減となりますが、5・6段階は年額7,200円から17,500円もの負担増となります。

 介護保険事業計画や保険料の改定は、検討会で審議されてきましたが、市民には根拠となる数値などは示されていません。6段階設定や引き上げについて市民がどのように考えるのか、情報を公開し合意を得るべきです。

 保険料や利用料に苦しむ所得の低い高齢者の負担軽減について、何度も議会で取り上げてきました。

 6段階設定は、負担軽減の方法ですが、各層の負担の苦しみを解決するものではありません。保険給付費の国や自治体の負担割合を多くしなければ、根本的には解決しません。介護サービスを利用する人や量が増加すれば、必然的に高齢者の保険料が高くなるシステムを変えるべきです。




井上むつ子の市政報告 2003年1月1日より

● 井上むつ子の市政報告
あけましておめでとうございます。
希望にみちた2003年をお迎えのことと存じます。
だれもが輝くまちづくりのために本年も全力を尽くします。

12月20日に閉会した、第4回定例市議会では、1999年に策定された八王子市基本構想が、ゆめおり市民会議(役130名の市民で構成)からの提案をもとに全面改定されました。市民自治と協働を基調とし、市財政を圧迫する大規模開発型から環境を重視するまちづくりへ転換する可能性をもった内容となっています。これは私が主張し続けてきたことです。

一般質問では、深刻な雇用不安を解決するために、市職員の新規採用の再開や、福祉や環境分野で雇用を創出する事業の展開、失業者が自尊心や元気をとり戻すプログラムの実施など求めました。

また、児童扶養手当が削減され、より厳しい経済状況におかれている母子家庭への就労支援の強化を質しました。

米国のいらく攻撃計画に日本政府が反対を表明することを求める意見書が全会一致で可決されました。 武力によらず、ねばり強い対話の努力によって平和の年になるよう願っています。


憲法を愛する女性ネットニュース2002年10月号より

● 戦争にNO!ピースウオーク始めて
八王子での「Piease No War市民の会」の小さな平和のための活動は、昨年の9・11テロ事件とアフガニスタンへの米国による報復戦争に反対することから始まった。

10月ピースリボンとチラシ配布のため街頭でマイクを持ち、11月ストリートミュージシャンの若者も参加して駅前でのイマジンを歌う路上コンサート、12月には「よみがえれカレーズ」ビデオ上映と講演会などを行ってきた。

この1年、なだれを打った様に日本は戦争に協力していった。政府はテロ特別措置法に続いて有事法制を成立させ、憲法9条を無力化しようとしている。

私たちはいてもたってもいられない気持ちで、周りの友人たちと一緒に地域で意見表明をしようと、6月からは毎月第2土曜日にピースウオークを企画し、今月で4回を数える。

いつも参加者は20人に満たず警察官のほうが多いときもあるが、それでも毎回参加人数は少しずつ増えメンバーも一定ではない。

参加者1人1人が平和のためのアピールをし、今月の歌をうたって出発する。8月は「原爆許すまじ」、9月は「イマジン」、10月は「緑の星に」を予定している。

街の人々は時々手を振ってくれる。車を止めて甲州街道を行進することは大げさに言えば、私たちの権利の行使であり、有事法制が成立しより進んで言論や集会の自由が制限される時代を阻むことにつながるのだと考えている。

また6月に「兵役拒否をしたドイツ青年との交流会」、市長への有事法制反対の申し入れ、8月には「八王子空襲と戦争体験を親子で聞く会」をもった。

八王子は8月2日未明に空襲をうけ、市街地の80%を焼失し約450人が死亡した。

空襲の翌朝、爆破によって散乱した缶詰を死体が隣にあっても平然として集める人々、子供を背負った女性が集めた缶詰を若い男が奪い去っても誰も助けなかったなど、死と隣り合わせの戦争は、人間らしさを奪うものだとの体験者の話は参加者の心に深く届くものだった。体験を共有化し、戦争を知らない世代が想像力を培うことが平和を維持していく力になると思う。

これからも多様な取り組みを粘り強く続け、憲法の味方を増やしていきたい。


2001年6月発行 井上むつ子活動報告より

● 介護保険をより使いやすく、安心して老いを過ごすために
介護保険が導入されて一年が経ちました。多くの問題が指摘されています。市の満足度調査でも16%の人が、利用料が高くて十分にサービスが使えないと答えています。保険料や利用料は負担となっています。社会全体で介護を支える制度が十分に機能していません。市の一般財源から、保険料や利用料の支払いが困難な所帯には援助することを提案しています。1999年11月には市民から2万4千名の署名を添えて高齢者介護基本条例が直接請求されました。私は条例賛成の立場で審議に臨みましたが、残念ながら委員会で3回の審議の後否決されました。

しかし、審議の過程で、オンブズパーソンの設置などは前向きの答弁を引き出し、名称は「相談員事業」ですが利用者からの異議申し立てや人権侵害に対応する専門委員制度をもつモデル事業を行い、現在、本格実施にむけて議論が進んでいます。

私も介護問題にとりくむ市民の皆さんと行政との話し合いに参加し、直接請求で提案したいと努力しています。

介護保険が導入されて、施設運営は厳しくなっています。働く人たちの労働条件や賃金が引き下げられたり、経営悪化によって閉鎖されたデイサービスセンターもあります。厚生省は施設での拘束を禁止しています。高齢者の人権を守ることから当然ですし、このためには介護現場の人手が必要です。介護現場で働くヘルパーさんたちの身分も安定していなくてはなりません。

介護報酬の単価を上げ、介護保険への税の投入を大幅に増やすなど、制度自体の見直しも不可欠です。

「措置から契約へ」と介護保険によって従来の高齢者福祉は大きく転換し、サービスを選択する時代になりました。しかし施設等は希望する人が多く、選択するまでにはなっていません。基盤整備も急がねばなりませんし、施設の情報公開も求められています。皆さんと一緒により良くするための取り組みを今後とも続けていきます。

市内で活動する「介護の社会化をめざす一万人市民委員会」(私も会員です)が、'99年、2000年と続けて市内21の特別養護老人ホームの訪問調査を行いました。殆どの施設が快く調査を受け入れて下さり、調査結果をまとめた冊子ができあがりました。ご希望の方には500円で頒布しています。ご連絡ください。
(TEL.26-6435 井上)


● 情報公開条例が改正されました
情報公開法の制定などを受けて、市条例も制定されました。手数料が無料になりました。市の情報はもともと市民のものであり、市の説明責任を果たすという考えによるものです。

今回の改正で私は「知る権利の保障」の明記を主張しましたが採用されませんでした。

条例によりコミュニティ振興会などしに出資団体の情報も公開されるようになりました。まだ一部事務組合は条例がありませんが、早急に制定するようもとめています。


● 女性参画推進要綱ができました
審議会等の委員を当面2005年末までに、女性委員の割合が40%を上回ることを目標とする要綱ができました。目標達成にむけて各所管の室長、部長が責任を負い、女性行政担当の生涯部長が統括することになります。実質的な男女平等への取り組みとして期待できます。

【資料】審議会等の委員への女性の参画状況(平成12年度末)
12年度末委員会の数女性を含む
委員会の数
女性を含む
委員会の割合
全委員数女性の
委員数
女性委員の
割 合
行政委員会6233.3%4848.3%
付属機関383284.2%99034735.1%
その他審議会221986.4%4098420.5%
665380.3%144743530.1%


● 歴史の事実を学び、近隣の国々と共生できる歴史教科書の採択を
2001年度から使われる小・中学校の教科書の採択が今年行われます。

「新しい歴史教科書をつくる会」の歴史教科書が137ヶ所の修正をして、文部科学省の検定を通し、採択についても歴史の事実を正しく記述していないとして、国内外から大きな反対の声があがっています。「つくる会」の主張は、「南京事件については戦争中だから何がしかの殺害があったとしてもホロコーストのような種類のものではない」など修正をされても、日本の過ちを正当化し誤った事実認識と考え方に貫かれています。

私は3月議会で教育長に対しつくる会の歴史観の評価と歴史認識について質しました。

教育長は「過去の歴史を学ぶことは大変重要、その歴史を学ぶための教科書は史実に忠実でなければならない」と答弁し、「つくる会」の歴史観については明言しませんでした。今回から全ての教科書を教育委員が調査し、採択することになります。直接子どもたちと接していない委員が子どもたちにあった教科書を選ぶことができるのでしょうか。又、小中学校から上がってくる調査報告書は7千以上にもなります。

子どもたちと接している教師や保護者の意見が反映された採択でなければなりません。97年の規制緩和の答申にもあるように学校ごとの採択の方向へ流れを変えていくべきです。歴史の事実を学び、二度と愚かな行為をくり返さないこと、そして近隣諸国の人々とお互いを理解し合う歴史教育は今、とても大切になっています。

「つくる会」の歴史教科書はこのことに全く反するものです


● 外郭団体を厳しくチェックしてきました
土地開発公社

地価が上昇していた1973年に設立された土地開発公社は、公共用地の先行取得をしてきました。しかし、地価が沈静化し、下降しているなかで、公社の持つ長期保有の塩漬け用地は金利だけがかさんでいき、市が購入する時には、地価より高くなり厳しい市財政をより悪化させています。私は1997年12月の一般質問でとりあげて以来、塩漬け用地の早期処分による解決と公社の役割を終えるよう求めてきました。

3月議会で、懸案であった片倉町の環境保全用地を市が緑地として買い戻し、又、他の残っている用地も早急な解決を図るという答弁がされました。

しかし、この緑地は取得から最長のもので12年も経ているため、利子が6億7700万円となり、買戻し価格は33億5700万円(当時の買取価格は26億8000万円)にもなります。現在の時価は7億4千万円です。計画なき取得の遅れは税金の大きな無駄づかいです。

南大沢土地信託

土地信託で建設されたフレスコ南大沢は賃料収入が当初計画と大幅に乖離し、きわめて厳しい経営状況です。外部監査でも修繕積立金が積み立てられていないこと、安田信託銀行から中長期事業計画が出されていないことが指摘されます。

私は早急に今後の見通しが可能な中長期事業計画を出し、修繕積立金や利子返済計画を明らかにすること、また、経営の透明性を高めるために安田信託銀行との契約書を公開するよう求めています。

バブル経済破綻後の1993年の事業着手については、その妥当性に疑問を呈して来ました。自治体が30年もの景気変動のある市場経済の中で成功することは厳しく今後の戒めとしなければなりません。

2000年7月発行 「とうきょうの自治」より

● 「八王子市高齢者介護基本条例」直接請求運動をふりかえって
4月1日から介護の社会化を目指した介護保険制度がスタートした。設定やケアプランの作成、ホームヘルパーの待遇、施設運営の厳しさなど懸念されていた課題が表面化してきている。

昨年、八王子市民が直接請求として取り組んだ「高齢者介護基本条例」は、介護保険制度を積極的に受け止め、高齢者の人間としての尊厳を守り、法の不十分さに対応できる高齢者福祉の実現をめざしたものであった。残念ながら、市議会では3回の委員会審議を経て、6月議会で否決という結果となった。

税と保険料の負担者として、サービス利用者として、提案した条例制定の活動を報告する。

動き始めた市民

八王子市は高齢化率は約14%であるが、特に丘陵地など団地では20%を超えているところもあり、一人暮らしや高齢者だけの世帯が多くなっている。他方、特別養護老人ホームや、老人保健施設、療養型病床群などは37施設あり、他市に比して、介護基盤の豊富さという特徴はあるものの、市の高齢者福祉サービスは、全都の平均より少し低い水準にある。介護保険法の成立を契機として、高齢化のすすんでいる団地地域などでは、学習会やボランティアなど、市民の活発活動が始まった。

介護保険の評価は、法制定以前から賛否両論あったが、「介護を私的なこととしてではなく社会的に解決する」という主旨は市民の終末を豊かに不安なく、住み慣れた地域で暮らしたいと願う市民は、保険者となる市に対して法の不十分性を解決する役割と大きな期待をもつようになる。

高齢者介護に関心を持つ市民や市民団体は、各々、介護保険事業計画への市民参加と情報公開、サービス基盤の整備などについて要望書を市へ提出していたが、明確な市からの回答を得られず、98年9月、13団体と個人が参加して「市民参加で八王子の介護保険をつくる会」を設立した。

会の目的は、市民参加を基調として、「@市民に開かれた策定委員会を求め、市民が介護保険について積極的に発言し支え育てること A高齢者が望む環境で人間としての尊厳を保ち、自立と選択ができる福祉のまちを実現する」というものである。

この目的が後に提案する高齢者介護基本条例の基本となっていくのだが、会では、公開学習会、市との話し合い、市議会議員選挙立候補者へのアンケートなど精力的な活動を展開し、厚生省の介護保険条例のモデル案の検討にも入った。

しかし、介護保険事業計画の策定に着手した市は、策定委員会を助役を委員長とする幹部職員のみで構成し、策定委員会のワーキンググループとしての協力委員会議に14名中3名の市民団体、また、諮問機関である地域福祉審議会には10名中2名の市民公募委員の参加が保障されるにとどまった。会議が公開されたのは、わずかに協力委員会議だけとなった。

市の計画策定時からの市民参加と情報公開はきわめて消極的で、策定委員会が公開され、多数の市民が参加していた他市と比べてその閉鎖性は特徴的であった。

つくる会では、審議委員や協力委員を通じて、市民の意見反映に努力しながら、厚生省の示したモデルの手続条例ではなく、介護保険を含む高齢者介護全体について、市の責務の明確化と利用者の権利擁護に重点をおいた条例の直接請求を行うことを決定。つくる会の嶺学代表(法政大学名誉教授)が原案を作成し、昨年4月から条例づくりがはじまった。同時に市民法制局準備会主催の「総合介護条例づくりワークショップ」にも多くのメンバーが参加し、全国から集まった市民や自治体職員との交流の中で条例づくりを学んだ。

市民条例に28,000名の署名

条例制定には、首長、議会、市民提案の三方法あるが、ほとんどが首長提案である。八王子市では92年のリサイクル条例が直接請求されており、市民提案としては今回が2回目となる。有権者の50分の1(八王子市では約8,200名)以上の署名で市長に請求し、しちょうは意見をつけて、議会に諮るシステムだが、市民にとっては大変なエネルギーが必要で費用もかかり、決して使いやすい制度ではない。

つくる会が直接請求で条例制定を求めるという高いハードルを選んだのは、決定過程への市民参加が閉ざされたこと、行政が予定している厚生省のモデル案では高齢者の質の高い自立と選択ができる生活を保障するにはきわめて不十分であるという考えからであった。また、直接請求は直接的な巣民参加であり、多数の市民の声を背景に市長と議会に対し、高齢者福祉に対する責任と判断を明確に問うということでもあった。

9月21日から10月20日までの1ヶ月間に受任者は1,400名を超え、署名は法定数の3倍以上の28,000名もの署名を集め、請求は11月24日受理された。

署名活動は介護保険制度そのものへの批判も多く困難さを伴ったが、オンブズパーソンやサービス評価制度は高く評価され、地域で高齢者の暮らし方について熱い議論が交わされた1ヶ月間だった。行政から種々のサービスを与えられるのではなく、政策を提言する市民の姿が地域の中にあった。

高齢者介護基本条例は、市民参加と市民連帯を基本とし、「措置から契約」、「福祉の市場化」への転換の中で、行政責任を明確にしている。さらに、市民の自己選択・自己決定の保障と権利擁護システムとしてのサービス評価、オンブズパーソン制度を導入し、条例が対象としているのは介護保険を含む高齢者福祉サービス全体である。

市議会に提出された市長意見は、@市民の権利や市・事業者の責務は介護保険法、老人福祉法に既に規定 A市民参加はすでに定着 Bサービス評価、オンブズパーソン制度は介護保険法に規定されており、東京都でそのあり方を検討中として反対の考えを示した。法や東京都の動向に添う受動的で、市民条例案に対する直接の反論を回避したものだった。

結果として、議会審議も市長与党が多数を占めるため、市民条例案を支持する議員は少数にとどまった。

3月議会には、モデル条例案の介護保険条例が制定されたが、第二条(運営の方針)として「市は、介護保険事業を透明かつ円滑に運営するため、実施体制の整備を図り、市民かたの相談、要望、苦情等を迅速に処理し、市民参加を進め、その他必要な措置を講ずるものとする」の条項と市民の介護保険運営協議会の設置が盛り込まれました。市民条例は成立をみなかったが、以上のように市長提案の条例に影響を及ぼし、オンブズパーソンと見守り訪問員制度を支持する委員会審議をうけて、現在市は導入する検討に入っている。苦情相談窓口も高齢者相談課として設けられた。

市民が提案した内容とは乖離があるが、閉鎖的だった行政を動かし始めた意義は大きい。つくる会は今後、介護をめぐる情報収集や提供、苦情解決に向けた活動を続け、市へも粘り強く提案していく予定である。

市民条例案実現のために

介護保険は地方分権の試金石といわれながら、モデル条例に準拠した自治体は多数をしめる。八王子市民が提案したものと同じスタイルの足立区や武蔵野市の条例は、介護保険への熱い想いが伝わってくる。すでに市民や自治体の力量が高まりつつある現在、国のモデル条例は不必要である。国は市民や自治体を信頼し、自治体は国への依存から脱することが求められている。

また、議会も市民と対等な関係で真剣に向き合い、政策を実現する条例づくりの能力を持たなければならない。条例づくりは役人まかせであってはならない。

委員会での市民条例案の否決を受けて、嶺代表は次のようなコメントを発表した。

「この間、市当局及び議会において、内容に立ち入った検討はほとんど行なわれず、むしろ、市および市議会内の政治的諸関係の中で、このような結果に至った印象をぬぐうことはできない」

この指摘を議会全体が深く受け止めなければならない。